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グローバル人材は「ガラパゴス日本」を変えられるのか?  うつ病になりやすい思考パターンとテレビ問題
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投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 10 日 19:09:07: cT5Wxjlo3Xe3.
 

グローバル人材は「ガラパゴス日本」を変えられるのか?

特別対談・前編 米スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員 櫛田健児氏

2012年7月10日(火)  浜口 友一

 ビジネスのグローバル化が避けて通れない時代。日本人ビジネスパーソンもグローバリゼーションに向き合っていく必要がある。そうした問題意識から実施した昨年の海外調査の際にご協力いただいた、米スタンフォード大学研究員の櫛田健児氏がこの度来日された。日本人と日本企業が抱えるグローバル化の問題について、非常に興味深い議論をさせていただいた。その内容を2回に分けてお届けしよう。
 櫛田氏の専門領域はグローバルのIT(情報技術)業界における政治経済分析だ。市場のルールや規制といったものが業界内のプレイヤーにどのように影響し、市場の発展にどのような影響を与えるのかを研究されている。
 櫛田氏の研究テーマの1つに「ガラパゴス化してしまった日本市場」の問題がある。櫛田氏によれば、ガラパゴス化現象が起きる分野には、日本が“後続なき先行者”になってしまう共通のメカニズムがあるのだという。特別対談の前編ではこの点について展開される議論をご覧いただきたい。
日本のガラパゴス化はなぜ起きるのか?

浜口:今日はあらためてお世話になります。よろしくお願いします。櫛田さんのご専門はIT業界の政治経済分析で、「日本のガラパゴス化」についても研究テーマとされています。早速お聞きしたいのですが、これまでの研究でどのようなことが分かってきていますか?


櫛田 健児(くしだ・けんじ)氏
1978年生まれ。米スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員。日本人の父、アメリカ人の母を持つ。著書に『バイカルチャーと日本人 英語力プラスαを探る』(中公新書ラクレ)、『OBトーク インターナショナルスクール入門』(扶桑社)(写真:丸毛透、以下すべて)
櫛田:日本のガラパゴス化は、ITの世界で非常に問題になっていますが、私はこの状況を“後継者のいない先行者”と捉えています。

 一番分かりやすいのが携帯電話の世界。技術的にもサービス的にも先行しているのだけれど外来種に弱い。先行していたけど、そこにスマートフォンがやってくるとやられてしまう。

浜口:後継者のいない先行者とは興味深い切り口ですね。確かに日本は技術力では先行していた。

櫛田:日本としては、それ以前のデジタル規格が国内規格だったことを反省して、第三世代携帯からはグローバルスタンダードで足並みをそろえていこうという認識がありました。しかし、ITバブルの崩壊でヨーロッパ勢が足を止めてしまい、それで結果的に日本が先行してしまいました。

 そこで何について競争するのかがその後の進化を左右するのだけれど、日本の場合は国際展開競争ではなく国内のサービス競争に視点が移ってしまいました。「写メール」とか「着うた」とか、その後「おサイフケータイ」とかに競争が進化していくのですが、どれも国際展開しているサービスではない。国内でキャリアが勝つ手段が、国際的なものからどんどんかけ離れていくという構図が出来上がってしまいました。

浜口:国内で勝つことが自動的に国際市場で負けることにつながる構図になってしまったわけです。

櫛田:実は、日本の携帯というのは80年代に北米市場の7〜8割のシェアを取っていた。あの頃の機能は、単純な通信だけできればいいというものでした。


浜口:それがキャリア主導でどんどん先行していったが、アメリカのキャリアもヨーロッパのキャリアもメーカーも、ガラパゴス携帯の進化には追随しなかった。それが後継者のいない先行者というわけなのですね。

櫛田:ITの世界ではほかにもISDNとかデジタル放送の方式など、ガラパゴス化の例はたくさんあります。デジタル放送の日本規格をブラジルが採用したといって日本政府が喜んでいるという話がありますが、ブラジルでは韓国サムスン電子のテレビが一番売れている。一体それは意味のある規格なのかどうか。意味のある規格でガラパゴス化をどう防いでいくのかといった考えが必要になってくるわけです。

日本が先行することがグローバルでは有利に働かない

浜口:通信業界が体験したことで言うと、日本はISDNや光ファイバーの敷設を全国的に進めた。ところがアメリカでは地下配線が結構たくさんあって、それを引き直すことが事実上難しいので、既存の電線を活用できるXDSLで行こうという話になる。当時私は、それはあくまで中間解であって、いずれはアメリカも光に移行すると当然のように考えていたわけ。

櫛田:ところがそうならなかった。

浜口:その通りです。そのうちに、今度は無線の方でLTEのような通信規格ができてきて、もう光ファイバーを引かなくても高速通信ができるようになりました。ラストワンマイルが問題だと言っていたのも無線ですべて解決してしまった。テクノロジーの世界では5〜10年のスパンで見るとそういうことが起きてしまうわけです。

櫛田:私も日本がブロードバンドで急速に発展したのに危惧を感じていました。最初はこれだけ速くなってびっくりしたのですが、では高速なネットワーク環境があるとどのようなイノベーションが発展するのかという話になる。

 ところが世界のほかの国は(韓国など一部を除いて)どこもナローバンドだから、日本国内でのイノベーションが国内止まりになってしまう。一方で、アメリカのグーグルのような軽いサービスが世界中に浸透する。

浜口:ナローバンドの国の方が圧倒的に多いですからね。

櫛田:一番がっかりしたのは、携帯でのガラパゴス化が進んだときに、それが文化論になってしまったことです。欧米の人はこんなことはやらない、日本の文化だと。ところがiPhoneがでると全世界の人がiPhoneアプリを使うわけです。

浜口:文化でもなんでもなかった。便利になったら世界中に広がった。

櫛田:アップルが良かったのはソフトよりも交渉力でしょう。アメリカでは音楽配信会社がどういう規格でやるか意見が割れていたところをアップルがみんな取りまとめました。

浜口:iPhoneではアップルがコンテンツを結構コントロールしているけれど、グーグルのアンドロイドは自由にやらせている。この違いはどう考えるべきですか?

櫛田:面白いことに、多くの開発者からはグーグルよりもアップルの方が人気があります。アンドロイドは自由度がありすぎて、画面のサイズなどが違うものを8種類ぐらい開発しなければならない。しかもiPhoneアプリのビジネスの方が儲かるらしい。

 グーグルのような完全なオープンがいいというわけではなくて、アップルの場合オープン・バット・オウン(所有されたオープン系)と呼ばれているのですけれど、オープンとクローズの間でオープン寄りだからたくさんコントロールされてもそれはそれでいいのではないかという話になっているところが面白いわけです。

自動車業界が直面する新たなガラパゴス問題

浜口:私が最近気にしているのは電気自動車の世界で、コンセントの規格がどうも、日本が今やっている規格とグローバルな規格が違うものになりそうだという話があります。

櫛田:問題はそこが重要なところかどうかだと思います。先ほどの通信の例えを自動車の世界に当てはめてみましょう。未来の日本では、自動車が道路と信号機に連動するような形でスマートカーとして発展していったとします。それは日本の中では非常に良いサービスを提供するのですが、メーカーがそこで競争しても、グローバルには車と連動するインフラがない。そういった進化に向かう場合には注意が必要です。

浜口:ではコンセントはどう考えますか?

櫛田:あまり詳しくないので考え方だけ整理させていただくと、比較的安い変換機を入れれば簡単に互換性を確保できてしまうものなのか、それともコンセントが決定的な日本市場孤立の要因になってしまうのかがポイントです。今、カリフォルニアで議論になっているのは、電力のインフラが古いので皆がプラグインハイブリッド(PHV)を使うようになると電力インフラが持たないという点です。

浜口:インフラを誰がどうコントロールするのかという議論とコンセントの規格議論には関係があるわけですね。

櫛田:おっしゃる通りです。トヨタからしてみれば、トヨタが電力インフラをコントロールすると言うかもしれない。電力会社はいやいやわれわれがコントロールする責任があるという。そしてシスコシステムズのような企業が、わが社が一番うまくやれると言い出すわけです。

 現実には世界各国でシスコシステムズのようなネットワーク機器の会社が電力網のコントロール処理を狙っている。そのような背景があるにもかかわらず、もし日本でトヨタや日産でもなく、東京電力や関西電力が独自のスマートグリッドのコントロール方式を発展させようとしたら、日本の電気自動車のインフラはガラパゴス化してしまうかもしれない。

浜口:そういうメカニズムを理解して行動することが企業にも国家にも求められるわけですね。

アメリカのホワイトカラーが強くなった理由

浜口:アップルの例でも自動車産業の例でも、アメリカにはグローバルな利害関係者をまとめていくタフな交渉者がたくさん育っているのが気になるところです。それはなぜでしょうか。

櫛田:グローバルな流れで見ると、80年代に製造業でアメリカは日本に負けてしまったというところから始まっています。負けたアメリカは西海岸だけを見ても工場がどんどんなくなった。アメリカのグローバルな製造業では、最初にブルーカラーの仕事が海外に移転して、次にアウトソーシングなどでホワイトカラーの付加価値の低い仕事がインドなどに移転してしまいました。

浜口:これは、日本ではできないことですね。

櫛田:はい。アメリカでは物理的に現地にいないとできないサービス業など以外、比較優位のない人のやる仕事は海外、つまりもっと所得水準が低い国に行ってしまうわけです。そうなると製造業には一番競争力のある人だけが残った。その人たちが何をするかというと、ものづくりではなく、デザインや高度なビジネスモデルの構築、つまりものすごく付加価値が高い仕事をするようになる。

浜口:アップルがやり遂げた音楽配信業界を束ねるような仕事はその象徴ですね。

櫛田:アップルでいうとサプライチェーンもそうですね。物は作らないが設計はアップルが行う。でも他社に作らせる場合どうしても情報が漏れてしまう。それを漏れなくするためのコントロールがアップルの場合はきちんとできています。

浜口:競争の結果、製造業は日本に負けたが、逆にそのことによってアメリカのホワイトカラー上位層の競争力が上がって、日米でものすごく差が広がってしまったわけですね。

櫛田:はい。それがアメリカ国内でも問題になっています。アメリカは世界中からいい人材を「いいとこ取り」してしまうので、所得が二極化するだけでなく、スーパースターがどんどん海外からやってきて上の方の仕事を取ってしまう。アメリカの普通のホワイトカラーの人はどんどん居場所がなくなっていく。それが共和党と民主党の政治論争の中心になっているぐらいです。

浜口:日本の製造業も、製造部分はもう中国や東南アジアに押されてしまって、これからはアメリカと同じ道を歩むのかと思えませんか。

櫛田:外から見ていると、大手メーカーはファイナルアセンブリー(最終組立工程)の部分だけ日本に残して生き残ろうとしているようです。が、実はそこも比較劣位だというように見えます。比較優位があるのはロボットや工作機械のような分野。知人がエルピーダメモリのサプライヤーをやっていて、そのエルピーダの業績が悪いというので心配していたら、サムスンの方がエルピーダよりもずっとたくさん取引してくれるので問題がないというぐらいです。

 ただ問題は、そういった比較優位のある製造業は皆、中堅以下の規模の企業だということです。だから産業全体の視点で言うと、日本のホワイトカラーはグローバル人材へと変わっていく必要があるのでしょうね。

(特別対談の後編へ続きます)

日本のお家芸「おもてなし」を改めて考えてみる

 対談を通じて強く感じたことだが、確かに日本の製品やサービスは高品質を追求し、日本国内では高く評価されているのだが、世界では必ずしも通用しない。ユーザーの高い要求を通じて発展してきた日本国内の成功体験が、世界の多くの国では要求されてもいないし、インフラの問題で実現自体が困難だという事情がある。

 例えば以前、ある新興国の研究者が日本の気象システムを参考にしたいと研究に来られたことがある。わが国が誇る気象サービスの仕組みをじっくり見ていただいたが、結果としてはその新興国の研究者は「これは高度すぎてわが国の参考にできない」と残念そうに語って帰られた。インフラが伴わないその国では日々の気象予報もままならず、日本の優れた気象サービスに学べるところがなかったというのである。

 このことを良い側面として捉えれば「日本のサービスは世界から先行している」と言うこともできる。ところが櫛田さんは別の側面から、「日本が世界に先行しすぎていることでガラパゴス化が起きている」と言う。この櫛田さんの視点は興味深い。


 片や、旅館の加賀屋に代表されるような“おもてなし”だったり、宅配便の時間指定で配達するサービスといった、厳しい競争の中で伸びていったものは、海外の進出先でも通用している。そもそも高品質というが、品質を分解して考えてみると、人々が快適と感じるような“おもてなし”と、いたずらに多機能であるとか高信頼性であることは違うものであり、行き過ぎた多機能、高信頼性は世界が求めている品質ではないのかもしれない。

 “世界のどのようなインフラの国でも販売できるサービスを開発する”ということを重視すれば、日本だけがガラパゴス化して世界を置いたまま先走るようなことにはならないのではないだろうか。その意味で日本企業は国内の超競争状態に目が行きすぎていたのではないか。日本が誇る「カイゼン」は、部分最適に目が行く会社員を多数育てているのだが、それは結果としてグローバルな全体最適に目を向けることを邪魔してしまっているのではないだろうか。

 “グローバルなおもてなし”とは、例えば高齢者が初めて商品を手にしてすぐ使えるように機能設計されているか?といったことかもしれない。初めて携帯を触った人にとって、ガラケー(ガラパゴス携帯電話)の高機能・多機能と、スマホ(スマートフォン)の機能のどちらが使いやすいかということが、全世界のお客様が日本企業に問うていることなのだ。

 ないしは“世界におけるもっとローカルなおもてなし”も必要かもしれない。例えば中国農村部では野菜を洗える洗濯機をアジアのメーカーが作っている。先進国ではない国や地域の顧客に対するサービスに目を届かせるのもグローバルなおもてなしの1つの側面であるはずだ。

 いずれにしても最初から日本国内での競争を考えている企業と、最初からグローバルで売ろうと考えている企業の差が出る時代が来たわけだ。その世界において、アメリカのホワイトカラーが以前よりもはるかに強くなったという櫛田さんの指摘は傾聴に値する。グローバルに通用するおもてなしを考えられる強い競争相手に、われわれもグローバル競争の中で向き合う必要がある。

 特別対談の後編では、そのようなグローバル競争力をわれわれはどう身につけていくといいのかについて対談が進行していく。ぜひ楽しみにしていただきたい。


浜口 友一(はまぐち・ともかず)

NTTデータ相談役、情報サービス産業協会(JISA)会長。京都大学工学部卒業後、日本電信電話公社(現NTT)入社。NTTデータの公共システム事業本部などを統括後、2003年に同社代表取締役社長。2007年より取締役相談役。IT業界のトップという立場から、人材力について常に問題意識を持ち続けている。著書に『社員力――ITに何がたりなかったか』(ダイヤモンド社)、『ニッポンのITその未来』(日本経済新聞出版社)。


浜口友一のグローバル人材力って何だ!?

日本企業はここ数年で加速度的にグローバル化への対応を迫られている。著者は今回、グローバルな社員力とIT(情報技術)の最新事情について知見を得るため、経営コンサルタントの鈴木貴博氏(百年コンサルティング代表取締役)と一緒に2週間の海外調査を敢行した。主に欧州とアメリカを中心に、延べ30名以上の有識者と非常に有意義な意見交換をすることができた。
今回の連載はそこでの体験を踏まえて、これからの日本人がグローバルな場で人材力を発揮していくためにどうすればよいのだろうかというテーマを論じていく。いくつかの異なる視点から問題提起を行い、解決のヒントを提示していこうと考えている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120704/234126/?ST=print


和田秀樹 サバイバルのための思考法
うつ病になりやすい思考パターンとテレビ問題
2012年07月06日  RSS 
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 本コラムのテーマは、サバイバルのための思考法である。

 読者の方々の年齢層が想定できないが、仮に40歳より若い方だとすれば、一番命を奪っている原因はなんであろうか?

メンタルタフネスを身につける
 がん、心筋梗塞、メタボ、いろいろなことを想像されるかもしれない。

 聡明な読者の方であれば、病気でなく、原因と聞いているので、この年代までなら、病気より事故死が多いと思うかもしれない。

 前置きが長くなったが、正解は自殺である。

 逆に考えると自殺しないメンタルタフネスを身につけることが、この年代までの最大のサバイバル術ということになる。

 自殺者が年間3万人以上(東日本大震災の死者・行方不明者の1.5倍を上回る)の日本では、自殺予防は政府がようやく本腰を入れ出した問題である。

 基本的には自殺予防は、2大原因であるうつ病とアルコール依存症の対策ということになる。ただ、日本では、まだまだアルコール依存などの依存症は意志の問題とされることが多い(覚せい剤のようにものすごく依存性の高いものでさえ、元タレントなどのように累犯者は「意志が弱い」と断罪される。しかし、我々精神科医の目から見ると、依存症というのは意志が弱いのでなく、意志が壊された心の病である)。このため、とくにうつ病対策が自殺対策の肝と考えられている。

Next:サバイバルのためのうつ病予防策

サバイバルのためのうつ病予防策
 実際、高齢者に関しては、わが国でも、自殺予防活動によって地域の高齢者や家族を啓蒙し、うつ病が疑われる場合には医者に早めに行かせたり、あるいは保健師がうつ病の可能性のある高齢者を定期的に訪問するなどして、自殺を7割も減らしたことがある。

 そこまでドラスティックでなくても、きちんとしたうつ病対策をすれば、日本の自殺は3割くらいは減る(そのくらい減ると、普通の先進国並みになる)と考えられていて、そのあたりを自殺予防の専門家は目標にしているようだ。

 うつ病というのは、自殺までいかなくても、仕事の能率を確実に落としたり、長期休職の理由になりかねない。また、医者の立場から見ても、本人にとって、ものすごく辛い病気だ。

 だから、職場でのサバイバルなどのためにもうつ病の予防は重要なことになる。

 ということで、今回は、うつ病の予防法を考えてみたい。

Next:ものの見方、考え方を修正する

ものの見方、考え方を修正する
 うつ病というのは、基本的には、セロトニンという神経伝達物質の不足によって起こる生物学的な病気と考えられている。

 だから、当然、この病気になった時には、脳内でそれを増やす薬が効くし、原則的には薬を飲む必要がある。

 ただ、ある種の不適応な考え方のパターンの人は、うつ病になりやすいし、なった後に悪くなりやすい。だから、うつ病患者の治療として、その手のものの考え方を修正するのが有効であるし、また、うつ病になる前であっても、この手の思考パターンを修正しておくと、ある程度(完全とは言わないが)、予防になると考えられている。

 このようにものの見方、考え方を修正することで、うつ病を治療したり、予防したりするというのは、認知療法というカウンセリング法の基本的な考え方だ。

 ちなみにこの認知療法というのは、いろいろなカウンセリングの流派があるが、米国では統計学的に有効性が確認された数少ない精神療法で、日本でも2010年4月から保険適応になっている。

Next:白黒、敵味方に完全にわけて考えてしまうパター..

白黒、敵味方に完全にわけて考えてしまうパターン
 では、この認知療法で修正すべきとされている、心に悪い考え方のパターンとはどんなものか。代表的なものを紹介してみよう。

 二分割思考というのは、白でなければ黒、味方でなければ敵と、いろいろなものについてグレーを認めず、二つにわけて考えてしまうパターンだ。

 こういう考え方を持つ人は、味方だと思っていた人が自分の批判を少しでもすると、敵になったと認知してしまう。いつでも意見のあう人などまずいないから、周りが敵だらけになってしまう。

 この二分割思考に完全主義がくっついてしまうと、満点でないと0点と同じという発想になるから、やはり落ち込みのきっかけが生じやすい。さらにうつ病になった場合などでも、少しよくなっても完全と思えないから、回復が喜べず、かえってうつの治りが悪くなる。

 ちなみに、残念ながら世の中というのは、100%完全とか、100%安全というものはない。普通に外を歩いているだけでも、ある一定の確率によって交通事故で死ぬことになる。これがゼロにならないと怖くて外を歩けないというのなら、心の病という風に言われても仕方がない。低い確率の危険については、それを無視できることも重要な人間の能力と言える。

 また、完全な悪人とか完全な善人などというのもいない。人にはそれぞれいい面も悪い面もあると思えなければ、通常の人間関係は営めないし、完全な善人の存在を信じすぎると、それこそだまされやすい人になってしまう。

Next:思い込みで決めつける、一部を見ただけで一

思い込みで決めつける、一部を見ただけで一般化する
 読心とか占いというのは、相手の気持ちや将来のことを自分の思いこみで決めつけてしまうものだ。

 相手に確認したり、周囲から情報をきちんと取っているわけでもないのに、相手が自分のことを嫌っているに違いないという思いこみなどがそれにあたる。あるいは、リストラにあうとこの先は絶対にまともな職業につけないと思いこんだり、失恋すると将来、二度と同じレベルのパートナーに巡り会えないと決めつけるのもこのパターンである。

 こういうタイプの人は、うつ病になりやすいし、落ち込んだ時に立ち直りにくいのは感覚的にわかるだろう。

 過度な一般化というのは、一部を見て、全部それにあてはまるというような考え方だ。

 相手が、ちょっと不機嫌なふるまいをしたとか、自分を無視するような態度をとった際に、いつもそうだとか、全面的に自分を嫌っていると考えたとしたら、これに当てはまる。

Next:いい面も否定する、かくあるべきが強すぎる

いい面も否定する、かくあるべきが強すぎる
 肯定的な側面の否定というのは、自分や相手にいい面があっても、それを取るに足らないと考えて、否定的な見解が変わらないことだ。

 自分なんて無能だと思い込んでいる人が何かうまくいくことがあっても取るに足らないと思いこむし、嫌っている人が少しでも親切な行動をしたときなど、あんなものは偽善に決まっていると考えるようなパターンだ。

 should思考というのは、かくあるべきが強すぎるパターンだ。自分は常に明るく振る舞わなければならないなど、自分に対してshouldの規制が強すぎると、そうはいかないときに落ち込みの原因になる。

 これまでいくつも並べてきた不適応思考だが、この手のものに自分が当てはまると思った場合は、それを修正することが心の病の予防につながると考えてほしい。

テレビばかり観ていると悪い思考パターンに陥ることも
 さて、テレビというのは、わかりやすさを求めるために、人のことを敵と味方とか、正義の味方と悪い奴というように二分割でとらえやすい。さらに占い、読心、過度な一般化、肯定的な側面の否定、should思考など、すべてがテレビの演出やコメンテーターの発言によく見られる思考だ。

 テレビばかりを観ていたら、ついついこの手の思考パターンに脳のソフトが書き換えられるなどということは、珍しい話でない。

 だから、テレビで、たとえばある政治家(今なら小沢一郎氏だろうか)がコテンパンに叩かれているのを見たら、それに感情的に同調するのでなく(このような情緒的判断も、心に悪い思考とされている)、人間にはいい面も悪い面もあると考えるようにするのがメンタルヘルスにはいい(もちろん、思考パターンも成熟する)。

 原発のようなものでも、100%の安全を求めるのは、さすがに完全主義思考のパターンといえる。危険が1万分の1ならいいのか、火力や水力と比べて危険が小さければいいのか(水力発電でも、水をためすぎて水害が生じることはある。昨年の和歌山の水害は、この影響が大きいとされるし、実際に死者が出ている)――というようにいろいろ考えてみることが必要だ。

Next:どの程度の危険なら許せるかを考える

 こういう風に考えながら、どの程度の危険なら許せるかを発想するのが、少なくとも、心のサバイバルのためには肝要なことだ。

 もちろん、高齢者と小さな子どもを持つ親とでは、危険の基準が違って当然だ。ただし、小さな子どもを持つ場合でも、世の中にリスクゼロはあり得ないと思うことも必要である。

 この手のテレビ的思考パターンの危険性とその対処法を、拙著『テレビに破壊される脳』(徳間書店)という本に書かせていただいた。興味のある方は参考にしてほしい。

和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年生まれ。
 東京大学医学部卒、東京大学附属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。  『テレビの大罪』(新潮選書)、『人は「感情」から老化する』(祥伝社新書)など著書は多数。
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オダジマタカシがテレビのニュース番組を仕切る日

シーズン4・『いつだって僕たちは途上にいる』プロモ編その3

2012年7月10日(火)  岡 康道 、 小田嶋 隆 、 清野 由美


『いつだって僕たちは途上にいる』(岡康道×小田嶋隆)
 3回に渡ってお送りして参りました、本連載がベースの単行本『いつだって僕たちは途上にいる』(講談社)刊行プロモーション企画、「人生の諸問題・シーズン4」もいったん今回で一区切り。五月雨式に連載してきた岡康道さん、小田嶋隆さん、そして清野由美さんの「人生の諸問題」、開始からあとひといきで5年です。ご愛顧本当にありがとうございます。
 おかげさまで本もこちらの「シーズン4」も好調に読んでいただいております。今回でまたしばらくお別れですが、小田嶋さんのニュースキャスター進出などまだまだ話題が尽きないこのおふたり、また近いうちにお目にかかれると思います。ということで今回も、まったりとお楽しみください(担当Y)
(前回から読む)

「人生の諸問題」単行本第3弾『いつだって僕たちは途上にいる』刊行を記念して、ウェブ時代の新メディアとの付き合い方についてお話を続けています。前回の最後には、もうここまで普及したら、「どう付き合うか」というテーマで話すこと自体が、おじさん、おばさんである、ということが分かりました。

小田嶋:そう。本当に俺らのクラス会では驚くほどSNSの話題なんて出なかったですから。

どのくらいが世代の分水嶺だと思われますか。

小田嶋:「北の国から」の脚本家の倉本聰が、携帯電話が大嫌いな人でね。いつだったかの回で、アンチ携帯電話派を利する方面の、実にすごいストーリーを書いていましたよ。


クリエイティブディレクター 岡 康道氏
(写真:大槻純一)
岡:そんなのあった?

小田嶋:携帯にかかりっきりになって、普通のコミュニケーションが取れなくなったやつが富良野にやってきて、という設定なんだけど、つまりオチは、そんなものにかかずらわっていたら人間がだめになる、みたいなことでさ。あれを観て、ああ、この先生はいつの間にか、こんなことになっちゃって…と思った。

岡:金八先生でも、覚醒剤中毒になった中学生が描かれていたけど。

小田嶋:まあテレビドラマにおける社会問題の提起なんだけど、倉本聰のそれは、あまりにもステレオタイプな描き方だったので、この人もずっと富良野に引っ込んでいるうちにこうなっちゃって、たまに東京に出てきて携帯をいじっているやつを見て、頭に来たんだろうな、って。

岡:それはある意味、分からないでもない。

携帯厳禁のゴルフクラブは実在する

小田嶋:頭に来たのまでは俺も分かるんだけど、それを脚本に導入して、これは悪魔の機械である、みたいな形になっちゃうのは、これはやばいな、と。

岡:僕が会員になっているゴルフクラブも携帯電話禁止なんですよ。そこでは僕が若造の部類で、きみは髪が長過ぎる、とおじさんたちに怒られたりしている。だから携帯禁止もマナーというよりは、あれ、おじさんたちにはもう訳の分からないものだから禁止、ということだと思うんだよ。

小田嶋:この間、どこかで「電車の中での迷惑行為」についての統計調査を見たんだけど、1998年ぐらいの第1位は当然のように携帯電話だった。それが2004年ぐらいになると、2位になっていたんだよ。

04年時点の1位は何ですか。

小田嶋:座り方だったかな。座り方と、大声でのおしゃべりは昔から上位圏で、去年ぐらいだと電車の中でのしゃべりの方が1位で、2位が座り方だった。それで携帯電話は5位ぐらいに後退していた。だからみんな、携帯にはずいぶん慣れちゃったんだな、と思ったんだけど。

岡:というか、メール主流になったからでしょう。

小田嶋:それもあるけど、要するに今まで見たことのない行為というのは、それが社会に定着するまで、みんな嫌悪感を持つものなのよ。例えば満員電車で新聞を広げられるのって、すごく迷惑じゃない? でもそれは昔からある迷惑で、みんな昔から我慢しているから目立たない。だけど携帯電話というものが世の中に初めて現れたころは、こいつ何よ、という感がとても強かった。

岡:それはあったよね。

小田嶋:それが今みたいに普及しちゃうと、すべての携帯通話が嫌だ、というふうにはならない。電車の中で電話を受けたやつが「今、電車の中なので、悪いけど後でかけ直すね、ぷつん」とやることに対しては、別に怒ったりはしないでしょう。

岡:その程度だったら、まあお互いさまの範囲だよね。

車内で電話するのは、実はおじさんとおばさん


コラムニスト 小田嶋隆氏
(写真:大槻純一)
小田嶋:時々、そういうふうに電話しているやつに、おじいさんがキレてトラブルになって、それでそのおじいさんが返り討ちにあって、新聞ダネになったりしているけど。多分、心臓ペースメーカーを入れている人にとっては、電車の中での携帯は、メールでも通話でも、とんでもなくけしからん行為なんだけど、それは別にして、20代のやつらからすると、仮に電車で通話しているやつがいても、これの何が迷惑なの?という感じなんじゃないかな。

岡:それで言うと今は、中高年の方が携帯のマナーが悪いという説がある。若い子は用件をメールで済ましちゃうけど、中高年は、「もしもし、今電車なの。もう少しで着くから」とか、平気で大声で通話している、と。

小田嶋:老眼になると携帯メールに対する親和性が著しく低下するから。

岡:そうなんだよね。いちいち老眼鏡をかけないといけないから、面倒くさいんだよね。

スマホどころか、らくらくホンが目前ですね。

小田嶋:俺も、もう液晶画面の小さな文字には耐えられなくなっています。

話をちょっと戻すと、倉本先生は携帯の中毒性について警鐘を鳴らしたかったのではないですか。

小田嶋:そうね。あれは確かに依存というものを含んでいますからね。俺にしても、軽井沢みたいなところに2〜3日いると、本当に狂いそうになるもんね。

ネットをよこせ、うう、と。

小田嶋:うん。今ではみんな海外の秘境に行っても、「マチュピチュなう」だし。

岡:とんでもない。

その反動で、最近はネット断捨離みたいな話も出てきています。ある一定期間、フェイスブックやツイッターを一切やらない時間を作った方がいい、というように。

あまり知らない人の近況はうっとうしい

小田嶋:やっぱり一度手に入っちゃったものを手放すというのは、すごくつらい。昔は、付き合っている女の子と1週間ぐらい連絡が取れないということは、あり得た話だけど、今は、そういうことはあっちゃいかんという前提でしょう。1週間連絡してないということは。

岡:もうそれで終わりだよね。

小田嶋:1週間コンタクトがないという時点で、もうこの人はいないものだ、とみなされて。

岡:逆に、フェイスブックとかだと、誰だか分からない人たちまで、友達の友達とかになって、知りたくもない近況まで来るようになって、あれはあれで非常にうっとうしい。

小田嶋:そうだよね。ミクシィが下火になったのも、そこがあるからでしょう。だからあれですよ、フェイスブックが出てきて以降、みんなネットには誰に見られても恥ずかしくない話しか書かなくなった。それ以前はネットって何か本音メディアみたいな扱いだったんだけど。

岡:本音なんか出せないですよ。クライアントの悪口なんか書けるわけがないでしょう(笑)。

小田嶋:ミクシィでは昔、こっちのコミュとこっちのマイミクで出す話は全然違って、というのがあったけど、フェイスブックの中でもそれはやっぱりあるわけで、高校のクラス会みたいな場所で、ぶっちゃけ、あいつってばか、みたいな話をするところと、清潔なことを言っているところと、二つあるわけですよ。

岡:それも面倒くさいよね。人格の使い分けみたいで。

小田嶋:ただそれは、我々にしても実生活でもやっていることで、何かの会議に呼ばれて「復興とはこうあるべきじゃないでしょうか」と述べている清潔な小田嶋さんと、高校の仲間で集まって、ばかを言っているどうしようもない小田嶋さんとがいて。

岡:そのあたりで、プライバシー感覚の線の引き方をちゃんとわきまえないと危なくなったし、あとネットというものを広告に使う場合でも、すごくいろいろ考えなきゃいけなくなった。広告では、フェイスブックにファンページを作ってファンを持ちましょう、ということが流行しているけど、わざと反論すれば、ネットで検索してもなかなか出てこない、連絡が簡単につかない対象の方が、逆にカッコいいということだってあり得る。

小田嶋:そのリテラシーというのは、もしかしたら、これから学校で教えないといけないことなのかもしれません。

そう言っている中でも、小田嶋さんは文字通り地雷を踏んで読者のみなさまから喝采を浴びていますが。

御用コラムニスト、オダジマタカシ

小田嶋:例えば俺みたいな者が「日経ビジネスオンライン」で陰謀論がどうとかだよ、というコラムを書くと、「ほら、陰謀論を偽装して情報操作をする輩が現れた」みたいな、そういうさらに一回りした陰謀論という、すごいことを言う人が出てきたりして。

日経の御用ライター、小田嶋隆って。

小田嶋:マスメディア側の人間にとっては、ゆゆしい事態ですよ(笑)。

岡:いや、すごい時代になったね。

例えば「日経ビジネスオンライン」の「ア・ピース・オブ・警句」を読んだ50人の方が、フェイスブックで「いいね!」を付けてくれたとすると、その50人から数百人ずつ「いいね!」が拡散していき、最終的にフェイスブック内では5000人ぐらいが小田嶋さんのコラムを読むことになる、というようなデータ分析があります。

小田嶋:そういうネズミ講みたいな話は出てきている。

岡:とすると、「小田嶋隆」という名前は、ツイッターやフェイスブックが発生したことによって広まって、それで小田嶋の本って売れたの?

小田嶋:俺のここ最近の2冊が珍しく増刷したのは、もしかしたら、その効果はなきにしもあらずかもしれない。それは、今まで出していた本と違う客層が付いてくれた、ということじゃないかなと思うところはある。

岡:じゃあフェイスブックとかツイッターには、経済効果があるということか。

小田嶋:ニッチなやつほど意味がある。逆に言えば、そもそもグローバルな知名度もあれば、グローバルなファンも付いているという人間は、今さらそんなマイクロメディアに入ったところでしょうがない、と言うこともできる。

岡:ネットの発達で、ひどいことも平気で言われるようになったよね。例えばツイッターにしても、小田嶋の文言に絡む人たちがいるじゃない。小田嶋に絡んで、小田嶋が少しでも反論したら、「オダジマ、何だ、あれ、キレてやがるぜ」と、そういうことを面白がるというか。そういうのって、大変じゃない?

あれはむしろ小田嶋さんのことが好きなのだ、という説が近年は有力です。

岡:本当か。

分かりません。

その例えはいくらなんでも

小田嶋:それってどういうことかというと、その人たちって、もし小田嶋隆という人に会ったらファンの態度を取る人なんですよ、極端に言うと。

岡:そうなの?

小田嶋:それでジョン・レノンを撃ったやつも似たようなやつだった。ダコタアパートから出てきて、サインしてくださいと言われて、いいよって言ったら、バンと撃たれた。何だかよく分からない。

どさくさに紛れて、自分をジョン・レノンになぞらえますか。

岡:そうだよ。いくら何でも小田嶋がジョン・レノンであるはずがない。

小田嶋:いずれにしても、俺らのような中高年がネットとどう付き合うのかという問題と、若いやつがどう付き合うのかという問題はまるっきり別で、若い連中にとってのSNSって、我々が見ているものとは違う世界だ、という話です、ざっくりまとめると。

岡:ほら、僕、去年しばらく、もぐりで文学部の講義に通っていたじゃない? 今さ、大学では休講のお知らせって、すべてメールで流す。でも僕は当然のことながら、そういうものを受け取れないで、忙しいのに高田馬場まで来て、あれ、休講なのに、俺、ここにいる?ということがあった。

小田嶋:それ、いわゆる絵に描いたような情報弱者じゃないか。

岡:…。

その岡さんにうかがいたいのですが、既存のマスメディアと言われているものに関する仕事上の実感はいかがですか。

岡:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌は、総体的に見れば、どれも徐々に徐々に力を失いつつある、と言っていいと思うんですね。だって人が情報に触れる比率が変わってきているわけだから。だけど、かといってテレビのチャンネルがなくなったわけではないし、部数は減りましたけど雑誌もしかり、新聞社だって倒産したところはないわけだし。

現時点では。

岡:だから下げ止まるというか、なくなりはしないんだろうな、と。なくならない以上、広告メディアとして最も影響力があるのはやっぱりテレビスポットなんですよ。

小田嶋:そうですね。だから、唯一でなくなったけれども最大ではあるということ。

岡:そうだと思う。

小田嶋:オンリーである部分をすごく失ったけれども、モースト・ビッグではある、と。

ビッゲスト。

マス媒体、やや復活?

小田嶋:そうそう、ビッゲスト。

岡:結局ウェブがどんなに浸透したと言っても、何かの広告キャンペーンがウェブだけでヒットした事例なんかないんです。

新聞の存続はどうですか。

岡:確証はないけど、テレビのワイドショーにしても情報番組にしても、結局、ニュースソースは新聞じゃないですか。

小田嶋:新聞はまずい部分もたくさんあると思うけど、大丈夫な部分というのは、記者をたくさん抱えていて1次情報に接触する機会が圧倒的に多いというところだよね。ニュースを作る部分は、今でもそこが一番でかいわけじゃないですか。それは依然としてやっぱり必要とされている部分なんだけど。一方、あの部数を紙に刷って、宅配制度でいちいち配り回るんだという産業基盤が、もしかしたらこれからはなくなっていくのかな、って。

岡:テレビはむしろぐるっと一回りして、ネットと親和性が出てきて、キャンペーン効果も上ってきましたよね。テレビは広告の兵器的にみても、やや復活しているんですよ。

小田嶋:俺、この4月から「朝日ニュースター」というテレビのCSのあれで、番組をやっているんです。

一同:おお。

小田嶋:朝日ニュースターというのは、朝日新聞の子会社だったらしいんだけど、それをテレ朝が吸収したということで、いったん番組を総入れ替えすることになって、その中で「ニュースの深層」という番組だけは形を残したという。まあ、予算があまりにもないんです、という話なんだろうけど、それを5人のキャスターが回すということで、そのうちの1人に俺があれしたのよ。

時代の要請か、人材の払底か?

小田嶋隆がキャスターに就任。時代が激しく転換していることを感じます。

岡:そうだよ。イメージで言ったら、むしろ僕の方が自然なのに、何で小田嶋なんだよ。

一同:まあまあまあ。

小田嶋:俺の守備範囲として、あんまりニュース方向じゃなく、カルチャー寄りということで。

テレビもついに民主化の時代に突入したということですね。

 時代の変化とメディアの変化は、ともに予測がつかないもので…。その中でも不動なのは、高校時代の同級生同士による、どうしようもない会話。シーズン4の再開をお持ちください。それまでの間は、ぜひ単行本でお楽しみを。

「青春」という言葉にきゅんとするあなたに


かつての高校の同級生が語り合う「人生の諸問題」から生まれた3冊目の書籍、『いつだって僕たちは途上にいる』。『人生2割がちょうどいい』『ガラパゴスでいいじゃない』と主張してきたふたりと、呆れつつも暖かく伴走してきた清野由美(今回、帯でブチ切れていますが。なにかあったのでしょうか)。しょうもない話が一気に高尚に駆け上り、それ以上の速度で駆け下りる独自のリズムの対談を今お楽しみいただけます。心の中に永遠の中学二年生がいる皆様と、そんなオヤジたちが理解できない、もしくは理解したいと考えている健気なあなた、両方を満足させる一冊です。


岡 康道(おか・やすみち)


クリエイティブ・ディレクター、CMプランナー。
1956年生まれ。80年早稲田大学法学部卒業後、電通に入社。CMプランナーとしてサントリー「BOSS」「南アルプスの天然水」、JR東日本「その先の日本へ。」など、時代を代表するキャンペーンを手がける。97年、JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。
99年に日本最小最強のクリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を川口清勝、多田琢、麻生哲朗とともに設立。主なクライアントに、サッポロビール、大和証券、富士ゼロックス、リクシル、NTT東日本、大和ハウス、NTTDoCoMoなど。TCC最高賞、ADC賞、ACC賞、ニューヨークADC賞、クリオ賞など受賞多数。TCC会員、ニューヨークADC会員。現在、雑誌ポータルサイト「magabon」にて、エッセイ連載中。近著に「ノンタイトル」(電子書籍)

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。
1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。国内外の都市開発、デザイン、トレンド、ライフスタイルを取材する一方で、時代の先端を行く各界の人物記事に力を注ぐ。『アエラ』『朝日新聞』『日本経済新聞』『日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)』などで執筆。著書に『セーラが町にやってきた』(プレジデント社/日経ビジネス人文庫)、『ほんものの日本人』(弊社刊)、『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(集英社新書・隈研吾氏と共著)『「オトコらしくない」から、うまくいく』(佐藤悦子氏と共著・日本経済新聞出版社)など。

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。


人生の諸問題

日本語は今や、ウェブ上で全世界でもっとも流通している言語だといわれるまでになった。しかも、読む人間より、書く人間の方が圧倒的に多いのだという。それほどまでに人々が文章を書いている一方で、相手に何かを伝えることの難しさは、むしろ増えているように思える。「誰もが発信者」、そんな史上初のシチュエーションを迎えた今、いったい私たちの「コミュニケーション」はどこに行くのだろう。広告の世界でクリエイティブディレクターとして活躍する岡康道氏と、コラムニストの小田嶋隆氏が、高校時代の同級生という縁から始まった「伝達」について、ゆるゆると語り尽くす…はずだったのだが?

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120628/233913/?ST=print  

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コメント
 
01. 島唄 2012年7月10日 22:38:54 : ZW97PFZHjT5Lg : fajKATDcpM
随分日本のインテリもチャラくなったもんだ。

まあ、B層はそれでも「ああ、なるほどなぁ」となるんだろうね。


02. 2012年7月11日 08:54:47 : t3Rm7fXoSA
「ガラパゴス化」こそ日本が生きてきた道だし、これからもそれしかない。
「グローバル」の後追いは韓国にでもまかせておけばよい。

低学歴・低収入の「B層」までがケータイでネットを使いこなすという社会が
iモードなどによって日本では10年以上前から実現していた。逆に、多くの国では
形だけはスマホでもネット端末としては使いものになっていないケースも多い。

いろんな意味で日本は「追いつき追い越せ」の段階はとうに越えてしまい、
欧米よりも何周も先へ行ってしまった分野が多いんだよ。


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