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日経の「今週よく読まれた電子版記事」で藤巻健史氏の「円が大暴落すると思うこれだけの理由」が上位に上がっています。
★正直申し上げまして記事にある「これだけの理由」でそこまで断言されるのは無理があります。一言で言えばワンサイド、もっと申し上げれば結論先にありきになっています。あまり人の主張に対して口を挟むのは私の趣味ではないのですが、「大暴落」という言葉で不安を煽るスタンスにどうしても一言述べさせていただきます。
氏のストーリーは消費税が10%になっても財政を黒字にするには全く足らず22%にしなければならない、というところから入っています。消費税議論の中でこの手の誤解を生む引用は非常に多く、多くの国民がこれを聞いて「消費税反対」と唱えてます。では政府は消費税だけで財政赤字を全部解消すると発言したことがあるでしょうか?一度もありません。
あくまでも藤巻氏の話は仮定の中の仮定であるのですが、22%だけが走ってしまう結果になっています。
財政再建というのは私のブログにも以前書きましたがあらゆる財政対策のコンビネーションによって行われます。消費税を上げるのはその対策の一つでしかありません。よってこれはミスリードではないでしょうか?
次に法人税収。氏のポイントは2012年の見込みが僅か8兆8千億円しかないからこの水準では財政破綻を起こすとしています。これは政府のアイディアの問題だと思います。
例えばもうすぐ使い切る3000億円のエコカー補助金。産業の活性化の趣旨として法人税だけでこの補助金を賄う前提にすればその比率は3.4%。自動車業界の販促の為だけに少ない法人税収を3.4%突っ込むこと自体が間違っているわけです。
政府は法人税を増やすのは簡単ではない主張していますが、それはデフレからの脱却や景気回復というコンベンショナルな税収の増加を前提にした場合であります。本来であれば政府は外国法人が日本に投資し、そこを通じた課税を増やす努力をしなくてはいけません。ところが国も地方地自体も外国企業に対していまだに黒船的な抵抗感を持っていることで税収増をプラン出来ないところに問題があります。よって私は法人税の増収は抜本的な方法論を見直せば解決可能だと思っています。
氏の最大のウィークポイントは指摘する理由が全て日本国内の問題を原因としているところです。
地球儀ベースでみてみましょう。アメリカはいまだに高い失業率と住宅の差し押さえで超低金利政策が継続されています。ヨーロッパはスペイン、イタリアの国債利回りが危険水準にあります。イギリスとユーロ圏はリセッション入りとなりそうです。中国は輸出、内需共に非常に苦しい状況に接しているし、韓国も先週サプライズの利下げしました。ロシアもブラジル、インドなど何処もぼろぼろです。
こんな中、★なぜ、日本円が暴落するのでしょうか?為替は「相対(あいたい)」です。シーソーと同じですからどちらか上がればどちらか下がるのです。氏の指摘するとおり日本の状況は決して芳しくありませんが、他の国と比べたら日本は相当優れているのです。それは成熟国家としてバブル崩壊後、20年も低成長ながら凌いできた打たれ強さともいいましょう。いまだ、日本には世界を代表する企業がゴマンとあります。だからこそ、世界で何かあれば(経済)有事の円買い、セーフヘイブンなのです。
残念ながら氏のストーリーラインにはこの部分がすっかり抜け落ちています。
★円は既存の与件が変わらなければ暴落はしません。それはアメリカを始め、先進国は日本と同様の成熟社会を高齢化社会と共に追尾しているのであって円の暴落を正とすれば他の先進国の通貨をも否定することに繋がるということです。とすれば為替のシーソーは成立しなくなるため、論理的に成り立たなくなるのです。
新聞の下には新刊の本の宣伝が良く出ています。最近は出版社も売りやすいタイトルをつけるため、どうしても「極端な主張」を目立たせる過激本が増えています。私も折を見て一応はそれらを読んでいますが、過激本ではっとしたことはほとんどないと最後に付け加えておきましょう。
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