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減速感強まる世界経済 日米欧中の景気はどうなる  米国の若者に重くのしかかる学生ローン 中国人の贅沢品購入に変調
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/214.html
投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 01 日 03:36:09: cT5Wxjlo3Xe3.
 


減速感強まる世界経済 日米欧中の景気はどうなる 

第一生命経済研究所主席エコノミスト 永濱利廣

減速する世界経済
ながはま・としひろ/第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト。1971年生まれ。栃木県出身。早稲田大学卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年第一生命保険入社。日本経済 研究センターを経て第一生命経済研究所経済調査部へ異動。研究員、主任エコノミストを経て、08年より現職。主な著書は『日本経済のほんとうの見方、考え方』『中学生でもわかる経済学』『スクリューフレーション・ショック』など。
 世界経済は減速感を強めている。欧州債務問題が再燃し、金融市場の緊張を招いている。実体面でも、家計や企業の心理悪化や欧州の財政緊縮策、銀行の資産圧縮等を通じ、米国や中国、日本経済へも悪影響が及んでいる。
 欧州では、ギリシャのデフォルトへの警戒感がくすぶり続けているほか、不良債権や財政問題からスペイン国債の利回りが急上昇する等、緊迫した状況が続いている。実体面でも、財政緊縮策、家計や企業の心理悪化、銀行による資産圧縮等を背景に、経済成長率も2期連続のマイナス成長となっている。
 米国経済は、バランスシート調整圧力等により緩慢な回復が続いており、足元では欧州債務問題や「財政の崖」問題を巡る懸念を受け、企業や家計の心理は悪化に転じている。中国経済も、不動産開発投資や欧米向け輸出の減速等により成長率は鈍化傾向にある。日本では、投資家のリスク回避の強まりから円高懸念が強まっているほか、株価低迷による逆資産効果も予想される。
 そこで本稿では、今年から来年にかけて世界と日本の経済を見る主要ポイントを挙げ、欧州、米国、中国そして日本の経済展望をする。
次のページ>> 欧州経済:金融危機に発展しなければ御の字
 欧州債務問題は、ギリシャやスペインの不安定な情勢等から再燃している。金融市場では、ギリシャのデフォルトへの警戒感がくすぶり続けているほか、スペインやイタリア等の長期金利上昇、銀行の不良債権問題など緊迫した状況が続いている。実体面でも、財政緊縮策による家計や企業の心理悪化、銀行の資産圧縮に伴う信用収縮等から、今年はマイナス成長に転じる可能性が高い。
 6月にEUは、@銀行監督機構の統一、Aセーフティーネットの機能強化、B成長・雇用協定の締結、Cユーロ圏の統合深化、を柱とする債務危機対策を決定した。ギリシャも、6月の議会再選挙で緊縮策を進めてきた旧連立与党のNDが第一党となり、旧連立与党のPASOKと穏健な緊縮策見直し派であるD.L.の協力を得て組閣し、ギリシャのデフォルトは一旦は回避された。しかし、EU・IMFとの財政緊縮策再交渉は難航する可能性があることからすれば、今後も支援策が実行されるかは不透明であり、市場ではギリシャのデフォルトへの警戒感は今後もくすぶり続けよう。
 その他の財政悪化国の国債利回りも上昇している。特にスペインは、州政府の財政赤字や銀行の不良債権拡大、財政緊縮策による景気低迷長期化等から懸念が強まっている。イタリアについても、13年4月の総選挙後に再び政治が不安定化する可能性から、イタリアが次の市場の標的になるとの懸念もくすぶっている。
 欧州経済の先行きは、政治情勢やセーフティーネット強化の実現性等に依存しよう。ECB(欧州中央銀行)による金融緩和の強化の下で、ユーロ圏統一の銀行監督機構が来年にも稼動し、ESM(欧州安定メカニズム)から銀行への直接的資本注入が為されれば、危機を切り抜けられよう。しかし、景況感の悪化が続くこともあり、欧州経済全体ではマイナス成長が続く可能性が高い。EU27ヵ国の経済成長率がプラスに戻るのは今年末頃と予想され、その後も低成長が見込まれる。
次のページ>> 米国経済:原油・金利低下効果と「財政の崖」の綱引き
ただ、ギリシャやスペイン情勢の混乱、セーフティーネット強化の遅れ、国債への売り圧力、与信残高が多い欧州金融機関への不安と格下げ懸念の高まり等、欧州の信用不安が世界的な金融危機に発展すれば、リーマン・ショック時のような大幅なマイナス成長を伴う深刻な景気後退に陥る可能性も否定できない。
http://diamond.jp/mwimgs/0/9/600/img_09b0ad9679ab5155091631029fe30a319521.gif
米国経済:
原油・金利低下効果と「財政の崖」の綱引き
 米国経済は回復力が弱い状況が続いている。バランスシート調整の長期化等が米国経済の足枷になっている。さらに足元では、欧州債務問題に対する不透明感の高まりから、家計や企業の心理は悪化に転じている。
 雇用環境を見ても、労働市場の回復ペースは緩慢にとどまっている。非農業部門雇用者数の増加ペースは前月差+8万人程度と、失業率を継続的に押し下げる同+10万人台後半には達しておらず、失業率は8%台に高止まりしている。
 こうした中、企業収益ではIT関連やエネルギー関連、自動車関連等の産業が比較的好調である。また、厳しい雇用環境や家計・企業の心理が悪化に転じる下でも、乗用車販売の回復や住宅関連指標の下げ止まり等、景気持ち直しを示す経済指標が一部に現れ始め、実体経済の底固めが進みつつある。
 このように米国経済は、国際商品市況の落ち着き、金融緩和の強化による金利低下等、家計の購買力改善に伴い、一旦減速した景気に持ち直しの兆しがみられる。ただ、政府部門において、給与税減税や失業保険給付の給付期間延長の終了、財政支出の強制削減措置活動が13年初に集中する「財政の崖」問題が存在し、政府支出削減が景気の下押し要因となることには注意が必要だ。実際には一部の措置が延長され、景気押し下げ圧力は縮小する可能性が高いが、昨年夏のデフォルト騒ぎを勘案すると、年末から来年初にかけて市場は混乱すると予想される。
次のページ>> 中国経済:政策効果で牽引役の期待
 従って、米国経済はバランスシート調整圧力が残存する中、住宅市場や雇用・所得環境の緩慢な回復が続く可能性が高く、当面は前期比年率2%台半ば程度の緩やかな回復が見込まれる。

中国経済:
政策効果で牽引役の期待
 中国経済も減速感を強めている。特に不動産開発投資の減速や不動産価格の下落、欧州向け輸出の減速により成長率は鈍化している。
 ただ、持ち直しに向けた環境は整備されつつある。まず、国際商品市況が落ち着きを取り戻している。原油の指標価格であるWTIは昨年4月には一時110ドル/バレルへ上昇したが、足元では80ドル/バレル台の水準で推移している。消費者物価上昇率は前年同月比で6月に+2.2%とインフレが沈静化しているほか、インフレ率が高止まりしていた食料価格も落ち着きを取り戻している。
 固定資産投資にも明るい兆しが出始めており、不動産取引価格は上昇傾向を見せ始めた都市もある。不動産販売金額も減少幅が縮小しており、インフラ投資も底堅く推移している。今年通年のインフラ投資計画の内訳を見ると、鉄道・高速道路・水利合わせて9兆元の整備が控えており、今後は政府によるインフラ投資の動きが加速する可能性が高く、これまで急減速してきた固定資産投資の安定した伸びが期待される。
次のページ>> 日本経済:内需から外需へのバトンタッチ次第
 また、金融緩和も強化されている。昨年12月以降、中国人民銀行は預金準備率を引き下げており、今年6月からは3年半ぶりに金利も引き下げ始めた。さらに、景気刺激策も打たれ始めている。特に省エネ家電や自動車等の普及に補助金を講じる消費刺激策が打ち出されたことに加え、中国の11年の財政赤字GDP比は1.1%と良好である。今後も追加の景気刺激策が期待できよう。
 今年は、そもそも第12次5カ年計画関連投資の本格化が見込まれていた。賃上げ、物価安定維持、消費刺激策等の整備により個人消費の拡大も勘案すれば、金融緩和や消費刺激策の効果が波及することを通じて、年後半にかけて中国経済は消費を中心に緩やかに回復することが見込まれる。そして、通年では昨年に比べて伸びは鈍化するも、通年目標の7.5%を上回る8%台の成長が見込まれ、引き続き世界経済の牽引役を果たすと予想する。

日本経済:
内需から外需へのバトンタッチ次第
 日本経済についてみると、足元では、欧州債務問題再燃、海外経済減速、円高、エコカー補助金終了等、取り巻く環境が急速に悪化している。
 欧州債務問題が日本経済へ及ぼす影響は、まず金融市場を通じた経路が考えられる。すでに投資家のリスク回避姿勢の強まりから、世界の株価が軟調に推移しており、安全資産への逃避の動きから円高圧力も続いている。円高は家計や企業の心理萎縮を招くほか、輸出企業の収益下振れ要因ともなろう。
次のページ>> 円ドルは当面は70円台半ばから80円台前半
 また、財政悪化国の与信を多く抱える欧州系銀行は資産圧縮を行っており、信用収縮の影響は欧州系銀行の与信残高が多い新興国にも及んでいる。これが新興国経済の減速に繋がれば、日本の輸出や企業収益にも影響をもたらす。また株安が続けば、邦銀のリスクも増加する懸念がある。
 なお、日本のユーロ圏向け輸出比率は1割程度である。しかし、中国等の海外現地法人のユーロ圏向けや、米国や新興国向けなど間接的な輸出への影響まで考慮すれば、悪影響は無視できない。
 一方、日本経済は復興需要が徐々に顕現化しており、成長の押し上げに寄与することが見込まれるが、欧州債務問題の影響や、エコカー補助金の終了もあって個人消費の下振れが予想されること等を踏まえると、回復のペースは緩慢なものにとどまろう。なお、消費増税が14年度から実施される見込みであり、13年度には駆け込み需要が発生することを織り込めば、日本の経済成長率は12年度の前年比+2%台の後、13年度も同+1%台後半のプラス成長が予想される。
 ただ、足元の金融市場の緊張を受けて円高定着も見込まれ、さらなる円高進行時には為替介入が行われる可能性もあろう。しかし、米国では6月にツイストオペ(保有国債の残存期間長期化)が延長されたほか、少なくとも14年の終盤まで低金利政策が維持されるとの時間軸が示されているため、円安が大幅に進行する可能性は低く、当面は70円台半ばから80円台前半での推移が続くと想定せざるを得ない。

次のページ>> リスク要因:欧州発金融危機と長期停滞
 なお、上記の展望についてはあくまでメインシナリオであり、海外を中心に不確実性は高い。最大の懸念材料として、欧州債務問題が世界的な金融危機へと発展する可能性が挙げられる。
 欧州債務問題の収束には長期間を要するとみられ、悪循環を断ち切れずに危機へと発展すれば、一気にリーマン・ショックに匹敵する世界的な金融危機へと広がる可能性がある。その場合には、世界経済は再びリセッションに陥るであろう。先進国における財政・金融政策の対応余地は限られ、世界経済の長期停滞に繋がる恐れもある。
 また、世界的な金融危機は回避されても、世界経済の減速懸念はある。欧州では、財政・金融・経済の負の連鎖が強まっており、すでにリセッション入りしている。米国も、バランスシート調整など構造問題が続く中、欧州債務問題や国内の財政を巡る議論の行方により一段の減速の可能性がある。
 内需が堅調な中国でも、不動産関連投資減速や欧州向け輸出の鈍化を背景に減速がみられている。加えて、リスク回避姿勢の強まりや欧州系銀行の資産圧縮等から円高が加速したり、エコカー補助金終了による反動減の影響が長期化すれば、日本経済への下押し圧力が一段と強まることには注意が必要だろう。
(世界を席巻しつつある、新たな経済現象を読み解く筆者の近著『スクリューフレーション・ショック 日本から中流家庭が消える日』〈朝日新聞出版〉も参照ください)
質問1 世界経済は長期停滞の入り口に立っていると思いますか?
そう思う 80
思わない
ユーロ危機次第 20
わからない
http://diamond.jp/articles/-/22337

Financial Times
米国の若者に重くのしかかる学生ローンの債務負担

取り残された世代の苦悩、経済成長に長期的な影響も
2012.08.01(水)

(2012年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

アンドリュー・グジィヴァチュさん(23歳)が今持っているのは、大学の学位、時給8.5ドルの仕事、すぐにでも発送できる履歴書の山、そして3万ドルを超える学生ローンの返済義務だ。

 「大学を出てすぐに念願の仕事に就けるわけではないことは分かっていた」。ボストンのエマーソン大学で映画・テレビの脚本について学び、学位を取得して昨年12月に卒業したグジィヴァチュさんはこう話す。「(エンターテインメント)業界は難関で、入り込むのがここより難しい分野はほとんどありませんからね」

 それでも、彼は多くの同級生たちに比べれば運がいい。ピュー・リサーチ・センターの調べによれば、米国では昨年、18〜24歳の就業率が54%に落ち込んだ。大学進学率が高まったせいでもあるとはいえ、これは労働省が統計を取り始めた1948年以降で最も低い値だ。また16〜24歳の失業率は16%を超え、米国全体の失業率の2倍以上になっている。

 若者の失業率は世界中で危機的なレベルに達している。国際労働機関(ILO)によれば、今年は全世界の若者の13%近くが職に就けずにいる。

軟調な労働市場と記録的なローン残高のダブルパンチ


大学を出たはいいが、思っているような仕事に就けない若者が増えている〔AFPBB News〕

 米国では、労働市場が軟調なところに、教育ローン残高が記録的な高水準(大学卒業生1人当たりの平均で約2万5000ドル)に達するという事態が重なっている。

 この組み合わせは若者の将来の所得稼得能力を脅かすものであり、米国の経済成長に長期にわたる悪影響を与える恐れもある。

 米国政府は既に、学生ローンの債務負担を軽減する施策をいくつか打ち出している。具体的には、低所得者による連邦政府教育ローンの返済額引き下げの実施を前倒ししたり、返済期間が25年を超えたらその後の返済は免除するという仕組みについて、期間を20年に短縮したりしている。

 また、連邦政府の教育ローンを複数組んでいる人は600万人近くに上るが、今では債務を一本化することも容易になっている。

 ホワイトハウスはこれ以外にも、大学教育を費用の面で今よりも受けやすくする施策を講じており、2008年の大統領選挙におけるオバマ氏の勝利で重要な役割を果たした若い有権者にアピールできる可能性がある。

 例えば、金融危機勃発時に議会を通過した景気刺激策には、学費の税控除拡大が盛り込まれていた。また連邦議会では6月、一部の新規学生ローンで金利が2倍に跳ね上がるのを防ぐことで話がまとまっている。

 しかし、問題の規模を考えれば、これでは不十分だと主張する向きもある。例えば、ミシガン州選出のある下院議員は今年、一部の卒業生のローン返済を免除する法案を提出した。また、民間の教育ローンについても、所得水準に応じた返済プランを政府が提供すべきだという声も上がっている。

世帯形成のペースが鈍り、住宅市場などに大打撃

 このような計画の提案者たちは、学生ローンの多大な返済負担が米国の景気回復の妨げになっていると主張している。複数の研究結果によれば、大学を最近出た人々は自動車や住宅の購入を後回しにしており、短期的な経済成長を抑制する1つの要因になっている。

 消費者金融保護局(CFPB)で学生ローンの責任者を務めるロヒト・チョプラ氏は先週、この議論に加わり、学生の債務問題は米国経済に害を及ぼしていると述べた。同氏いわく、「学生の債務は我々が気づいている以上に住宅市場と密接に関係している可能性がある」という。

 ハーバード大学の研究によると、親元で暮らす若者が増えているため、住宅需要の最大の原動力である世帯形成のペースは現在、1940年代と同水準になっている。2007〜2011年に新たに形成された世帯数は毎年60万〜80万世帯にとどまる。これに対し、2006年までの4年間は、毎年120万〜130万世帯が形成されたという。

 また、米連邦準備理事会(FRB)によると、2001年以降、全年齢層が純資産の27%を失ったのに対し、35歳未満の層が失った純資産は3分の1以上に上った。

 現在の停滞した労働市場で稼ぎが減っているグジィヴァチュさんや仲間たちにとって、この遅れを取り戻すのは難しい。35歳未満の平均所得は2007年から2010年にかけて10.5%減少し、どの年齢層よりも高い落ち込みを見せた。

大きく落ち込む大卒者の所得

 大学の学位は今も高校の卒業証書よりも高い所得を約束してくれるが、FRBによると、大卒者の平均所得は2007年から2010年にかけて10%近く減少したのに対し、高卒者のそれは5%の減少にとどまった。

 米国の若者は自国経済における不安定な立場に気づいており、最近大学を卒業した人々を対象としたラトガース大学の調査では、自分たちの世代が1世代前より大きな経済的成功を収めると考えている人は16%だけだった。

 また、学生のほぼ半分がフルタイムの仕事に就いており、ローンを抱えている大卒者の40%が自動車や住宅などの大きな買い物を先延ばしにしていると答えた。

 景気回復が力強さを増すかどうかは、高水準の債務を背負い、債務で手に入れた教育を必要とする仕事での所得の低下に苦しむ世代の運命と密接に絡み合っているわけだ。

 グジィヴァチュさんのローン返済は、もうすぐ6カ月間の猶予期間が終わり、生活が一段と苦しくなる。

 「今の段階で学生ローンの返済が加わると、極めて厳しい状況になる」とグジィヴァチュさんは言う。「もちろん、自分が債務を抱えることになり、返済に何年もかかることは分かっていました。けれど、それが分かっていることと、5年後になって実際にその債務と直面することはまるで違う」

By Shannon Bond
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35793



欧州経済を下支えしてきた
中国人の贅沢品購入に変調
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 中国人にとっての「文化的で歴史的な遺産がある国」の第1位は英国だという。そういった印象にロンドンオリンピックが加わったため、中国から英国への観光客は一段と増加している。

 英「インディペンデント」紙は、ロンドンでブランド品を派手に購入する中国人観光客の近年の様子について驚きを込めて報じていた。欧州大陸からの観光客の財布の紐は固くなっているだけに、ロンドンの小売業界の中国人観光客に対する思いは強い。キャメロン英首相が駐英中国大使に「中国人観光客をもっと増やすにはどうしたらよいか?」とアドバイスを求めたところ、大使はブランド品のアウトレットモールをたくさん建設するべきだと助言したという。

 とはいえ、さすがに最近は、中国の経済成長率鈍化により、富裕層のブランド品需要に変調が起きている。英バーバリーグループのアジア・太平洋地区での小売り・卸売りの売上高は同社の4割弱を占め、その中でも特に中国の比率が大きい。昨年第1四半期のアジア・太平洋地区の売上高は、なんと前年同期比+62%だったが、今年の同期は+20%に鈍化した。

 中国国家統計局と大手仏系証券の共同調査によると、宝飾品の販売額は昨年第1四半期は前年同期比+59%だったが、今年第1四半期は+20%だった。上海の高級ショッピング街である南京西路では、欧州系ブランドのバッグ等が3〜5割引きで売られているという。

 高級車販売も減速気味だ。独アウディの今年4〜5月の中国での販売台数は、この経済環境下でありながら、いずれも前年同月比+44%という驚異的な伸びを記録した。しかし、6月は+20%に落ちている。

次のページ>> まだ「バブル崩壊」と結論付けるほどの明確な悪化には至らず

 スイス製高級腕時計に対する需要も減速している。スイスから中国本土への6月の時計の輸出額は前年同月比▲23%だった。もっとも昨年6月は+79%というすさまじい増加だったので、今年はその反動が表れたといえる(すべての時計ブランドが失速したわけではなく、オメガ、ロンジンなどを擁するスウォッチグループの4〜6月期業績は市場予想を上回るものだった)。

 また、前述のバーバリー、宝飾品、アウディのセールスは鈍化したとはいえ、前年比+20%程度の伸びを維持している。まだ「バブル崩壊」と結論付けるほどの明確な悪化には至っていない。ただし、これまでの中国人による欧州製ラグジュアリー商品の大規模な購入は、欧州経済を実は下支えしてきた面があるため、今後の中国人の贅沢品購入の変化には関心を向けていく必要がある。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)
http://diamond.jp/articles/-/22353

藤戸則弘(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジスト)

中国経済減速と自動車販売減

顕在化すれば株価下落の公算

 日本の景気は、「緩やかな回復傾向を持続する」との見通しが一般的だ。民間エコノミスト40人のコンセンサスであるESPフォーキャスト(7月調査)では、2012年度の実質GDP成長率が前年度比2.3%と予測されている。

 しかし、注意を要するのは、夏以降に外需が急速に鈍化する可能性があることだ。欧州では、スペインをはじめとする重債務国の景気後退が深刻化している。バレンシア、カタルーニャといったスペインの自治州政府が、中央政府へ財政支援を要請するとの報道もあり、債務問題は連鎖的な拡大を続けている。

 IMF(国際通貨基金)は、ユーロ圏の成長率見通しを、12年▲0.3%、13年▲0.7%と予測している。債務削減のための緊縮予算・歳出削減は、欧州の景気後退を長期化させる可能性が高い。円の対ユーロ相場も、2000年以来のユーロ安水準に沈んでいる。

 欧州の景気後退は、対EU(欧州連合)輸出が全輸出の約2割を占めている中国にも波及している。4〜6月期の実質GDP成長率は前年同期比 7.6%に落ち込んだ上に、先行きも不安視されている。6月の中国貿易統計では、輸入の前年比が事前予測の11%増に対してわずか6.3%増にとどまっ た。

次のページ>> 堅調な内需でも自動車販売の先行きには注意が必要

世界の需要の源であった中国経済の減速は、貿易を通じて各国に伝播する。日本の対中国輸出も全体の約2割を占め、日本の外需へのインパクトは大き い。工作機械受注は急速に落ち込んでいる。特に6月統計では外需が前年同月比15.2%減と09年以来の2桁のマイナスとなった。工作機械以外にも、建 機、油圧機器、ベアリング、鉄鋼、非鉄金属、海運などの企業の業績にまで、マイナスの影響が及ぶだろう。

 一方、堅調な内需でも自動車販売の先行きには注意が必要だ。現在実施されているエコカー補助金は、ほぼこの7月で底を突いてしまう。過去の販売実績を見てもわかるように、エコカー補助金による「需要の先食い」とその後の「反動減」は明白である。

 地上デジタル放送移行を境として、薄型テレビの販売は極端な増減を見せた。裾野の広い自動車産業の鈍化は、内需の懸念要因である。日経平均株価は8000円台の展開が続いている。外需鈍化、自動車販売下振れ、補正予算効果剥落などが顕在化した場合には、6月安値を割り込む可能性が出てくる。

(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジスト 藤戸則弘)
http://diamond.jp/articles/-/22354?page=2


中国経済:変調の兆しは朗報か
(英エコノミスト誌 2012年7月28日号)

中国の不動産価格と地方政府の債務は再び上向き始めている。もしかしたら、それは良いことかもしれない。

北京三環路の内側に位置する、高層ビルが立ち並ぶ方庄は、中国で最初に行われた商業住宅開発計画の1つだ。方庄の4つの区画は、公園、学校、裁判所、スーパーマーケットのカルフールを共有している。4区画の名前の文字を合わせると、古代世界の星々を意味する「古城郡星」になる。

 スイスの銀行クレディ・スイスによると、1990年当時、方庄の共同住宅は1平方メートル当たり約1500元(現在の為替レートで234ドル)で売られていた。その後、住宅価格は現代世界の星々に手を伸ばすように高くなり、北京のこの地域では3万元を超えた。

 やはりスイスの銀行であるUBSに在籍していたジョナサン・アンダーソン氏はかつて、手に負えない中国の不動産市場のことを「世界経済全体で最も重要なセクター」と呼んだことがある。大げさな表現だが、当時としては仕方のないことだった。

不動産市場と地方政府債務という2つの不安

 不動産市場は今も、世界第2位の経済大国を覆う最大の不安要因だ。中国の住宅価格は約1年前に下落し始めた。価格の下落は投資を減少させ、経済成長を抑制した。第2四半期には、成長率が2009年以来最も低い7.6%まで減速した。

 不動産と肩を並べる唯一の経済的な不安は、地方政府の債務だ。中国国家審計署(会計検査院に相当)は、2010年末時点の債務額を10兆7000億元と見積もっており(民間の試算はそれよりずっと多い)、債務の多くは、地方政府が直接抱えるのではなく、いわゆる地方政府の資金調達機関が抱えていた。

 そうした機関の1つである雲南省公路開発投資が2011年に借入金の元本を返済できないことを債権者に伝えた時、ニュース専門ウェブサイト「ビジネスインサイダー」はこれを(同じように大げさに)「世界中に響き渡るデフォルト(債務不履行)」と評した。

 どちらの懸念も、中国が2008年11月に始めた景気刺激策に起因している。国有企業は熱心に土地の競売に入札し始め、地方政府は長年大事にしてきたプロジェクトが野放図に膨れ上がるのを許した。

 それ以来ずっと、この2つの問題は中国の中央政府の心から離れない。中央政府は2010年4月、投機的な住宅購入に歯止めをかけ、昨年は地方財政を立て直すことに多くの時間を費やした。今春には温家宝首相が得意げに、地方政府の債務は2011年に3億元しか増加しなかったと話した。

 だが、ここへきて、不動産価格と地方政府の借り入れが再び上向いていることを示す兆候が増えている。中国国家統計局(NBS)は、調査対象にする70都市のうち25都市で、6月に新築住宅価格が上昇したと報告している。住宅価格が下落したのは21都市にとどまる。販売戸数も増えている。


 平均すると、価格はまだ1年前より低い。だが、NBSが報告した(新築および中古)住宅価格を加重平均した本誌(英エコノミスト)のデータでは、下落率は底入れしているように見える(図参照)。
 8月には(比較対象となる数字が低いため)、価格が前年比で再び上昇に転じるかもしれない。
 一方、地方政府は、「債務者の監獄」から釈放されている。複数の報告によれば、中国の金融当局は銀行に対して、「適格性の高い」資金調達機関への貸し出しを増やすよう伝えているようだ。
 これらの機関は債券発行も増やしており、今年に入ってから既に4200億元を超える額の債券を発行した。
 これら2つの転換は朗報かもしれない。すなわち、不動産価格が安定し、地方政府が信用力を回復した兆候だ。だが、その一方で、中央政府が必死になっている兆候、つまり、成長率の低下に直面して怖気づいた証拠である可能性もある。
政府の借り入れ増加は景気減速への妥当な対応
 地方政府の借り入れ増加はその中間を取ったようなもので、気掛かりな景気減速に対する妥当な反応と言える。
 中国経済は確かに助けを必要としており、政府には支援を与える余力が十分にある。地方政府の中には、手に負えないほど多くの債務を抱え込んだところもあるが、こうした地方政府の債務が国全体の財政状態を危険にさらしたことは一度もない。
 中央政府と地方政府の債務を合わせても、中国の国内総生産(GDP)の約50%だ(政府指導の融資を実行するために鉄道部や政策銀行が発行した債券を含む)。
 地方債務が過小評価されているとしても、中国の財政には失敗する余裕がある。中国の投資銀行、中国国際金融(CICC)のチーフエコノミスト、彭文生氏は、今後は地方政府も借り入れを減らすだろうし、過去に景気刺激策を行った時よりうまく投資するだろう、と言う。「2008年11月当時と比べると、今は緩和政策を求める圧力がはるかに少ない」
 不動産市場の回復は、もう少し解釈が難しい。市場回復は、政府の政策を読み違えたことも反映しているかもしれない。地方政府の中には、建設関連の雇用と土地売買(それゆえ地方政府の歳入)を回復させることを期待して、密かに不動産規制を緩和しているところもある。
 中央政府も、初めて住宅を購入する人を後押ししたがっている。だが、中央政府は、複数の住宅を購入する人、特に他の地域からやって来た人に対する既存の規制は厳格に実施すると主張している。中国の内閣である国務院は先日、規制が後戻りしないように16都市に検査官を派遣すると述べた。
 それでも大半の都市では、規制をすり抜けるのはかつてないほど容易だ、とクレディ・スイスのチンソン・ドゥー氏は言う。ドゥー氏は、共同住宅が1戸300万ドルで売られた、注目を集めた上海のある売り出しを引き合いに出す。現地の不動産業者でさえ、ほとんどの購入者が既に他の物件をいくつか所有していると認めていた。
米国や日本とは異なる中国の不動産事情
 だが、中国の不動産市場が破裂したバブルなのであれば、間違いなく、規制をそのまま緩和してもバブルを再び膨らませることにはならないのではないか? 何しろ、米国の不動産価格が本格的に下落し始めてから、政策立案者たちは価格を回復させようと何年も努力したが駄目だった。日本は20年以上にわたって、不動産価格を上向かせようとしてきた。
 しかし、中国の不動産の力学は、米国や日本とは違うかもしれない。多くの資産バブルでは、資産を購入するために多額の借り入れを行う強欲な投資家によって価格が押し上げられる。債権者が神経質になると、投資家はデフォルト(債務不履行)したり、資産を投げ売りしたりする。こうした安売りは、急激に自己増殖していく。
 だが、中国の不動産購入者は、自分の貯蓄を置いておく場所を探している裕福な個人や企業であることが多い。もちろん彼らも不動産を投資として見ている。だが、必ずしも価格が天井知らずに上昇することを期待しているわけではない。
 長期的にインフレを上回る見込みさえ示してやれば、彼らは不動産を購入する。結局、中国には不動産以外の選択肢がほとんど存在しないのだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35790  

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