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■わずか1時間足らずで3つの中銀が追加緩和!
7月4日(水)が米国の独立記念日だったため、今週(7月2日〜)の為替相場は週前半は動意薄だったが、7月5日(木)に大きく動いた。ドルインデックスは再度83の節目に迫り、ユーロ/米ドルも1.2400ドル割れとなった。
7月5日(木)のBOE(イングランド銀行、英国の中央銀行)の金利据え置きや量的緩和拡大はほぼ予想どおり、ECB(欧州中央銀行)の利下げも想定の範囲内だったが、サプライズだったのはその直前に発表された中国人民銀行(中国の中央銀行)の利下げだ。
中国人民銀行は貸し出し基準金利を6%へ引き下げ、1カ月に二度の利下げへと踏み切った。 わずか1時間足らずで3つの中銀が追加緩和したわけだが、マーケットはリスクオンにシフトする気配をあまり見せてくれなかった。
■ユーロは対NZドル、対豪ドルで史上最安値を更新!
世界的量的緩和ムードが強まる中、ユーロの軟調が目立つ。
何しろ、 ユーロは対NZドル、対豪ドルで史上最安値を更新、対英ポンドでも2008年12月以来の安値を更新している。
この意味では、7月5日(木)のユーロ/米ドルの1.2400ドル割れは1日の値幅こそ大きかったものの、ユーロクロス (ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)に比べると、実は過激と言えない側面もある。
ユーロ/米ドルだけでなく、ユーロクロスも含めて全体を見てみれば、足元の状況をより精確に把握できると思う。一見すると、利下げでユーロが急落しているように見えるが、他の通貨のパフォーマンスと見比べれば、違う側面も見えてくる。
前述のように、ユーロの利下げは想定の範囲内だ。そして、英国の「500億ポンドの資産買い入れ」という量的緩和策拡大は同じく予想どおりのものだった。
しかし、ユーロはその英ポンドに対しても下落している。 ユーロの下落は、単純に利下げによるものだけでなく、何か他の要素が影響しているとみるべきだ。
■ECBに対する失望感でユーロは下落した
その1つは ECBに対する失望感ではないかと思う。
ECBが利下げのみを行い、国債買い入れやLTRO(長期資金供給オペ)といったさらなる措置を打ち出さなかったからだ。
一見矛盾するような話だが、 現時点ではユーロの量的緩和はユーロにマイナスではなく、中短期スパンではむしろプラスに作用すると思われる。
何しろ、EU(欧州連合)のソブリン危機がスペインまで拡大する懸念が強い中、EU首脳会議の合意とは別に、ECBによる政策支援も期待されている。
要するに 「非常時」の現在では、通常は通貨を押し下げる量的緩和策が逆に通貨の安定に寄与する可能性もあるのだ。だから、ECBが追加措置を打ち出さなかったことは、逆にユーロの下落をもたらした。
総額3750億ポンドまでの量的緩和に踏み切った英ポンドがユーロに対して堅調なのは、そのような見方を証左しているのではないかと思う。
もう1つの要素はより重要だ。史上最安値を更新しているユーロ/NZドル、ユーロ/豪ドルの値動きから読み取れるシグナルである。
それはほかならぬ…
それはほかならぬ、ユーロキャリートレード(※)の再興ではないかと思う。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)
■ユーロキャリートレードが始まっている可能性
ユーロ圏の貸し出し金利は0.75%となり、史上最低レベルだ。その上、預金金利はゼロになったから、ユーロはかつてないほどの低金利通貨に転落した。
ゆえに、低コストのユーロを借りて、なお高い金利水準をキープするNZドル、豪ドルなど資源国通貨にシフトし、その金利差を享受する狙いが出てくるのも自然な成り行きだ。
言い換えれば、 ユーロ/NZドル、ユーロ/豪ドルの史上最安値更新はユーロキャリートレードの可能性を示唆するシグナルとして読み取れる。
しかし、かつて円キャリートレードが行われた時期を考えると、1つの疑問が浮かんでくる。
つまり、キャリートレードが行われる時期のほとんどがリスクオンのムードが強かった時期であっただけに、果たして今のようなリスクオフの動きがなお強そうに見える現状でキャリートレードが流行るかどうか、という問題だ。
現時点では断定できない問題であるだけに、答えも定かではないが、詰まるところ、 「ユーロキャリートレードがホンモノならリスクオフが続かない」、逆に「リスクオフが続くならユーロキャリートレードが続かない」といったロジックが成立するだろう。
こういった考え方に基づき、あえて リスクオフの動きは長く続かない確率が高いのではないかとみる。
■各国中銀はさらなる追加緩和策を打ち出すだろう
まず、中国の利下げが豪ドルなど資源国通貨にプラスの影響を与え、ユーロを押し下げた側面も無視できないだけに、 中国のすばやい行動がリスクオフの動きに歯止めをかける効果が期待される。
さらに前述のように、7月5日(木)のマーケットの反応を見ると、中銀には想定どおりの政策ではなく、さらに踏み込んだ行動を迫る雰囲気が市場には強かった。だから、 市場の要求に合わせ、各国中銀はさらなる行動に踏み切る公算が高い。
この意味では、ECBの国債買い入れや次なるLTROもそう遠くないと思われ、さらにリスクオフの動きになるのは難しいのではないかと思う。
事実、本日(7月6日)から「中国人民銀行に見習え」といった声が早くも聞こえてきた。日銀に対する圧力もまた強まっている。近々、日銀がさらなる緩和措置に踏み切ったとしても、サプライズではなかろう。
米国の場合は、7月6日(金)の米雇用統計次第といった見方が強いが、その結果が想定の範囲内なら、QE3(量的緩和策第3弾)に対する期待は安易に打ち消せないと思ったほうが無難だろう。
■米長期金利から見たリスクオフ継続の限界
次に、 もっとも重要なのは米10年物国債の金利水準(米長期金利)だ。
リスクオフの動きが強ければ強いほど米国債は買われるから、米長期金利は低下していく。そして、米長期金利のチャートを見ると、史上最低金利をつけた日が6月1日(金)であることがわかる。
6月1日(金)と言えば、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドル、そして、米ドル/円が直近の安値をつけた日でもあった。
それは偶然ではなく、リスクオン/オフの動きと米長期金利の高い相関性を示す好例であった。
言い換えれば、 これからリスクオフの動きがさらに強まっていくには、米長期金利が6月1日(金)につけた1.4%のレベルをさらに割り込んでいかないといけない。
それはかなり難しいものだから、理屈としては リスクオフの継続があったとしても、おのずと限度があるのではないかと思う。
したがって、ユーロキャリートレードが継続していく可能性は高く、またユーロキャリートレードが続くのであれば、これから徐々にリスクオンの環境に転換していくのではないかと思う。
また、ユーロキャリートレードが継続するとはいえ、リスクオンの環境にシフトしていけば、ユーロ/米ドルの下値余地は限定され、また、米ドル/円も上昇していくだろう。
最後にユーロキャリートレードの話を随分してきたが、前述の ユーロクロスのほとんどはオーバーシュートの状況にあり、いったん切り返しを演じてもおかしくない。だから、今回述べたことは、あくまで中期スパンの視点でとらえる必要があることを記しておきたい。市況は如何に。
(陳満咲杜 7月6日 14:40執筆)
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