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狭まる「非正規労働」包囲網
2012年7月18日(水) 飯山 辰之介
10月施行の改正労働者派遣法に、産業界の批判が高まる。企業の労務コストは増加、不祥事が続出する可能性も。一方で、非正規労働に対する規制強化の動きは続きそうだ。
「こんな規制がまかり通っては、また派遣労働に絡んだ不祥事が起きてしまう」。人材派遣業、ビー・スタイルの川上敬太郎・公益プロジェクト推進役兼ヒトラボ編集局長はこう話す。
川上氏が問題視するのは、今年3月に成立し、10月にも施行される改正労働者派遣法と同法の省令だ。今回の法改正では、派遣労働に対する規制が強化され、30日以内の労働者派遣が原則的に禁止される。いわゆる日雇い労働が禁じられることになる。例外として、労働者の年収か世帯年収が500万円以上である場合は日雇い派遣が可能と省令で定めている。
なぜこの法改正が問題なのか。30日以内の派遣が原則的に禁止になったことで、日雇い派遣を活用している企業は直接雇用を迫られる。そこで最近では派遣業者に対し「派遣でなく人材を『紹介』してほしい」との要望が相次いで寄せられ、派遣業者側も派遣業から紹介業にシフトしようとしている。彼らが「紹介」する人材を企業が直接、雇用すれば違反にはならないためだ。
ただ直接雇用に切り替えると企業の労務管理コストは増加する。従来は派遣業者が負担していた労働者の採用や拘束時間の把握・調整、支払口座のチェック、給与の支払いといった管理業務を自社でやる必要が出てくるからだ。既に約1000人の派遣労働者を直接雇用に切り替えた物流大手の福山通運によれば、「派遣業者に対する支払いがない分、金銭的なコストは若干減ったが、労務管理に関する手間は増えた」(同社広報)。
そもそも、管理コストの増加を避けるために企業は派遣業者に労働力の供給を頼ってきたという側面がある。リクルートの中村天江・ワークス研究所研究員は「労務管理の煩雑さを考えれば、直接雇用することによる金銭的メリットは少ない」と指摘する。
こうした状況で例外規定が設けられた場合「いわゆる『偽装派遣』が広がる恐れがある」と関係者は口を揃える。派遣を希望する労働者の世帯年収を正確に把握するのは難しく、悪質な業者につけ入る隙を与える。
今回の法改正の背景には、2007〜08年に起きた派遣大手の不祥事やリーマンショック後のいわゆる「派遣切り」で高まった派遣労働に対する批判がある。ただ規制を強化しても、その需要がなくなるわけではないので、「単に『派遣日雇い』が『日雇い』に戻るだけ」(中村研究員)だと指摘する声も多い。むしろ直接雇用による労務管理の複雑さに対応できず、非正規雇用の安定化を趣旨とする改正法とは裏腹に労使トラブルが続発する可能性はある。
規制強化には限界も
派遣をはじめとした非正規労働に対する規制強化の動きはこれで終わりではない。例えば、今年6月には消費増税とセットで提出された短時間労働者に対する社会保険の適用を拡大する法案が衆議院を通過した。
現在、週当たりの労働時間が30時間未満のパート労働者は厚生年金や企業健保に加入する義務はない。一方、この法案では社会保険の加入義務が週20時間以上となる可能性がある。パートを多く雇用する企業にとっては社会保険負担の増加につながるため、勤務時間が少ないパートを増やして、負担を回避する動きも予想される。
ニッセイ基礎研究所の松浦民恵・主任研究員は「雇用の創出策や正社員の働き方まで踏み込んだ雇用システムの見直しがないままに、非正規労働に対する規制を強化して雇用の安定化を図ろうとしても無理がある」と指摘する。
消費税増税で景気の減速が予測される中、規制強化で雇用を守ろうとする国と、人件費を抑制したい企業とのいたちごっこが続きそうだ。
飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)
日経ビジネス記者。
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120713/234450/?ST=print
#日米やフランスで典型的だが、先進国では、財政不況回避を旗印に、様々な後だし労働規制で、企業への負担押し付けが強まり
より不安定でコストが高いブラック雇用(請負労働、取引化)が増えるか、失業による財政負担が増えるため、
規制の緩い新興国にとっては、再び被投資チャンスが広がることになる
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