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The Economist
行き詰まる世界経済
2012.07.12(木)
(英エコノミスト誌 2012年7月7日号)
ユーロ圏に関する不確実性があと数カ月続く見通しが世界経済に重くのしかかる。
6月末のEU首脳会議は、事前予想よりも大きな進展を遂げたが・・・〔AFPBB News〕
欧州の指導者たちは6月28〜29日にブリュッセルで欧州連合(EU)首脳会議を開いた際、果てしなく続く債務危機への対応で予想以上に大きな進展を遂げた。
各国は何よりも、新しい恒久的な救済基金が、政府経由ではなく、不振に喘ぐ国の銀行に直接資本を注入することを認めた。また各国は、以前のような厳しい条件を課さずに、救済基金が悪戦苦闘する国の国債を購入することも可能にした。
会議の後、ユーロはすぐさま上昇した。株式市場はいくらか元気を取り戻した。原油価格は急騰した。スペインとイタリアでは国債利回りが低下した。
アイルランドでも、銀行部門の問題解決に要した多額の費用が過去にさかのぼっていくらか軽減されるとの期待感から、国債利回りが急低下した。それを受けて、アイルランド政府は7月5日に2010年以来初めてとなる短期国債の入札を実施し、資金を調達することを決めた。
EU首脳会議の成果に疑念
だが、6月の首脳会議は、市場の上昇が示すほど具体的な成果は生まなかった。理論的には、先の合意は、弱い政府と弱い銀行との間の自己増殖的な関係を断ち切ることを約束している。
実際には、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の銀行の監督を任されるまでは、それは実現しない。ECBが銀行の監督を任される状況になるには、計画されている6カ月よりもはるかに長い時間がかかるかもしれない。
それ以前に、目がかすむ時間に何とかまとめられた取り決めが、恒久的な基金の創設を定めた条約を改定せずに基金の権限を再定義することを巡る法的な問題や、北部欧州の小国の政治的な反対に行く手を阻まれることも十分あり得る。例えば、フィンランドは、救済基金を使って流通市場で国債を買い取るという考え方に反対している。
一方、ギリシャは、弱い新政府が債権国から譲歩を引き出そうとしており、問題を引き起こす力を失ったわけではない。
こうした状況は、世界経済に対するさらに多くの不確実性とさらに多くの弊害を意味している。ユーロ圏内では5月の失業率が11.1%に達し、通貨同盟に現在参加する17カ国を対象とする1995年までさかのぼる統計で過去最高を記録した。
製造業のほかにサービス業も対象にする総合購買担当者景気指数(PMI)は6月、わずかに上昇したが、まだ46.4と、拡大と縮小の分かれ目となる50をかなり下回っている。恐るべきドイツ経済でさえ、今では腰折れしたように見える。
指数を集計するマークイットによると、ドイツのPMI総合指数は、第2四半期に国内総生産(GDP)がわずかに減少したことを示しているという。6月に3年ぶりの大幅な縮小を見せたドイツの製造業で特に弱さが目立つ。
各地に広がる製造業の弱さ
そうした産業の脆弱性は今、世界中に広がっている。米国では、全米供給管理協会(ISM)の製造業景気指数が6月に、ほぼ3年ぶりに50を割り込んだ(図参照)。
新規受注が大きく落ち込み、低迷が続くことを示唆している。主な理由の1つは新規輸出受注の急激な減少で、製造業者は欧州と中国での需要減退がその原因だと考えている。
国際通貨基金(IMF)は先日、米国経済に関する年次審査の中で、景気回復は「力強さに欠けた」ままだと述べ、激化するユーロ危機の影響について懸念を表明した。
アジアでも産業の減速が進行中だ。日本のPMIは6月、11月以来初めて50を下回った。ここ数カ月間低下してきた中国の公式PMIは、現在、分岐点を辛うじて上回っている程度だ。もっとも中国の場合、これは恐らく工業生産が年率15%という普通のペースではなく、約10%のペースで増加していることを意味している。
それでも中国の工業生産が減速すれば、中国にコモディティー(商品)を売ることで成長してきたブラジルのような国々が打撃を受ける。ブラジルの製造業は6月に3カ月連続で縮小した。
中央銀行が頼みの綱?
市場が7月初めに比較的好調に推移したとすれば、それは間違いなく、各国中央銀行がまたしても仕事を肩代わりしてくれるのを市場が待っていたからだ。7月5日、本誌(英エコノミスト)が印刷に回された後、ECBとイングランド銀行は金融政策を緩和すると見られていた*1。
英国の中央銀行は既に、量的緩和を再度実施する方向を示していた。ECBは、主要政策金利を初めて1%未満、恐らく0.75%に引き下げる可能性が高かった。この大きな節目を突破することは、危機を終わらせるために、あとどれだけ多くのことをしなければならないかを示すことになる。
*1=事前の予想通り、イングランド銀行は量的緩和の再開を決め、ECBは政策金利を0.75%に引き下げた
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35645
Financial Times
まだ続く高所得国の虚脱感
(2012年7月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
2007年8月に金融不安が突如、無防備な世界を襲ってから、もう5年近く経つ。では、危機に見舞われた高所得国の調子はどんな具合だろうか? 調子は悪い、というのが唯一の答えだ。
6大高所得国(およびユーロ圏)のうち、米国経済とドイツ経済だけが過去のピークを上回っている。米国は初期のショックの震源地だったことから、景気回復が比較的力強かった。とはいえ、どの高所得国も自国の経済動向に満足することはできない。
積極的な政策を講じても浮上できない高所得国
比較的堅調な米国経済だが、失業率はまだ8%台で、10%のピークから大きく下がったわけではない〔AFPBB News〕
米国の国内総生産(GDP)は他国のそれより堅調だったが、失業率は2007年7月の4.7%から2009年10月の10%へと2倍以上に跳ね上がった。それ以来、失業率はわずかに低下しただけだ。
だが、米国の経済動向はそれでもユーロ圏よりはましだった。ユーロ圏の経済は停滞し、直近の失業率は11.1%と、米国の8.2%を上回っている。
各国経済が停滞する一方で、政策はかなり積極的だ。大規模な高所得経済の中央銀行が提示している短期金利の中で最も高いのは、欧州中央銀行(ECB)の0.75%だ。
また、大規模な高所得国では、2007年以降、GDP比で見た中銀のバランスシートが2倍に拡大した。
日本、米国、英国は引き続き、平時としてはかなり多額の財政赤字を出している。しかし、巨額の財政赤字にもかかわらず、各国国債の長期金利は極めて低く、日本が0.8%、米国が1.5%、英国が1.6%となっている。
「抑制された恐慌」
ジェローム・レヴィ経済予測センターのデビッド・レヴィ氏は、停滞する経済と巨大な政策刺激策の組み合わせを「抑制された恐慌」と名づけている。
その説明は明快だ。多くの重要国が、特に家計部門と金融部門における過剰債務に苦しんでいる。例えば米国では、1976年にGDP比112%だった民間部門の債務総額が膨れ上がり、2008年に296%でピークをつけた。この比率は2012年第1四半期末に250%まで戻し、2003年と同水準になっている。
米国のグロスの民間借り入れは、2007年にはGDP比29%に上っていた。だが、2009年、2010年、2011年にはマイナスとなった。
そして何より、民間部門の資金過不足(所得と支出の差)が大幅な資金余剰となっている。米国では、民間部門の資金過不足は、2007年第3四半期のGDP比2.4%の資金不足から、2009年第2四半期の同8.2%の資金余剰に転換した。
もし政府がこの影響を相殺する財政赤字を出すことを渋っていたら、これだけ大きな変化は間違いなく巨大な恐慌を引き起こしていたはずだ。こうして恐慌が抑制されてきたわけだ。
危機に襲われた国の中で最も重要な国は米国だ。だが、米国は民間部門による大規模な緊縮を経験した唯一の国ではない。英国も同じだった。
民間部門が資金余剰なら、経常黒字か財政赤字を出すしかない
実際、国際通貨基金(IMF)は、すべての高所得国の民間部門が今年、資金余剰ないし過不足が均衡状態になると予想している。であれば当然、これらの国は、多額の経常黒字を出すか、多額の財政赤字を出さなければならない。ドイツは前者をやっている。その他の国は財政赤字を出している。
こうした経済大国が一緒に多額の経常黒字を出せる見込みが薄い以上(一体、誰を相手に黒字を出すのか?)、自国の民間部門が多額の資金余剰になったら、財政赤字を出すしかないだろう。
そして、民間部門の資金余剰は、部分的にはデレバレッジング(負債圧縮)を進める願望、部分的には借り入れを嫌がる態度、部分的には金融部門の融資意欲あるいは融資能力の欠如で説明できる。
つまり、こうした状況はすべて、過剰借り入れの後の苦しい二日酔いだということだ。
となると、大きな話の筋は引き続き、金融緩和政策によって和らげられ、政府のバランスシートの拡大によって相殺される民間部門のデレバレッジングということになる。愚かな批判をおして、両方を進んで行った当局のおかげで、我々は第2の大恐慌を経験せずに済み、今も大恐慌を回避できている。
幸いにもユーロ圏に属していない国々の金利がこれだけ低い時に、こうした多額の財政赤字が民間部門の支出をクラウディングアウト(締め出し)しているという考えは奇怪に思える。
しかし、一部の公的機関はこうした政策に頭を悩ませている。国際決済銀行(BIS)は最新の年次報告書で、高所得国における金融・財政引き締めを訴えているようだった。もっとも、政策引き締めの影響に関する分かりやすい分析は示していない。
例えばBISは、「バランスシート不況における財政乗数は通常の景気後退における乗数より低いかもしれない。特にバランスシート不況においては、過剰債務を負った経済主体――最近では、典型的なのが家計――は追加的な所得単位のうちより多くの割合を、裁量支出の増加ではなく債務の削減に回す可能性が高い」と述べている。
それは確かにあり得る話だ。結論は、重要国で容易に賄える財政赤字は、今以上に大きくする必要があるということだ。各国はデレバレッジングを促すとともに需要を維持しなければならないからだ。
デレバレッジングを加速させるもう1つの方法は、恐慌としても知られる大量倒産だ。BISはそれを望んでいるのだろうか?
需要の維持とデレバレッジングの促進に必要な政策
我々は、大きな金融危機が長い影を落とすことを知っている。トレンド成長率が小幅で、そのためデレバレッジングが遅い国では、特にそうだ。政策は、需要を維持すると同時にデレバレッジングを促さなければならない。このことは、共同で実施される積極的な金融・財政政策と、銀行の資本増強と民間債務の再編の加速を目的とした介入を意味する。
オバマ政権はこれらすべてを試みた。だが、十分に野心的な取り組みではなく、共和党の強硬姿勢にも妨げられた。それでも、米国が今年暮れにかけて「財政の崖」を転げ落ちる事態を回避できれば、民間部門主導の緩やかな景気回復が始まるはずだ。
ひとたび回復が確実になれば、本格的な財政再建に乗り出せる。緊縮策は力強い回復の後に続くべきであって、先立つべきではない。
残念なことに、問題を抱えた経済大国を構成するのは米国だけではない。危機は、世界第2位の経済圏であるユーロ圏内に深い亀裂を生じさせた。ユーロ圏が対応策を打ち出せない状況は、混乱を保証している。
政策を形成する人々は、パニックよりも、むしろモラルハザード(倫理の欠如)の方を心配している。その結果、ソブリン債・銀行危機が相次ぎ、ついには為替管理とユーロ圏解体に至る可能性が十分に考えられるようになった。
あまりに多くの政策立案と助言が危機後の課題を理解しておらず、効果的な解決策を生み出していない。問題の核心は、デレバレッジングを加速させながら景気回復を促進することだ。その基準に照らすと、現在実行されている政策は悲しいかな、決して十分とは言えない。
By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35648
ギリシャ非難できない韓国家計の懐事情
家計負債の増加率はOECD加盟国中で3位
2012年7月12日(木) 毎経エコノミー
スペイン、ギリシャなど南欧の国々が、欧州財政危機の主犯として非難されている。しかし家計が抱える負債の統計を見ると、韓国はこれらの国を非難できる立場にない。GDPに対する家計負債の割合はOECD平均をかなり上回っている。家計負債が増加する速度もますます速くなっている。
大韓商工会議所によると、GDPに対する家計負債の割合は81%(2010年)。金額にして911兆ウォン(約67兆7400億円)である。この割合はOECD平均(73%)より高い。財政危機に陥っているスペイン(85%)と同じ水準で、ギリシャ(61%)よりも20ポイントほど高い。
負債の割合よりも深刻なのは負債が増加する速度である。急ピッチで上昇している。2006年以降減っていた増加率は2010年に再び高くなった。2010年の増加率は、2009年に比べ2.4ポイント上昇して9.8%を記録した。この値は2010年のGDP成長率(6.3%)より高い。国際的にみると、ギリシャ(12.1%)とトルコ(10.8%)に続いて3番目に高い増加率である。
教育費や物価の高騰が家計負債を押し上げ
家計負債が増加している原因は色々ある。低金利*1、住宅景気悪化による住宅担保ローンの償還遅延、高騰する教育費と物価に伴う生活資金の増加などがある。専門家らは、銀行が健全性を維持しているので、家計負債の増加が今すぐ国家経済を脅かす要因にはならないとみている。しかし家計負債が韓国経済の長期的な成長を妨げる要因になるという点には異論がない。
大韓商工会議所のチョン・スボン調査1本部長は、「欧州の財政危機が再浮上するなど、グローバル経済が不安定な状態にある。このような状況において、家計負債の増加は韓国経済の危険要素でしかない」と指摘した。
格差が拡大している可能性
家計負債の増加に対する警告が続く中、これに反する統計もある。家計部門の余裕資金が増加している、というものだ。韓国銀行は、2012年1〜3月の家計と非営利団体の資金余剰額が32兆7000億ウォン(約2兆4200億円)だと発表した。資金余剰とは、運用資金(預金、保険、株など)から調達資金(貸出)*1を差し引いた数値で、余裕資金という意味に解釈できる。32兆ウォンを超える値は、2009年1〜3月(33兆3000億ウォン=約2兆4640億円)以来の高さである。
しかし、この統計を見て、家計の懐事情が良くなったと解釈するのは難しい。住宅景気不振による貸出*1需要減少、金融当局が貸し出しを規制した影響が大きかったせいだ。つまり、家計所得が増えたからではなく、金融機関から借りるお金が減った結果、余裕資金が増えているのだ。
実際に、金融機関は家計向けの貸し出しを渋っている。2012年1〜3月の貸し出しは、2011年10〜12月より2兆5000億ウォン(約1850億円)減っている。同じ期間に、家計が持つ預金も23兆9000億ウォン(約1兆7686億円)から16兆ウォン(1兆1840億円)以上減少している。
家計負債と余裕資金が同時に増加する矛盾した統計を見て、一部の専門家は家計部門の所得格差が深刻な状態になっていると解釈している。ある信用評価会社の研究員は、「全般的に家計負債が増えているという統計の解釈には異論がない。余裕資金が増えているのは、財務的に安定した家計で現金が増えているから。つまり、金融資産が多い人はますます資産を増やし、資産を持たない人はますます減らしている。格差が広がっていると解釈できる」と説明する。
*1=原文のまま
(By ミョン・スンヨン記者 ©「毎経エコノミー」2012年6月20日〜6月26日号)
「毎経エコノミー」
韓国の毎日経済新聞社が発行する「毎経エコノミー」は、企業の幹部や専門職、個人投資家などを対象とする週刊ビジネス誌。発行部数12万部はこの分野では最大規模だ。
韓国発 毎経エコノミー
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