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(回答先: キャリートレードが円高要因に、日本の金融システムにも安心感 来週の外為はドル安バイアス強い、日本の貿易赤字膨らめば 投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 20 日 17:09:19)
2012年07月20日
世界的な金融緩和競争に背を向ける日銀、その深層は?
世界的な景気減速感を背景に、各国中銀の金融緩和スタンスが鮮明になってきました。米FRBは先月のFOMCでツイストオペの6か月延長を決定し、必要ならさらに債券を購入する用意があると言明。ECBは7月5日の理事会で8か月ぶりの利下げに踏み切り、英中銀も同日、資産買い入れ規模を500億ポンド拡大しました。一昨日公表されたMPC議事録によると、英中銀は利下げの可能性も検討しているようです。また豪州・ブラジルなど資源産出国や中国・韓国など新興工業国でも金融緩和が相次いでいます。
そんな金融緩和競争ムードが強まるなか、日銀は先週の金融政策決定会合で追加緩和を見送り、白川日銀総裁は会見で「各国の金融政策に機械的にリンクして政策運営することはない」と述べました。欧米に追随したサプライズ緩和を期待する向きも少なくなかったため、株式市場の反応は失望売り、為替市場では円高となり、ドル/円は今週1ドル78円台に突入しました。
日銀の論理では、「強力な金融緩和を推進しており、今後その効果はさらに強まっていく。現在はその効果を見極める段階にある」ということです。日銀はもともと非標準的金融政策の効果については懐疑的であり、安易な国債購入は財政規律の喪失や悪性インフレにつながるとの建前論を盾に量的緩和にも消極的スタンスです。また、このところ日銀短観が予想を上回り、地域経済報告(さくらリポート)で景気判断が2年9か月ぶりに引き上げられるなど景況感も改善しているため、緩和カードを切る必然性はないというわけです。
とはいえ、海外各国が積極的な金融緩和姿勢を強める中、日銀の相対的な緩和不足が鮮明となれば、為替市場で円高が進行し、株価が下落することは避けられません。またそれがもとで景気が再び失速すれば、日銀が金融緩和を怠ったとして非難の矢面に立たされることになります。日銀がそうしたリスクを承知していないはずはありませんが、あえて積極緩和を拒む頑迷な姿勢を貫いているのはなぜなのでしょうか?
それは、残り1年を切った白川日銀総裁の任期と関係がありそうです。「趣味は金融政策」と揶揄されるほど中央銀行を愛する白川総裁は来年4月に任期切れとなりますが、再任はないとの見方が優勢。福井前日銀総裁が退任した2008年3月、後任として武藤元副総裁らを起用する政府案が当時野党だった民主党の反対で潰され、当時副総裁だった白川氏が「総裁代行」として指名されたといういきさつがありました(翌4月に正式に総裁に指名)。つまり白川氏は満を持して登板したというより、当初は「つなぎ」の役回りだったのです。日銀としては、プロパーの白川総裁の後任には、政府の意向を受けた緩和積極派の人物(たとえば大蔵OBの武藤元副総裁)がやってくるかもしれないという憂鬱があります。
また先日の日銀審議委員人事では、金融緩和に批判的(デフレに肯定的)だったBNPパリバの河野龍太郎氏が参院で不同意となり、代わりに緩和積極派と見られる野村証券の木内登英氏とモルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕氏が決まりました。日銀は政治的な金融緩和圧力に徐々に外堀を埋められているのです。
こうした事情を考えると、日銀はいずれ政治的圧力や世論に抗しきれなくなり、積極緩和路線に転換せざるを得ないということを予期しているのではないか、そしてせめてそれまでは、日銀の良心ともいえる白川総裁のもとで、物価の番人としての矜持を保ちたいと考えているのではないか、と思えるのです。白川総裁の任期切れを機に、日銀は変わる、いや変わらざるを得ない。逆に言えば、それまでは日銀は重い腰を上げない可能性が高いのです。
コラム執筆:
雨夜 恒一郎 為替アナリスト
スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。
http://lounge.monex.co.jp/advance/kawase/2012/07/20.html
チーフ・エコノミスト 村上 尚己
Economic Report
2012/7/19
働けない若者を救うには
*現在日経新聞で、「働けない 若者の危機」という特集記事が連載されている。経済停滞の悪影響が最も及ぶのは、どこの国も新卒など若者の労働市場である。日本経済の稀に見る長期停滞が、若年世代の雇用問題をもたらすのは必然である。
*記事では様々な観点から、若年世代の労働問題を取り上げている。若年世代における失業率の高止まり、非正規雇用の増大、そして将来に対する若者の諦念の強まり、などが具体的事象としてあげられている。
*この中で、中高年世代の雇用と高い賃金が守られる代償として、若年世代の雇用(賃金)が犠牲を強いられる構図が頻繁に強調されている。伝統的な年功序列が厳然と残る日本のサラリーマン社会に身を置く人は、そうした現実に直面することは多いだろうから、分かり易い。筆者も、そうした経験があるので正直共感する部分もある。
*ただ、こうした観点で若者の雇用問題の解決策を考えるのは建設的だろうか?この視点だと、日本的雇用慣行に守られた中高年者と「椅子を奪い合う」構図で、若年世代が負けていることが問題になる。だから、それをもたらす日本的雇用慣行の変革などを通じて、中高年世代が雇用機会を後輩に譲ることを進め、それではじめて若者は苦境を脱することになる。
*こう考えると、日経新聞が解説するように、「それぞれの立場で痛みを受け入れつつ成長を目指すしかない」と、いかにも日本人受けしそうな「譲り合い」で事態改善を目指すことになる。ただ、譲り合いの精神は大事だが、こうした精神論は若者の雇用問題を抜本的に改善するとは思われない。
*結局、若者の雇用問題は、十分な雇用機会が長期間提供されていないため起きているからだ。経済学の世界では、GDP と失業率の間の「オークンの法則」という強い負の関係が知られているが、日本の経済成長率が十分でないから雇用不足が蔓延しているのである。経済成長率を高めることが、シンプルな雇用問題の答えである。
*日本において、どの程度の経済成長が必要で
目指すべきかには、色々な見方がある。ただ、
日本はデフレという稀な状況であるため、それ
を深く考える必要はない。幅広く認められるフ
ィリップスカーブで表される、失業率とインフ
レ率の負の関係をみれば、通常の国の様にイン
フレ率がプラスに転じれば、失業率が下がる余
地が大きいことは明確である(グラフ参照)。
インフレ時代
*つまり、脱デフレが実現すれば、効果が定かではない制度改革が実現するかどうかに関わらず、経済の正常化に伴い、企業は人材を確保する為に、減らし続けている正規雇用を自然に増やすようになる。
*若者の雇用問題の解決には、「世代間の譲り合い」という精神論に訴えたり、「年功序列制など雇用制度の欠陥」を槍玉に上げることは、期待薄である。デフレと低成長という根源の問題が放置されたままでは、むしろ、本来必要ない世代間の「いがみ合い」を助長するだけだろう。こうした意味でも、デフレ放置策の害悪は本当に大きい。
http://www.monex.co.jp/static/jpmorgan/er/economic_20120719_1.pdf
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