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Financial Times
ユーロ圏の危機は20年解決できない
2012.07.10(火)
(2012年7月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧州理事会から「歴史的」な声明文が発表された後にリスクの高い資産を買うのは一体どんな人たちなのか、筆者はかねて不思議に思っていた。声明を材料にした上昇相場は数時間で終わることもあれば、数日間で終わることもある。
先日の上昇相場は1週間もたなかった。イタリア国債とスペイン国債のスプレッド(利回り格差)は今、首脳会議前のレベルを上回っている。
間違った方向に大きく踏み出したEU
欧州連合(EU)は先の首脳会議で、銀行同盟に向けた道筋で合意して正しい方向に重要な一歩を踏み出したが、危機の解決については十分なことができなかった、というのが識者や市場関係者のコンセンサスだった。
これには同意できない。筆者はむしろ、EUは間違った方向に非常に大きな一歩を踏み出したと考えている。
首脳会議の結果から論理的に考えるなら、ユーロ圏の危機は20年間は解決できないことになる・・・〔AFPBB News〕
今回の首脳会議は危機解決に向けて具体的な決断を下したが、これは将来の決断に左右される内容になっている。そして、この将来の決断は合意に達するのがさらに難しく、それゆえ失敗に終わる可能性も高いからだ。
首脳会議では、完全な銀行同盟が成立するまで銀行への資本注入を共同で行うことはしないことが決まった。そしてドイツ連銀は、政治統合が行われない限り銀行同盟はあり得ないとクギを刺した。
従って、論理的に考えるなら、この危機は20年は解決されないことになる。
今では、ドイツにはユーロ圏共通の預金保険制度に同意するつもりがないことが分かった。そしてドイツは、欧州安定メカニズム(ESM)に銀行免許を付与してレバレッジをかけられるようにすることにさえ同意できずにいる。
重要な分岐点を越えてしまったドイツの政治
ドイツが現時点で必要最小限のことさえ実行できないとしたら、政治統合に同意できるなどとどうして考えられるのだろうか? これは、今後5年間で飲酒をやめるというアルコール依存症患者の約束よりも信用できない。
ドイツでは、ユーロ救済を巡る政治が重要な分岐点を越えた。辛うじて過半数を超える国民がまだユーロを支持しているものの、過半数は追加の救済に反対している。
Ifo経済研究所のハンス・ウェルナー・ジン所長をはじめとする160人のエコノミストのグループは先週、銀行同盟に反対する声明文を発表した。声明文は怒りの叫びに満ちていたが、この文書の重要性は、大多数の見解を反映しているということだ。
これに対するドイツのアンゲラ・メルケル首相の答えは、示唆に富んでいた。首相は心配することは何もないと言い、銀行同盟の目的は共同監視だと述べた。共同の預金保険制度は設けないということだ。
メルケル首相の銀行同盟の理解は、欧州中央銀行(ECB)のそれとは大きく異なる。筆者の見るところ、この新たな銀行同盟が対象とするのは、せいぜい上位25行の大手銀行で、スペインの貯蓄銀行(カハ)やドイツの州立銀行(ランデスバンク)は国家の管理下に残すことになる。これはまるで、今後は高級コニャックしか飲まないと約束するアルコール依存症患者のようなものだ。
求められている銀行同盟は、ドイツが受け入れない類のもの、すなわち中央による規制と監督、共通の再建基金、共通の預金保険制度を備えた銀行同盟だ。こうした同盟を構築するには、何年もの歳月を要する。適切に実行するなら、各国憲法の改正が必要になるだろうし、ECBの役割を再定義するためにも欧州条約の改正が必要になる。
歴史上最も大きな欧州統合となるプロセスの成功が条件となる危機解決策を定めることは、よもや正気の沙汰ではない。
イタリアとスペインの首相が首脳会議で訴えるべきだったこと
10年物国債の金利が6%を超えている状況では、イタリアもスペインもユーロ圏の一員としての地位を維持できない。これこそが、先の首脳会議でイタリアのマリオ・モンティ首相とスペインのマリアノ・ラホイ首相がメルケル首相にはっきり述べるべきことだった。
モンティ、ラホイ両首相は、政策が変更されないのであれば、両国政府はユーロ圏からの離脱に向けた準備を始めるとメルケル首相に告げるべきだった。危機の解決には、公的部門と民間部門の双方におけるユーロ共同債(あるいは何か別の形の債務の相互化)と、ECBによる国債購入が必要だ。ドイツは前者を認めておらず、ECBは後者を認めていない。
もし何かが持続不能であり、自己修正もしないのであれば、取るべき行動は2つしか残されていない。1つ目は、状況が破綻を来たすまで辛抱強く待つことだ。この戦略を追求しているのが欧州理事会であり、アルコール依存症患者だ。
もう1つは、離脱に向けた準備に着手し、その過程でユーロ崩壊の引き金を引かないよう注意することだ。国内法や欧州の法律で数百件もの法律違反を犯すことなく、ユーロから離脱する道筋は想像できない。誰も離脱していないのは、このためだ。離脱の弁護には、「不可抗力」を訴えるしかない。
ユーロの創設には、10年の歳月がかかった。解体するにも、長い週末以上の時間がかかるだろう。ユーロが崩壊すれば、現代では最大の経済的ショックとなる。だが、解体に関する悪い選択肢のリストの中でも、一部の選択肢は他の選択肢よりましだ。こうした選択肢については、今後のコラムで論じていきたい。
ある意味では「歴史的」な首脳会議だった
筆者は昨年11月、欧州理事会がユーロを救うには、あと10日間しかないと書いた。もしあの時、銀行同盟と財政同盟に向けた基礎を築いていたら、理事会は今、銀行の資本増強と国債購入から成る効果的な危機解決戦略で合意する立場にあったかもしれない。欧州理事会は当時、基礎作りをしなかった。その結果、今、危機を解決する立場にない。
筆者が先の首脳会議から読み取ったメッセージは、ユーロ圏は危機を解決しない、というものだ。その意味では、確かに「歴史的」な会合だった。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35628
キプロスの未来:ギリシャかノルウェーか?
(英エコノミスト誌 2012年7月7日号)
キプロスは、欧州連合(EU)と自国が危機にある時にEUの舵取り役についた。
ガバナーズビーチの熱く浅黒い砂浜に立てば、キプロスが抱える問題と、将来の繁栄への夢、そして政治的な不確実性を同時に目にすることができる。砂浜と海と新鮮なイカは昔から外国人を引き付けてきた。以前は主に英国人だったが、近年は、キプロスの銀行に預金を隠しているロシア人が増えている。
入り江の向こうにはヴァシリコス発電所がそびえている。2011年に、すぐ近くに不用意に放置された弾薬が爆発し、大きな被害を受けた発電所だ。水平線の彼方には、豊富な海底天然ガスが眠っている。この天然ガスは、もうすぐヴァシリコス発電所にパイプラインで送られるかもしれない。
救済申請とともにEU議長国になった小国
ヴァシリコスでの爆発事故と銀行の問題は、キプロスがユーロ圏で5番目の救済申請国となった理由の一端を説明する。
キプロスが今のタイミングでEU議長国を務めることに懸念を表明する向きもある〔AFPBB News〕
運命のいたずらか、トロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行=ECB、国際通貨基金=IMFで構成される調査団)がキプロスを訪れたのと時を同じくして、キプロスは持ち回りによる欧州連合(EU)の議長国の役割に就いた。
ガバナーズビーチから見れば、アテネよりもダマスカスやエルサレムの方が近い。しかし人口わずか85万人の(ギリシャ系キプロス人による)この共和国は、これから6カ月間、EUの運営に携わることになる。
EU本部は、その見通しに苛立っている。キプロスのEU加盟は、島北部のトルコ系住民による国家と、国際的に承認されている南部のキプロス共和国の統合協定が結ばれるまで認めるべきでなかったと考える人は多い。
EUとNATOとの関係は、両キプロスの対立によって麻痺している。EUとトルコとの関係は、キプロスが議長国になる前から険悪だった。これからは部分的に凍結するだろう。
懸念する理由はもう1つある。ドイツのタブロイド紙「ビルト」は簡潔にこう書いた。「破綻した島が欧州の権力を握る」
共産主義政権のディミトリス・フリストフィアス大統領は、キプロスのための救済策の交渉と、危機により迫られているユーロ圏統合の困難なプロセスの両方をさばけるだろうか? 債務国が、債権国による中央統制強化の要求を公平に処理できるだろうか?
恐らく幸いなことに、持ち回りの議長国の重要性は、2009年のリスボン条約以来小さくなっている。EUの首脳会議と外務相会議、またユーロ圏の財務相会議にも、常任の議長がいる。
キプロスの閣僚たちは、他国と同じようにEUの仕事をこなせると主張している。外交官たちは、キプロスの行政は英国の植民地行政官の手腕を継承していると訴える。
爆発事故とギリシャ危機で窮地に
昨年7月、キプロス南部マリで、爆薬倉庫の爆発が飛び火し、煙を上げる発電所〔AFPBB News〕
だが、そうしたキプロスの評判は、ヴァシリコスでの爆発でひどく傷ついた。
2009年に、国連禁輸措置に違反してイランからシリアに向かっていた船舶から、弾薬や軍需品を満載した輸送コンテナ100個近くが押収され、2年近くにわたってヴァシリコス発電所に隣接する海軍基地に積み上げられていた。
このコンテナが爆発した事故では、13人が死亡。南部の発電量の半分近くが吹き飛び、ただでさえ停滞していたキプロス経済は2度目の景気後退に陥った。
損害を受けた発電所はタービンを1台ずつ修復している最中で、2013年までには完全に回復する見込みだ。だが経済の再建にはもっと長い時間がかかるだろう。
キプロスは、2011年に債券市場から締め出され、ロシアから得た短期融資も急速に底を突きかけ、もはや救済を求めるしかなくなった。
キプロスのヴァソス・シアルリ財務相にとって、危機の引き金を引いたのはヴァシリコスでの爆発事故だけではない。「ギリシャで金融の核爆発が起こり、我が国がその爆発に巻き込まれた最初の国となった」
キプロスの銀行はギリシャに対して多額のエクスポージャー(投融資残高)を抱えていた。ユーロ圏では、民間のギリシャ国債保有者に対して「自発的な」ヘアカットが課されたために、キプロスの銀行は同国の国内総生産(GDP)の25%に相当する巨額の損失を被ったと、シアルリ財務相は言う。
だが、キプロスは現在の難局すべてを、事故や他国だけのせいにできない。キプロス経済は、世界金融危機が勃発するまで安定して成長していた。だが、その好景気は持続可能ではなかった。長年続く経常赤字はますます大きくなっていた。小さな島の経済なので、必需品のほとんどは海外から買える。
キプロスのリゾート地、アヤナパのニッシビーチでバケーションを楽しむ観光客〔AFPBB News〕
だが、観光業とサービス業の伸びは、輸入の拡大に追い付いていなかった。特にメルセデスの自動車は首都ニコシアの道路にあふれ、渋滞を引き起こしている。
企業と家計は巨額の借金を抱えている。そして、政府債務は、気前の良すぎる公務員への給与や手当の支払いで膨らんでいる(物価スライドによる昇給が年2回ある)。その一部はロシア、ウクライナ、セルビアからの預金によって賄われた。
だが、トロイカがキプロスの銀行を精査し、ユーロ圏も銀行の集中的な監督に向かっている今、キプロスは魅力を保てるだろうか?
空中を漂う新たなにおい
それでもなお、シアルリ財務相は明るい未来を描く。「1日が経つごとに、天然ガスのにおいをかぐ日が近付いてくる。そのにおいは美しい」。シアルリ財務相によると、キプロスは2017年までに天然ガスを生産するようになり、その2年後に輸出を始めるという。
キプロスは既に、政府系ファンドを組んで将来世代のために炭化水素が生み出す財産を管理するというノルウェーの方法を学んでいる。
理想的な世界であれば、東地中海でのガスの発見は、紛争地域に協力関係をもたらす可能性がある。北キプロスには、天然ガスの収入を分け合う動機があるかもしれない。キプロスは、トルコと欧州を結ぶ既存のパイプラインに連結する合意を取り付けるかもしれない。
逆に、天然ガスが地域の緊張を高める可能性もある。トルコはキプロスの一部の海底採掘権に異議を唱え、武力行使をちらつかせている。イスラエルはまだレバノンとの間で排他的経済水域を確定していない。
天然ガスが変える地政学
トルコとイスラエルの対立で、イスラエルはキプロスに接近している。この政略結婚は、一部で予測されているように、イスラエルがキプロス経由で天然ガスを輸出することを決断すれば、より恒久的な同盟になるかもしれない。一番可能性が高いのは、ヴァシリコスでガスを液化するという方法だ。
天然ガスはこの地域の地政学を変えつつある。うまくいけば、東地中海はミニ北海のようになり、欧州にとって安全なエネルギー供給源となる。しかし悪くすれば、ミニ湾岸地域のようになり、欧州の境界線上の不安定地域になるかもしれない。
EUは比較的早い段階で、キプロスを政治的な厄介者、経済的負担と考えるのではなく、戦略的利害関係を持つ国と考えなければならなくなる。欧州にとって今こそ目を覚まし、ガスのにおいをかぐべき時だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35622
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120705/234158/?ST=print
欧州ガス事情に安堵するロシア
2012年7月10日(火) FINANCIAL TIMES
ロシアへのエネルギー依存から脱却すべく、シェールガスに期待を寄せる欧州各国。だが、その採掘手法による環境汚染の懸念から、探査を禁止する国が相次ぐ。欧州の「シェールガス革命」到来が遠のく中、ロシアは安堵し始めているようだ。
昨年は欧州のシェールガス開発に神経を尖らせていたプーチン氏だが...(写真:Mikhail Klimentyev / RIA-Novosti / AP / アフロ)
「欧州におけるシェールガスの開発は、欧州に天然ガスを輸出しているロシアの国営ガス会社ガスプロムにとってどれほど脅威となると思うか」――。昨年末、ある夕食会の席で、当時首相だったウラジーミル・プーチン氏はこんな質問を受けた。
気にくわない質問だったようで、気色ばんだプーチン首相はノートを鷲づかみにすると、シェールガスの開発に使われる「水圧破砕法」という論争の的となっている採掘手法がどんなものか図を描いてみせた。そして、その図をペンで突つきながら、欧州各国の人々が、地下水汚染の可能性というその環境リスクを理解すれば、破砕法の使用は禁止されるだろうと警告した。
夢破れたポーランド
ガスプロムの経営陣も似た説明をしていた。だが、その強気な態度の裏には、彼らがこの「非従来型」のガスが米国で起きたのと同様の大変革を欧州のガス産業にもたらすのではないかという強い不安を抱いている様子が感じられた。そんなことが起きれば、欧州がロシアから天然ガスを輸入する必要性が激減するからだ。
しかし、半年を経た今、欧州におけるガスプロムによるエネルギー支配に対するシェールガスの挑戦は、大したものではないことが分かってきた。
米石油大手エクソンモービルが6月下旬、試掘井から期待したほど十分な天然ガスが得られないとして、ポーランドにおけるシェールガス探査から撤退した。この事実は、エネルギーをロシアからの輸入に頼らなくて済むようにしたいというポーランドの希望をさらに打ち砕くこととなった。
というのも、その3カ月弱前には、ポーランドの国立地質学研究所がシェールガスの推定埋蔵量を90%引き下げていたからだ。
新たに弾き出された推定埋蔵量は3460億〜7680億立方メートル。これでも、ロシアからの輸入がガス消費量の70%を占めるポーランドにとっては、輸入量を大幅に削減できる。
ポーランドのシェールガス開発に取り組む同国のガス会社PGNiG(写真:ロイター/アフロ)
だが、ポーランドが昨年望んでいたように、「ガス輸出大国」に転じるという夢の実現は難しそうだ。米国のある機関は昨年、ポーランドに眠るシェールガスの埋蔵量を5兆3000億立方メートルと推定した。ポーランドの「ガゼタ・ビボルチャ」紙は、同国が「欧州の天然ガス王」となるのには十分な量だと報じた。
ポーランドが発行した109件のシェールガス採掘許可のうち、エクソンが保有するのはわずか6件。米シェブロンや米コノコフィリップスといった企業は、まだ同国でシェールガス開発に取り組んでいる。ポーランド政府は、国内企業のPKNオーレンやPGNiGなどがシェールガスを開発するのを後押ししている。
欧州で相次ぐ水圧破砕の禁止
しかし、エクソンのポーランド撤退は同国にとって痛恨だった。エクソンは撤退を表明したわずか数日後に、西シベリアに眠る「タイトオイル(シェールオイル)」をロシアの石油最大手である国営ロスネフチと共同開発することで合意したと発表。しかも、この開発にはプーチン氏が昨年激しく非難した水圧破砕法が使用される。
欧州ガス業界は、それでもポーランドでの事態の推移を注視している。ポーランドは、大規模なシェールガス層を抱え、水圧破砕法を禁止していない数少ない国の1つだからだ。プーチン氏が予言した通り、地中の頁けつ岩がんに水と砂と化学薬品を高圧で注入して岩盤に亀裂を作り、ガスを採取する水圧破砕法については、少なくとも一時的に禁止にするという動きが広がっている。
コンサルティング会社IHSエナジーは、昨年フランスが水圧破砕による石油・ガス開発を禁止したことで、ドミノ効果が生まれていると言う。ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州(ドイツで最も有望なシェール層がある)やブルガリア、ルーマニアがフランスに追随したのだ。チェコ上院は現在、禁止するかどうかを検討中だ。
IHSエナジーの在モスクワアナリスト、アンドリュー・ネフ氏は、「欧州では、シェールガスが特効薬となって、欧州へのガス供給におけるガスプロムの役割は小さくなると見られていた。(主要な)シェールガス層があるのは、ロシア産ガスに大いに依存している国ばかりだからだ」と語る。
唯一シェールガスの探査が始まっているのはウクライナだ。ウクライナはガスプロムにとって最大の市場だが、2006年以降2度にわたって、ガス価格を巡る争いのために、ガス供給を止められたことがある。
ウクライナ政府は5月、かなり大きなシェール層の探査権をシェブロンと英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルに与えたが、生産が実際に始まるのは先の話だ。ウクライナでは、一般家庭に販売される国内産ガスの価格を市場価格より抑え、その差を国家予算で埋め合わせている。このことがシェールガス生産に対する投資を抑制している。
難しい選択迫られるウクライナ
逼迫する財政状況を打破するため、ウクライナは国際通貨基金(IMF)に156億ドル(約1兆2400億円)の融資を再開してもらう条件として、家庭向けガス価格の引き上げを余儀なくされるかもしれない。
だがこの政策は国民の支持を得られないだろう。もう1つの選択肢は、ロシア産ガスをより低価格で仕入れることだ。だが、そのためにはウクライナを横切るガス輸送用のパイプラインを売ってほしいというガスプロムの要求をのまなければならない。その場合、ウクライナのロシアへの依存度は高まり、シェールガスは恐らく採算が合わないままとなるだろう。
欧州のシェールガス産業は、それでも重要な可能性を秘めている。エクソンがポーランドで経験したように、欧州の岩盤から商業ベースの量のガスを取り出すのは、米国よりも難しいかもしれないが、技術は今後向上する。同時に、欧州連合(EU)が水圧破砕法の規制基準を定めれば、その基準に見合った範囲で水圧破砕法を利用する道が開けるかもしれない。
しかし、欧州にシェールガスブームが到来するには、まだ時間がかかりそうだ。また、期待されたほど業界にとっての「金の卵」にもなりそうにない。従って今のところは、ガスプロムもプーチン大統領も、それほど目くじらを立てる必要はないということだ。
Neil Buckley
(©Financial Times, Ltd. 2012 Jun. 21)
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