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Financial Times
ユーロ危機とQE3への期待で輝く英国債
2012.07.02(月)
(2012年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
英国債は悪いニュースを肥やしに繁栄する。経済の沈滞やユーロ圏の混乱といった状況はすべて、過去20年間のパフォーマンスが最も高い市場に数えられる英国債をてこ入れする要因となる。
一部の投資家とストラテジストは、イングランド銀行が7月初めに第3弾の量的緩和(QE、成長を後押しするための国債購入)に踏み切るとの期待が高まっていることから、英国債の成功物語は今後も続く可能性が高いと話している。
20年も続く強気相場はまだ終わらない?
イングランド銀行(写真)のキング総裁は、英国経済が大幅に悪化したと述べ、QE3への期待が高まった〔AFPBB News〕
イングランド銀行のマーヴィン・キング総裁が6月末に英議会の委員会で経済情勢に関して述べた悲観的な発言は、QE3に対する期待を一段と膨らませた。
投資家やストラテジストによると、こうした期待が1990年春から続く英国債の強気相場を勢いづけるという。
「英国債は、自国経済の問題のみならず、避難先としての地位を通じてユーロ圏の問題にも下支えされているだけでなく、今は中央銀行が市場に戻ってくる兆しが見える」
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの債券ストラテジスト、ジョン・レイス氏はこう話す。
「みんな、利回りはこれ以上下がりようがないと言い続けるが、下がってもおかしくないだろう。リスク回避の姿勢が一段と強まれば、利回りがさらに大きく低下するのを止めるものはない。英国債利回りは1%に向かって低下し、ドイツ国債の利回りを下回り、日本国債のそれに近づく可能性もある」
英国債の魅力
英国債は価格が過去最高に達しているにもかかわらず魅力があり、そのおかげで利回りが、欧州最大の経済大国で、域内で最も安全と見なされているドイツの国債利回りに近づいている。
その理由は、QE(イングランド銀行は3250億ポンドの英国債、つまり、従来型の英国債市場の36%相当を買い入れた)と、ドイツ政府がユーロ圏諸国の救済の費用を払わねばならないという不安が広がる中でユーロ圏の危機がドイツに波及しかねないという懸念の組み合わせだ。
英国債は6月1日以降、ドイツや米国など、やはり避難先となる大規模な国債市場をアウトパフォームしてきた。ドイツ国債と米国債も、金融危機が勃発してから多額の資金が流入している。
英国の10年債利回りは現在1.64%なのに対し、ドイツ国債は1.52%だ。ドイツ国債に対する上乗せ金利は12ベーシスポイント(bp、1bp=100分の1%)と、4月23日時点の47bpから縮小している。
利回り上昇がもたらす危険
だが、その他の市場関係者は、英国債の上昇相場は永遠には続かないと警鐘を鳴らす。こうした向きは、いつか利回りは上昇に転じなくてはならないと言う。
このようなシナリオは、英国債を保有する民間投資家のみならず、英国政府および国債を発行する英債務管理庁(DMO)にとっても危険だ。
DMOのロバート・スティーマン長官が指摘するように、DMOが創設された1998年当時の4倍近い規模となっている英国債市場の成長のせいで、今の英国にとっては、利回りの急上昇が以前よりも大きな問題になりかねない。以前より大量の債務に追加の金利コストがかかるからだ。
額面ベースで見た従来型英国債(短期の割引債を除く)の発行残高は、1998年に2384億ポンドだったものが現在は8980億ポンドに上っており、今の歴史的な低金利を維持する必要性を浮き彫りにしている。
すべての年限を合算した英国債の平均利回りは現在2.21%で、1998年の5.66%を大きく下回っている。
「我々は極めて低い金利で国債を発行できる。これは有益だ」とスティーマン長官は言う。「だが、今は歴史的に見て資金需要が高い。また、流動性と、市場に容易にアクセスできる能力が保証されていないことも理解している。ユーロ圏の市場の緊張が今後も続けば、英国市場の流動性に影響が及びかねない」
インフレが再燃すれば・・・
英国債の弱気筋は、利回りの上昇ははっきりした可能性だと主張する。イングランド銀行の試算では国債利回りを約1%引き下げる効果があったQEも、いつかは終わりを迎えるからだ。また、膨大な資金注入は、いずれインフレを再燃させることになると弱気筋は言う。
ハーミーズのチーフエコノミスト、ニール・ウィリアムズ氏は次のように語る。「インフレ率は来年、大幅に昂進する可能性がある。しかもそれは、資産価格は上昇させるが成長率の拡大はもたらさない、好ましくないインフレだ。その時点で英国債市場に圧力がかかるだろう」
だが、こうした懸念にもかかわらず、強気筋は自分たちが議論に勝っていると主張し、6月4日に記録した1.52%という過去最低の10年債利回りは、今後数日間ないし数週間で記録が破られると自信たっぷりに予想している。
強気筋は、英国の景気後退入りを裏づけた6月28日の国内総生産(GDP)統計などの停滞気味の経済統計と、ユーロ圏で続く市場の緊張は、英国債を買う、あるいは少なくとも継続保有する強力な根拠になると話している。
「親友」がいなくならない限り、低利回りは続く
M&Gインベストメンツのリテール債券部門責任者、ジム・リービス氏は「各種統計とユーロ圏の不安は、英国債利回りが今後も現行水準で推移することを意味している」と言う。
同氏は、英国債利回りは政策金利の後を追うため、今後3〜5年は歴史的な低水準が続くと考えている。英国の政策金利は0.5%という水準にあるものの、英国債市場の親友である悪いニュースが消えないために、今後引き下げられる可能性が高いからだ。
By David Oakley
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35566
5月ユーロ圏失業率は11.1%、ユーロ導入以降の最高水準
2012年 07月 2日 18:56
トップニュース
焦点:短観改善で景気回復シナリオ維持、政策据え置きの公算高まる
日経平均は小反落、戻り売りなどで軟化
楽天、日本国内で電子書籍事業を7月19日から開始へ
焦点:独首相の敗北は見せかけか、EU首脳会議の真価はこれから
[ブリュッセル 2日 ロイター] 欧州連合(EU)統計局が発表した5月のユーロ圏の失業率は11.1%に上昇し、ユーロ導入以降で最高水準となった。オーストリアやフランス、スペインでレイオフが相次いだことが背景。
前週末のEU首脳会議での合意にもかかわらず、ユーロ圏経済は停滞。通貨圏の先行き不安が企業景況感を落ち込ませ、労働コストの抑制につながっている。また欧州の家計や米国、アジアからの弱い需要も足かせとなった。
フランスの失業率は0.1%上昇して10.1%。域内で最悪のスペインも4月の24.3%から24.6%に上昇した。オーストリアは0.2%上昇し4.1%となった。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE86106U20120702
コラム:ドイツがユーロを離脱する方が相対的に容易=カレツキー氏
2012年 07月 2日 14:14 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]
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焦点:独首相の敗北は見せかけか、EU首脳会議の真価はこれから
アナトール・カレツキー
ユーロの根本的な問題は「何匹もの猫を統率する」ごとく、利害も伝統も考え方も異なり、意見の合わない17カ国の複雑な政策を調整することの不可能さにあると広く考えられている。そうではない。欧州の境界線はもっとずっと単純だ。
一方の側にはフランス、イタリア、スペイン、その他すべての重要な国々が属し、米国、英国、国際通貨基金(IMF)、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)幹部の支持を得て、純粋な財政連邦を基盤とする厳粛かつ複雑な技術的解決策、つまりは国家債務の分担を提案している。もう一方の側はドイツだ。時折フィンランド、オーストリア、スロバキアの支持を得て、常に「ナイン(ノー)」を突き付ける。
メルケル・ドイツ首相が拒否をちらつかせる度に、ドイツは孤立して面目を失う。ドイツのヨシュカ・フィッシャー元外相が最近警告した通り、「ドイツは20世紀に2度、自国と欧州の秩序を破壊した。復活したドイツが欧州の秩序を3度崩壊に追い込むなら、悲劇的かつ皮肉なことだ」。しかし破壊屋としてのドイツの役割が徐々に認識されてきたのなら、他の国々は本コラムが先週提案したことを実行すればよい。メルケル首相に対し、大勢の決断に従わないならユーロを離脱してもらうと迫ることだ。
標準的な答えは、ドイツは欧州において「金を支払ってくれる親分」であり、ドイツが抜ければユーロ圏は「破産」してしまう、というものだ。こうした比喩は明確な思考を怠っているだけだ。その理由を理解するために、ドイツのユーロ離脱とギリシャの離脱がもたらす結果を比較してみよう。ほんの数週間前まで欧州当局者らはギリシャの離脱を「制御可能」だと表現していたが、ドイツ離脱の方が3つの理由で混乱は少ない。
第1に、ギリシャによる通貨切り下げは圏内2番目の弱体国スペインからの資本逃避を引き起こし、次いでイタリア、フランスにも影響が広がるだろう。ドイツの離脱はこうしたドミノ現象を招かない。ドイツマルクが復活してして為替相場が再設定されたとしても、「2番目に強い国」が逃避資金を引き寄せるといった事態は起こらない。もちろん一部の人々は、さらなる相場変動で儲けようと引き続きイタリアやフランスからドイツに資金を移動するだろうが、これは現在、欧州からドルやポンド、スイスフランに投資資金が流出しているのと何ら変わらない。
第2の、そして最も重要な点は、ドイツ離脱後のユーロ圏がもっと信頼に足る結束の強い集団になるということだ。ドイツの妨害から解き放たれたECBは米国や日本、英国、スイスの中央銀行に倣い、量的緩和によって短期金利をゼロまで引き下げ、長期金利は2%前後に抑えることが可能になる。同様に重要な点は、ユーロ圏各国政府がようやく純粋な財政同盟を結成し、ユーロ圏全体の財政力を使って共同債を支援できるようになることだ。そうなればユーロ圏は再び、米国、日本、英国のような単一の経済体として扱われるようになり、財政赤字比率という点でも好成績を挙げられる。IMFによると、ドイツを除くユーロ圏の財政赤字の域内総生産(GDP)に対する比率は2011年が5.3%で、英国の約9%、米国、日本の10%を下回る。金融支援を含むグロス債務の対GDP比率は90.4%。英国は98%、米国は103%、日本は205%だ。貿易赤字は英米よりもずっと少ない。要するにドイツ抜きのユーロ圏は破産状態とは程遠いし、ユーロ危機の根幹は競争力の欠如ではなく、相互負担と公的債務のマネタイズ(紙幣増刷による肩代わり)を拒むドイツにあるのだ。
第3に、ドイツの離脱に起因するユーロ圏の分裂は、弱体国が追い出されることによるユーロの崩壊に比べ、法的見地から見てずっと混乱の度合いが小さいだろう。ドイツが抜けても、ユーロは従来の協定によって統治される合法通貨であり続ける。ユーロ建てで交わされた国際的な契約は法的な影響を受けず、新ドイツマルクやドルに対して価値が下がるだけのことだ。これは2008年から09年にかけてポンドが1ポンド=2ドルから1.40ドルまで急落した際、ポンド建て契約に起こったのと同じだ。ドイツ国内法で統治されるドイツ国内の契約(例えばリテール預金や賃金交渉)だけがドイツマルク建てに切り替わる。ドイツ政府は既発国債を(投機家が望むように)マルク建てに転換せず、価値が切り下がったユーロ建てで(契約に明記されている通り)償還してコストを節約しても、法的な問題は生じない。
こうした状況だからといって、ドイツの離脱が痛みを伴わないわけではない。ドイツの輸出企業はマルク高により売上高が減少するだろう。大半のドイツの銀行は、保有しているユーロ圏内の資産がマルク建ての負債とマッチしなくなるため、政府による資本注入を余儀なくされよう。ドイツ連銀は恐らく史上最大の資本増強を必要とするだろう。ECBが運営するユーロ圏決済システム「ターゲット2」に対する債権(5月末時点で6980億ユーロで、その後も急増中)は、価値の減じたユーロ建てでしか返済されないからだ。
しかしこれらはすべてドイツ国内の問題であり、欧州全体の存在を脅かすわけではない。ドイツ以外の欧州にとって、ドイツ抜きのユーロは完璧に存続可能なだけでなく、魅力的でさえある。従ってドイツに対してユーロ離脱を迫ることは、現実味のない脅しではない。
メルケル首相はユーロ圏からの排除という深刻なリスクを冒しているのだということを、欧州指導者らが理解させることさえできれば、首相はもっと協力的な振る舞いを始めるかもしれない。その場合、実際にドイツを退去させることのコストと恩恵は試さなくて済む。
(2012年6月27日)
*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。
*このコラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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独議会の欧州財政協定・ESM承認、反対派が憲法裁判所に異議提出
2012年 7月 2日 11:59 JST
【ベルリン】ドイツのメルケル首相は29日夜、欧州連合(EU)の財政規律強化を定めた財政協定と、恒久的な救済基金である欧州安定機構(ESM)の設立について議会の承認を取り付けた。いずれもユーロ圏強化のカギとみなされているものだが、政敵たちはこれまでの警告通り、ドイツの憲法裁判所に対して法的な異議を提出しており、同首相は国内で新たな障害に直面している。
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Associated Press
メルケル独首相(29日、独連邦議会)
連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)が財政協定とESMの設立という2つの関連法案を承認したことはメルケル首相にとって勝利だ。この承認の結果、ユーロ圏の金融危機に対して強固な防御壁が構築されるとともに、欧州各国政府の財政規律強化に向けた大きな一歩になる。欧州指導者はESMを7月1日に発足させ、困難に直面しているスペインの銀行部門に最大1000億ユーロ(約10兆円)を直ちに供与する計画だった。しかし単一の銀行監督機関創設が前提とされたため、このような日程通りになる公算は小さくなった。
今回のドイツ議会による承認は、ブリュッセルでこれより先開催されたEU首脳会議の結果を受けた動きだ。同首脳会議ではユーロ圏17カ国の銀行を監督する単一の監督機関を創設することで合意した。また、ユーロ圏が中央集権的な銀行監督機関を創設した後、ESMがスペインの銀行に資金を直接供与できるとすることでも合意した。
ドイツの議会表決直後、ドイツの野党である左派党はドイツ憲法裁判所にファックスを送り、メルケル連立政権は財政協定とESM設立の関連法案によって何十億ユーロにも上る納税者のカネを危うくしていると批判した。同党指導者のグレゴール・ギジ氏は30日、ベルリンの記者会見で、「法案の両方とも反社会的であり、民主主義を崩壊させるものだ」と批判した。
メルケル首相の所属するキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)のペーター・ガウウァイラ−議員も憲法裁判所に訴えた。また民主主義擁護団体「欧州にもっと民主主義を」は予算権限をベルリンからブリュッセルに移転することは誤りだとして独自の訴訟を提起した。
これらの訴訟は広く予想されていた動きで、数週間以内に解決される公算が大きい。ドイツの憲法裁判所は過去において一貫して、欧州の統合強化に反対する訴訟を棄却してきた。しかし、訴えに関する裁判所の審議が進む間、法案成立まで不透明感が高まる恐れは残る。
ドイツのガウク大統領は6月、左派党からの訴訟を審議する時間的余裕が必要だとする憲法裁判所の要請に従い、2つの法案の署名を遅らせると述べている。
議会では与野党問わず圧倒的多数の議員がESMと財政協定の関連法案を承認したが、ドイツ国内では両法案に対するさまざまな批判が出ている。
メルケル政権を構成する連立与党からでさえ、ESMのような恒久的な救済基金はドイツの納税者にとって資金的なリスクが増えると懸念する向きもある。南欧の債務国が金融支援を強く求めているからだ。財政協定は、ユーロ圏政府に財政均衡を求めるものだが、野党の社会民主党(SPD)は成長や雇用より緊縮策を優先するものだと批判していた。
記者: William Boston、 Marcus Walker 、Christopher Lawton
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http://jp.wsj.com/World/Europe/node_470560?mod=WSJWhatsNews
Financial Times
銀行界の慢心を露呈したLIBOR操作事件
2012.07.02(月)
(2012年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
人生においては時に、「だから言っただろう」と言うのが気持ちがいいことがある。6月末は、そうした瞬間だった。もう5年も前のことだが、筆者はマイケル・マッケンジーら本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の同僚とともに、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)市場の暗い恥部を暴くために行動を開始した。
バークレイズはLIBORなどの不正操作問題に関連し、米英の金融規制当局に対し合計2億9000万ポンドの罰金を支払うことで同意した〔AFPBB News〕
それは当時、バークレイズのような大手銀行だけでなく、英国銀行協会(BBA)からの激しい非難を招いた。「人騒がせなデマ」という言葉まで使われた。
しかし今我々は、そうした怒号が飛び交う中でも、現実が思っていた以上にひどかったことを知っている。
英金融サービス機構(FSA)が公表した電子メールが示すように、バークレイズのトレーダー数人が上級幹部たちに促され、2006年からLIBOR市場を不正操作する、広く蔓延した行為に携わっていた。
しかも、バークレイズだけの話ではなかった可能性もある。
一部の金融関係者がこれを、少数の悪徳トレーダーの仕業として片付けてしまいたいと思っているのは間違いない。そして、いつもの銀行の慣行に従って、証拠となる電子メールを書いた若手の従業員は既に解雇されている。
アダム・スミスの理念を振りかざす大手銀行
だが、今回発覚した事件のもっと大きな象徴的な意義は、どれだけ誇張してもし過ぎることはない。というのも、LIBOR事件は近代の銀行業界の心臓部にある大きな慢心を露呈しているからだ。
中でも注目すべきは、ロンドンの金融街シティや米ウォール街の大手投資銀行がここ数十年間、自分たちの活動を、自由市場という言葉への信仰で包み隠すようになっていることだ。法外な利益や奇抜な手法、直近では新たな規制の動きを阻止する必要性を正当化したいと思った時には、彼らは決まってアダム・スミスの理念を引き合いに出してきた。
だが、LIBOR事件が示しているのは、シェークスピアの言葉を借りれば、この自由市場という言葉は、守ることと同じくらい破ることにおいて実践されてきた、ということだ。そして電子メールが認めているように、単にバークレイズの数人のトレーダーが「正直な価格を提示」しなかったからだけではない。
むしろ本当の問題は、そもそもLIBORが適切な市場として組織されていなかった、ということだ。だからこそ、市場操作がこれほど広範囲に広がり、これほど長い間チェックされずに続いてきたのだ。
これを理解するために、スミス自身の仕事を振り返ってみよう。3世紀余り前に論文を書いた時、このスコットランドの経済学者は、商取引が小さな家族経営の会社によって支配されていた世界に生きていた。スミスは、どのような市場システムにおいても所有者と経営者の利害は一致すべきであり、これらの経済主体がより幅広い社会的、道徳的枠組みの中で行動することが当然だと考えていた。
ほかにもスミスは、2つの要素が揃っていることを前提にしていた。市場に対する自由な参加と正真正銘の価格の透明性だ。このような開かれたアクセスがなければ、市場経済における競争や、信頼という極めて重要な要素を実現するのは難しい。
21世紀の金融システムの問題
21世紀の金融システムの多くの部分は、こうした属性を示している。公開株式市場は(大部分において)その好例だ。だが、ここ数十年間、スワップの分野では、こうした原理がひいき目に見ても部分的にしか守られてこなかった。そしてLIBORの場合、具体的な取引ではなく、特定の人たちが提示する呼び値に基づいていたため、価格設定が曖昧で気まぐれだった。
さらにLIBOR市場は、BBAをもコントロールする少数の有力銀行によって支配されてきた。銀行の所有者(すなわち株主)には、こうした金融機関の経営者の活動を監督する機会はほとんどなかった。このグループが過去に、批判を腹立たしげに無視していたのも、さほど不思議ではない。
このようなシステムを改革するのは容易ではない。結局、そもそもBBAがLIBORのために特異な価格提示システムを開発した1つの理由は、貸出金利を設定するために公開市場システムを使うことは、株式を売買する場合よりも難しかったからだ。近年この任務は、銀行間貸出市場の一部が干上がっていたために、一段と難しくなっていた。
また、一部の金融市場参加者は今、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)のような別のベンチマークに向かうことで、その償いをしようとしているが、それらが近い将来LIBORに取って代わる可能性は小さい。
何しろ推定3500億ドルに上るデリバティブ(金融派生商品)契約が、既にLIBORを基準値として使うことで引き受けられており、米国の商業ローンと住宅ローンの約90%もLIBORに連動していると考えられている。
つまり、LIBORは今、信用格付けのように、不備があってもシステムに強固に組み込まれているのだ。
LIBORシステムなどの抜本的な見直しが必要な理由
少なくとも、先日の不正操作の発覚は、なぜアリステア・ダーリング氏のような英国の政治家がLIBORシステムの抜本的な見直しを求めることが正しいのかを示している。また、こうした出来事は、英国の政策立案者たちがなぜそこで止まるべきでないのかも示している。というのも、LIBORの話は珍しいことではないからだ。
それどころか、債券やデリバティブの世界には、ほかにも依然、不透明かつ排他的なままで、スミスの基本原則を破り続けている部分がたくさんある。銀行のCEO(最高経営責任者)たちが自由市場の擁護者というイメージを打ち出しているにもかかわらず、だ。
これは、ひょっとすると、我々の時代の大きな皮肉と偽善行為の1つであり、CEOたちが無視すれば自らが痛い目に遭いかねない一般国民の反感の源なのかもしれない。
By Gillian Tett
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35567
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