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増資インサイダーで処分勧告
野村をはじめ大手証券が関与
証券業界が、増資インサイダー問題に揺れている。証券取引等監視委員会の調査によって、業界最大手の野村ホールディングスをはじめ、大和証券、SMBC日興証券など大手が軒並み公募増資に関わる公表前の情報を漏えいさせたことが明らかとなった。インサイダー取引によって市場をゆがめた責任は重い。
「お宅もインサイダー取引に参加してるんじゃないの?」
ある機関投資家のファンドマネジャーは、最近のいわゆる増資インサイダー取引事件以降、顧客からしばしばこう言われる。
「インサイダー取引なんて一切やってない」。にもかかわらず、顧客からは痛くもない腹を探られるし、インサイダー取引によって保有株の株価が大幅に下がる。「特定顧客に情報を漏らした証券会社や、その情報を基にインサイダー取引した投資家は許せない」と、怒りをあらわにする。
増資インサイダー取引とは、一般的に、公表前の増資情報を入手してその企業の株式をカラ売りし、安値で買い戻して差額利益を得ることを指す。大量に株式がカラ売りされることから、株価は大きく下がってしまうため、株式の発行体や投資家は大きな損失を被ることになるのだ。
公表前の増資情報を特定顧客に漏らしたとしてやり玉に挙がっているのが、複数の大手証券会社だ(下表参照)。中でも、3件もの増資インサイダーに関与し、情報を漏えいさせたと証券取引等監視委員会(SESC)から問題視されたのが、業界最大手の野村ホールディングスである。
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野村が行った情報漏えいとはどんな内容だったのか。それを図示したものが、下の図だ。以下に、説明しよう。
企業が増資を計画する際、調整役のシンジケート部に増資の時期や規模に関する情報が集まる。その情報がシンジケート部から漏れないようにするため、「チャイニーズウォール」と呼ばれる情報を遮断する壁が存在する。
そのシンジケート部の担当者に頻繁に連絡を取ることで、チャイニーズウォールを越えて情報を収集していたのが、機関投資家営業部だ。また、増資の発表日が近づくと、社内のアナリストによるレポートの公表が自動的に停止されるという社内ルールから逆算して、増資の時期を推測してもいた。
そうして得られた断片情報をつなぎ合わせ、増資に関する情報をほぼ確実につかんでいたという。
そして、いち早くつかんだ公表前の情報を“早耳情報”として「青い銀行」などの隠語で有力顧客に耳打ちしていたというわけだ。
再三再四の指摘にも対応が遅れた野村
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6月29日、野村ホールディングス本社で行われた記者会見。増資インサイダーに関する情報漏えいについての相次ぐ質問に、苦渋の表情を浮かべる渡部賢一グループCEO
Photo:AFLO(写真左)、PANA(右)
これらが明るみに出たのは、6月29日に野村が行った、社外の弁護士など第三者で構成される調査委員会による発表の場だった。
調査委員会は、「具体的な銘柄と金額などを伝えなければ、問題ないという誤った認識の社員がいた」とし、また、「機関投資家営業一部では部を挙げて、収益のためには手段を選ばない姿勢で臨んでいた」と指摘する。
渡部賢一グループCEOと、中核子会社の野村証券の永井浩二社長は、これらの問題に対し陳謝。併せて、渡部CEOの役員報酬を50%、6ヵ月間削減することや、他の役員の報酬カット、当時のコンプライアンスと機関投資家営業部の担当役員2人の退任、情報を漏えいさせた部署の廃止などの社内処分と、再発防止策を発表した。
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今回の増資インサイダーにおける野村の最大の問題点は、調査を開始したのが、疑惑がうわさされてから2年以上もたってからという点だ。「再三再四、問題点を指摘してきたつもりだが、対応は遅きに失した」と金融庁幹部は、野村の甘さを指摘する。
しかも、野村は、4月下旬にSESCの特別検査が入った後も、情報漏えいは、26歳の女性社員個人の問題だと抗弁するなど、SESCの佐渡賢一委員長の怒りを買った。その揚げ句が、今回の調査結果である。金融商品取引法では情報漏えいは罪に問われないが、その危機意識の低さについては、責任を問われざるを得まい。
今回の増資インサイダーへの関与は、本業に影響を及ぼし始めている。情報管理の問題により、JTの株式売り出しや、日本政策投資銀行の財投機関債などの主幹事から野村がはずされている。
近く出される行政処分の内容によっては、本業への影響はさらに拡大するだろう。もし仮に、2週間ほどの業務停止処分ともなれば、「損失額は50億〜100億円規模になる」(外資系証券アナリスト)との試算もある。
リーマン・ブラザーズ買収後、欧州債務危機の勃発などにより業績が低迷している野村にとって、この損失額は決して小さくはない。
ヘッジファンドにもメスを入れたSESC
もう一点、増資インサイダーに関しては、大きな注目点がある。SESCが、ヘッジファンド業界へもメスを入れたことだ。
野村の会見とほぼ同時刻、SESCは日本板硝子の公募増資の情報が主幹事(大和証券キャピタル・マーケッツ)から漏れ、米大手ヘッジファンド(ホイットニー)のグループ会社ジャパン・アドバイザリーが、その情報に基づいてインサイダー取引を行ったとして、行政処分を行う旨の勧告を出した。
本来ジャパン・アドバイザリーは投資の助言しかできないにもかかわらず、ホイットニーのシンガポール子会社に対して株式の売買を指示しており、実質的に運用業務を行っていたと認定したのだ。
次のページ>> ジャパン・アドバイザリーの認定は業界に激震を走らせた
この認定は、ヘッジファンド業界に激震を走らせた。それは、「日本株を扱うヘッジファンドの中には、ジャパン・アドバイザリーと同じ形式で運用しているところが少なくない。これまでのビジネスモデルが通用しなくなる」(大手運用会社)ためだ。
もっとも、「ジャパン・アドバイザリーはシンガポールに資金を逃避させ、さらなる追及から、あの手この手で逃れようとしている」(海外ヘッジファンド)との指摘もある。
だが、金融庁は7月3日、09年1月〜12年6月の公募増資で、主幹事を務めた国内外の証券会社12社に点検報告を求めた。その中には、ジャパン・アドバイザリーとの取引に関する報告も含まれており、追及の姿勢は崩していない。
同社のようなヘッジファンドは、多額の手数料をちらつかせ、証券会社を競わせては、インサイダー情報を入手してきた。一方、証券会社は、その手数料欲しさにインサイダー情報を漏えいさせてきた。
その結果、市場を大きくゆがませた。今回の勧告で、ヘッジファンドがビジネスモデルを転換させ、併せて日本株離れが進むのでは、との指摘もあるが、健全な市場形成のためにはやむを得まい。透明性を高めることで、市場の信頼を取り戻すことが求められている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
http://diamond.jp/articles/-/21227
野村は「野菜HD」に改名を、名前から健全になれ
7月3日(ブルームバーグ):福島の原子力発電所事故以降、日本で物言う投資家が増えている。その証拠が野村ホールディングスに表れたのかもしれない。
野村の個人株主は名門投資銀行の社名を「野菜ホールディングス」に変更することを年次株主総会で求めた。インサイダー取引スキャンダルで揺れる取締役会に健全な事業慣行を迫る皮肉だ。このほかにも、トイレを昔ながらの和式トイレにしろなどという突拍子もない要求も出た。従業員の「足腰を鍛え株価を4桁に回復させる」のが目的だそうだ。
突飛な話ではあるが、この話には少なくとも真実の部分がある。野村の296円の株価がひどいという点だ。この5年間に80%余り下げている。
東京電力も株主に責められている。株主は福島第一原発の事故を起こした同社が原子力発電をやめるか依存を減らすことと、立ち退きを余儀なくされた10万人以上の周辺住民への補償を拡大することを求めた。東電は株主からこれほど物を言われることに慣れていない。
しかし先走りはやめよう。日本企業の株主が数十年にわたる寡黙(かもく)な態度を変えて物を言い始めている兆候があるとは言え、日本の企業統治の大改革が事実ではなく、神話に過ぎないことを示す要素は数多い。
先に良いニュースを見てみよう。不祥事という点で、この1年3カ月は日本に厳しかった。東電からオリンパス、AIJ投資顧問と、競争力維持のために新しい道を必要としているはずの日本の旧態依然ぶりを投資家に思い出させる事件には事欠かなかった。
ミセス・ワタナベ
昨年の大震災と津波後の政府の稚拙な対応は、2009年に自民党を政権の座から引きずり降ろした行動する有権者の意識を再び刺激した。その後の一連の企業不祥事、震災後復興のもたつき、不人気な消費税引き上げの取り組みの中で、与党・民主党の命運は危うくなっている。
いわゆる「ミセス・ワタナベ」ですら日本への信頼を失いつつある。ミセス・ワタナベは家計の財布を握る主婦が主役であることから付いた日本の個人投資家の代名詞。
東京に本社を置くロジャーズ・インベストメント・アドバイザーズのエド・ロジャーズ最高経営責任者(CEO)は、このところの事象が東電など日本株式会社を支えてきた企業に対する前例のない国民の断罪を引き起こしたと指摘する。「これら全ては一段の株主行動主義へとつながり、ミセス・ワタナベは経済、政治問題についての不満をますます声を大にして表明していくようになるだろう。有権者としても株主としても、ミセス・ワタナベはもうかつてのようには日本株式会社を信頼していない。二度と信頼しないかもしれない」と同氏は話した。
そうは問屋が卸さない
悪い方のニュースはと言えば、日本株式会社が十分に注意深く耳を傾けていないことだ。欧州が危機に揺れ、米国がリスク回避志向を強めている昨今、日本企業の手元資金は潤沢となっている。円高が合併や買収を促し利益を押し上げると期待されている。
そうは問屋が卸さないと、ジェフリーズ・ジャパン(東京)の株式ストラテジスト、ナオミ・フィンク氏はくぎを刺す。同氏は日本企業が海外での買収で高い価格を払い過ぎ、内部留保利益を無駄遣いしている兆候を指摘している。そのような買収は投資収益率を改善させない場合が多いが、物言う株主が増えても、このような傾向が変わる兆候はほとんど見られない。
日本に変化が広がっていると大喜びしている向きに、CLSAアジア太平洋マーケッツのストラテジスト、ニコラス・スミス氏(東京在勤)は「マイケル・ウッドフォード」の2語を突き付ける。同氏はオリンパスの不正会計を指摘して昨年10月に社長を解任された。事件は決算修正に発展し、株主資本13億ドルの消失につながった。
身の丈に合った企業統治
無念を晴らしたウッドフォード氏が社長に返り咲くことを申し出たとき、日本の機関投資家は同氏の再任を支持しなかった。「これこそが問題の核心だ」とスミス氏は言う。「国民は自らの身の丈に合った企業統治しか得られず、退職年金のリターンも分相応になる」と同氏は指摘した。
もちろん、われわれの資本主義そのものだってあまり立派とは言えない。毎日のように、不正や無能を示す新しいエピソードが出てくる。JPモルガン・チェースはトレーディングで90億ドルに上るともいわれる損失を出し、中国の経済データは信頼できない。フェイスブックの新規株式公開(IPO)は爆弾だったし、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は操作されていた。挙げれば切りがない。金融市場とその参加者を信頼する方が間違っているのかもしれない。
しかしそれでも、東京が世界の金融センターの1つであり続けたいと望むなら、企業の説明責任をもっと明確にする必要がある。インサイダー取引を取り締まらなければならないし、企業が決算の数字をメディアに漏らすことも罰せられるべきだ。株式公開に向けた期間も現行の15日から短縮し、いかがわしい取引ができないようにすべきだ。総じて、経済犯罪に対してもっと厳しく臨み、刑事罰も強化すべきだろう。
これらは株主が声を上げ、鋭い質問を投げ掛け、変革を要求して初めて実現する。こうした動きが見えていることは素晴らしいが、さらにもっと必要だ。日本の経営者らを株主利益に注意を払うようにさせる道はこのことに尽きる。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ぺセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です。
原題:Tough Legs, Loins Urged by Shareholder Activists: WilliamPesek(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net
更新日時: 2012/07/03 10:22 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6HNC50D9L3501.html
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