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焦点:中国、2014年にもレアアースの輸入国になる可能性
2012年 07月 11日 16:56
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[北京 11日 ロイター] 世界最大のレアアース(希土類)生産国である中国が、早ければ2014年にもレアアースの輸入国になる可能性がある。素材のまま国外に輸出するのではなく、国内のハイテク産業で消費することを促しているからだ。
中国政府はレアアースの輸出規制措置を環境保全のためと説明しているが、最大の産出国よりも最大の消費国になる道を選ぶ方針も明確にしている。
レアアースに関して川上から川下までの包括的な産業体制を築こうという中国政府の意向は、世界のレアアース供給の90%以上を独占する中国が、今では生産の65%を国内で消費していることに表れている。10年前には、国内消費の比率は25%だった。
米コロラド州に本社を置く鉱業会社、モリコープ(MCP.N: 株価, 企業情報, レポート)のマーク・スミス最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで「2014年ないし2015年に、中国はおそらく一部のレアアースの純輸入国になるだろう」と発言。「需要があれば、そこに供給が向かわざるを得ない。世界で生産される磁石の80%以上が中国で生産されており、年を追ってその傾向は強まっている」と指摘した。モリコープは今年、中国に拠点を持つカナダのネオ・マテリアル・テクノロジーズNEM.TOを買収し、中国に本格進出した。
厳しい輸出規制は米国、日本、欧州との通商摩擦を生んでいるが、中国政府の意図は供給の制限と価格の支配だけにあるのではなない。磁石のようなレアアースの下流部門の支配も目指している。
<負担を分け合う>
米地質調査所(USGS)は中国が世界のレアアース資源の約半分を握っていると指摘する。資源の量は中国が5500万トン、ロシアが1900万トン、米国が1300万トンという。これに対し中国は、比率は25%に近いとし、世界の90%を供給し続けることは不可能だと主張している。
レアアース生産で中国最大手の包鋼稀土高科技(600111.SS: 株価, 企業情報, レポート)の李忠・副社長によると、国内消費は今後数年間、少なくとも年率10%の伸びが見込まれ、中国政府の生産制限の下では、国内需要の増加は輸出の削減あるいは輸入によって満たすしかない。
中国政府の政策によってレアアースの価格が上昇し、米国、カナダ、インドのような採掘を停止していた国々での生産再開を促している。加工処理も採算性が向上しており、オーストラリアのライナス(LYC.AX: 株価, 企業情報, レポート)はマレーシアの工場建設で同国政府の正式承認を求めている。
<ハイテク産業への恩恵>
中国政府にとって、付加価値の低いレアアースの鉱石を輸出することは、環境コストをすべて中国が負担する一方、ハイテク製品への利用から恩恵をまったく受けられないことを意味する。生産制限と輸出規制は、保有する資源から最大の見返りを引き出すというひとつの戦略の構成要素なのだ。
米ワシントンにある戦略国際問題研究所(CSIS)のジェーン・ナカノ氏は「レアアースをめぐる産業のサプライチェーンを確立するのに必要な時間を稼ごうとする限り、中国にとって世界的なレアアース生産の管理は重要だ」と指摘した。
下流部門を整備する方策の一環として、内モンゴル自治区の包頭のようなレアアースの生産拠点が、銅山から出発して大規模なハイテク複合企業を誕生させた日本の日立を見習うよう促されている。
ひとつの重要な産業分野が、再生可能エネルギーや衛星、MRI、ガス採掘などに利用される磁石だ。烟台正海磁性材料(300224.SZ: 株価, 企業情報, レポート)などの中国企業が世界の80%以上を生産している。また先月の政府統計によると、発光体、水素貯蔵材料、ガラス研磨材でも70%以上を中国が生産している。いずれもレアアースが使われている。
中国政府は、レアアースをめぐる川下の技術がまだ遅れていることを認める一方、追いつくために輸出制限は重要な役割を持つと指摘。外国企業が安いレアアースを求めて中国に技術を持ち込むことを促している。
中国のレアアースを使っている米ハイテク素材メーカー、アメリカン・エレメンツのマイケル・シルバーCEOは「さまざまなガラス工場に供給していて、かつてはそうした企業は米国に大きな生産基盤を持っていたが、実質的にそのすべてが中国に移ってしまった」と語った。
<輸入国に>
アナリストは、中国が世界最大の輸出国から最大の輸入国に転身したコークス用炭(原料炭)での経験が、レアアースの前例になると指摘する。かつて中国は原料炭を欧州や日本に大量に輸出していた。しかし、鉄鋼産業の大規模な拡充に伴って輸出規制に踏み切り、2008年までに純輸入国となった。現在、中国が消費する年間5億5000万トンの原料炭の5分の1を輸入が占めている。
ランタンやセリウムのようなライトレアアース(軽希土類)に関しては、内モンゴルに豊富な資源を持つ中国が輸入国になる可能性は低い。しかし、ヘビーレアアース(重希土類)とミディアムレアアース(中希土類)は供給不足に陥る可能性がある。あるレアアース磁石生産企業関係者は「需要の増大に伴って、中国がいずれ一部のヘビーレアアースの輸入国になることは十分あり得る」との見方を示した。
(David Stanway記者)
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