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【肥田美佐子のNYリポート】ハーバード大教授に聞く(後編)
「長く働くより『賢く』働け」
2012年 7月 6日 11:24 JST
5月、『スマートフォンとともに寝る――24時間年中無休の習慣を打ち破り、働き方を変える方法』(ハーバード・ビジネス・レビュー・プレス)を出版したハーバード大学ビジネススクールのレスリー・パーロー教授(専門は、組織行動論、企業文化、ワークライフバランスなど)。
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写真提供:ハーバード・ビジネス・レビュー・プレス提供
前編では、米主要コンサルティング会社を対象にした研究で、チームごとに、週1日、ノー残業で帰宅し、ワイヤレス機器へのアクセスも絶ち、好きなことをするという実験をしてもらったところ、私生活のみならず、仕事の充実度も増し、会社にとってもプラスという一石三鳥の結果が出たことについて、詳細を聞いた。チーム内で、進行状況や効率性について話し合いを重ねたことで、むだがなくなり、コミュニケーションが向上。クライアントからの評価が高まったチームさえあるという。
自身も小さな3人の女の子を持つパーロー教授。後編では、教授自身のワークライフバランス(仕事と家庭のバランス)をはじめ、「24時間働かせる」ことがいかに非効率かなどを語ってもらった。
――日本の企業では、いまだに三が日の早朝から携帯に電話をかけてくる上司がいると聞く。妻が、頼むから出ないでくれと懇願しても、夫は対応せざるをえず、頭を抱える妻も多い。スマホにより、メールや電話で24時間連絡がとれるようになったことで生じる最大の弊害とは?
パーロー教授 いったん応じてしまうと、この人は、いつ、どこでもつかまるんだと思われ、歯止めがなくなるという悪循環に陥ってしまうことだ。大半の場合、緊急の用事とはいえ、過去に対応していなかったら、そうした電話は避けられたかもしれない。いつでもつかまる人だと思うから、かけてくるのだ。だが、それによって、自分自身が非効率な存在になってしまう。つまり、相手が、事前に事を運ばなければならないというインセンティブを持つ必要がないからである。
社員に24時間の対応を期待することは、会社にも非効率をもたらす。なんとかして最良の方法を考えるよう強いられなくなってしまうからだ。つまり、組織として、賢明な働き方をしていないことになる。
とはいえ、実際には、常に対応することの見返りはある。個人で、こうした状況を変えられるとは思わない。もし妻が言うように電話に出なかったら、夫は(上司から)罰せられ、仕事を失うだろう。これは、個人レベルで解決できる問題ではないと思う。周りがすべて携帯をオンにしているのに、一人で電源を切っていたら、評価はされない。
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Evgenia Eliseeva
レスリー・パーロー・ハーバード大学教授
だが、チーム単位なら、改善できる。お正月に電話をかけてくるのは、クライアントでも顧客でもなく、あなたの上司なのだから、いつも一緒に働いている人たちで解決できる問題なのだ。そうした電話は避けられうるものであり、それによって、会社も恩恵を受ける。生産性が上がるのだ。会社全体や社会を挙げての取り組みである必要はないが、個人でできるわけでもない。あなたに電話をかけてくる人、つまり、いつも一緒に働いている人たちと解決すべきことである。
――働く時間でなく、成果で判断される米国と違い、今も終身雇用制が健在の日本では、雇用の保証の代償として、長時間労働が暗黙のうちに求められるという面もある。
パーロー教授 人々が長時間働くのは、会社がそれを評価するからだ。仮に、休暇を取ったり、電話に出なかったりすることで見返りを受けるシステムになれば、人々も変わるだろう。ワーカホリック(仕事中毒)ならぬサクセスホリック(成功中毒)に陥っている人たちを見ていて、そう感じる。彼らは、価値があるとされることをやっているのだから、その価値の何たるかが変われば、行動も変えるだろう。
では、なぜ価値の中身を変える必要があるのか――。企業が腐心するのは最終収益だが、長く働くのではなく、「賢く」働くようにすれば、ほかでもない、その最終収益が上向く、というのが真実だからだ。
成果主義にしろ他のシステムにしろ、効率のいい仕事の仕方ができるかどうかを心がけるよう、社員にやる気を起こさせねばならない。その点では、組織に最もコミットしている従業員でさえ、まだ十分とは言えない。とどのつまり、人々は、依然として、より良い製品を提供することに心を砕いている。問題は、そうした組織が、従業員の何に対して見返りを与えるか、だ。答えは、長時間労働である。
――長時間労働をなくすには、システム自体を変える必要がある?
パーロー教授 (何が報われるかを決める)システムは非常に重要だ。個人レベルではなく、働く方法を変えねばならない。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で試した、週に1晩だけ残業をせず(ワイヤレス機器へのアクセスも絶ち)チームでカバーし合って働くという、実行可能な小さなチェンジも、長い期間続ければ、社員の力となる。
(商品の欠陥率抑制のための品質改善・プロセス管理法である)シックス・シグマや組織学習などは、イノベーション(変革)や創造性を求め、職場に活力を与えるためのものだが、チームで長時間労働を減らす試みも、非常に好ましい一連の恩恵を職場にもたらす別の方法であることが分かる。
ただ、問題は、お正月に電話がかかってきたとき、夫は、できるなら電話を取りたくないと思っているのか。できるなら、いつも働きたくなんかないと思っているのか、だ。
――本人もそうだが、家族の意識を変えることも大切では?
パーロー教授 どの程度なら許容範囲かを認識することが必要である。よく言うのだが、拙著のベストカスタマーは、(働きすぎの家族を持つ)配偶者だと思っている。問題を認識し、夫や妻にも気づいてもらいたい、状況を変えたいと最も切望しているのは、配偶者だからだ。「そんなふうにいつも働く必要はないんじゃないか。あなたが働き方を変えられるよう、わたし(僕)が一肌脱ごう」と、少しプレッシャーをかけることもできる。
――ワーカホリックな日本男性も依然として多いなか、彼らの意識を変える最良の方法は何か。労働時間に枠をはめるなど、法規制が有用だと思うか。
パーロー教授 これという答えは見つからないが、実行可能な、小さなステップを通して、大きなインパクトを与えることができる。わたしたちは、自分たちの生活を変えるためのパワーを持つべきだ。ある一定の時間に(携帯端末)ブラックベリーを使わないよう義務づけている組織もあるが、それでは問題解決の答えにはならない。対話を持って、どのように働くべきか、どのように協力し合って効果を生み出せるかを再考し、私生活を享受してもいいんだと納得することが、非常に大切である。
――働きすぎの日本の人たちにメッセージを。
パーロー教授 (ワークライフバランスを)率先して推し進めることに関心がある人たちが喚起されるよう願っている。改善する気なら、いくらでも機会はある。周りが始めるのを待つ必要はない。先陣を切って動けば、自分自身だけでなく、家族にも、そして、最も重要なことに、組織にも多くの機会をもたらす。幾分リスクを感じるかもしれないが、仕事や組織をより良くするための好機なのだ。相乗効果によって、仕事と生活を向上させることができる。生産性も上がるはずだ。
景気が良くない今だからこそ、この問題が、かつてないほどの重要性を帯びている。経済が低迷しているから、もっともっと一生懸命働かなければとは思っても、もっともっと賢く働かねば、とは考えない。実際のところ、わたしたちは、苦心して出そうとしている結果を遂行する能力を自ら損ねているのだ。
――教授自身のワークライフバランスについて教えてほしい。(家族の食事を作ってくれる)パーソナルシェフなどは雇っている?
パーロー教授 週に1度、家を掃除してくれるハウスキーパーと、3人の小さな子どもたち(6歳の女児と4歳の双子の女の子)の世話をしてくれるナニーがいる。夫もフルタイムの仕事に就いているが、子供たちの面倒を熱心に見てくれる。わたしたち夫婦も、チームとして協力し、お互いをカバーするという、わたしの研究での試みを実現すべく、努力を重ねる日々だ。休みを取り、携帯の電源を切ることは、家族にとって重要であるばかりでなく、仕事でも家でも効率的に物事を運ぶためにも大切なのである。
――ブラックベリーをチェックする頻度は? 取材申し込みへのレスは速かったが。
パーロー教授 (頻度は)まちまちだ。過去24時間はチェックしていないため、メールがたまっている。だが、重要だと思われることの1つは、チームで動けば動くほど、カバーしてくれる人が出てくるので、絶えずブラックベリーをチェックする必要がなくなるということだ。
――ワークライフバランスを心がけるにあたって、教授自身が最も大切にしていることは?
パーロー教授 子供たちとできるかぎり長い時間を過ごすこと、である。わたしのプライオリティー(優先順位)は娘たちにあるため、彼女たちと過ごす時間を最大化するためなら、何でもするだろう。子供たちが起きている日中は、オフの時間をたっぷりとるが、夜になると、昼間の分を調整すべく、たくさん仕事をする。
――ワークライフバランスを実現するために、最も大切なことは何か。
パーロー教授 まず、これは女性の問題ではなく、みんなの問題だと認識すること。そして、仕事と生活の問題を解決することは、組織の敵ではなく、仕事と私生活のどちらもより良くするための機会だと認識することである。仕事で幸福感が増せば、充実感や達成感も増す。もちろん、仕事そのものも向上する。
*****************
肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
Ran Suzuki
東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。現在、『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』『ニューズウィーク日本版』などに寄稿。『週刊新潮』、NHKなどの取材、ラジオの時事番組への出演、日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳にも携わるかたわら、日米での講演も行う。翻訳書に『私たちは“99%”だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com
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【第34回】 2012年7月9日
宮崎智之 [プレスラボ/ライター]
「女性経験が乏しい人なんて、結婚の対象外!」
男の恋愛能力を品定めする女たちの“あんまりな本音”
「経験人数ゼロ」も「イケメン」もダメ!
女性の厳しい意見の数々に耳を傾けよ
男性読者の皆さんは、これまでどれだけの女性と交際してきただろうか? もしかしたら人数を思い出すのに苦労するほどのプレーボーイもいるかもしれない。筆者のような半端者には羨ましい限りである。
もちろん、交際人数が多いからいいというものではない。あまりにも多すぎると、「遊び人」の烙印を押されてしまい、女性からドン引きされてしまうこともあるだろう。
しかし、いつかは結婚したいならば、ある程度の人数の女性と付き合っておいた方がいいことも事実。実際に、周辺調査をしてみると、交際人数が少ない男性に対して、厳しい評価を下す女性が意外に多いことがわかる。
ただ、多すぎても、少なすぎてもダメとなると、いったいどれくらいが適正なのか、男性としては頭を悩ますところであろう。
ということで、今回は、複数の女性へのインタビューを基に、「女性が結婚相手に求める交際人数」について考えてみた。筆者が聞き取り調査したなかで特徴的だった意見を、カテゴリーに分けて紹介したい。
あまりに辛辣な意見に「余計なお世話だ!」と憤慨する人もいるかもしれないが(私もその1人だ)、ここはひとつ世の女性の声に耳を傾けて、自身の恋愛を省みる機会にしてほしい。
まず、一番多かったのは、「交際人数がゼロの人とは結婚したくない」という意見だ。
次のページ>> 経験人数「ゼロ」と「1」の間には、宇宙より広い溝が存在する?
女性経験「ゼロ」と「1」の間には
宇宙より広い溝が存在する?
「私は、結婚する男性がこれまで何人と付き合っているかは、まったく気にしません。でも、ゼロだけは絶対に引いちゃいます。今まで何をしてきたのだろうって。コミュニケーションする力が他の人より低いのかもしれないと、心配になってしまいますね。ゼロと1人には、宇宙より広い溝が存在するように思います」(20代)
「結婚すれば毎日一緒に過ごすわけですから、女性への耐性は付けておいてほしいです。偏見かもしれませんが、交際経験ゼロの男性は、『女性は綺麗なもの』という思い込みが激しい気がします。友人にそういう男性がいて、大声で話したり、ビールを飲み干したりするだけでも、『女性らしくない』と嫌な顔をしてきます」(20代)
「交際経験がゼロの男性は、束縛したり結婚した女性に依存したりしそう」(30代)
なかには、“夜の営み”に対する不安を漏らす女性もいた。
「やっぱり、できれば男性にリードしてもらいたいし、経験がない人は、どこかで間違った知識を仕入れてきて、普通ならあり得ないことを要求してきそう……」(30代)
パートナーエージェントの調査によると、未婚男性(40〜50代)のうち、14.9%が交際した経験を持っていないという。「結婚する女性が交際経験ゼロでもいい」という男性は結構いると思うが、逆の場合は厳しい評価となってしまうようだ。
先ほどの意見と少し似ているのが、「イケメンなのに交際人数が少ないのは嫌だ」という声だ。
次のページ>> イケメンなのに交際人数が少ないと、逆に怪しく思える……。
イケメンなのに交際人数が少ないと
逆に怪しく思えてしまう……。
「イケメンなのに交際経験が極端に少なかったり、ゼロだったりすると、余計に怪しく思ってしまいます。なんか性格に問題があるのかな……と」(20代)
「イケメンなのに性格が暗かったり、部屋に閉じこもってネットとかアニメとか見てばっかりな友人がいますが、すごく残念に思います。結婚相手はイケメンの方がいいけど、やっぱり性格や趣味が合うことの方を優先したいです」(20代)
少数ではあるが、上記のように「イケメンはイケメンらしく、たくさんの女性と付き合っていてほしい」という意見があることも確か。イケメンからすると、とんだ言いがかりだに思うかもしれないが、「イケメンなのに」と言われてしまうあたりが、イイ男の辛いところなのだろう。
交際人数が少ない男性が嫌だと言うことは、当然、「たくさんの女性と付き合っていてほしい」という意見もある。
「交際人数が少ないということは、それまで女性に選ばれてこなかったということ。遊び人は嫌ですが、イイ男ならたくさんの女性と付き合っているはずですよね」(30代)
「最低でも、自分より1人か2人は交際人数が多い男性がいいと思います。結婚してからも男性が優位に立って欲しいですし」(20代)
次のページ>> 市場原理から言えば、女性の「オンリーワンがいい」は嘘?
市場原理を勝ち抜いた優秀な遺伝子を
女性の「オンリーワンがいい」は嘘?
「『オンリーワンでいたい』という女性は多いですが、本音を言えば『たくさんの女性を選べる実力がある男性に、自分だけをオンリーワンで選んで欲しい』ということ。モテる男性は、やっぱり女性の扱い方が上手いですし、余裕があって優しい人も多いです」(30代)
選び抜かれた優秀な遺伝子を求めるのは、生存本能によるものなのだろうか。しかし、「モテる男ほど女心がわかる」という意見には、反論の余地がないように思える。ちなみに、「遊び人は嫌ですが……」と答えた女性に、何人が上限か聞いたところ「20人」という答えが返ってきた。
もちろん、交際人数が少ない男性と結婚したいという女性もいる。
「私自身がそんなに交際経験が多い方ではないので、結婚する相手の男性も少ない方がいいです。価値観が合わなそうだし、そもそも本当に好きになった女性としか付き合っていない人ならば、そんなに人数が多くはならないはずだと思うのですが。もちろん、モテる人は浮気の心配もありますし……」(20歳)
さらに、20代の既婚女性からは、こんな実体験を語ってもらった。
「私の夫は、20代後半まで1人としか付き合ったことがありませんでしたが、コミュニケーション能力が低いことはありません。遊んでない人と結婚すると、その後に爆発してしまうという話も良く聞きますが、うちの夫は『女性を口説くのが面倒くさい』と言っているので、浮気の心配もありません。そもそも、交際経験が多い女性慣れしている男性を見ると、私の方が引いてしまいます」
この女性の夫は、つまり草食系男子なのだろう。ゴリゴリ系の肉食系男子が苦手だという女性は、確かに一定層いる。
次のページ>> 最も理想なのは、少ない数の女性と長期間付き合っていた男性
最後に、筆者が一番、納得した意見を紹介しよう。それは、「交際回数より、交際経験の長さの方が重要」とする指摘だ。
やはり経験が少ない方が信頼できる?
理想は女性と長期間付き合っていた男性
「交際回数が多くても、短い期間しか付き合っていなければ、女性とのコミュニケーション能力が高いとは言えないと思います。理想は、1人か2人の女性と数年付き合った後に、私と結婚するというパターンかな」(20代)
●ロス婚の福音
最後に登場した女性の意見を友人の経営者に話したところ、「採用活動でも似たようなことを思うときがある」と教えてくれた。
「中途採用を行なうとき、まず気にするのは前の会社に何年にいたかということ。少なすぎると、長く勤める根性がないのかと疑ってしまいます。確かに、何度も転職してキャリアアップしている人は、それなりの魅力があるけど、踏み台にされてすぐに辞められちゃうのかなとか、思ったりしもします」
結婚にも就職にも必要なのは、やっぱり「信頼」だということだろう。今回は男性側の意見を集めなかったが、機会があったらぜひ聞いてみたいと思っている。もしこの記事の内容に納得がいかず、どうしても言いたいことがあるという方は、筆者のツイッターにご連絡いただきたい。全てに返信できないとは思うが、必ず目を通したいと思う。
ちなみに私自身は、交際経験が極端に多すぎる(それこそ20人とか)女性ではなければいいと思っている。しかし、それを女性の友人に話したら、「女性は交際経験を半分は少なく申告するので気を付けて!」と忠告されてしまった。全く、世知辛い世の中である。
質問1 男性読者に質問です。あなたはこれまで何人の女性と付き合った経験がある?
なし
1人だけ
2〜5人
6〜10人
11〜15人
16〜20人
21人以上
>>投票結果を見る
http://diamond.jp/articles/-/21230
香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第36回】 2012年7月9日
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]
望んだはずのことなのに、
なぜ「理想」はいつも破たんしてしまうのか
あこがれの生活スタイルだったはずが
「よかれと思ってやったことが、うまくいかない」
そういうことが、何だか最近多いような気がします。
自分のまわりを見ても、世界を見ても「昔よりよくなった」と自信を持っていえることが意外に少ない。むしろ世界規模で、さまざまな試みや新たな制度設計がことごとくうまくいっていない。そんな気がするのです。
世界経済を揺るがしているヨーロッパ財政危機もその一つといえるでしょう。そもそもは「ヨーロッパは一つ」という理念のもと、EU(欧州連合)が発足。域内の障壁をなくして経済成長を促進するべく、通貨統合も実施されました。ところが、今の状況は、その目論見が逆に作用してしまったといってもいい。ヨーロッパのなかに救済する側と救済される側の経済的・感情的な亀裂を生んでしまった。まったく皮肉なことです。
振り返ってみると、ヨーロッパ的なライフスタイルが長らく日本人のお手本とされていた感もありました。
週の労働時間が40時間にも満たないのに何週間もバカンスを取って海辺で肌をこんがり焼いている姿や、夫婦ならんで公園でのんびり乳母車を押している姿を見ては、家族そろっての夕飯もままならない我が身を振り返り「いいなあ」とため息をついていた人もいたことでしょう。
私生活を犠牲にして経済成長を求めるのではなく、プライベートな人生を充実させる。そういうスローライフこそが理想なんだ。ついこのあいだまで、ヨーロッパを礼賛する声がありました。
ところが、ここにきて生活重視のスタイルが経済停滞の一因であることが明らかになってきた。結局、日本で理想とされてきたヨーロッパのスタイルにも限界があるということなのでしょう。
次のページ>> 次々に破たんしていく「理想」
「世界の理想」とされてきた北欧も例外ではありません。
北欧といえば、充実した福祉政策のおかげで、高齢者も、女性も、子どもも、若者も、みんなが満ち足りた生活を送っている。ヨーロッパの他国で見られるような貧困や格差の問題もほとんどなく、世界幸福度ランキングでは常に上位をキープ。そうしたイメージを抱いている人が大多数ではないでしょうか。
以前参加したスウェーデンの学会で、ある学者がこんな話をしてくれました。彼女が日本の引きこもりの若者の話をしたところ、北欧の学者たちは次のように断言したとか。「私たちの国では18歳で親元を離れるのが一般的。引きこもりなんてありえない」と。
けれど、学会の後に、一人の女性の学者がそっと近寄ってきてこうささやいたそうです。「実は、私の息子は引きこもりなんです」。彼女いわく「息子はネットやアニメに夢中になって部屋にこもりきり。自立どころじゃない」とか。
実際にスウェーデンの若年層(15〜24歳)の失業率は25%超で、同国の全世代平均の3倍以上にのぼります。彼だけが特別な存在ではなさそうです。福祉を支えるための重い税負担が労働意欲の低下を招き、知識労働を担っている人材の国外流出が止まらないともいわれる。そんな負の側面がいろいろと出てきています。
かたや、自由競争と自己責任を柱とするアメリカ式自由主義経済も旗色が悪い。では日本スタイルはどうか。というと、これまたダメ。目下、社会保障と税の一体改革が進められていますが、政局のゴタゴタばかりが目立っています。
こうして見ても、やっぱりどこも「うまくいっていない」
次のページ>> 「発達障害」はケアされるべきか
先日、ある県の学校の先生と不登校問題について話す機会がありました。その先生がこう断言したのです。「学校の運営がいい方向に向かっているとは思えない。不登校児も増えるばかりだ」と。聞くと、数年前から不登校問題の解決に向け、新たな体制を組んだそうですが、それがちっともうまくいっていない。「担任の先生だけに任せるのではなく、心理士、スクールカウンセラー、ケースワーカーなどの専門家を加えたチームを組んだのです。そうすれば、もっといいケアができるだろう、と。けれどね……」
結局は一人の先生の「私がこの子を立ち直らせるんだ」という熱意に勝るものはないのでしょうか。システマチックに役割分担をはかったことが、逆に責任の所在をあいまいにしてしまった。肝心の不登校児を減らす結果に結びついていないそうなのです。
実は、ずっと感じていることですが、精神医療においても同様のことが起こっています。はっきり実感したのは、数年前のこと。長年、出席していなかった小学校の同窓会に出たのがきっかけでした。同級生と久々に語らいながら、自分の思い込みにハッとさせられたのです。
発達障害という言葉を耳にしたことのある人は多いはず。以前は知られていなかったADHD(多動性障害)やアスペルガー症候群といった発達障害に対する社会の認知度は、ここ十年で格段に高まっている。学校内でも専門家による特別なケアが実施されるようになっています。
しかし、私が子どもの頃は、研究も進んでいなければ、ケアシステムも存在しませんでした。精神科医になりたての頃、発達障害の概念に触れた私はこんなふうに思ったのです。「そうか、授業中に落ち着きがなかったA君は、きっとADHDだったんだな」「コミュニケーションが苦手だったC子ちゃんは、アスペルガー症候群だったに違いない」
けれど、彼らはちょっとした「変わり者」「個性的な子」として、普通の子どもたちと同様に過ごしていました。「今だったら適切なケアが受けられたのに、彼らは不遇な時代を生きてしまったもんだなあ」。勝手にそう思い込んでいたのです。
ところが、同窓会で数十年ぶりにA君、C子ちゃんに会ってビックリしました。予想に反して、彼らは立派な大人になっていたのです。確かに言動には幼少時の「個性」が見え隠れする。けれど、A君は営業マン、C子ちゃんは美容師として、それぞれ活躍している。
私は考え込んでしまいました。彼らが今の時代に小学生として生きていたらどうだっただろう、と。発達障害の子どもとして特別支援学級に入れられていたら? カウンセラーや特別学級の先生から熱心なケアを受けていたら? 数十年後、彼らは今のようになっていたでしょうか。
医学に限らず、様々な分野で最先端の研究が進行しています。ある種の勘や情熱や根性で押し切ってきたことが、よりシステマチックに明文化・制度化されるようになっています。
たとえば、会社の組織も旧来の部署制から合理的なプロジェクト制やチーム制に移行しつつある。そのほうが成果も見えやすく、ムダもないでしょう。けれど、一方で組織の団結力が失われ、制度からこぼれ落ちるような「社内ノマド」が生まれてきているのは以前にも書いた通りです。
次のページ>> 「空になりたい」学生たち
「昔のほうがよかったなあ」というのは、おそらく今に限らずいつの時代にもいわれてきたことでしょう。昔のほうが、ずっと物事がうまくいっていたし、人は幸せに暮らしていた。ある程度の年齢に達すれば、オトナはみんなそういうことを口にするものです。
が、そうはいっても、何をやっても八方ふさがりでうまくいかないというこの状況は、今の時代に特有のものなのではないか、と思わずにはいられません。「それは単にアンタが歳を取っただけだろう」というツッコミが飛んでくるのを覚悟のうえでいうわけですが。
毎年、大学一年生向けの最初の授業で、次のような質問をします。
「何にでもなれるとしたら、今、何になりたい?」
いつも様々な答えが返ってきますが、ここ数年の傾向として「ネコになりたい」「空になりたい」「木になりたい」など、人間以外のものが目立ちます。もちろん「レディー・ガガになりたい」「宇宙飛行士になりたい」と無邪気に答える学生もいるものの、やはり動物、植物、自然現象などが多い。
学生たちに「どうして空なの? 空は自分が空ということを意識できないかもしれないよ」。そう聞くと、「そんなこと、どうでもいいんです。とにかく楽になりたい。何も考えたくない」なんて、いうわけです。
もはや自分の意思や自我さえもきれいさっぱり捨て去ってしまいたい、ということなのでしょうか。特に深く考えて答えたわけではないのでしょうが、学生たちの言葉には、何か本質的なことが含まれているように感じます。
何をやっても何も変わらない。何もよくならない。それならば、いっそのこと何も考えず、何もしないほうがいいんじゃないか。そういうどうにもしがたい絶望感を学生たちは「空になりたい」と表現したのかもしれません。
来週でこの連載はいよいよ最終回を迎えます。東日本大震災の直後から始まった『「こころの復興」で大切なこと』から引き続き、1年以上もご愛読いただき、本当にありがとうございました。
http://diamond.jp/articles/-/21204
LGBTX座談会(下)
社会を構成する全員に関わること
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「LGBTX座談会(上) 私たちは特別な存在ではない」の続編をお送りする。LGBTとは、レズビアン(女性に惹かれる女性)、ゲイ(男性に惹かれる男性)、バイ・セクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害)の頭文字を取った総称であり、セクシャル・マイノリティ(性的少数者)を指す。個々人のセクシャリティは、@身体の性、A心の性、B好きになる性の組み合わせでできているので、実際には多様性がある――。LGBTの人たちは、じつは人口の約5%はいるとされる。
「週刊ダイヤモンド」7月14日号の第2特集(市場規模5兆7000億円/「LGBT市場」を攻略せよ!)との共同企画として、それぞれ異なるセクシャリティを持つ当事者に集まっていただき、LGBTであること明かして生きる道を選んだ方々の“生の声”を聞かせてもらった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨仁、ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
ネガティブな感情的反発は
「知らないこと」から来る
Photo by Shinichi Yokoyama
――では、企業において、LGBTの当事者に対して、ストレート(異性愛者)の人は、どのようなコミュニケーションを取ったらよいでしょうか。たとえば、部下との距離をもう少し縮めたいと考えている善意の上司や、「LGBTではないか?」と社内で噂される部下のことを親身になって考えてあげたいと思うような上司は、当事者にダイレクトに聞いてもよいものでしょうか。
ひろこさん:それはケース・バイ・ケースだと思います。LGBTの人たちは、会社でバレることに対してものすごく恐怖心を持っています。ストレートの人が「よかれ」と思って言ってくれても、「この人はどういうつもりで言っているのだろう?」と構えてしまいます。
というのも、セクシャリティの話はとかくセックスの話と結び付けられてしまいがちで、一生懸命説明しても結局はそう見られてしまうということが多いことから、これまで何度も悲しい思いをしました。
ですから、その上司との関係性にもよるので、一概に言えませんが、たとえば「この人なら話せる」という雰囲気を少しずつ出してあげることが大事なのではないかと思います。いきなりセクシャリティの話を持ち出すのではなく、さりげなくLGBTフレンドリーさをアピールするのです。
海外の調査では、LGBTは約30人に1人は存在すると言われています。となると、同じ職場の中にいても当然という計算になります。大企業でしたら、数十人の単位でいてもおかしくないでしょう。
自分の経験から言えば、「いきなり聞く」のではなく、「まずは受け入れ態勢を整えてあげる」ほうが、だんだんと互いに歩み寄れるようになると思います。たとえば、「最近調子はどう?」「悩みがあったらなんでも聞くからね」と声をかけて、少しずつです。職場ということで言えば、もうちょっと慎重であってほしいです。
西川麻実さん:LGBTの側でも、話を聞いてほしい人には、そういうオーラというか、サインを出していると思います。たとえば、「彼氏はいますか?」と問われれば、誇らしげに「恋人はいます」と返事をする、けっしてスカートを履かない女性にはそのチョイスをさりげなく指摘してあげるなど、こちらが「よくぞ気付いてくれた!」と意気に感じるようなことです。
溝口哲也さん:それはまた、ハードルが高い(笑)。
次のページ>> 「初めて」からくる恐怖心
「初めて」からくる恐怖心
「知らない」からくる反発
――しかしながら、日本の企業では、LGBTについての認知はまだまだこれからですし、口にしただけで感情的に反発される場合もあると思います。当事者の間でも、「言うべき」という人もいれば、「言わないほうがよい」という人もいます。なぜなら、日本では、今のところ社会全体がLGBTを受け入れるだけの寛容さを持てていないのではないかと思われるからです。
溝口哲也さん:自分は、大学でセクシャリティをテーマに話をする機会が多くあります。ゲイであること自体に対して、たとえば「(子孫を残さないということは)血統を絶やすのか」という反発はあるかと思います。でも、そういうことを言う人は、己の信念から言っているのではなく、雰囲気というか、空気というか、ノリで言っているに過ぎないのではないかと考えています。
現在の世の中で、常識と考えられていることでも、昔はそうではなかったということがたくさんあります。たとえば、日本人が牛肉を食べ始めたのは明治時代からですし、女性に参政権が認められたのは戦後になってからです。ですから、現在、LGBTにネガティブな感情を持っている人は、その昔に「女性には参政権を与えるべきではない」と主張していた人と同じなのではないかと思います。
いったん、制度が整えられれば、「今はそういう時代だよね」と容認されていくでしょう。なかには、確たる信念を持って反対し続ける人もいると思いますが、マジョリティではなくなります。
小野緑さん:私は、あることがキッカケでバレてしまったので、2年前に職場でカムアウトせざるをえませんでした。社長からは、「オマエはそれでなにか権利を主張しようとするのか?」と言われて驚きました。そんなつもりは全然ないのに。
ドメスティックな小さな会社なので、私が最初の例だったことから、職場の同僚からは「初めて見た」とまで言われました。彼らは、怖がっているのだと感じましたね。どう接してよいのか、わからなかったのだと思います。
しかし、ずっと一緒に働いてきて、私のこともよく知っているわけですから、なぜ自分のセクシャリティを明かしただけで、急に怖がられる必要があるのでしょうか。社会を転覆させようだなんて、考えていませんよ(笑)。
でも、面白かったのは、それから半年間、質問責めにあったのです。なかには、「どういうエッチをするのですか?」という失礼なことも聞かれましたが、そうこうしているうちに、彼らの怖れのようなものがなくなってきたようです。個人的には、いきなり切り出すより、少しずつステップを踏むように明かしていくほうがよいのではないかと考えています。
溝口哲也さん:LGBTに対する反発は、「知らないこと」から生まれ、それが怖れにつながっていたのだと思います。日本は、社会が同質化・均質化していることを重視する文化が影響しているのかもしれません。でも、そう考えると、むしろ日本は、潜在的にLGBTを受け入れる素地があるはずです。
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企業に対する厳しい目
美辞麗句はすぐにバレる
――日本の企業の事例は少ないですが、ある企業が「LGBTフレンドリー」(親LGBT)だと知った場合は、消費者としての意識は変わりますか。米国のあるLGBT専門のコンサルティング会社のレポートでは、「LGBTフレンドリーの会社にはお金が集まる」とされています。
西川麻実さん:はい。LGBTフレンドリーの会社から買うようになりますね。
藥師実芳さん:携帯電話は、ソフトバンク・モバイルを選びました。
溝口哲也さん:私も、同性カップルでも加入できる「ホワイト家族24」(家族割)のサービスが利用できるので、ソフトバンクにしました。
ひろこさん:日本でも、一部の先進的な企業は、LGBTマーケットに向けてPRを始めていますし、サービスを展開しています。ですが、ひと頃の環境保護ブームと一緒で、企業が単なるマーケットとしてしか捉えていないのであれば、すぐにバレると思います。
LGBTと形式的に打ち出しているだけだったり、自社の社員に対する施策が整っていなかったりするようでは、LGBTコミュニティには口コミで一気に広まります。「あの会社はオモテ向きには美辞麗句を並べているけれど、社内のLGBT社員に対する差別が酷い」というようでは、その会社の製品を買わなくなるでしょう。
LGBTと一口にいっても
実際は人によってバラバラ
――LGBT先進国の米国で、当事者の人たちに話を聞くと、「日本人も勇気を出してビジュアライズせよ」(態度を鮮明にせよ)と言う人が少なくないのですが、その点についてはいかがですか。
溝口哲也さん:当事者たちがLGBTと声高に主張することで、イロモノ的に「また新しい価値観が出てきた」と社会から受け止められるのは、ちょっと違うと思います。むしろ、自分と異なる人を認める、多様な生き方を尊重する、多様性に対する価値観を醸成することを認めるような社会であってほしい。
西川麻実さん:そうそう、そこがベースになる。
ひろこさん:今の日本社会にとって、「ビジュアライズしなさいよ」という思いはわかりますが、現状ではできていないというのが実態です。
LGBTの人たちは、ものすごい抑圧を受けて生きています。それを苦にして、自ら死を選ぶ人もいます。抑圧を受けている人たちに対して、「がんばれよ」というのではなく、「いかにサポートできるか」を考えてほしいと思います。
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絵本読み聞かせ段階から
多様性教育の工夫が必要
西川麻実さん:私は、進学塾で子どもたちに勉強を教えています。時々、LGBTやLGBTのファミリーが出てくるような絵本があるとよいなと考えることがあります。かつてある教材に「オカマッチ」というひどいあだ名の子どもが出てきたことがあります。やはり絵本で、読み聞かせの段階から始めないと、日本は多様性を貴ぶような世の中にはならない。
小野緑さん:中学校の高学年になると、子どもの世界でも「社会化」とでもいう現象が進みます。たとえば、なにかに対して「それは変だよねえ」と言って、もうそれ以上は受け入れなくなるのです。
ですから、その前に教育の分野で、多様性ということについてもっと工夫したほうが、結果的に皆がハッピーになれると思います。
松中権さん:ビジュアライズに関しては、ぼくは使命感のようなものを持っています。これまで先輩たちが苦労して築いてきた道を、後ろに続く後輩たちにつなげていく責務がある。
これまでLGBTとされる人たちは、そもそも働いていなかったり、働くことができなかったりしたことで、社会の偏見を生んでいたのだと思います。その点、仕事を持って、普通の生活を送ることができるぼくの世代はラッキーだとさえ感じています。
溝口哲也さん:社会に対して、発言できる人は発言することで、ちょっとずつ世の中のムードが変わり、同じような人が増えていくことで、また発言できる機会も人も増えていくでしょう。
西川麻実さん:言える人は、言えるだけの量を言っていくのがよいと思います。当然、個人差はありますが、少しずつ量を増やしていく。
とはいえ、カムアウトの強制にはなりたくないですね。それで、ストレスを感じてしまう人もいます。状況が整っていないのに、無理やり精神的に追い込まれてカムアウトするようでは、かえってよくないと思います。
ひろこさん:本当に、一つひとつの小さなカムアウトの連続によって、社会は変わっていくものだと思います。
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性的な存在である前に
仕事を持つ普通の生活者
――改めて、それぞれ異なるセクシャリティを持つ立場から、世の中に訴えておきたいことはありますか。
藥師実芳さん:ぼくは学生なので、「就職活動中の学生にもLGBTがいるんだよ」ということを知ってほしい。トランスジェンダーは、自分のセクシャリティを話さざるをえないので、本当に息苦しいのです。
これまで企業の面接でも、たとえばセクシャル・ハラスメント的なことを経験しました。たとえば、ある企業では、ぼくだけ面接時間を3分に減らされました。また、別の企業では20分のうち18分を性同一性障害の説明に費やし、最後に面接官から「キミはそれしかないの?」と言われたこともあります。企業の人には、就活学生の中にもトランスジェンダーがいるということを知ってほしいです。
Photo by S.Y
佐々木笹さん:世の中の人たちにわかってほしいのは、「性別は男女だけではない」ということです。それだけは、声を大にして言っていきたい。
溝口哲也さん:読者の中には、「LGBTについて知る必要があるのか?」と思う人がいるかもしれません。でも、たとえば、職場の同僚が既婚者か未婚者かということは、皆が知っていますよね。セクシャリティは、それと同じことだと考えています。人と人が社会的な関係を築く上では、把握していて当然のことだし、むしろそれが言えない状況のほうが間違っている。
松中権さん:LGBTというのは、色彩のグラデーションのようなものだと思います。LGBTと聞くと、なんとなくお洒落に聞こえるかもしれませんが、その間はグラデーションみたいに少しずつ異なる色合いで構成されています。身体の性と心の性、そして好きになる性まで、実際は人によってバラバラです。それをLGBTとひとくくりにしてもよいのだろうかと考えることがあります。
一口にLGBTといっても、ゲイはパワー・マイノリティというか、相対的な人数が多いので声を上げやすい。一方で、レズビアンやトランスジェンダーの人たちは、なかなか言い出しにくいかもしれません。
バイ・セクシャルの人は、もっとなにかを言いにくい状況にあると思います。LGBTには、そういう違いもあることを知ってほしいですね。
ひろこさん:レズビアンだから、と性的なイメージを付与されることは本当に嫌ですね。それは私にとって大事なことですが、すべてではありません。
性的な存在である前に、仕事を持つ普通の生活者であり、消費者です。LGBTは、すごく特別な存在ではありません。ただ、多くの人が「なんのことか知らないだけ」なのだと思います。
まず、LGBTの人たちは人口の約5%といわれるほど一定の割合で存在していますし、自分の職場にも取引先にもいるのではないかと想定してほしいのです。この社会を構成する人たちの頭のスミに置いてほしい。そこから、すべてが始まると考えています。
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第2回 LGBTX座談会(下) 社会を構成する全員に関わること (2012.07.09)
第1回 LGBTX座談会(上) 私たちは特別な存在ではない (2012.07.06)
http://diamond.jp/articles/-/21235
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