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政治総崩れのアジア、貧富格差拡大の試練
2012年7月2日 月曜日 熊野 信一郎
香港の行政トップ、行政長官を7年間務めた曽蔭権(ドナルド・ツァン)氏は6月末の退任を前に、自らの過ちを認めた。1つが「貧富の格差拡大」だ。
所得格差を示すジニ係数で、香港は直近の統計で0.54を記録。ジニ係数が0.4を上回ると社会不安が起こる危険水域にあるとされる。
もともと香港は収入格差が大きく、ジニ係数は世界でも最も高い部類に入る地域だ。問題は、経済成長の中でもそれが悪化していることにある。中国の経済成長に牽引される形で好景気を謳歌してきたが、貧困層の拡大、物価上昇による生活苦などの社会問題は深刻さを増している。
経済運営への不満もあり、最近の世論調査では、ツァン氏への支持率は2割以下にまで低下した。7月に就任する梁振英(C.Y.リョン)次期行政長官の支持率も私生活のスキャンダルなどで就任前から低下傾向にある。
アジアを見渡すと、この「政治不信」が局地的な問題ではなく、共通する構図として横たわっていることが分かる。足元では減速感が出ているとはいえ、アジア各国ではGDP(国内総生産)は拡大を続け、1人当たり所得も伸びている。それなのに、政治への不信感は強く、総崩れと言っていい状況だ。
際立つのがインドだ。6月末、インドでは連立政権与党の統一進歩同盟(UPA)の政策に反対するデモが全土で広がった。野党インド人民党(BJP)が主導し、石油製品の値上げなど与党の政策に抗議する労働者などが呼応した形だ。インドでは相次ぐ汚職問題に加え、食品や石油製品のインフレと、電力や水の不足が次々に顕在化、それが国民の不満に火をつけている。
シンガポールも移民に不満噴出
アジアの中でも勝ち組とされ、その成長モデルが称賛されることも多いシンガポール。ここでも、移民政策などを巡って不信感が広がっている。
同国は全国民の3分の1が外国人で、積極的に移民を呼び寄せることを成長戦略の柱に据えてきた。一方で、それが所得格差や住宅価格の高騰を生み、庶民の反発も膨らんでいる。この5月、高級スポーツカーに乗った中国人富裕層が無謀な運転で交通事故を起こし、日本人を含む複数の死者を出したことで議論が活発化。昨年来、国政選挙や地方選挙では与党の支持は低落傾向にあり、今後は移民政策の修正も予想されている。
そのほか、台湾やマレーシア、インドネシアでも政権与党の支持率は低下傾向にある。直近のインフレや石油製品の値上げなどが直接的な原因だが、共通するのは格差の拡大である。
一方、中国は内部の権力闘争はあるにしても、国民の不満が表面化しにくいだけに政治体制が大きく揺さぶられることは考えにくい。そのほか、共産党の一党支配体制のベトナムや、フン・セン首相の人気が高いカンボジアなど、政治基盤が強固な国はむしろ少数派となっている。
振り返れば、21世紀に入っての「アジアの世紀」は政治的な安定がその土台にあった。フィリピンやインドネシアなど最近注目を集めている国も、かつては不安定な政治からインフラ整備や外資誘致が進まず、ほかのアジア諸国から立ち遅れた過去がある。
米大統領選、中国の新体制発足が予定されている2012年は「政治の年」とされる。アジアの多くの国にとってみても、現状の混乱から抜け出せるかどうか、試練の年となりそうだ。
熊野信一郎のクロス・ボーダー
日本では知られていない、しかし重要なニュース。知られているようで、本質が見過ごされているニュース。時に中国、時にASEAN(東南アジア諸国連合)、そして時には外から見た日本の姿を、アジアの「へそ」香港からボーダレスにお届けします。
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熊野 信一郎(くまの・しんいちろう)
日経ビジネス香港支局特派員。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に所属。製造業や流通業を担当後、2007年に香港支局に異動。現在は主に中国や東南アジアの経済や企業の動き、並びに各地の料理やアルコール類の評価、さらに広島東洋カープの戦力・試合分析などを担当する。
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>世界を読む 指標100
ユーロ圏、貸し渋りで倒産増 欧州銀行の貸し出し態度
• 2012年7月2日 月曜日
• 後藤 文人
欧州銀の融資姿勢が再び悪化している公算が大きい。倒産増加につながるとの警告も出ている。上昇するCDSの保証料率が、欧州銀の苦境を物語る。
2012年1〜3月の時点で、欧州銀行の貸し出し態度DIは右グラフの通り、緩和に向かっていた。欧州中央銀行(ECB)による2度の長期資金供給オペ(LTRO)を受け、銀行の資金繰りが改善していたためだ。ただ、恐らくこの融資環境の改善は既に終わりを告げているだろう。言うまでもなくギリシャやスペインの危機再燃で、欧州銀の資金調達に影響を来しているためだ。
格付け会社の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も欧州企業の倒産確率が上昇するとのリポートを公表している。非投資適格(格付けでダブルB以下)企業では足元4.7%の倒産確率が来年3月に6.4%まで上がり、悲観シナリオでは8.2%にも達する。今のところ欧州で企業倒産が大きく増えているわけではないが、それは企業が自衛手段として現金を積み増しているためで、資金の調達力に劣る企業では状況は厳しくなっていく可能性が高い。
S&Pはギリシャが3割の確率でユーロを離脱すると予想するなど、欧州に対し過度に悲観的なようにも見える。しかし欧州の信用不安がスペインをのみ込み、イタリアへの波及が懸念される状況にあっては、欧州銀が貸し出しを絞りつつあるのは想像に難くない。
欧州銀、CDSも悪化
市場も状況の変化を素直に織り込んでいる。各行の信用リスクを反映するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場での欧州銀の保証料率を見ると、昨年末から低下していたのが春先からは上昇に転じている。当然と言えば当然だが、イタリア最大手のウニクレディト、スペイン最大手のサンタンデールの上昇が目立っている。
もっとも、現在の保証料率の水準はリーマンショックの直後よりは低い。年末にかけての市場予想も著しい悪化は見込んでいない。加えて、欧州金融機関の中核とも言えるいくつかの銀行は総じて資本が厚く、欧州周辺国への貸し出しも限定的だ。ただ、これは欧州主要行が危機に陥る可能性が相対的に低いことを示唆しているにすぎない。信用リスクの悪化が限られているといって、貸し出しに前向きだと考えるのは早計だろう。
LTROは第3弾も取り沙汰されているほか、ほかの資金供給手段の実施や利下げも視野に入っている。ただ、仮に実行に移されても実体経済への効果は一時的にとどまるだろう。例えばスペインの最大の債権国はドイツで、ドイツの信用力が毀損する可能性は残る。政府の信用悪化は金融機関に及び、事業会社も影響を受ける。こうした信用の「負の連鎖」が意識される限りは、貸し出しをテコにした経済成長は見込みにくくなってしまう。
現時点での見込みは奇抜なものではない。イタリアやスペインの政府は市場の信用を取り戻す必要があり、そのために財政支出は抑え気味にせざるを得ない。この間、経済の回復は非常に緩やかにとどまる公算が大きい。金融緩和は実施されるだろうが、実体経済を下支えする力は限られる。市場が一時的に楽観的になることはあっても、ショックに対する脆弱性を抱えていることは無視できない。
(構成:張 勇祥)
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世界を読む 指標100
急速に変化する情勢を読み解くには、どんな指標に注目すべきなのか。日経ビジネス編集部では、著名エコノミストやトップアナリスト74人に、世界と日本の明日を見通すために注目される指標100を選んでもらった。その指標の見方を解説していく。
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後藤 文人(ごとう・ふみひと)
UBS証券 クレジット調査部長
1986年慶応義塾大学経済学部卒、日本興業銀行入行。メリルリンチ日本証券を経て、2005年にUBS証券入社。日本における信用分析の第一人者。
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