http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/756.html
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日銀当座預金は過去最高でも
マネーが市中に流れないワケ
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金融機関が日銀の口座に預けている資金の合計額(日銀当座預金残高)が6月26日に過去最高の43.5兆円を記録した。国庫の季節要因(年金支払いや国債償還など)も増加に影響しているが、基本的には日銀の金融市場に対する巨額の資金供給が累積したことが残高の押し上げにつながっている。
金融機関が日銀当座預金に預けなければならない法定準備預金は7.5兆円程度なので、金融機関は凄まじい額の余剰資金を日銀に預けていることになる。しかし、そのお金は単に日銀の口座に眠っているだけである。
似た現象は、米国、英国、欧州でも起きている。現代の銀行はさまざまなリスク管理の規制に縛られている。中央銀行に預けている準備預金が増大しても、銀行が企業や個人への貸し出しを増やせるわけではない。経済学の教科書によく出ていた「準備預金が増えたら銀行は貸し出しを伸ばし、マネーサプライが増加する」という説明は現代にはそぐわない。外為市場では「日銀当座預金が増えると円安になる」といわれるが、実際はマネーは流れていない。
日銀当座預金に影響を与える国庫や日銀券の動きが仮に昨年並みに推移すれば、日銀の資金供給は今後も増えていくため、日銀当座預金は来年6月末には50兆〜60兆円へ達する可能性がある。ただし、その試算は、金融機関が日銀の資金供給を拒まないケース、つまりオペに「札割れ」が発生しないケースが前提だ。実際には多くの銀行は手元流動性をそんなに高めなくてもよいため札割れが多発、結果的に日銀当座預金はさほど増えないかもしれない。
次のページ>> 日銀の金融政策はかなり限界に近づいている
消費増税法案が衆議院を通過した。消費税を引き上げるためには成長率を高める必要があるという観点から、日銀に対し追加緩和を求める政治的な声は今後も続くと思われる。しかし、日銀が国債の買入れ額を増やすと、他の資金供給オペの札割れが激しくなる可能性がある。日銀の金融政策はかなり限界に近づいている。
日銀は当座預金に0.1%の金利を支払っているが、それをやめたところで、貸し出しが増えるとは考えにくい。むしろ、その金利がゼロになると、銀行は資金繰り部門の収益悪化に応じて人減らしを行わざるを得なくなる。多くの銀行は、人手不足に対処するため、資金繰りを放っておいてもショートしないように常に厚めの準備預金を日銀に預けようとするだろう。短期金融市場では資金が今よりも流れなくなる可能性が高い。バーナンキFRB議長が準備預金への利息を下げたがらないのも、同様の懸念を持っているからだ。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)
http://diamond.jp/articles/-/20924
税収の使い方に異議あり!
税収増は復興増税の減額に回すべき
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
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2011年度の決算が発表され、税収が42.8兆円に確定した。税収は、当初予算の見積もりから、実績段階までに例年大きなずれが生じている(図表1参照)。
2011年度の決算段階では、2011年度第四次補正予算の税収計画(42.0兆円)よりも、8026億円の税収が上方修正された。この8000億円をどのように扱うかは、いずれ国会で議論されることになろうが、歳出拡大に使うのはいかがなものかと考える。
すでに、2011年度第三次補正予算では、復興増税11.2兆円の負担が決まっている。税収の上振れ分は、これから2022年度にかけて予定されている復興増税の金額を減額するのに用いるのが、相応しいのではないか。
その税収増の使途として、一部にはこの8000億円に加えて、歳出計画が下振れした分を併せた剰余金を、新しく歳出拡大に充てようという思惑もあるようだ。年度内に税収増が起これば、その財源は歳出に回して使い切ってしまおうという考え方は、財政規律の面で不健全ではなかろうか。
歳入・歳出入の振れ分は累計3.8兆円
政治の世界では、消費税増税法案に対して、あれだけ大きな摩擦が生じているのに、見積もりに対しては上方修正された税収増分の取り扱いは、意外なほど議論にならない。いくつかの最近の事例を見てほしい。
次のページ>> 税収の上ブレ分で肩代わりすれば、所得増税は5分の1も減る
◎2011年度第四次補正予算では、税収見積もりが1兆1030億円ほど上方修正された分が、中小企業の資金繰り支援、高齢者医療などの経費支出に回された。国債費の不用分を含めると、このときの財源は2兆5345億円にもなった。
◎2011年度第二次補正予算では、前年の剰余金1兆9988億円が使われた。復興予備費、被災者支援などに財政支出が回された。この剰余金は2010年度の補正予算と決算の間で、税収が1兆8437億円ほど上方修正された分の寄与が大きい。
今回の2011年度決算時の税収増は、8026億円であるが、国債費の不用額や日銀納付金の上積み分を含めると、余裕は1兆2301億円になる。
この金額に、第四次補正予算に流用された税収上振れ分・不用分が合算できたとすると、3兆7646億円となる。3.8兆円の金額がすべて復興増税の肩代わりに用いられるとすれば、11.2兆円の復興増税の3分の1に相当する部分は増税をしなくてもよいという計算になっていたはずだ。
これから増える税収見積もりの差
復興増税は、2012年度から始まる。復興増税の計画として規模が大きいのは、所得税増税である。2013年1月から定率増税として、現在支払っている所得税が、一律4%ほど上積みされる。10年間にわたって5.5兆円の所得税増税だ。
もしも、ここに2011年度決算の1.2兆円を充てて増税分を肩代わりすれば、所得税増税の5分の1を減らすことができる。10年間の増税計画を8年間に圧縮できる計算だ。
次のページ>> あらゆる増税に反対するのではなく、財政規律を保つ
さらに、復興増税に関しては、今後とも税収が計画比で上方修正されたならば、その財源を増税圧縮に用いればよい。2012年度の当初予算で見積もられている税収は42兆3460億円であるが、この金額は決算ベースの2011年度実績42兆8326億円と比べて、すでに+4866億円も上回っている。先行き、こうした税収の見積もりとの差額を増税圧縮に用いれば、11.2兆円という規模はもっと小さなものに変えられる。
あらゆる増税に反対する
のではなく、財政規律を保つ
筆者は、あらゆる増税に反対する立場を採らない。社会保障財源として消費税率を引き上げることには賛成する。野田首相の方針を支持する考え方だ。
しかしながら、2011年度第四次補正予算の扱いを見ると、本当に適切な財政管理ができているのかどうかに関しては、もっと慎重な議論が必要だと考える。たとえ消費税率を引き上げても、次々に新しい歳出計画が「社会保障の充実」をテーマにして提案されれば、消費税率は10%では止まらない。
税収が増えるほどに歳出増に結びつきやすいというのは、一種の判断バイアスがあるためだ。もしも、10兆円の国債発行で歳出が賄われるのだったならば、歳出増は不健全だという心理的抵抗が働くだろう。
本来、無差別のはずである両者の取り扱いが変わってくるのは、確保された税収は自由に使えると考えがちになる「見えない」歳出圧力が存在するからである。事前増収を国債発行の減額に回そうとしたり、復興増税の減額に発想が及びにくいのは、歳出増に傾きやすい判断バイアスがゆえであろう。
本当に、野田政権はそうした「見えない」歳出圧力に厳しい監視の目を光らせているのか。消費税法案も、復興増税も、国会でそれが通れば、既定路線として顧みられないのでは困る。今一度、気を引き締めて臨んでもらいたい。
質問1 増税の前に、まだ議論すべきことが残っていると思う?
思う
思わない
どちらとも言えない
http://diamond.jp/articles/-/21044
山田久の「市場主義3.0」
【第1回】 2012年7月4日
山田 久 [日本総合研究所調査部長]
【新連載】
市場対政府の視点でみると
国家モデルはどう変遷してきたか
本シリーズではいま我が国を覆う閉塞感を突破すべく、わが国が立脚すべき「国のかたち」を考えていきたい。第1回となる今回は、戦後世界における国家ビジョンの類型と、主題である「市場主義3.0」の意味するところを提示しておこう。
閉塞感の背景にある
国家モデルの混乱
やまだ ひさし/1987年京都大学経済学部卒業(2003年法政大学大学院修士課程・経済学修了)。同年 住友銀行(現三井住友銀行)入行、91日本経済研究センター出向、93年より日本総合研究所調査部出向、98年同主任研究員、03年経済研究センター所長、05年マクロ経済研究センター所長、07年主席研究員、11年7月より現職。『雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか』(2009年、日本経済新聞出版社)『デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(2010年、東洋経済新報社)『市場主義3.0 「国家vs国家」を超えれば日本は再生する(2012年、東洋経済新報社)』など著書多数。
ギリシャを凌ぐ政府債務残高の累増、10年以上続くデフレ、厳しさの続く若年雇用、拍車のかかる地方経済の苦境など、90年代以降に次々に顕在化してきた根深い構造問題は解決の糸口がみえず、わが国の閉塞感はますます強まっている。
さらに先行き不安に拍車をかけているのが、政治の混乱である。政権交代時に掲げたマニフェストの順守と喫緊の政策課題といえる消費増税を巡って、内部対立が決定的となった与党民主党は分裂状態となった。政権奪取の好機にある自民党についても、先般国会に提出した、国土の均衡ある発展を謳う「国土強靭化基本法案」は時代錯誤の印象を与える。
筆者は、こうした経済・政治・社会の閉塞感の背景には、国の進路を指し示すような理念やビジョンを巡る議論が混乱を極めていることにある、との基本認識を持っている。早ければ今夏、遅くとも来年秋には衆院総選挙が行われるわけであり、それまでに国家ビジョンについての議論を深めておかなければ、目指すべき方向を見失った政治は選挙後一段と混迷を深め、この国が坂道を転げるように衰退に向かうことが危惧される。
本シリーズでは、そうした危機意識を抱きつつ、70年代半ば以降の欧米先進諸国における、経済社会モデルを巡る対立と融合の歴史を踏まえたうえでの、わが国が立脚すべき「国のかたち」を考えていきたい。
次のページ>> 大戦後の2つの国家モデル
その際のアプローチとして、まずは現代社会の基本的構成を「経済システム(資源配分メカニズム)」と「社会システム(所得配分メカニズム)」の二つの次元に分けて考えたい。そのうえで、基本原理の座標軸として、「市場原理」に任せるのか、あるいは、「政府介入」に頼るのか、の対立軸を設定する。
こうしたフレームワークのもとで、連載第1回となる今回は、戦後世界における国家ビジョンの類型と、本シリーズの主題である「市場主義3.0」の意味するところを提示しておこう。
国家モデルの変遷
大戦後の2つの国家モデル
第2次世界大戦後の世界は、忌まわしき大戦争の原因となった世界恐慌を資本主義の構造的欠陥に根ざすものとみなし、資本主義の基本原理である市場メカニズムに対する「不信感」により構成されていた。そしてその不信感は、2つの形態で発展する。一つは、「ケインズ型福祉国家」であり、もう一つは「社会主義国家」である。
前者は、戦後、西側世界と呼ばれた北米および西欧地域で採用された国家モデルである。経済システムについては「市場の失敗」を強調し、市場の暴走を防止するために新規参入の制限や価格規制などの公的規制を広く導入し、景気循環的なケインズ主義的財政・金融政策を積極的に行い、景気の波を極小化することを目指した。
一方、社会システム面では、貧困層や高齢者など社会的弱者の救済のために、社会保障制度を充実させ、所得再分配を積極的に行った。つまり、経済システムでは市場原理と政府介入の組み合わせを目指し、社会システムでは政府介入を強化した。
後者の社会主義は、東側世界であるソ連・中国・東欧地域を中心に選択された国家モデルである。資本主義に対する最も包括的な批判者であったマルクスの思想を基本に、市場原理を否定し、国家統制による計画経済と富の平等的分配が目指された。このモデルでは、経済システム面でも社会システム面でも、政府介入を強化した。
次のページ>> 市場主義1.0=「新自由主義」の台頭と席巻
●市場主義1.0=「新自由主義」の台頭と席巻
1960年代ごろまで、これら2つの国家モデルは、東西世界においてそれぞれ機能し、高い経済成長と社会的な安定を支えた。しかし、70年代前半に生じた石油ショックにより、西側世界の国々は経済成長率の低下と失業率の上昇に見舞われる。当初、積極的な財政金融政策により対応がなされたが、エネルギーコスト上昇という供給ショックに対する処方箋として機能せず、インフレと不況の共存である「スタグフレーション」が常態化し、ケインズ政策の有効性に対する疑念が高まっていくことになった。
充実した社会保障制度も就労インセンティブを削ぐとともに、財政赤字の原因として批判され、経済・社会両システム面での市場原理の重要性が主張された。そうした文脈のなかで登場したのが「新自由主義国家モデル」である。これをここでは「市場主義1.0」と呼びたい。それは、経済システム面での市場重視はいうまでもなく、このモデルの忠実な実践者とされる英国首相マーガレット・サッチャーは「社会などというものは存在しない」と主張し、社会保障システムのスリム化も目指した。
この新自由主義国家モデル(市場主義1.0)の象徴であった米国・英国が経済再生を遂げたこと、さらに1989年にベルリンの壁が崩壊し、市場原理を否定した「社会主義国家」モデルも機能しなかったことが明らかになったことで、新自由主義は世界を席巻していく。2つの石油危機を経てスタグフレーションが常態化し、高失業が構造化するなかで、悲観主義(ユーロペシミズム)が蔓延していた欧州大陸諸国も、その影響からは免れなかった。
ただし、伝統的には市場原理へのアレルギーが強く、社会的公正を重視する欧州が目指したものは、経済システム面での市場重視と社会システム面での手厚い社会保障の維持の組み合わせであった。
●「市場主義2.0」=北欧モデル
実はそれは、戦後直後から独自の国家モデルを展開していた北欧モデルに通底するものであった。戦後の西側世界で力を持ったケインズ主義政策は、完全雇用を目指すものであり、北欧でも同様に完全雇用が目指されたが、手法が大きく異なった。
次のページ>> 「市場主義2.0」=北欧モデルの特徴
ケインズ主義政策はマクロ経済政策であり、政府による有効需要の創出により、マクロ的に労働需給を一致させようとするのに対し、北欧ではミクロ的に労働需給のミスマッチを解消しようとした。経済変動に伴う企業・産業の淘汰は市場に任せ、むしろその結果、企業から吐き出される労働力を、職業訓練によって成長産業に移動させようとしたのである。
それは正に、経済システム面での市場原理の重視と、社会システム面での政府の積極的介入(積極的労働市場政策と呼ばれる現役世代に対する社会保障の充実)の組み合わせである。ここでは、これを「市場主義2.0」と呼ぶこととする。
1.0と2.0を超える
市場主義3.0とは
以上のように見てくると、今日の欧米先進国では、経済システム面では市場原理活用が重要であることについて共通認識がほぼできあがっており、政治思想における対立軸として、「自由主義vs.民主主義」、あるいは、「新自由主義vs社会民主主義」と対比されるのは、主に社会システム面についてであるといってよい。
しかし、わが国ではこれらの対立軸を経済システム面にも適応して議論がなされ、政策が混乱を極めている。例えば、社会民主主義国家の典型とされるスウェーデンでは、景気後退時に企業が経営危機に陥ったとしても、原則として政府が救済することはない。その一方で、充実した職業紹介や職業訓練により失職者の救済には力を尽くしている。
経済面では市場原理を尊重する一方、社会システム面で政府は積極的な役割を果たしているのである。これに対し、わが国では経済政策と社会政策を混合し、雇用維持を名目に、不況期には公的金融を大幅に拡充して企業を救済しようとする。その結果として「ゾンビ」企業が生き残り、市場競争が歪んで産業構造の転換が進まない。
次のページ>> 経済活性化と社会安定化の両立を目指す「市場主義3.0」
そのほか、農政では、欧米では価格支持による消費者負担型の反市場主義的政策から、直接支払いによる財政負担型の親市場主義型政策にシフトがみられる。関税や需給調節で価格に介入して農家を保護するのではなく、価格は市場原理で決まるようにする一方で、直接の所得保障を行うことで農業を守るというやり方に転換されている。しかし、わが国では反・市場主義が根強く、なおコメの生産調整の仕組みは根強く残り、結果としていまも農業の体質を弱くし、食料自給率の低下につながっている。
以上のような、欧米と日本の基本認識の違いを踏まえ、本シリーズでは、米英のみならず欧州大陸の経済社会システムも「市場主義」と呼ぶ。それは、わが国で政策議論を行うにあたり、現在の欧米先進国では、経済システム面で市場重視が前提になっていることを強調することが重要だと考えるからである。
本連載の主題である「市場主義3.0」とは、社会システム面でも政府介入を極小化する新自由主義国家モデルである「市場主義1.0」と、政府による積極的な社会政策を是とする北欧モデルやEU統合以降の欧州モデルである「市場主義2.0」の欧米での実践を踏まえ、経済活性化と社会安定化の両立を目指す、より望ましい国家モデルを意味する。
それは、これまでの議論から明らかなように、経済システム面では市場原理を重視する一方、社会システム面で市場原理と政府介入のベストミックスを目指すものである。その具体像を提示するために、次回、次々回は、「市場主義1.0」および「市場主義2.0」の内容についてより詳しくみていくことにしたい。
(以上の議論については拙著『市場主義3.0』〈東洋経済新報社〉もご参照ください)
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質問1 新自由主義国家モデルがリーマンショックを引き起こしたと思う?
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