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The Economist
LIBORスキャンダル:悪徳銀行家
2012.07.09(月
(英エコノミスト誌 2012年7月7日号)
英国の金利不正操作スキャンダルは、どのように広がる可能性があるのか。また、この問題にどう対処すべきなのか。
「我々も、ほかの人々以上に未来を正確に予測できるわけではない。そのため、多くの過ちを犯してきた(過去5年、そうでなかった者がいるだろうか?)。だが、我々の過ちは判断の問題であって、原則の問題ではなかった」。金融危機のさなかにあった1933年、J・P・モルガン・ジュニアは、こう振り返った
現代の銀行家たちは、自らの行動にそんな慰めを見いだすことはできない。指標金利であるLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)で不正操作が試みられていたことは、日常的な不正の文化を暴くだけにとどまらない。世界中で訴訟と規制強化のお膳立てをするものだ。これは、世界の金融界にとっての「タバコ・モーメント*1」になる可能性が大いにある。
訴訟の嵐と規制強化
それに伴う危険は明らかだ。大衆の怒りと集団訴訟は、新たな規則作りの出発点として適切とはまず言えない。だが、銀行バッシングのリスクにもかかわらず、粛正は行われる。というのも、銀行業界の信頼が台無しになっており、信頼がなければ、銀行事業も、その顧客も繁栄できないからだ。
巨額制裁金を科され、トップ辞任を余儀なくされたバークレイズ〔AFPBB News〕
目下のところ、このスキャンダルは1つの国の1つの銀行の周囲を騒がせるにとどまっている。
英金融大手のバークレイズは、LIBORを不正操作しようとしたとして、米国と英国の金融規制当局に4億5000万ドルの制裁金を科せられた。
この嵐をやりすごそうとするバークレイズの最初の試みはみじめな失敗に終わり、CEO(最高経営責任者)のボブ・ダイヤモンド氏は7月3日に辞任した。
英国政府は、議会による各銀行の調査を行うよう命じた。LIBORはロンドンの金融街シティで、複数の指定銀行から集めた各行の借り入れコスト(資金を調達する際の金利)の試算を照合して決められる。今回の不祥事で、そのシティの評判はまたしても傷ついた。
だが、この話は英国をはるかに超えて広がっている。バークレイズが最初にスポットライトを浴びたのは、同行が金融規制当局への全面協力を申し出たからだ。話はバークレイズだけでは終わらないだろう。
*1=1990年代後半に米国のタバコ業界が訴訟や規制当局との和解で巨額のコストを負わされた時を指す
LIBORやその他の銀行間取引金利の不正操作に関しては、米国やカナダ、欧州連合(EU)でも調査が進められている。
調査対象には、金融界のビッグネームが数多く含まれる。シティグループ、JPモルガン・チェース、UBS、ドイツ銀行、HSBCなどだ。ニューヨークから東京に至るまで、世界各地にいる従業員がこの問題に関与したとされている。
疑惑は中央銀行にも
バークレイズの調査で明らかになった証拠から、2種類の不正行為が明らかになった。1つ目は、LIBORを操作してトレーダーの利益を高める目的で考えられたものだ。
バークレイズのトレーダーは、LIBOR(さらには、ブリュッセルで集計されるEURIBOR=欧州銀行間取引金利)に申告する金利を操作するよう、自社の金融市場担当部局に圧力をかけていた。また、他行のトレーダーと結託し、それぞれの申告担当者に伝える要望を互いにやり取りしていた。
広範囲にわたる談合という同様の構図は、カナダの調査に関連する文書からも見えてきている。LIBORスキャンダルのこの部分は、不正取引というよりもカルテルに近い。
この操作により、銀行は多額の損害を被る可能性がある。LIBORは推定800兆ドル相当の金融商品の設定に用いられ、単純な住宅ローンから金利デリバティブまで、あらゆるものの価格に影響を与える。
LIBOR不正操作の試みが成功していたのなら――規制当局は、バークレイズが時折、操作に成功したと考えている――、これは世界中の投資家と借り手に影響を及ぼす、史上最大の証券詐欺事件になる。
不正に関わった銀行の直接的な顧客だけでなく、LIBORに金銭的な利害を持つあらゆる人による訴訟の可能性が生じる。そうした訴訟は、既に始まっている。
イングランド銀行はLIBORの操作に関与していたのか?〔AFPBB News〕
LIBORに関する2つ目の不正行為は、信用収縮が勃発した2007年に始まったものだ。これも訴訟につながる可能性があるが、ある種の「公共の利益」が絡んでいるため、倫理的には1つ目の問題よりも複雑だ。
危機の最中には、LIBORのために各銀行が申告する金利の高さは、財務の脆弱性を表すものだと広く見なされていた。バークレイズは金利を実際よりも低く申告し、指定銀行の平均的な水準に収まるようにした。
さらにバークレイズは、中央銀行であるイングランド銀行(と英国の官僚)が操作を黙認していたと解釈できる証拠を公表している。
イングランド銀行は関与を否定しているが、当時の政府は当然のことながら、銀行への信頼感を高め、信用の流れを維持しようと躍起になっていた。少なくとも一部の銀行が規制当局の暗黙の許可を得て、低い金利を申告していたことが疑われている。
信用が壊れる時
舞台は今後、世界中の民事裁判所に移るだろう。それは長いプロセスになるかもしれない。
公共の利益という観点では、2つの課題が行く手に控えている。1つ目の課題は、実際にあったことを正確に究明し、関与した者を罰することだ。動機が単なる強欲だけである場合、直接不正に手を染めた者は投獄されるべきだ。
仮に、金利を実際より低く申告したのは銀行を破綻から守るためで、金融規制当局も関与していたのなら、銀行と規制当局は、そのようなやり方でシティの評判を自ら危険にさらした理由を説明する必要がある。
英国について言えば、独立機関が調査を実施するのが理にかなっている。それも早ければ早いほど良い。したがって、政府が望んでいる議会による調査の方が、野党の主張する司法による調査よりも良いだろう。
2つ目の課題は、金融業界の慣行と、銀行業務の文化を変えることだ。そもそも、価格操作スキャンダルは今回が初めてではない。ウォール街でも過去に何度かあった。魔女狩りをしても、悲惨な結果になるだけだろうが、文化は構造から生まれる。
リテール銀行と投資銀行の分割を正当化する「倫理的な」根拠は弱いが、各銀行にはもっとできることがあるはずだ。一例を挙げるなら、賞与基金から罰金を徴収してもいいだろう。
規則も変える必要がある。LIBORの集計は、規制当局ではなく、業界団体である英国銀行協会(BBA)の後ろ盾で行われている。「総裁の眉」の動き1つで銀行に規律を守らせることができた紳士的な時代なら、それでうまくいったかもしれない。だが、現代のシティは、世界最大の国際金融センターだ。
不正を防ぐために取るべき対策
将来的には、LIBORやEURIBORなどの指標は、各行の推定ではなく実際の借り入れコストをもとに決定するようにすべきだ。金融の世界では、それが常に可能というわけではない。市場の流動性が不足している場合や取引が薄い場合は、指標の算出に仮定の数字が必要になるかもしれない。
従って、不正操作を難しくするために、金利を申告する指定銀行として、より多くの銀行の参加を求める必要がある。また、可能な場合には必ず、借り入れにかかるコストだけでなく、貸し出す際の金利も各行に質問し、データを相互チェックする必要がある。さらに、外部の規制当局により、プロセス全体を立ち入ったところまで監視するべきだ。
J・P・モルガン・ジュニアは、「銀行家はいかなる時も、顧客から自分に寄せられた信頼を正当なものとするよう行動しなければならない」と述べた。その信頼は失われてしまった。再び取り戻さなければならない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35620?page=4
金融機関への猛烈な批判、再燃
国際指標金利「LIBOR」操作のかどで米バークレイズに罰金
2012年7月9日(月) 石黒 千賀子
英銀大手バークレイズがLIBORを操作していたとして、過去最高の罰金が科された。国際的な指標とされる金利の操作に手を染めた金融機関はバークレイズにとどまらない。金融危機以降、強まる批判を前に今、金融界に求めらているのは透明性の確保だ。
英銀大手バークレイズに、過去最高額の課徴金が科されたことを報じた英フィナンシャル・タイムズ
金融危機以降、社員や経営陣の高額報酬など強い批判にさらされてきた欧米の金融機関に対し、今、改めて猛烈な批判の嵐が巻き起こっている。
発端は、英金融監督当局である金融サービス機構(FSA)が6月27日、英銀大手バークレイズがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の操作を図っていたとして、英米の当局に対し総額2億9000万ポンド(約4億5300万ドル=約360億円)の制裁金を支払うことで和解したと発表したことだった。
LIBORとは、住宅ローンやクレジットカードローン、企業融資など全世界で総額360兆ドル(約2京8600兆円)に上る金融商品の金利のベンチマークとされる国際的な短期金利指標。かねて米欧日当局による調査が進んでいることは指摘されていたが、このほどバークレイズの不正が明らかになったというわけだ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は翌28日、1面で「バークレイズ銀に過去最高額の罰金」と報じた。
罰金4億5300万ドルの内訳は、米商品先物取引委員会(CFTC)が2億ドル(約160億円)、米司法省が1億6000万ドル(約127億円)、FSAが5950万ポンド(約74億円)。この3当局は現在、英HSBCや英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、スイスのUBS、米JPモルガン・チェース、米シティグループなど約20の金融機関についても調査を進めており、記事は「CFTCとFSAが今回科した過去最高の罰金の水準が今後、LIBORの不正操作への関わりが判明した個人、金融機関に適用されることになる」と指摘。LIBORを巡る不正が世界的な金融スキャンダルに発展しつつあることをうかがわせた。
「ボリンジャーでお祝いだ」
同記事はバークレイズの社員同士の生々しいメールのやり取りも紹介した。
「おまえには大きな借りができたな。今度、仕事が終わったらオレの部署に来いよ。お礼に(編集部注:高級シャンパンの)ボリンジャーでお祝いだ」
銀行間の取引金利を提示する担当者に、低めのレートを出してほしいと頼んでいたトレーダーが送ったお礼メールだ。トレーダーと金利の提示を担当するトレジャリー部門のように、異なる部門間の情報のやり取りは本来、禁じられているはずだった。メールに象徴される同社のモラルの欠如ぶりが、英政治家と英世論の怒りに火をつけたのは言うまでもない。
しかも今回の調査で、LIBORの操作は5年前、つまり金融危機発生前から続いていたことも判明。同社の株は28日、16%も下落した。
バークレイズのCEO(最高経営責任者)のボブ・ダイヤモンド氏は和解が発表された当日、早々と今年のボーナス返上を表明したが、それで批判が収まることはなかった。同行は金融危機の際、税金の投入こそ受けなかったが、同氏は「批判の対象として常に新聞の見出しを飾ってきた」(FT)からだ。
昨年2月にCEOに就任したダイヤモンド氏は、勤務地が米国から英国に移ったのに伴い発生した税金575万ポンド(約7.2億円)をバークレイズに負担させたうえ、ROE(自己資本利益率)が2011年に5.8%と前年の7.2%から下がったにもかかわらず、昨年の報酬が2500万ポンド(約31億円)に上った。今年4月の株主総会では株主の3分の1が同氏のボーナス270万ポンド(約3.3億円)に反対、同氏は増配などを約束し辛うじて報酬の承認を得たという。
もはや規制強化には抗えない
FTが28日、電子版に載せた続報では、真相解明のために英下院財政委員会への召喚が決まったダイヤモンド氏に対し、ジョージ・オズボーン英財務相が「いつから、どれだけの事実を知っていたのか。重要な質問に徹底して回答してもらう」と語ったと報道。「英銀大手のトップの信頼性を疑うような発言を財務相が公の場でするのは異例のこと」として、「今や英政治家の金融機関への怒りは今回の金利操作発覚で軽蔑に変質した」と報じた。
バークレイズの取締役会は当初、ダイヤモンド氏を退任させたくないとの考えから、同社のマルカス・アギウス会長が7月2日、辞任を発表したが、ダイヤモンド氏への辞任圧力は高まるばかり。結局、ダイヤモンド氏も翌3日、辞任を余儀なくされた。
同社における不正操作の実態が7月4日の英下院財政委員会での同氏による説明でどこまで明らかになるかは不明だが、明確になりつつあるのは、これまで頑なに抵抗してきた金融界も、もはや規制強化の流れに抗うことは厳しいという事実だ。
大西洋を挟んだ米国では同じ28日、JPモルガン・チェースの5月に発覚した「ロンドンの鯨」という異名を持つ同社のトレーダーによるデリバティブ(金融派生商品)取引で被った損失が、当初の20億ドル(約1600億円)から大幅に拡大する見込みだとの報道が流れ、同社の株価は急落した。
同社のジェイミー・ダイモンCEOは現在、詳細を詰めている米金融規制改革法(ドッド・フランク法)が実施されると、「4億ドル(約320億円)超の追加費用が発生する」と同法を強く非難していた。だが6月13日に米上院銀行委員会で証言した際、議員に自己勘定取引を禁ずる「ボルカー・ルールがあれば(今回の)損失を止められたか」と問われ、「損失を止めていた可能性はある」と渋々、認めたのは記憶に新しい。
損失額が明らかになるのは、第2四半期決算を発表する7月13日。そこで損失が当初の見込みから大きく拡大すれば、ボルカー・ルールの導入に異議を唱えることは難しくなるだろう。
CFTCの検査官もFTの記事の中で、「LIBOR操作事件は自己勘定取引を禁じるボルカー・ルールの必要性を改めて示した」と指摘している。
だが規制強化も必要だが、何よりまず力を入れるべきは、FTが6月28日付の論評「LIBOR操作事件が示す銀行界の慢心」で指摘したように、「取引プロセスの透明性を確保すること」だろう。
金融に多い不透明な決定手法
LIBORの決定方法は実際、今までお粗末だった。民間組織である英国銀行協会(BBA)に、加盟する主要銀行が貸し手としての金利を提示、これをBBAが集計、公表してきたという。
各銀行がBBAに提出する金利とは、実際の取引をベースにしたものではなく、あくまでも各銀行が「想定する金利」にすぎなかったという。実際、FSAが今回発表した調査では、バークレイズは金融危機が発生した直後に提示していた金利が他行より高かったため、「自分たちの銀行の信頼にかかわる」として上層部がLIBOR担当者に意図的に低めの金利を提示するよう指示した事実も明らかにされている。加えて、BBAが民間組織であるため、英政府は今回の不正を「法律違反」と問うことも、よって「刑事責任」を追及することもできないという。
先の論評によれば、「金融界ではこうした不透明で、かつ排他的な形で価格や指標が決まるものがLIBORに限らず、債券やデリバティブ、コモディティーの分野に多々存在する」という。
FTの別の記事で説明されていた一例だが、国債利回りと連動して決まるドルのスワップ価格は毎日、ニューヨークの午前11時に一握りの銀行の間だけで決められるという。
LIBOR操作事件が今後どこまでの広がりを見せるか現時点では不明だが、金融界が社会の信頼を回復するには時間がかかりそうだ。
石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)
日経ビジネス副編集長。
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120705/234154/?ST=print
Financial Times
金融市場の「夏の呪い」に要注意今夏デスクを離れてはいけない5つの理由
2012.07.09(月)
(2012年7月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
市場参加者が少なく、商いが薄い夏場には、相場が極端な動きを見せることがある〔AFPBB News〕
フィデリティやノーザントラストといった米国最大級の投資会社はここ数日、従業員の休暇計画を慎重に見直している。理由は何か?
現時点では、夏の暑さが高まる中で、金融市場の雰囲気は比較的落ち着いているように見える。
だが、一部の投資会社を心配させているのは、「夏の呪い」と呼んでもいい問題だ。夏場の数カ月間は商いが非常に薄くなる傾向があり、上級管理職が不在なため、何かまずいことが起きた場合、市場が完全におかしくなりかねないのだ。
しかも、この「夏の呪い」は、理論上の問題ではない。1998年(ロシア危機と、ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント=LTCM=の崩壊)、2007年(住宅ローン担保証券と短期金融市場の凍結)、2008年(リーマン・ブラザーズの破綻につながったファニーメイ=連邦住宅抵当金庫=の「動揺」)のことを考えてみるといい。
さらに言うなら、ユーロ圏の危機と米国の債務上限を巡るドラマによって、昨年市場がどのように揺れ動いたか思い出してみるといい。
まだ終わらないユーロ危機
では、この夏が再び厄介なものになる可能性はあるのだろうか? 市場は今、少なくとも5つの有り難くない問題の衝突を目の当たりにしていることから、筆者は個人的に、そうなるかもしれないという嫌な予感を抱いている。
■ ユーロ圏。市場は7月初旬、直近のユーロ圏救済計画に安堵して上昇した。だが、元米財務長官のラリー・サマーズ氏は先のアスペン・アイデア・フェスティバルで、直近の計画はユーロ圏に、長期的な構造問題を解決するための「時間をほんのわずか」稼いだだけだと述べた。そして、ユーロ圏がこれを成し遂げられるかどうかは依然として、極めて不確かだ。
一方、イタリアとスペインにとっては資金調達コストが持続不可能なほど高くなっており、経済的な痛みを示す山のような証拠がある(先に発表された過去最高の失業率を見るとい
銀行のストレスを示すさらなる兆候や政治的な対立を示す新たな証拠が出てきた場合には、投資家がパニックに陥ることも十分あり得る。
例えば、9月のオランダの総選挙に向けた動きには注意してほしい。これは、救済疲れや政治の過激主義の高まりを浮き彫りにする可能性がある。「分別がある」と一般に信じられているオランダにおいてさえも、だ。
2大経済大国が抱える問題
■ 米国の政治と債務。大統領選の候補者自身がこの夏に狼煙を上げることは誰も予想していない。ミット・ロムニー氏もバラク・オバマ氏も、大きな安心感を与える(別の言葉で言えば、つまらない)顔を見せようと懸命に努力している。
だが、彼らを取り巻く政治的な状況が波立つ可能性はある。特に投資家は、米国が今年、「財政の崖」から転げ落ちる(債務上限に達し、抜本的な緊縮策を実施する)のを阻止するための取引がまとまっていないことから、再び債務に関する発言に神経質になっている。
この点に関するさらなる駆け引きや、尊敬を集める金融界の重鎮2人、リチャード・ラビッチ氏とポール・ボルカー氏が近く公表する米国の国家財政に関する報告書に注意してほしい。これは衝撃的な内容になる可能性がある。
■ 中国の減速。投資家は何カ月も前から、中国のGDP(国内総生産)成長率が8%を下回る事態を覚悟してきた。だが、中国の景気減速がもたらす連鎖的影響をすべて理解しているかどうか甚だ不明瞭だ。
というのも、国際市場の動きや投資家の楽観論のかなりの部分が現在の中国経済にかかっているが、2012年に現場レベルで中国がどう動くのかという詳細は、西側の投資家にとって、2006年の米国の住宅ローン分野と同じくらい謎に包まれたままだからだ。
LIBORスキャンダルとロンドン五輪の影響も
■ LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)操作事件。これは既にバークレイズ(とイングランド銀行)に混乱をもたらしている。だが、他の銀行も近いうちに高額な課徴金や経営陣の交代に追い込まれるかもしれないし、米国市場で談合の証拠が出てくれば、刑事告発にも直面するかもしれない。
今回の事件はひいき目に見ても、金融に対する人々の信頼を一段と損ねる恐れがある。最悪の場合、流動性や信用を低下させる可能性がある。折りしも、それらが本当に必要とされる時に、だ。
■ オリンピック。英国が2012年のオリンピックを開催すると決めた時、専門家たちは、老朽化したロンドンの交通インフラが対応できるのかどうか心配した。だが、誰も疑問を呈しなかったのは、世界最大の外国為替取引センターであるシティを部分的に閉鎖に追い込む潜在的なリスクだ。
銀行は、多くのトレーダーが仕事に行けなくなる事態に対処する危機管理計画を立てていると言うが、イングランド銀行は先日、取引の潜在的な喪失を考えて夏の間は国債入札を一時中断すると発表した。それは励みになる材料ではない。上記の点を参照してほしい。
ブラックベリーやアイフォーンがちゃんとつながるか確認を
もちろん、欧州の指導者たちが血がにじみ出るユーロ圏の傷口に新しいバンドエイドを張り続け、米国の政治家が自国の債務について心を落ち着かせる発言をし、中国政府が自国経済を刺激し続けるのであれば、最後の2つの問題について誰も心配する必要はない。
トレーダーも政策立案者も同じように、ビーチや別荘、船に引きこもり、オリンピックを見ることができるだろう。
だが、それは多くの「もし」にかかっている。しかも、ここでは、中東という絶え間ないリスクを考えもしていないのだ。後になって、忠告を受けていなかったとは、よもや言えない。ビーチでは、自分の「ブラックベリー」(あるいは「アイフォーン」)がちゃんと動いていることを確かめておいた方がいい。
By Gillian Tett
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