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■貧すれば鈍する
消費税の増税法案は、衆議院を通過し次は参議院で審議される。今の流れなら多少の混乱があっても参議院でも可決され、法案は成立するものと見られる。したがって2年後には消費税の増税が実施されることになる。
ただし同法案には景気条項というものが付いている。成長率などが一定の数値を下回った場合は増税の実施が延期される。ただこの付帯条件は絶対的なものではなく、実施はその時の政権が判断するということになろう。この点が消費税増税が実際に実施されるかの一つの「鍵」となろう。
しかし世界の経済の見通しは暗い。また日本経済の先行きも怪しくなっている。増税法案が成立してもこの景気条項というものが足枷になる可能性がある。
ところで増税の諸々に関係する人々は、実施の一年前になったら増税への準備を始めると見られる。実際、一旦準備を始めたら多少の景気の後退があっても増税実施を阻止することが難しくなる。したがってここ一年くらいの経済の動向が重要で、大きな経済の落込みがあった場合には増税の見送りも有りうるということになる。
一年後、現在の野田政権が続いているか疑問である。経済の状況を別にして、一年後にどのような政治勢力が政権を担っているかが増税実施のもう一つの「鍵」になる。間違いなく来年までには総選挙が行われるであろうから、次の衆議院選挙後の国会の勢力図がガラッと変わっている可能性が大きい。それによっては、今日増税法案が成立しても実際の増税実施にはブレーキが掛る可能性がある。
政界では鳩山新党の噂が出ている。また民主党と自・公の大連立という話が出ている。しかし小選挙区制の元では大連立は有りえない話である。まさに今日の政治情勢は渾沌としている。このような政治情勢の変化を考えると増税実施までにはまだまだ紆余曲折があると思われる。
マスコミの報道は、消費税増税の問題点や弊害をほとんど取上げない。また民主党や自・公の支持者が本当に増税に賛同しているのかさえはっきりしない。メディアは連日ほぼ「反小沢」の話だけを取上げている。小沢一郎氏の政治家としての変節や個人的なスキャンダルばかりが話題になっている。また小沢新党は失敗ということになっている。筆者などにとってはどうでも良い話ばかりである。
一見、日本のマスコミは何者かに支配されているかのように見える。しかし逆に05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」で取上げたように、マスコミのインナーと呼ばれる談合組織が権力を握ろうとしているという見方もある。「俺達に逆らえば小沢一郎のように叩きのめす」と言いたいのであろうか。小泉時代からマスコミのこのような傾向が顕著になったと筆者は感じている。
とにかく増税の問題点を全く取上げようとしない今日の日本のマスコミの姿は異様であり異常である。だいたい経営的に難しくなっているマスコミが多いはずなのに(テレビ・ラジオは宗教団体のCMを流し大新聞の子会社の印刷会社は宗教団体の新聞を印刷して何とか収入を得ている状況)、経済を冷やす増税を推進しようというのだから頭がおかしくなっているとしか思えない。まさに「貧すれば鈍する」状態である。それにしても小沢一郎氏を支持しているとは言えない筆者でさえ、今の大マスコミの小沢氏に対する「一斉攻撃」は不快なことである。筆者と同じ感想を持っている人々はかなりいると思われる。
■再々度「急がば回れ」
消費税増税の影響について簡単に取り上げる。増税によって物の価格は上がるが所得は増えない。つまり消費者にとっては単純に物価の上昇という負担が増える。増税なのだから「当然」と言えば「当然」である。
納税義務者である事業者にとっての増税の負担は、事業者の消費税を転嫁する「力」によって異なる。100%転嫁できる力のある業者は増税の負担はない。むしろ仕入に関わる消費税増税を抑えることができれば、このような力のある業者は利益を増やすことさえ可能である。
反対に力のない業者は消費税増税分を上乗せして請求する前に価格を値引きせざるを得ない。政府は、増税を転嫁できるような環境を整備するというポーズを取るであろう。しかし全ての業者が100%の転嫁ができるということは絶対にない。そのうち必ず「消費税還元セール」というものを始める業者が現れ、他の業者もこれに追随せざるを得なくなる。筆者は、その時の経済状況にもよるが増税の転嫁は「70〜90%」程度と予想している。
もちろん筆者は消費税増税に反対である。筆者達が主張しているのは、政府紙幣の発行や永久債の日銀買入といったセーニアリッジ政策の類である。ところが我々の力不足も有り、このような考えや政策がなかなか世間に浸透しない。その間に正反対の政策である増税が実施されようとしているのである。
しかしものは考えようである。増税によって経済が落込んだり、増税が財政再建にほとんど寄与しないということがはっきりすれば、世間の認識が変わるのではないかと期待されるのである。それなら増税をさっさとやってもらうのも一つの手でないかと筆者などは考える。同じような事を00/11/13(第185号)「急がば回れ」でも取上げたことがある。増税には犠牲が伴うが、まともな政策への転換のためのコストと考えざるを得ない。
消費税増税は、消費者の購買力の政府への移転であり間違いなく景気を冷やす。ただ消費税の転嫁分だけ物価が上昇するので、名目の消費金額はほとんど変わらないことになろう。政府は、増税分を社会保障に使うと言っているが、増税を推進している主なメンバーが財政再建論者であることからして言っていることが信用できない。
今日のように政府が毎年少しずつ財政赤字を増やしているから、なんとか日本経済が持っている面がある。この財政赤字を縮小させようというのが今回の増税の狙いである。いわゆる「増税の食い逃げ」である。それにしても長期金利が下がり続けているのに(とうとう0.7%台まで低下)、日本の財政が危機的と言っている人々の気が知れない。
消費税が5%上がると、物価は3〜3.5%程度上昇するものと推定される。それならば物価が3〜3.5%上昇するまで、実質的に政府の財政負担にならない政府紙幣の発行や永久債の日銀買入といったセーニアリッジ政策を行えば良いと筆者達は主張している。それを財源に社会保障や公共投資などを実施するのである(今日のように世界的な金余りの元では、どれだけ中央銀行が金融緩和を行っても効果は薄い。必要な政策は、財政支出によって所得を発生させるようなマネーサプライの供給を増加させることである)。
物価は両者とも3〜3.5%上昇するが、増税の場合は経済活動を抑圧する。これに対して筆者達の政策なら、確実に経済活動が活発化する。消費者(国民と言って良い)は同じ3〜3.5%の物価上昇という負担を負うことになるが、前者が日本経済の低迷を招くのに対して後者は日本経済を活性化させる。
ただ「年金生活者は物価上昇の負担だけを被る」という話が出そうである。それならば財政による年金の増額を行えば良い。同様に無収入の失業者の生活も苦しくなるが、経済が持直せば就職機会は爆発的に増えるはずである。
筆者達の主張するような政策は世間的に認知度が低く、実際に行われるにはハードルが極めて高い。よほどの事がない限り関心さえ集めない。しかしその「よほどの事」が起るかもしれない。ひょっとすると今回の5%の消費税増税が、その機会を提供してくれるかもしれないのである。
おそらく5%の消費税増税で今後の増税路線はコケると思われる(政治的にも経済的にも)。財政支出の一段の削減も無理とすれば、残るのは筆者達が主張するような政策である。そう考えてくると消費税増税が待ち遠しく感じる(もちろん冗談であるが)。
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