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「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1
中嶋 よしふみ / 記事一覧
今月に入ってから持ち家相談が相次いだ。そこで感じた事を書いてみたいと思う。
ブログの記事を読まれた上で来店されている事も当然影響しているが、お客様は「持ち家と賃貸で金銭的な差は大きくない、問題はリスクだ」という事を良く理解している。そしてリスクがある事を十分承知した上で、そのリスクに私たちは耐えられるか?という部分をシビアに見極めようと相談に来ている。
過去の自分の記事を読んで持ち家推奨派でない事は承知の上で、あえて相談に来る理由は「買えないなら買えないとハッキリ言ってくれそうだから」という事を、持ち家相談に来られた方は必ずといって良いほど口にする。
実際には100%買えないという状況ではない。そこまでひどければ本人も気付く。買えるかどうかグレーゾーンだから相談に来るわけで、当方としてもグレーゾーンである以上、グレーですよ、としかいえない。
住宅ローンは借りる事が出来ても返せるかどうかが最大の問題だ。そのときに白に近いグレーなのか、黒に近いグレーなのか、つまりどのようなリスクがあってそのリスクはどれ位大きいのか小さいのか、という部分は言えるし、生活や各種環境を改善する事によって白に近づける事は出来る。それでもリスクは消えないので、将来こんな事が起きるかもしれない、こんな事が出来なくなるかもしれない、とリスクを列挙する。脅しているようで楽しくは無いが、これをやらないと相談に来てもらった意味が無い。
買いたいと考えている以上、予算を多少オーバーしても出来れば買えるようなプランを考えてあげたい。となると、プライベートにズカズカと踏み込むようなアドバイスをせざるを得なくなる。結果的に相談に来られたご夫婦は親友にも親族にもした事がないような相談を当店でする事になる(最大で8時間もかけたときにはさすがに申し訳ないと思ったが、お客様もそれだけ真剣という事だ)。
相談を受けていて感じるのは、損得より資金繰り(「払えるかどうか)、というのはもはやスタンダードになりつつあるという事だ。以前書いた「持ち家は資産か?」で沢山反響を頂いた理由も、斬新な事を書いたからでは無く「最終的な損得以前に」なんとなく多くの人が気付いていた事を書いたからだろう。
いまだに持ち家と賃貸の支払い総額を比較して持ち家の方がお得ですよ、などというリスクを無視したいい加減なアドバイスをしているFPや不動産業者を散見するが、多くの客が冷ややかな目で見ている事に気付くべきだろう。家賃がもったいない、に至ってはほとんど冗談のレベルだ。
同じくほぼ全てのお客様が仰っていたのは、不動産屋は甘い話・甘い試算しかしないという事だ。マンションのチラシに載っている変動金利・35年ローンを組んでも良いような人が一体世の中にどれだけいるのか。毎月の返済額が一番安く見えるだけの非現実的な試算を載せている事がかえってマイナスに働く事が分からないのかと不思議でしょうがない。
多くの人は人生で最も高額な買い物をしようというときに不安に陥る。そこで本当に買っても大丈夫なのか?と情報・知識を集める。人生が掛かっているので皆必死だ。その過程で変動金利には金利上昇リスクがある事に多くの人が気付く。自動計算でシミュレーションが出来るサイトもウェブ上には多数あるので、色々と計算をして無理だなとすぐに気付く。結果的に実際には買えない見込み客が大量に来るだけで申し込みもせずに終わるだろう。現場がいくら接客を頑張っても無駄骨に終わる。
買っても大丈夫だろうか、と不安を持っている人に甘い話をしてもかえって不安になるだけだ。恋愛相談をしているのではないのだから、客が求めているのは背中を押してもらう事ではなく厳しくチェックしてもらう事だ。
当店に来られるお客様は概して収入面や資産面で恵まれた方が多い。そういう方でも不安を感じているのだから、平均的な収入の方であればなおさらだ。お客様を何も知らない素人と舐めている限り、不動産業者が信用される事は無い。客の要望を受け止めた上で無理な予算は無理だとハッキリ伝える、グレーならばリスクをしっかり説明した上で購入の判断をしてもらう。そんな当たり前の事を不動産屋がやらない限り、自分の仕事はなくならないだろう。
不動産の新築マンションの集客は下見に行けば商品券をプレゼントとかハーゲンダッツの引換券をプレゼントとか、随分子供だましな手段を使っている。そういうもので集めた見込み客に意味はあるのだろうか? 無駄なコストをかける位ならその分もう1人営業マンを準備しておくとか、返済のシミュレーション相談にとことん付き合うとか、もっと意味のある部分に営業コストにつかうべきでは無いのか。これでは成約率を無視して、とにかく見込み客を集めて数打ちゃ当たる方式でやっているようにしか見えない。
参考記事として、持ち家と賃貸の比較に関する話は以下4つの一連の記事を参考にされたい。
持ち家は資産か?
そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り)
リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答
実際に購入を検討されている方には以下の記事が参考になる。
持ち家の予算はチキンレースか?
住宅購入における予算の決め方 その1
住宅購入における予算の決め方 その2
次回は不動産業を他業種と比較してみたい。
中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長
ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェのブログ
ツイッターアカウント @valuefp
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アゴラ編集部 / 記事一覧
前回の記事「持ち家は資産か?」では、持ち家は家賃の前払いでしかないと説明した。今回論じる「持ち家と賃貸はどちらが得か?」という比較に関して、まずは問題設定が的外れだ。「持ち家の方が賃貸より得」と言い切っている場合も多く、この間違った断言が二つ目の幻想だ。重要な事は「損得」ではなく「資金繰り」、つまり「支払いが出来るか・出来ないか」である。
生活費の多くは「固定費」としての性質が強く、生きている限り確実に費用が発生する。一方、不況が長引く現在、将来にわたって安定して収入を得られるかどうかは多くの人にとって不確実だ。
将来の支出は確実なのに、将来の収入は不確実。
このアンバランスさが家計リスクの根本にある。支出の確実性をさらにアップさせるのが住宅ローンだ。自己破産(あるいはそれに近い債務整理)でもしない限り、ローンから逃げる事は出来ない。
経営者に資金繰りと利益、優先するのはどちらか?と聞いてみれば100人中100人が資金繰りと答えるだろう。資金繰りが止まる事は会社の破綻を意味するから、利益が出る・出ない以前の問題だ。家計でも破綻をするのは資金繰りが止まった時だ。持ち家と賃貸の比較では、この資金繰りという視点が圧倒的に欠落している。
「持ち家の支払い総額」が賃貸で住み続けた場合と比べて多いか少ないか、と考えている時点で、途中で支払いが出来なくなるリスクを無視している。自分は普段のレッスンでは必ず最初に「人生にはリスクがあるからファイナンシャルプランニングを考えないといけない」と説明する。リスクを無視するのなら、そもそもファイナンシャルプランニングを考える意味は無い。雑誌や書籍で見かける比較のシミュレーションは細々とした間違いなど突っ込み所は沢山あるが、一番の問題はここだ。家計管理は経営者と同じように、資金繰りを最優先で考えるべきだ。
確実な支出を不確実な収入でまかなう以上、支出の弾力性を失う事はリスク上昇につながる。順調な人生を送ってきた人はリスクに鈍感な傾向にあるが、そういう人ほど高額なローンを組めるのは皮肉な話だ。もちろん、結果的に持ち家が有利な「場合」も当然あるだろう。これは株を買えば儲かる可能性がある、という事と同じ程度の話だ。リスクの絡む判断で「絶対」はありえない。
住宅は生活必需品(ニーズ)だが、持ち家は趣味の世界(ウォンツ)だ。誤解をされないように言っておくが、自分は持ち家をことさら否定しないし、個人的には家を買いたいと思っている。損得の観点からではなく、ただ「欲しい」からだ。端的に言って、持ち家でしか出来ない事はほとんど無いが、賃貸でしか出来ない事は結構ある。不動産の購入は、損得の観点で考えるべきものではないし、持ち家への過剰なこだわりも捨てるべきだ。
繰り返すが、自分は持ち家否定派ではなく、ニュートラルな立場だ。家を買いたい人は前回と今回書いたような話を前提知識として踏まえて欲しい、というだけの話だ。買いたい人は予算の範囲で買えば良い。赤の他人がケチをつけることではない。
あるファイナンシャルプランナーは著書の中で「持ち家と賃貸はどっちが得か?というテーマでの執筆依頼は多いが、全て断っている。条件を少し変えればどっちが有利かいくらでも変えられるからだ」と書いている。おそらくこの説明が持ち家と賃貸の比較に関する全てを物語っているだろう。もう一言付け加えるなら「重要な事は損得ではなく資金繰り」ということになる。
前回の記事には想像を超える多数の反響を頂いた(これはトゥギャッターにまとめた)。中には批判や、じゃあどうすればいいんだ? という声もあった。
前回と今回書いた内容は住宅を考える上で前提となる一般論なので、具体論(予算の決め方など)にはまだ踏み込めていない。一般論だから個別の話にはあてはまらない場合もあると逃げているのではなく、全ての人に前提となる基礎知識を学んで貰って、その上で個人個人の収入や資産、働き方、意向などを考慮してライフプランを考える、というのが、自分が考える正しい手順だ。
次回以降は反響への回答と具体論に踏み込んだ話を書いてみたい。
※今回の記事では賃貸と持ち家の金銭的な比較が争点ではないので字数の関係で細かな数字は省いたが、不動産価格は家賃に基づいて決まる以上、持ち家が著しく有利という計算結果が出る可能性は低い。
※一定レベル以上の資産家の場合、相続税の計算上持ち家が他の資産と比べて優遇されるため、持ち家を買う必然性はあるが、相続まで考慮して比較がなされているケースは滅多にない。ただしこれも現在の税法上の話だ。相続税は強化される方向にあるため、数十年後に税制が持ち家に対して不利になっているリスクもある。
http://agora-web.jp/archives/1445150.html
持ち家に関する二つの幻想〜そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争〜 --- 中嶋 よしふみ
アゴラ編集部 / 記事一覧
前回の記事「持ち家は資産か?」では、持ち家は家賃の前払いでしかないと説明した。今回論じる「持ち家と賃貸はどちらが得か?」という比較に関して、まずは問題設定が的外れだ。「持ち家の方が賃貸より得」と言い切っている場合も多く、この間違った断言が二つ目の幻想だ。重要な事は「損得」ではなく「資金繰り」、つまり「支払いが出来るか・出来ないか」である。
生活費の多くは「固定費」としての性質が強く、生きている限り確実に費用が発生する。一方、不況が長引く現在、将来にわたって安定して収入を得られるかどうかは多くの人にとって不確実だ。
将来の支出は確実なのに、将来の収入は不確実。
このアンバランスさが家計リスクの根本にある。支出の確実性をさらにアップさせるのが住宅ローンだ。自己破産(あるいはそれに近い債務整理)でもしない限り、ローンから逃げる事は出来ない。
経営者に資金繰りと利益、優先するのはどちらか?と聞いてみれば100人中100人が資金繰りと答えるだろう。資金繰りが止まる事は会社の破綻を意味するから、利益が出る・出ない以前の問題だ。家計でも破綻をするのは資金繰りが止まった時だ。持ち家と賃貸の比較では、この資金繰りという視点が圧倒的に欠落している。
「持ち家の支払い総額」が賃貸で住み続けた場合と比べて多いか少ないか、と考えている時点で、途中で支払いが出来なくなるリスクを無視している。自分は普段のレッスンでは必ず最初に「人生にはリスクがあるからファイナンシャルプランニングを考えないといけない」と説明する。リスクを無視するのなら、そもそもファイナンシャルプランニングを考える意味は無い。雑誌や書籍で見かける比較のシミュレーションは細々とした間違いなど突っ込み所は沢山あるが、一番の問題はここだ。家計管理は経営者と同じように、資金繰りを最優先で考えるべきだ。
確実な支出を不確実な収入でまかなう以上、支出の弾力性を失う事はリスク上昇につながる。順調な人生を送ってきた人はリスクに鈍感な傾向にあるが、そういう人ほど高額なローンを組めるのは皮肉な話だ。もちろん、結果的に持ち家が有利な「場合」も当然あるだろう。これは株を買えば儲かる可能性がある、という事と同じ程度の話だ。リスクの絡む判断で「絶対」はありえない。
住宅は生活必需品(ニーズ)だが、持ち家は趣味の世界(ウォンツ)だ。誤解をされないように言っておくが、自分は持ち家をことさら否定しないし、個人的には家を買いたいと思っている。損得の観点からではなく、ただ「欲しい」からだ。端的に言って、持ち家でしか出来ない事はほとんど無いが、賃貸でしか出来ない事は結構ある。不動産の購入は、損得の観点で考えるべきものではないし、持ち家への過剰なこだわりも捨てるべきだ。
繰り返すが、自分は持ち家否定派ではなく、ニュートラルな立場だ。家を買いたい人は前回と今回書いたような話を前提知識として踏まえて欲しい、というだけの話だ。買いたい人は予算の範囲で買えば良い。赤の他人がケチをつけることではない。
あるファイナンシャルプランナーは著書の中で「持ち家と賃貸はどっちが得か?というテーマでの執筆依頼は多いが、全て断っている。条件を少し変えればどっちが有利かいくらでも変えられるからだ」と書いている。おそらくこの説明が持ち家と賃貸の比較に関する全てを物語っているだろう。もう一言付け加えるなら「重要な事は損得ではなく資金繰り」ということになる。
前回の記事には想像を超える多数の反響を頂いた(これはトゥギャッターにまとめた)。中には批判や、じゃあどうすればいいんだ? という声もあった。
前回と今回書いた内容は住宅を考える上で前提となる一般論なので、具体論(予算の決め方など)にはまだ踏み込めていない。一般論だから個別の話にはあてはまらない場合もあると逃げているのではなく、全ての人に前提となる基礎知識を学んで貰って、その上で個人個人の収入や資産、働き方、意向などを考慮してライフプランを考える、というのが、自分が考える正しい手順だ。
次回以降は反響への回答と具体論に踏み込んだ話を書いてみたい。
※今回の記事では賃貸と持ち家の金銭的な比較が争点ではないので字数の関係で細かな数字は省いたが、不動産価格は家賃に基づいて決まる以上、持ち家が著しく有利という計算結果が出る可能性は低い。
※一定レベル以上の資産家の場合、相続税の計算上持ち家が他の資産と比べて優遇されるため、持ち家を買う必然性はあるが、相続まで考慮して比較がなされているケースは滅多にない。ただしこれも現在の税法上の話だ。相続税は強化される方向にあるため、数十年後に税制が持ち家に対して不利になっているリスクもある。
持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想 アゴラ掲載原稿
カテゴリ:住宅
持ち家には二つの幻想がある。「持ち家は資産である」と「持ち家は賃貸よりも有利」の二つだ。果たしてこれは本当か。結論を言うと間違いだ。
まず持ち家は資産かどうかについて、言及してみよう。住宅ローンを組んで家を買った場合、一般的な感覚としては返した分だけ自分のものになる、といった所だろう。これが一つ目の幻想だ。
住宅は買ったとたんに2、3割価値が下がると聞いた事がある人は多いだろう。販売側の利益が乗っているだけでなく、買ってすぐに売ろうとすれば、手数料がかかって、結果としてそれぐらいは損をするからだ。したがって頭金は2割くらい入れないと、買った時点で債務超過(借金が資産を上回る状態)になりかねない。
また、経年劣化を考慮すると家の価値は毎年のローン返済額と同じかそれ以上に落ちていくケースが多い。家の価値は、住める・貸せる・売れる、の3点しかない。ローンを返し終わった築35年のマンションに一体どれだけの価値があるのか? 売っても貸しても大した金額にならず、買い手・借り手が簡単に見つかるとも限らないので、時間がかかればその分だけ損失は膨らむ。住み続けるには大規模な改修や建替えで新しいマンションが買える位の費用がかかる事もある。三つの価値はいずれも大幅に減る事は分かっているわけだから、家は資産だと言い張る事には無理がある。
つまり「返済した分だけ自分のものになる」のではなく「返済した分だけ消費していく」と考えたほうがより実態に近い。住宅はいつか壊れて使えなくなるのだから、家を買う事は「家賃の長期前払い」であって、それ以上でもそれ以下でもない(細かい説明は「割引現在価値法」で検索すれば説明しているサイトは沢山ある)。結局、「持ち家は資産である」という考えは経年劣化(企業会計で言う減価償却)を無視した無茶な考えである事は容易に分かるだろう。
マンションでなく土地付きの一軒家ならば? という疑問もあるかもしれない。土地は建物と違って経年劣化は無いし、企業会計でも減価償却の対象にならない。しかし、土地付き一戸建てを買い、買値のうち半分が土地の値段だったとして、当然のことながらそれが30年後、40年後にどれ位の価値があるかは全く分からない。土地の部分に限って言えば不動産投資だからだ(家の価値はゼロになり、かえって撤去費用がかかると考えたほうが良い)。バブル期には日経平均が将来9万円になる、と予想した人も居るが、さて、人口が大きく減っていく日本で30年後に土地の値段はどうなるか、なかなか興味深い部分でもある。
自分は基本的に株や不動産などの資産価格は予想出来ないし、するつもりも無い、という立場を取っているが、半歩踏み込んで予想材料の提供をしてみたい。
将来日本の人口が減る事はほぼ確実だが、これは将来不動産の買い手が減る事も意味する。先が読めない経済指標が多い中、人口動態はダントツで確実性の高い数値だ。
厚生労働省が発表する平成22年度の簡易生命表によれば、生まれた子供のうち、37歳まで生きているのは男性の場合10万人中98,246人。37歳というのは家を買う平均的な年齢だ(home’s調べで36.9歳・端数は切り上げ)。
生存率は98%以上だから、37年後の37歳の日本人の数は出生数とほぼイコールだ。2011年時点の37歳(1974年生まれ)は2,029,989人、37年後の37歳(2011年生まれ)の人口は1,057,000人。計算をすると48%減となり、半数近くまで減る計算だ。少なくとも今後37年間は不動産の買い手が減り続ける事は「既に決まっている」。
人口ボーナスという言葉がある。生産年齢人口(15歳〜64歳の人口)が増える事によって、経済成長にプラスの影響がある状況を指す。その逆が人口オーナスで、生産年齢人口が減る事によって経済成長に悪影響を及ぼす状態を言う。不動産のような資産価格は複雑な要因が影響する。当然のことながら不動産の買い手は日本人だけでなく、日本企業や外国人・外国企業も含まれる。数だけで決まるわけでも無いので、このデータだけでは断言できるはずもないが、人口が減り、買い手の一部が大幅に減る事は容易に予想される。株や不動産の世界では価格が上がる事を「買われた」とも言う。買い手が減ればどうなるかは、説明するまでも無い。
と、必要の無い予想まで書いてしまったが、将来不動産価格が上がるかどうかや、持ち家に資産価値があるかどうかは実は重要な話ではない。多額の借金を抱えてたった一個の不動産に資産を集中させる事が家計管理の上でどれだけハイリスクなのか多くの人が理解していない事、こちらの方が大きな問題だ。
次回は永遠のテーマとも言える持ち家と賃貸の比較について決着をつけたい。
*一連の記事は4つの連載になっています。
持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り)
リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答
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言論プラットフォームアゴラに記事が掲載されました。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/4950212.html
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