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米景気減速、警戒強まる 生産・消費に息切れ感
雇用統計市場の見方
生産や消費にも影が差す中、6月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数の増加幅が3カ月連続で10万人を割り込んだことで、市場関係者の間では年末に向けた米経済への警戒感が広がってきた。2013年からの歳出強制削減をにらむ内需萎縮などの不安要素があり、欧州危機の長期化で強まる世界景気の減速感が波及すると懸念する声も出る。ただ、好調な自動車販売など明るい材料もあり、直ちに一段の金融緩和につながるかどうかは見方が分かれている。
【ワシントン=矢沢俊樹】雇用の勢いが戻らない中で、米経済はけん引役だった企業部門に陰りが出て需要の柱である個人消費も息切れが鮮明になってきた。
雇用増のペースは1〜3月期の月22万6000人から大幅に鈍化。市場では反転への期待もあったが、失業率を安定的に下げるのに必要とされる20万人増には遠い水準にとどまった。
雇用停滞が家計や企業の経済活動に与える心理的効果は大きい。
「マクロ環境の停滞が響いた」
百貨店大手のメーシーズのテリー・ラングレン最高経営責任者(CEO)は消費動向をこう分析する。米主要小売業の既存店売上高(最大手ウォルマート・ストアーズを除く)は前年同月比伸び幅が4%台で推移した春先までと一変し、同0.2%増と7カ月ぶりの低水準を記録した。
企業部門の生産・投資活動も「低迷は予想以上」(米政府関係者)だ。設備投資の先行きを占う5月の米資本財受注は変動の大きい航空機を除くベースで前月比小幅増。6月の米製造業景況感指数もほぼ3年ぶりに企業活動の拡大・縮小の節目となる50を割り込んだ。
トムソン・ロイターによると、米主要企業500社の2割弱が業績の下方修正に踏み切った。P&Gやフォード・モーターなどの有力企業に加え、スポーツ用品大手のナイキ、宝飾品のティファニーなども業績鈍化が鮮明だ。
先行きには米財政問題の影響も影を落とす。13年1月から連邦歳出の強制削減措置が発動されることを踏まえ「民間企業は契約を心配して雇用を控えている」(バーナンキ米連邦準備理事会=FRB=議長)。オバマ政権は有効な失業対策を打ち出せず、連邦・地方とも政府部門は雇用を絞っている。
FRBは雇用減速が長引けば「構造的な長期失業が米に定着する恐れがある」(イエレン副議長)との懸念を強めるが、明るい材料もある。個人消費では自動車販売などが比較的好調で、ガソリン価格も落ち着いてきた。住宅建設も依然低水準ながら持ち直しの動きを示している。雇用関連でも、欧エアバスがアラバマ州に新工場の建設を決定。1000人の雇用創出につながると見込まれている。
企業、投資先延ばしの公算
マイケル・ゲイペン氏(バークレイズ・キャピタルのシニア米国エコノミスト) 6月の雇用者の増加数は市場予想を下回った。増加数の過去3カ月の月間平均が7万5000人程度で、労働参加率に変化が乏しいことなど雇用回復の鈍さを率直に映している。欧州情勢による先行きの不確実性は高い。米国では来年前半、急速な緊縮財政が進む可能性もある。これらを背景に、企業が投資や雇用を先延ばしにする可能性は高い。
次の一手を決める場合、バーナンキFRB議長が(FOMC会合後に)記者会見を開く9月の会合となる可能性が高そうだ。
危機深刻化なら強い政策
ジョン・ロンスキー氏(ムーディーズ・キャピタル・マーケッツ・リサーチ・グループのチーフ・エコノミスト) 4〜6月の平均雇用数が2009年7〜9月期以来の低水準で、米雇用情勢はかなり悪い。欧州の負債問題が解決せず将来的に不安感が強い。緩和を長期化するしか景気を底上げする策が今のところ見えない。欧州での金融危機が一段と深刻化するようなら、7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で強い政策を打ち出すことが考えられる。量的金融緩和策の第3弾(QE3)実施を示唆するコメントが議長から出るかもしれない。
企業、雇用に慎重姿勢
ナイジェル・ゴールト氏(IHSグローバル・インサイトのチーフUSエコノミスト) またしても「標準以下」の結果だった。5月のような建設と政府部門の雇用減は繰り返されなかったが、民間部門の雇用増の水準には失望が大きい。企業は採用に非常に慎重になっている。経済成長への不安やユーロ危機、急速に緊縮財政が進む「財政の崖」問題、11月の大統領選など慎重姿勢を促す材料には事欠かないからだ。
4〜6月期は月平均7万5000人の雇用増となり、雇用増は維持した。今年後半は月平均で10万〜15万人の雇用増となるだろう。
財務相会合に市場注目
マーク・チャンドラー氏(ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略本部長) 今月の統計には明るい点が2つある。1つは時間当たりの収入が前年同月と比べ0.3%上がった点。少なくとも理論上は消費に結びつく。もう1つは労働時間が増えた点。国内総生産(GDP)は突き詰めれば労働時間と生産性で決まるのでこれも重要だ。
今回の統計からいえることは、中期的には7月末のFOMCでQE3を想定するのは時期尚早だということ。市場が注目するのは9日のユーロ圏財務相会合になるだろう。
[日経新聞7月7日朝刊P.7]
米雇用、伸び低水準 6月8万人増 NY株一時190ドル安
【ワシントン=矢沢俊樹】米労働省が6日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月比8万人増と、増加幅が3カ月連続で10万人の大台を割り込んだ。欧州の景気後退など米経済を取り巻く環境は厳しさを増しており、労働市場の回復はきわめて緩やかにとどまっている。(関連記事国際2面に)
6月の失業率は8.2%で前月と変わらなかった。雇用者数は市場事前予想の平均である約10万人増を下回った。同日改定された5月の雇用者数は7万7千人増(当初6万9千人増)。6月も前月とほぼ横ばいだった。
昨年は5〜8月の4カ月連続で雇用者数の増加幅が10万人台を割り込み、米景況感が大きく後退した。今年も異例の暖冬で雇用が押し上げられた反動などで春先から雇用に急ブレーキがかかったとみられる。
朝方発表の6月の米雇用統計をうけ、6日の米株式相場は大幅安で始まった。ダウ工業株30種平均の前日比の下げ幅は190ドルを超す場面があった。米雇用情勢の回復の鈍さが意識されている。
[日経新聞7月7日朝刊P.1]
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