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アフラックの“欺瞞”にメス
金融庁が前代未聞の長期検査
白いアヒルや招き猫ダックのCMでおなじみの外資系生命保険会社アフラック。業界ナンバーワンの保有契約件数を誇る同社に対し、異例ずくめの金融庁検査が行われたことで、保険金支払い体制のずさんさ、過度な営業姿勢、不透明な保険料の運用など、イメージと懸け離れた姿が浮かび上がってきた。
1983年にアフラック米国本社の社長に就任して以来、トップに君臨し続けているダニエル・P・エイモス会長兼最高経営責任者(上)。保険金支払い部門が入っているサウスゲートビル(左下)
Photo:JIJI
7月18日、前代未聞の長期にわたる金融庁検査がようやく終わりを告げた。
さかのぼること約5ヵ月、冷たい風が吹きすさぶ2月27日、コートに身を包んだ十数人の男たちが、東京・西新宿にそびえ立つ超高層ビルに吸い込まれていった。外資系生命保険会社アフラックに検査に入る金融庁の検査官たちだ。
検査チームのヘッドは、かつて保険金不払い問題の際に明治安田生命保険を業務停止に追い込んだ人物。厳しい姿勢で検査に臨むことから業界で恐れられている。
“検査の鬼”の主導の下で行われた今回のアフラックへの検査は、まさに異例ずくめだった。
まずは、検査に入る周期。生保の場合、おおむね3年超の周期で検査に入るが、今回は前回の検査から2年半しかたっていない。2月9日に検査予告がなされた際には、アフラック社内に衝撃が走ったという。
次に、検査期間。大半の検査は2〜3ヵ月で終わるが、今回は7月18日までかかり、実に5ヵ月近くに及んだ。「役所の事務年度の6月末を越えることはめったにない」(生保関係者)という。
一般的にクリーンなイメージがあるアフラックに、いったい何が起こっているのか。
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クレームで多数発覚した
ずさんな支払い体制
今回の検査で最大の問題とされたのが、保険金の支払いに対するずさんさだ。
保険金の支払いといえば、2005年以降、相次いで発覚した保険金不払い問題が想起される。支払うべき保険金を支払わなかったり、事務処理ミスで支払いが漏れたりする事案が多数発覚。生保に加え損害保険業界にも飛び火し、生損保合わせて3社が業務停止処分を受けた。その後、支払い体制の不備に対し、08年7月には生保10社に業務改善命令が下された。
実は、この業務改善命令に対し、金融庁に異議を唱えたのがアフラックだった。というのも、当時、アフラックはいち早く診断書を電子化するなど、支払い体制は進んでいるとの評価だったからだ。
ところが、である。業務改善命令の解除が目前に迫った11年12月、10年度の支払い漏れ件数の報告で突如、アフラックのずさんな支払い体制が浮かび上がった。契約者から保険金が少ないとクレームを受けて判明した支払い漏れ(外部発見)の件数が246件と、他社の10倍近いことが発覚したのだ。
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「300件を超えていれば、アフラックだけ解除しなかった」(金融庁)が、かろうじてアフラックも業務改善命令を解除された。その後も金融庁は生保各社に自主開示を求め、各社は11年度分を6月29日に開示(右図参照)。10社の外部発見の合計381件のうち、前回とさして変わらぬ223件、実に約6割がアフラックという惨憺たる結果が明らかとなった。
アフラック側は開示と同時に、保険金を支払った後に間違いがないかを検証する「支払い後検証」を11年10月から始めたと発表したが、「まだやっていなかったのか」と業界内で驚きの声が上がった。
他社が改善を進める一方、アフラックの支払い体制は、「他社の“数年遅れ”としか言いようがない」(金融庁幹部)ありさまにいつしかなっていた。
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このように、アフラックは保険金の支払い体制をなおざりにする一方で、新契約の獲得には躍起になっていると指摘される。
例えば、電話で保険の勧誘を行うテレマーケティングの多用だ。とりわけ、「契約獲得実績は高いが、筋が悪い」(生保関係者)と業界内で悪名高い専門業者を使って、営業をかけまくっているというのだ。
その業者は、東日本大震災の被災者にまで営業をかけたり、がんに罹患した人にがん保険の勧誘をしているというから、あきれるばかりである。代理店に対しても、「販売キャンペーンの案内ファクスを送ってくるばかりで、ろくな教育体制を敷いていない」(アフラック代理店)との声も上がる。
保険金支払いの体制整備にカネをかけるより、新契約の獲得に重きを置く“収益至上主義”が、今のアフラックの経営姿勢なのだ。
日本に主導権なし
米国本社の言いなり
この経営姿勢を決めているのは、実は米国本社だ。日本のアフラックは「支店」であるため、「現地法人」とは異なり、意思決定の権限がない。つまり、最終的な意思決定は米国本社が行っているのだ。とはいえ、アフラックの売り上げの7割以上が日本によるもので、しかも、日本の税引き後利益の約70%、多い年は100%を米国本社に送金している。そのカネで米国本社は自社株買いを行い、高額な配当を支払うことで、高い株価を維持するビジネスモデルなのだ。
加えて、金融庁が問題視しているのが、日本の契約者が支払った保険料の投資先である。
アフラックの運用は株式ではなく債券が中心だ。一見、安全に思えるが、その実態は危うい。欧州債務危機で信用不安に陥っている周縁諸国への投融資残高は4440億円(12年3月末)と突出しており、昨年9月末からほとんど減ってはいない(右表参照)。
次のページ>> 今やジャンク債と化した債券への投資残高も目立つ
また、投資金額上位の債券を見れば、目を疑うばかりだ(下表参照)。投資した時点では投資適格級だったとはいえ、今やジャンク債と化した債券への投資残高も目立つ。しかも、相対取引の私募債が多いため流動性は低い。
これらの運用についても米国本社が牛耳っており、金融庁の質問に対して日本の経営陣は明確に回答することができないという。
本来ならば、売り上げと利益の大半を稼ぐ日本が主導権を握るべきだろう。そのためには、現地法人にすべきだが、移行には莫大な事務コストがかかり、日本から米国本社に送金する際には税金がかかってしまう。これらの理由から、米国本社にはその気は一切ないという。
週刊ダイヤモンドはこうした諸問題に対し、日本の代表者である外池徹社長宛てに質問状を送ったが、アフラック側は回答を拒否。保有契約件数では日本生命保険をはるかに超える2100万件に及ぶ日本の契約者に、説明する気はないようだ。
これまでアフラックが日本で果たしてきた功績は少なくない。「がんによる経済的悲劇から人々を救いたい」との理念から日本で初めてがん保険を発売し、今や年間4400億円を超える保険金を支払うほどだ。数え切れないほどの人の役に立っている保険会社だからこそ、今まさに襟を正すことが求められている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
http://diamond.jp/articles/-/21873
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