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ウォール街に挑むカリフォルニア州の破綻自治体 金融界を立て直す7つの処方箋
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/138.html
投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 24 日 07:57:20: cT5Wxjlo3Xe3.
 

Financial Times
ウォール街に挑むカリフォルニア州の破綻自治体
近視眼的な連邦政府に歓迎すべき揺さぶり
2012.07.24(火)

(2012年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

今ウォール街に広がる空気として不確実性に匹敵するのが悲観論だ。米国経済の成長予測が引き下げられているだけでなく、米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長は7月半ば、状況を好転させるためにFRBに何か手を打てるかについて、諦めとも取れるような発言を行った。

 金利がこれほど低い――30年の住宅ローンでわずか3.7%――と、あと数ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下がったところで、大勢は変わらない。

 議会がさらなる刺激策を断固として拒否し、輸出の成長が先細りになっているために、米国の次の経済回復局面が何によってもたらされるか見えてこない。専門家がはっきりしない先行きを見通そうとしても、麻痺状態しか見えない。

住宅ローンを強制的に買い上げ、再編へ


サンバーナーディーノ市などでは大量の住宅差し押さえで地域社会が崩壊した〔AFPBB News〕

 だからこそ、サンバーナーディーノ市とストックトン市というカリフォルニア州の破綻した市は、連邦政府の消極姿勢に活を入れる揺さぶりをかけたことになる。

 オバマ政権は住宅の差し押さえ危機を緩和する手だてをほとんど打てなかったのに対し、この2つの市は最近、「アンダーウォーター」状態の住宅(つまり、評価額がローン金額を下回っている住宅)のローンを強制的に取得する計画を発表した。

 両市が破綻に追い込まれた主な理由は大量の差し押さえで、これが地域社会を崩壊させ、経済活動を停止させた。銀行が住宅ローンの再交渉に応じたがらないことに絶望した両市は、住宅ローンを強制的に買い上げて再編する計画を立てている。

 控えめに述べても、そのような手段は過激だろう。自治体の収用権を発動して強制的に買い上げるというのは、通常、道路や空港など公共の用途のために民間の土地を取得する場合に使われる手法だ。民間のローンに対して使われたことは一度もない。

 過去にバラク・オバマ大統領によるはるかに穏健な努力をいともたやすく潰したことを考ると、カリフォルニアの2つの停滞地域による挑戦に、ウォール街が好意的な態度を示すとは思えない。

 ウォール街は既に厳しい対応に出ている。強力なロビー団体である米国証券業金融市場協会(SIFMA)は7月中旬、この「定量化不能の新しいリスク」と法廷で戦うつもりであると述べた。

 さらに、業界を挙げて、そのような計画を進める市の居住者に新しい住宅ローンを提供することを拒否するボイコット運動をすると圧力をかけた。カリフォルニア州外の複数の都市も、収用権によるローンの買い上げを検討しているとの報道がある。

 強制的な再編は、ウォール街にとっては、越えてはならない一線かもしれない。しかし、ワシントンでは、新たな発想がほとんど見当たらないのが現状だ。

まだ不振が続く米国経済

 米国の成長は急激に減速しており、2013年に再び景気が後退局面に陥るリスクが高まっている。住宅市場は底を打ったと言われているが、住宅価格は今でもピーク時の3分の2しかなく、アンダーウォーター状態の物件は1100万件以上ある。

 住宅部門の下落に歯止めがかかったとしても、差し押さえ危機が解決しない限り、この部門が米国経済を大きく押し上げることはないだろう。

 米国の世論形成者たちは、バランスシート不況から抜け出すには時間がかかることを、ある程度抽象的なレベルでは理解している。経済学者のケネス・ロゴフ氏とカーメン・ラインハート氏によると、平均5年から7年かかるという。

 しかし、それでもやはり、そうではないと示唆するものなら何にでも飛びつく。住宅市場などで回復の兆しが少しでも見られると、それが強調される。逆の傾向を指し示すもの、例えば3カ月連続で下落した小売売上高や失速した新規雇用などは、例外事例とされる。

 極端な楽天家でも、米国がこれまでにないタイプの景気後退に取り組んでいることに気づいているかもしれない。しかし、明らかに、それを体感してはいない。

 原因はデータの不足ではない。リチャード・ベイグ氏とスティーブン・クレモンズ氏がつい最近発表した論文によると、米国の経済見通しはあと数年間は悲惨なものになりそうだ。民間債務と公的債務を合わせると、国内総生産(GDP)の約250%に達し、日本以外のどの先進国よりも高い。

 米国は他の経済圏に先駆けてデレバレッジ(負債圧縮)を推し進めてきた。しかし、成長予測指標としては公的債務よりも優れている民間債務は、GDPに対する割合が今でも欧州のどの国よりも高い。

 今回の景気後退に匹敵する20世紀の不況は、1930年代の米国と1990年以降の日本の2回しかないが、ベイグ氏とクレモンズ氏は、この2つの不況を研究する中で、現在の米国が危機を脱しようとしている兆候はほとんどないと考えている。

オバマ政権にできなかったことを成し遂げられるか?

 以上述べてきたことすべてから見て、カリフォルニア州の反逆は真に重要な意味を持つ。ウォール街に一矢報いるという、オバマ大統領が失敗した試みに成功するかもしれない。

 2009年、当時の上院銀行委員会の委員長だった民主党のクリストファー・ドッド議員は、判事の判断で居住用の住宅ローンを「圧縮」できるようにする法案に対してホワイトハウスが「曖昧な態度」を取ったことに不満を述べた。

 オバマ大統領は法案が廃案になることを認めた。オバマ政権は銀行が住宅ローンの再交渉に応じるよう促す提案も、本腰を入れて支持しなかった。ホワイトハウスにしろ、銀行にしろ、借り手自身にしろ、無気力が、米国経済の回復に対する大きな障害を取り除こうとする努力を妨げてきた。回復がいまだに緩慢なことも何ら不思議ではない。

 カリフォルニア州の反逆は、政治を揺るがす可能性も持つ。ほとんどの米国民は、オバマ政権はウォール街を救済したが、地方都市の商店街は放置したと考えている。ところがウォール街では、オバマ大統領に良くしてもらったと感謝する気配はほとんど見られない。奇妙なことに、ウォール街の経営陣の中には、オバマ大統領に裏切られたと考える者もいる。

 金融業界からの献金者を見ると、ミット・ロムニー氏はオバマ大統領の3倍の資金を集めている。諺にもある通り、良いことをすると必ず罰を受けるのだ。

 しかし、破綻ほど注意を引きつけるものはない。ノースカロライナ州選出のブラッド・ミラー下院議員は7月中旬、ウォール街の影響力もストックトンのような土地では有効に働かないかもしれないと述べた。「戦略核兵器が反乱と戦うのに役に立たないのと同様、ワシントンにおけるウォール街の権力もサンバーナーディーノでの提案を打ち破る役には立たないだろう」

 停滞の時代にあっては、どこかの政治家が、それでも事態をかき回そうとするのは良いことだ。

By Edward Luce
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35728

金融界を立て直す7つの処方箋

2012年7月24日(火)  FINANCIAL TIMES

LIBOR不正操作の発覚で、銀行への信用は地に落ちた。銀行を改革するには、不正は起こるという現実的な前提から出発する必要がある。透明性を高め、レバレッジ率を下げ、リテール・リングフェンスを適用すべきだ。


7月9日、LIBOR不正操作を巡り英議会で証言したイングランド銀行副総裁のポール・タッカー氏(写真:ロイター/アフロ)
 銀行界の名声は、国際的な基準金利である「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)」の不正操作を巡るスキャンダルでとどめを刺されたと言ってよい。

 深刻な金融危機と次から次へと数々のスキャンダルを起こした銀行は、今や小悪党どもが暴利をむさぼる、ものの役に立たない組織だと見られている。イングランド銀行のポール・タッカー副総裁が「まるで汚水槽」と表現した銀行業界のこうした体質に、嫌悪感を覚えるのは至極、当然だ。だが、嫌悪だけで改革を進めてはならない。

 では、どうすればいいのか。私は、以下の7つを提案したい。

不正は起こると心得るべし

 まず第1に、不正は起こるものだと認めることだ。巨額のカネが絡む場合はなおさらだ。国民が激しく反発するのはいい。銀行経営者も無頓着ではいられなくなるからだ。だが、我々は現実的になる必要がある。銀行家は利益のためにこのようなことをしているのであり、好むと好まざるとにかかわらず、今後もそれは変わらない。

 第2に、こうした醜聞の再発を抑える方法は複数ある。罰を重くするのも1つの方法だし、透明性を高めるというやり方もある。

 LIBORを決めるに当たっては(編集部注:各大手銀行が自主申告する金利を基に弾き出す現在の方法ではなく)、実際の取引金利のデータに基づいて算出する方法を議論する必要がある。銀行が抱えるすべての問題が透明性の確保で解決するわけではないが、助けにはなるだろう。

 第3に、銀行は自己資本比率を大きく引き上げる必要がある。LIBOR操作事件についてもこれは言える。

 2008年10月に相対的に高いLIBORの報告を受けた規制当局も、銀行が破綻の危機に瀕していると考えていなかったら、あれほどの懸念は抱かなかっただろう*1。この懸念に対する答えは、資本を増やすことだ。

 イングランド銀行に新設された「金融システム政策委員会」*2の委員であるロバート・ジェンキンズ氏も、最近の素晴らしい講演の中でそのことを論じている。

*1=ボブ・ダイヤモンドCEO(最高経営責任者、2012年7月3日に辞任)に「金利が他行より目立って高い」と電話で懸念を伝えたことが、LIBORを不正操作する一因となったとの見方が広がっている

*2=英国の金融サービス全般を監督する機関、金融サービス機構(FSA)を廃止して、イングランド銀行の権限を強化する目的でデービッド・キャメロン内閣によって設立された委員会で、英中銀金融政策委員会(Monetary Policy Committee)とは異なる

レバレッジ率の大幅圧縮は不可欠

 第4に、自己資本を増やすといっても、100%にすることはあり得ない。米ボストン大学のローレンス・コトリコフ教授は「限られた目的だけのための銀行(limited purpose banking)」を提唱するが、このやり方は銀行をなくせと言っているに等しい。

 現在公式に提案されているレバレッジ率は33倍だが、これがあまりにも高いという意見は理解できる。だが、レバレッジ率をゼロにするという対応が正しい答えとも思えない。絶対に間違いが起こらない組織となると、それはそれで安全率としては高すぎるレベルになってしまう。

 第5に、自己資本の要件を設定するに当たり、いわゆる「リスクを勘案した資産」の評価については銀行も規制当局も自分たちに都合よく解釈できるし、実際、そうするだろうということを認識しておくことが不可欠だ。

 世界銀行元理事のペル・クロウスキー氏が繰り返し思い出させてくれるように、「危機は、低いと思われていたリスクが非常に高いと分かった時に発生する」。それゆえ、リスク評価されていないレバレッジが問題になるわけだ。レバレッジ率は大幅に引き下げる必要がある。

投資銀行部門からリテールを守れ

 第6に、私も委員として加わっていた英独立銀行委員会(ICB)の勧告*3をすべて実施する必要性は今やさらに高まっている。特に銀行に問題が生じた場合、破綻処理しやすくすることが重要だ。サービスの継続が不可欠なリテール銀行を投資銀行部門の影響を受けないように守るべく、「リングフェンス」*4することで、処理は容易になる。

*3=2010年6月に英国の銀行規制の枠組みを見直すべく設置され、昨年9月に最終報告書を公表した

*4=ICBが提案している銀行改革案で、預金・貸出業務といった伝統的な商業銀行業務を投資銀行業務のリスクから守るべく、別会社化することで、銀行の安定的な基盤構築を図ろうという案

 金融グループは、個々の企業としてもグループ全体としても、ほぼどんな状況に至っても確実に支払い能力を保てるだけの十分な自己資本と、破綻の瀬戸際に至った時には損失を吸収して処理できる財務体質を持つことが重要だ。要するに、銀行は常に、十分余裕のある安全率を確保しておくことが必要ということだ。

 リテール銀行を「投資銀行部門の影響を受けないように守る」というのは、投資銀行部門の短期的な取引で儲けるといった文化面の悪影響をも抑えることを意味する。この点で英政府は、リテール銀行に「単純なデリバティブ(金融派生商品)」の提供を認めた判断を再考すべきだろう。もっとも、デリバティブに対応するだけで問題がすべて解決すると思ったら大間違いだ。

 実際、英国が今、考えなければならない問題はむしろ、この低金利の中でリテール銀行の健全な事業モデルは存在するのかということだ。

 リテール銀行にも苦いスキャンダルの歴史がある。借り入れが限度額を超えた際の過重な課金や、返済保障保険(PPI)の不適切な販売などだ。この歴史は、銀行サービスを提供するためのコストを利用者に健全に課金してこなかったことの表れだと、私は考える。

 最後に第7の提案として、リテール銀行と投資銀行を完全分離するという議論について指摘しておきたい。(編集部注:金融危機の再発防止や投資銀行部門の影響を防ぐために)投資銀行とリテール銀行の活動を切り離すべきだとの主張が、今回のスキャンダルで説得性を増したとは思わない。

 リテール銀行にも適切な規模の自己資本が必要だからだ。リテール銀行にもリスクがあることを忘れてはならない。

完全分離より子会社化が適切

 多角化した金融グループなら、危機に陥ったグループ企業を救済することができる。現在提案されているリングフェンス(子会社化する)方式なら完全分離で得られる結果をそのまま実現するとともに、巨大金融グループの多角化の利点を維持できる。

 分離すると、投資銀行にとっては、自己資本の要件が厳しくなり、投資銀行部門が運用に使える預金ベースが失われ、「補助金」とも言える運用益も失うわけで、資金調達コストは当然上がるだろう。だがそれは健全なことだ。銀行家が得る報酬が、後順位の債権者の利益に近づけば、いずれ無責任なリスクテークは減っていくはずだ。

 このところの相次ぐスキャンダルで一般国民が怒るのは理解できる。だが、怒りをもって政策を決めることは間違いなく危険である。

 地域の銀行幹部が医師と同じくらい尊敬されていた時代は去って久しい。銀行家を聖人扱いする日は二度と来ないだろう。それでも銀行で働く人々のインセンティブや、銀行業の構造、規制の重点を変えていくことはできる。

 私なら、レバレッジ率を大幅に下げ、透明性を大きく高める道を取る。特に、国が投資銀行を支えるという考えを排除するためには全力を尽くすだろう。これは正気の考えではない。リテール銀行部門と投資銀行部門を分けるべきだとする理由の1つはそこにある。

 奇跡を期待することはできない。だが、銀行で働く人々を今より有用で、危険の少ないものにすることはできる。そのことに集中すべきではないか。

Martin Wolf
(©Financial Times, Ltd. 2012 Jul. 12)

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FINANCIAL TIMES


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