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マネー・金融 金融市場異論百出
【第236回】 2012年7月25日加藤 出 [東短リサーチ取締役]
日米が追加緩和に慎重姿勢 BISが警告する四つの弊害
7月12日の金融政策決定会合で、日銀は資金供給オペの札割れ対策は発表したものの、追加緩和策には踏み込まなかった。バーナンキFRB議長は7月17日の米議会証言で、労働市場の停滞やデフレリスクが顕在化した場合の四つの追加緩和策を提示したものの、今はその導入に慎重な態度を示した。
株式市場や外為市場は日米の中央銀行のそういった態度に失望を表した。しかし、彼らが追加策に躊躇しているのには理由がある。異例の金融緩和策には副作用というコストがつきまとうからだ。
先日発表されたBIS(国際決済銀行)の年次報告書は、まさに同様の問題に多くのページを割き、異例の緩和政策のリスクに強い口調で“警告”を発していた。そのリスクは次のように整理できる。
第1に、長期化する異例の金融緩和状態は、「問題を隠蔽し、それらを解決しようとする動機を殺いでしまう」。超低金利環境は、銀行が不良債権を抱え続けることの機会費用を小さくする。それ故、米国では銀行が不良債権の引き当てに積極的になれず、それらを抱えているために、家計向けの新規の貸し出しは減少しているとBISは指摘している。中央銀行が国債を大量に購入して国債の発行金利を低下させると、政府債務に対する議会の危機意識が高まらないという問題もある。
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第2に、「金融緩和は長期化すると銀行の収益をむしばむ」。短期金利がゼロ%に近づき、かつ長期金利が低下して金利曲線が平坦化した状態が続くと、銀行は十分な利鞘を得られなくなる。欧米でもその問題は顕在化しているが、日本はより深刻だろう。今の長期金利の水準が続いて収益が悪化すると、やがて多くの金融機関が中小企業に貸し出しを行う体力がなくなる恐れがある。また、超低金利環境の継続は、1990年代後半から2000年代初期の日本で保険会社の破綻が相次いだように、機関投資家に深刻な打撃をもたらす。それは結局は家計部門の負担になる、とBISは述べている。
第3に、超低金利環境で収益が悪化して追い詰められた金融機関や機関投資家の中には、「過剰なリスクテーク」を行うところが出てくる恐れがある。そういう行動は、次の金融危機につながるリスクの構築になる可能性がある。第4に、ゼロ金利や大規模資産購入策の長期化は、「金融市場に歪みをもたらす」。それは将来の出口政策を困難にする恐れもある。
BISは04年ごろから、先進国の金融緩和策がバブルを発生させている危険性を適切に指摘してきただけに、上記の“警告”は傾聴に値すると思われる。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)
http://diamond.jp/articles/-/21997
欧州の安全網「ESM」稼働せず
危機対応能力にさらなる不安
欧州がまたもや市場の期待を裏切った。7月から稼働する予定だった新たな安全網、欧州安定メカニズム(ESM)がいまだ発足できずにいるのである。
他国の批准も7月18日時点で18カ国中10カ国と遅れている。写真は7月10日に行われたドイツ憲法裁判所の意見聴取の様子
Photo:REUTERS/AFLO
ESMは、暫定的な救済基金である欧州金融安定基金(EFSF)に代わる恒久的な制度だが、発足には出資比率で9割の国の批准が必要だ。ところが、出資比率の3割近くを占めるドイツが批准できないでいる。6月29日に議会承認まではこぎ着け、大統領の署名を待つばかりだったが、野党や学識経験者などが、他国を救うために税金を投入する権限は議会に与えられていないとして提訴。憲法裁判所が合憲か否か審議する事態となり、その発表は9月12日に持ち越された。
影響の大きさに鑑みて違憲判決が下される可能性は低いとみられているものの、ESM稼働は9月中旬となる見込みだ。それまで利用可能な安全網は、EFSFのみとなる。EFSFの融資可能額は、スペインの銀行への支援1000億ユーロを除くと約1500億ユーロ。スペインが銀行支援のみならず、財政支援を要する事態となった場合、今後1年間で必要な額は1350億ユーロ程度とみられており、ほぼ枯渇してしまう。
そもそも、ESMが発足したとしても、その規模は心もとない。ESMの融資可能額は各国による資本の払込額に連動するため、計画では2012年中で1000億ユーロ、14年で5000億ユーロである。国際通貨基金(IMF)による支援を合わせても、新規融資能力は7500億〜1兆ユーロ程度だ。一方で、アイルランドとポルトガルに追加支援が必要となり、さらにもしスペイン、イタリアも全面的な支援が必要になれば、その額は3年間で1兆ユーロを超えると目される。
「欧州の債務危機を収束させるには、安全網の大幅な拡充が必須」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長)だ。市場を安心させるには、2兆〜3兆ユーロの規模が必要というのが、多くの専門家の見方である。
次のページ>> ESMとEFSFの支援決定方式の違いが問題との指摘も
ESMの融資可能額1000億ユーロが増えるのが2カ月遅れたところで、大勢に影響はないとの見方もできるが、「どのみち不十分なものが、さらに不十分になった」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)のは間違いない。また、ESMとEFSFの支援決定方式の違いが問題との指摘もある。多数決方式の前者に対し、後者は全会一致での合意が必要であり、「フィンランドなどの小国の反対が障害となる可能性がある」(中村正嗣・みずほ総合研究所シニアエコノミスト)ためだ。
6月末の首脳会議で今後の対応策を打ち出した欧州諸国だが、その実現には時間がかかる。それまでの時間を稼ぐための安全網が十分に機能しなければ、すべては「絵に描いた餅」に終わるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)
http://diamond.jp/articles/-/21986
貸金業法“再改正”が最終局面へ
民主党PTでは弁護士が巻き返し
再改正でも一枚岩となれない民主党では、最終的な調整が進む
Photo:PANA
改正貸金業法の再改正をめぐる議論が、大詰めを迎えている。
民主党の改正貸金業法検討ワーキングチームは今月、再改正に向けた中間提言をまとめた。上限金利は「現行水準を当面維持」とする一方、中小・零細事業者に限り、金利を引き上げる方針を示した。
また、年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する総量規制は「廃止を含めた検討を行う」と、トーンこそ弱めだが、5月に出された自民党案と方向性は同じだ。
背景には、改正の結果、個人事業主らが借り入れできないケースが続出し、表に出ないヤミ金の跋扈を招いたという指摘がある。東京情報大学の堂下浩教授の調査では、2008年5月〜11年7月、ヤミ金の推定被害者数は46万人から58万人に増加し、大阪府の調査でも10〜11年で、ヤミ金の相談件数が3倍に増加している。
だが、この中間提言は民主党の総意ではなく、切り崩しに再改正反対派の団体も躍起になっている。
「歯がゆい思いをしてきた。連合(日本労働組合総連合会)も協力してくれるので、この改悪を防ぎたい」──。
今月6日、再改正反対派議員が座長を務める民主党消費者問題プロジェクトチーム(PT)の会合。毎回のようにオブザーバー参加するという日弁連消費者問題対策副委員長の弁護士が、こう発言した。
日弁連の言い分は、多重債務者の救済だ。一方、「これまでの過払い金訴訟で、弁護士の懐には数千億から1兆円のカネが入ったとみられる」と再改正賛成派の関係者たちはやゆする。
改正貸金業法の完全施行からわずか2年。中間提言は今後、党内の座長会議にかけられるが、帰結は不透明だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)
http://diamond.jp/articles/-/21992
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