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アメリカの現状2千12年5月
アメリカの政策担当者が、アメリカは、日本のようなデフレには陥らないという見解を述べていたが、今のアメリカの現状は、1997年の消費税引き上げ前の日本の状況とほぼ同じように思える。
当時の日本もようやく苛酷な株価の急減や土地価格の急激な下降が止まり、やや落ち着いた経済状況になっていた。土地価格は4、5%ほど下がっている状態であったが、実質の経済成長率は3%ぐらいになっていた。
誰しもがこのまま成長し普通の経済循環になるだろう、あるいはなってほしいと思っていたのである。
このような状況を示したのは、1990年初期のバブルつぶしの失敗にあわてた日本の政策担当者が、矢継ぎ早に繰り返した大規模な公共投資や、低金利政策、生産者への補助金政策などによって、実質GDPを無理やり伸ばした結果であった。
しかしこのような大規模な経済対策にもかかわらず、経済は思うほど回復せず、税収は増えず、借金が嵩むばかりだったのです。補正予算による大規模な公共投資の繰り返しは、デフレ下では何回やっても同じ結果になります。
1996年頃の経済状況を見た政府関係者は、経済は回復基調に在ると勘違いし、大規模な補正予算による財政悪化を止めるために、消費税の増税に踏み切ったのでした。
それがデフレ下における消費税の増税という最悪の結果を招いたのです。
この当時、新進党だったか新生党であったか名前を忘れたが、その党が選挙で勝ち、消費税を増税しなければどうなったのであろうか。
私は2千5年に、デフレ・インフレの一般理論を書いたのですが、理論を作ってからもこのことが気掛かりでした。
あのまま放って置けばデフレが解消したのではないだろうかという疑問です。
しかしこの答えはアメリカが出してくれようとしています。やはりその答えはノーなのです。
デフレ下では、ニューディールのような公共投資や、生産刺激のための助成金も低金利による過剰な金融緩和も、経済を拡大再生産させることはできないのです。
逆に、このような政策をデフレ下で取ると経済の縮小を速めていることになります。
デフレは金融資産の崩壊や大借金によって、資金量が大幅に減少し、生産量に比べ著しく少なくなっています。そのような市場の所得線は、45度以下の角度の所得線になっています。
所得線の角度が45度以下で、貯蓄額より借金額の方が大きい市場では、公共投資や、生産刺激策のための補助金や、低金利政策は、ことごとく失敗します。
45度以下の角度に下がるのは、貯蓄より借金などの負担の方が多くなっているからです。
45度以下の所得線が支配する市場では、労働の生産曲線は右下がりになります。これは働くほど、あるいは労働量を投下するほど賃金が減少する事を意味します。
これはマクロの労働生産曲線です。全産業で、右下がりになっているのです。
このような時、
各種補助金による生産者への生産刺激策をとり生産量を増やしても、資金量がそのまま一定であるため、収穫逓減の法則が働き、生産量の増大に応じて、付加価値が減少します。
言い換えると生産量が増大するにつれ、生産コストが上がり、利益額が少なくなっていきます。
これは、デフレ下では、補助金等による生産刺激策が、しない場合よりも早く賃金を下げていることを意味し、付加価値がかえって下がっているのです。
より速く経済を縮小させ、デフレを促進している事を意味しています。
なるほど物はたくさん作ったが、赤字になりお金は減った。結局、減少したお金の量に合わせた名目GDPに減縮することになります。
低金利による生産者への優遇策も、生産を増大させれば、付加価値が減少します。さらに低金利には、消費者の購買力や担保力を下げる効果があるため、金融機関は、購買力や担保力に見合っただけの融資をする必要から、貸し剥がしをすることになります。
これも低金利という補助金です。金融緩和がなされるたびに、一時的に、生産量が伸び、その効果がなくなれば、再び金融緩和の要請が起こり、それが実施される。その繰り返しのたびに、日本の経済的パフォーマンスが悪くなったのです。
アメリカもそれと同じ状況になってきています。経済界のq3要請が再び経済を確実に悪化させるのです。
一時的に経済が拡大するが、その拡大の果実は、赤字になり、資金が市場から流出していくのです。
またニューディールなどの大規模公共投資は、所得線が45度以下のデフレで行われると、すなわち、貯蓄より借金の方が多いデフレ下でおこなわれると、乗数効果が全く現れません。
それどころか借金率の逆乗数が働くことになります。
それは公共投資の額と同等の借金ができるまで、経済が拡大し、借金分の資金が市場から流出します。不良在庫が借金額と同額市場全体で残ることになります。
言い換えると、例えば100億の公共投資がなされると、市場の借金率が所得の10分の一であるならば、その10倍の1千億の経済拡大がなされるが、100億の損失が計上されることになる。
損失の内容は、1千億の経済拡大により、市場全体で100億の借金が返済されるため、資金が市場から100億減少し、不良在庫が100億積み上がる。
それ故このような経済拡大または生産量増大は、不良在庫を増やし、付加価値を減少させるため、不毛な実入りのない経済拡大となる。
このような実入りのない経済拡大は、浪費であり徒労となり、無駄な資源の活用となる。始めからやらない方が得をすることになる。
このように見てくると、デフレ下で公共投資をする方が、市場からの資金の流出を速めていることになります。公共投資をしない場合の方が、資金が市場に残っているため疲弊が少ないのです。
正常な経済では、公共投資は、経済を拡大させながら付加価値という貯蓄を増やします、それが市場にストックされ、次の循環の母体となり拡大再生産が行われます。
しかしデフレ経済では、公共投資をすると、経済を拡大させながら、マイナスの付加価値すなわち欠損となり、縮小した母体で次の循環がなされるため、縮小再生産が行われるのです。
結局公共投資は、デフレで行われると、その借金乗数の乗数倍の経済を拡大させながら欠損を生み出すのです。
これは正常な経済において、公共投資を行った場合、貯蓄が公共投資の分だけ増えるのとは全く真逆の現象です。デフレ経済では、損失が公共投資の分だけ増え、経済を縮小させていることになるのです。
これはデフレ下の公共投資は、経済を消耗させ、投下した公共投資の資金は回収できない事を意味します。
このことは日本経済がこの20年間名目GDPを減らし続けていることからも明らかでしょう。
デフレ下の公共投資は、借金乗数の存在から、始めから赤字が出るのが分かっていながら、経済を拡大させるのです(主に生産量の増大)。そのため、始めからしない方が経済によい影響を与えます。無駄な経済活動を行うことになるのです。
日本の政治家や財務省は、バブルの崩壊後首尾一貫して間違った方式を取り続けてきたのです。
それは公共投資や、補助金による生産刺激策であり、低金利政策であった。これに対し財務省は、公共料金の引き上げや、医療費、年金保険料の引き上げなどで、少しでも財政事情よくしようと、頻繁に、民間負担を増やしてきたのである。
特に財務省は、デフレの原因が市場からの年々の資金流出であることが分かっていないため、借金が増えるたびに、それを返そうとして、民間負担を増やしてきた。しかしデフレではそのわずかな資金流出が大きな経済縮小を引き起こしているのです。
現在のアメリカの状況は、日本の消費税引き上げ前の
状況に似ている。日本政府は、大規模な公共投資や、補助金政策で生産を刺激し、大幅な低金利で過剰に融資をしていた。
アメリカも同じように、生産刺激と、グリーンニューディールなどの公共投資をし、低金利で過剰に融資をしている。
しかもアメリカは、日本の失敗をよく研究しており、日本の財務省の性急な増税策が、デフレ解消の可能性をつぶしたと見ている。
それ故アメリカは、今回さらに金融緩和を続けたのである。
バーナンキが、アメリカはデフレを回避したという宣言をする理由は、赤字を形成する事が確実視される経済拡大を計算しているからである。実質GDPにカウントしているからである。
アメリカもまた、日本の為政者が行ったように、間違った不毛の経済成長を、景気の拡大とみなしているのである。
不毛な経済拡大を、成長と見なしてはならない。
日本の悲劇は、不毛な経済拡大を、正常な経済拡大と見なし、消費税を増税したことにある。
アメリカは現在消費税を上げようというような馬鹿げた考えをもっていないが、金融緩和による経済成長にまだまだ興味をもっているようだ。
しかしデフレで有る限り、生産者側への刺激策は失敗する。既に理論的にも実際的にも明らかである。
一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
追記:不幸にもスペインは、この9月より消費税を3%引き上げ、しかも緊縮財政を実行するらしい。まさしく破綻を目指した政策であり、人々はさらなる奴隷労働を強いられることになるだろう。イギリス経済も年初から消費税を引き上げたため、五輪景気は来ていない。
ユーロの崩壊がまさしく迫っているのである。しかもそれはまさしく人為的なものである。単なる間違った経済論理を持っている事が破滅をもたらす原因なのです。
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