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■米ドル全体の勢いが失われつつある
前回のコラムでは、「7月13日(金)にユーロ/米ドルの反発があってもおかしくなかろう」と書いたが、そのとおり、ユーロ/米ドルは7月13日(金)の安値から小幅ながら反発している。
【参考記事】
GMMAチャートで読み解く米ドル/円相場。中長期トレンドに重大な変化あり!!(7月13日、陳満咲杜)
ユーロ/米ドルは本稿執筆時点で、1.2260ドル前後に留まっており、7月13日(金)安値の1.2162ドルに比べ、微々たる値幅しか上がっていない。
しかし、注意していただきたいのは、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)が軒並み安値更新を続けている中にあっては、この微々たる値幅でも、ユーロ/米ドルの上昇は価値があるということだ。
言い換えれば、米ドル全体の勢いが失われつつあるのだ。
そうでなければ「最弱通貨」のユーロに対して、米ドルがさらに強くなり、ユーロ/米ドルが安値を更新していっても全然おかしくない。ユーロ/米ドルの安値保ち合いはそれなりに意味を持つと思われる。
■ユーロクロスの下げは一服するとみる
もっとも、 ユーロキャリートレードが起きている疑いもあり、ユーロクロスの下落は半端ではない。
【参考記事】
ユーロ/豪ドルが史上最安値を更新! ユーロキャリートレード開始のシグナルか(7月6日、陳満咲杜)
ユーロ/円以外、ユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドル、ユーロ/加ドル、ユーロ/英ポンドなど、ユーロクロスは暴落を重ねており、ユーロの「独歩安」が目立つ。
したがって、ユーロ/米ドルが安値を更新していないことは「大きな兆し」とみるべきであろう。
考えられるシナリオは以下の2つに集約できるのではないかと思う。
(1)ユーロ/米ドルの下げ止まりはドルインデックスのトップアウトを示唆
(2)ユーロ/米ドルの下げ止まりはユーロクロスのスピード調整(下落トレンドの一服)を示唆
筆者はこのような2つのシナリオは矛盾するどころか、関連しているとみる。
すなわち、「短期スパンにおけるユーロクロスの下げ一服をもって、中期スパンのドルインデックスの頭打ちを示唆」ということだ。
このような見方が正しければ、本日(7月20日)にも、まずはユーロクロスから変化が見られるのではないかと思う。
■欧米の大手金融機関も今年は夏休みを返上
勤勉で勉強家の日本人と違い、欧米の連中(南欧は一般的だが、米国はエリート層が中心)は夏休みをたっぷり取るから、例年なら「怠け者」の彼らは今、ビーチでのんびりしており、マーケットは閑散になりがちだ。
・・が、今年はいささか事情が違う。「怠け者」の彼らものんびり休みを取れない公算が大きい。 ウォール街からバリまで、大手金融機関は幹部やチーフトレーダーたちの休暇届けを厳しくチェックし、なかなか許可を下さないと聞く。
「夏場の呪い」に備える必要があるからだ
■マーケットにおける「大惨事」は夏場に発生しやすい
夏休みシーズンにおける薄商いの局面において、何らかの問題が発生すれば、マーケットは一方通行に振れやすいから、金融機関の幹部やチーフトレーダーたちがビーチにいるなら、状況がさらに悪化していくことも想像しやすいだろう。
実際、マーケットにおける「大惨事」は夏場に発生しやすい。
1998年にはロシア危機が起こり、それがノーベル賞経済学者が運営するLTCMの破綻を引き起こしたのが衝撃的だった。
そして、2007年のサブプライム問題によるモーゲージ証券やMMFマーケットの凍結、2008年のリーマンブラザーズ倒産の引き金となったファニー・メイ(Fannie Mae)の騒動といった夏場の「大惨事」は記憶に新しいところだ。
■2012年の夏ほど危ない材料が満ちている年はない
言うまでもないが、今年(2012年)ほど危ない材料が満ちている年はないかもしれない。下手をすると、以下の懸念材料は優秀な小学生にも挙げられるほどではないかと思うが、とりあえず列挙しておく。
(1)EU(欧州連合)ソブリン問題
EU問題は構造問題であるだけに、「時間稼ぎ」に過ぎない今の解決策では解決しない。スペインとイタリアが次のギリシャと言われるだけに、マーケットは戦々恐々だ。
(2)米国政治と債務問題
今年(2012年)の後半、米国では債務問題が再浮上してくるに違いない。債務上限の突破は時間の問題とされるだけに、米両党は早期に妥協しなければならない。が、選挙が白熱するにつれ、どちらかというと、それは難しくなるだろう。米国の財政事情が火の車であることが、再びマーケットを震撼とさせるかもしれない。
(3)LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に関するスキャンダル
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])が信頼を損ない、バークレイズCEOが辞職したに留まらず、欧米大手金融機関を軒並み巻き込んだこのスキャンダルは金融機関不信を一段と深め、流動性の低下を招き、危機を引き起こす恐れがある。ちなみに、刑事事件発展の可能性もあるこのスキャンダルが本当の衝撃を与えるのはこれからだ。
(4)中国のハードランディング
8%を割り込んだ成長率、他国にとっては羨望の的でも中国には赤信号だ。万が一、中国発の恐慌があれば、それこそ世界的な大恐慌になりかねない。
■意外と無風状態になるのでは?
最後に、やや意外かもしれないが、 ロンドンオリンピックも挙げておこう。ロンドン・シティの幹部やトレーダーたちが夏休みを犠牲にしても、交通渋滞で出勤できない恐れがあるから、一層混乱が深まる可能性がある。
このように、 2012年の夏場は警戒しなくてはならない危険がいっぱいだ。
・・こういった 懸念が大きければ大きいほど、欧米の連中も「日本人」並みの勤勉さを発揮してくれるので、「西部戦線異常なし」?(抜粋)
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