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ギリシャはユーロ離脱なら崩壊――日本は円安、脱デフレで崩壊する
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12/07/04 | 00:03 東洋経済オンライン
なかなか理解されないのだが、円高、デフレのおかげで日本経済は生き永らえているのである。無理に円安、インフレを進めたら、日本経済は破綻する。なぜか。
まず、現在、日本国債の買い手が国内に十分存在するのは、今後円安方向に進むとは思われていないからである。
円安が確実なら、1%を切る円の国債など買わずに、米国債を買ったほうがよい。日本国債10年物の利回りが0.8%であるのに対し、米国債の利回りは1.6%と倍であるのみならず、為替によるキャピタルゲインが望めるからである。
インフレは、デフレよりもっとひどいダメージを経済に与える。
インフレになる場合には、まず、資産市場、とりわけ長期金利に反映される。なぜなら、現在の日本ではインフレになるシナリオは、極端な円安によるものか、あるいは金融政策により意図的に起こされるものしかないからである。
実体経済の需給構造から見ると、グローバル化の中で世界的にも成熟国はインフレになりにくい。中でも日本は、投資資金が余剰であることから金利が低く、設備投資も過剰であり、供給側からインフレになる可能性はない。
この点は重要だ。デフレである結果、金利が低くなっていると思われているが、実際には逆で、金利が低い以上、供給者は淘汰されず、投資も過大であり続けるから、国内においても供給圧力が残り続ける。それで、インフレにはならないのだ。
となると、インフレは、中央銀行が意図的なリフレ政策を起こすか、政府が財政支出を急拡大し、需要を極端に多くすることによってしか起きない。
財政政策によるインフレの可能性を除外し、金融政策によるインフレを考えた場合、インフレは中央銀行が国債あるいはリスク資産の中央銀行買い入れの大幅拡大で資金の大量供給を行うことにより、起こる可能性が高い。
■インフレが起こる過程
この場合、インフレはどのようなプロセスで起きるだろうか。
まず、世の中に出回った資金は資産市場へ向かう。一時的にマネーをほぼ無利子で借り入れられる(もっと極端にケース、たとえば「ヘリコプターマネー」と言われるもの、つまり政府が対価なしにマネーを各個人に配る)状況であるならば、普通の人なら、そのマネーは資産市場への投資に向かうだろう。現金で持っていては目減りしてしまうリスクがあるからだ。
貨幣価値の変動リスク(たとえばインフレ)に強い資産は、実物資産であるから、不動産と株を買うのがセオリーで、円が不安なら海外の資産を買う手もあるが、とりあえず円高継続で、資金が国内にとどまると考えよう。そうすると、国内資産市場はバブルとなる。
まだ財市場はインフレになっていないから、インフレを起こすための金融緩和は継続されるにもかかわらず、長期の名目金利は上昇し始める。たとえば、0.8%の名目長期金利は2%になる。国債から株や不動産に資金が移動するためである。
こうなると、ほとんどの金融機関、とりわけ地方銀行が日本国債の値下がりによる含み損を時価会計の下で損失計上しないといけなくなる。
銀行セクター全体では大まかに見積もって10兆円前後となる。これが地銀に偏っているので、インパクトは大きい。地方経済はいきなり行き詰まるだろう。
この結果、リスク資産市場の上昇が財市場の需要増加につながり、インフレが起こり始めるという流れになる前に、金融危機が起きることになる。
この結果、資産逃避が加速する。国債市場から逃避した資金は、国内不動産、株式市場にとどまらず、海外資産へ向かう。こうなると、債券安、円安のスパイラルで、円安と名目金利上昇が加速する。
海外資産への資金移動は、個人ベースでは、前回パリバショックが起きた2007年夏までに、円安が続くことを信じたFXトレーダーたち、いわゆるミセスワタナベなどにより起きていた。
しかし、今後、円安トレンドが明確になれば、機関投資家も含めて、ほとんどの投資家が資金を移動させる可能性が高い。円安、債券安のスパイラルとなれば、いわゆる資金逃避、キャピタルフライトは加速する。
原油や天然ガスの円ベースの輸入価格も急騰し、生活コストはインフレで上がっていく。こうしてようやくインフレになるのである。
■日本とギリシャに迫る危機
家賃も上がる。不動産は値上がりする。住宅ローンの金利も上がる。不動産や株を多額に保有する富裕層は、キャピタルゲインを得るかもしれないが、持たざる多数派は生活が苦しくなり、とりわけ低所得者は資産保有が小さいと思われるから、極端に生活が苦しくなるだろう。
そして、もちろん賃金は上がらない。消費も減るから内需は壊滅。唯一の望みは円安による輸出だが、多少の増加はあるとしても、日本の輸出の多くは、中国経由のプラント輸出、基幹部品輸出であるから、価格競争力よりも、欧米、新興国の需要次第であり、それが伸びるとは限らない。
だから、雇用も賃金も減る可能性がある。そこへインフレであるから、経済は悲惨なことになる。
実は、これがギリシャがユーロから離脱しない理由である。
これまでの議論を、日本のところをギリシャに置き換えてみると、そのまま当てはまる。
通貨安、インフレは自殺行為なのだ。しかし、ギリシャがユーロから離脱し、自国通貨ドラクマを復活させれば、このシナリオが、日本よりも激しく起こる。しかも、借金はユーロ建てだから、かなり軽減されたとしても、今後も資金が必要であるから、経済の再建は難しくなる。
一方、日本の場合は、借金が国内にあるから、通貨安となっても、借金の実質額は変わらない。そして、名目金利が上がれば、実質額は減る。
しかし、これは債務者の国にとってはいいが、債権者も国内金融機関だから、せいぜいプラスマイナスゼロ、銀行が倒れるリスクを考えれば、大きなマイナスだ。
したがって、日本にとっては、円安、インフレというのは最も危険な道なのである。
小幡績(おばた・せき)
株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2001〜03年一橋大学経済研究所専任講師。2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授。01年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)がある。
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