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ついに寿命もおカネで買う時代に?
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投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 02 日 18:53:08: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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ついに寿命もおカネで買う時代に?

運動習慣から垣間見える健康格差のメカニズム

2012年7月2日 月曜日 丸山 士行

 紀元前3世紀、秦の始皇帝はその絶大な権力をもって不老不死を追い求めたが、結局49歳で死んだ。中世ヨーロッパで盛んだった錬金術も、究極の目的は不老不死だったという。長い間、死は身近でありながら人間にはなすすべのない怖れの対象であった。東大寺の大仏を建立しようと、国を挙げての加持祈祷をしようと疫病は起こり続け、ひとたび天然痘が流行すると天皇も貴族も庶民も、身分に関係なくあっけなく死んだ。長い人類史を俯瞰すれば、狩猟採集社会から農耕社会に移行して以来、社会における経済格差は広がり続けてきたが、死や病に関する格差は、近代に入るまでほぼ皆無であった。

「富裕層は明るく、よく眠り、転びにくい」

 今日、「健康格差」に関する研究が進んでいる。30年に及ぶ研究の蓄積の結果明らかになってきたことは、「豊かな人ほど健康で長生きする」という傾向である。この統計上の相関は「健康格差」と呼ばれ、世界各地で年齢性別を超えて報告されている。所得と死亡率に基づく分析がもっともオーソドックスだが、所得の代わりに資産、学歴、階級、人種などを使っても、死亡率の代わりに寿命、慢性疾患や鬱病の有無、自殺率などを使っても、同様の傾向が観察されることが大半である。WHO(世界保健機構)からは健康格差に関する報告書がたびたび出版されている。日本でも日本福祉大学の近藤克則教授(社会疫学)らの研究を筆頭に研究の蓄積が進みつつあるが、そこでは「富裕層は明るく、よく眠り、転びにくい」ということまで報告されている。健康格差は、世界レベルの疑いようのない事実として確立されつつあるといえるだろう。

 このため研究者の関心は「健康格差は存在するのか」から、「なぜ健康格差があるのか」という健康格差のメカニズムの解明に移りつつある。残念ながら、問題のスケールの大きさと複雑さのため、はっきりとした事実の解明はまだこれからであるが、本稿では主立った有力な仮説を紹介しよう。

 健康格差の理解への第1の鍵は、何が原因で何が結果かという「因果関係」にある。因果関係についての様々な議論は次の3つの仮説に整理できる。

 仮説(1):豊かさが健康に大きく影響している。
 社会疫学における基本的な立場である。まず国によって医療サービスはお金がかかるので、低所得者は満足な医療を受けられない。日本のような国民皆保険制度がある国も多いが、それでも普通は一定の自己負担が存在し、低所得者の健康の足かせになっている。そのうえ困窮すればするほどストレスは大きく、食べ物の質が落ち、住環境が悪化し、従って健康を害するというストーリーである。

 仮説(2):健康が豊かさに影響する。
 仮説(1)とは逆の因果関係である。健康は人的資本・能力の一部であり、従ってその人の労働生産性を左右し所得水準を決定する。平たく言えば、病弱であるほど学業にも昇進にも支障が出やすく経済的成功のチャンスが小さくなる、という仮説である。比較的支持する経済学者が多い。

 仮説(3):豊かさと健康の間には直接の因果関係はなく、第3の因子によってもたらされる見せかけの相関である。
 「第3の因子」のもっともらしい例としては、遺伝子や生育環境があげられる。つまり、生まれながらに恵まれた人々が裕福かつ健康に生きているだけ、という説明である。

健康格差と所得格差の関係とは?

 因果関係の解明は、政策を考える上で決定的に重要である。健康格差を小さくする政策が望ましいという社会合意が形成されたとしよう。ではそれをいかに達成すればよいのだろうか?

 もし、健康格差が所得格差の結果なのであれば、所得再分配政策を強化し貧困をなくすことが大事になる。しかし、健康格差が所得格差の原因なのであれば、医療保険制度、保健衛生、医療技術開発といった政策がより重要になってくる。研究の進展が期待される。

 健康に関する議論では、時間軸も重要になる。健康は日々の出来事を反映しながら長い時間をかけて推移していくからである。時間軸を導入した理論を説明するにあたり、まず興味深いデータをお見せしたい。生活習慣病に顕著に関わってくる運動習慣に関するデータである。筆者が住むオーストラリアのデータを用い、運動習慣が所得階層によってどう異なっているかを、運動量を加味して図にしてみた(運動量は運動時間と消費カロリーから換算)。

図1 所得階層別に見た運動習慣

 低所得層は学生・主婦・非正規雇用者が含まれるため若干結果にばらつきがあるが、図からはっきり分かるのは、所得が高いほど運動習慣があり、かつ運動量も上がっていくという点である(米国でも類似の報告がある)。

 一方、学歴・所得の低い層ほど健康診断を受けない、という報告が数多くある。これは健診が無料のケースでも観察される結果である。なぜ、豊かな人ほど運動をし、なぜ低所得層は健康診断を受けないのであろうか?ここで重要なのが、人々は現在だけでなく将来を見越して意思決定を行うという視点である。ミクロ経済学を使ってこの点を考察してみよう。

 ミクロ経済学では健康を「健康資本理論」という考え方で捉える。そこでは「健康という資本」は一般の資本財と同様、放っておくと時間と共に棄損していくが、「投資」によって維持・増進できると考える。この場合の投資というのは、病院に行って健康診断や治療を受ける、体に良いものを食べ運動する、といったことである。喫煙はマイナスの投資といえる。人々は、この投資のコストとリターンに基づいて最適な投資水準を決定する。

 この理論の意味するところは明解だ。経済的に恵まれた環境にいて充実した人生を意欲的に送っている人は、長生きすることで得られる収入が大きく、また充実した余暇を過ごせるので、健康投資のリターンが大きい。従って、検診も積極的に受ければ、食べ物にも気を使い、運動も積極的にする。

健康に対する「投資」のリターンが高いか低いか

 他方、努力しても良い仕事が見つけられない低学歴貧困層は、富裕層に比べ、積極的に健康に気をつけるインセンティブ(動機付け)に乏しい。このグループにとっては、正しい医学知識を身につけ酒やたばこをやめるという「投資」はコストに較べリターンに乏しいのである。この理論のもっとも皮肉な部分は、健康であればあるほど、1年余分に生きるリターンが大きく、従ってより健康に気をつける、という点である。投資のインセンティブの格差が健康格差をもたらし、その健康格差がさらなるインセンティブ格差をもたらすという意味で、健康資本理論においては、健康格差は自己拡大的なのである。

 最後に、歴史的視点から健康格差を考えてみたい。1980年代以降、健康格差が拡大傾向にあるという報告が増えている。医療が原則無料のイギリスで健康格差が年々大きくなってきているという報告がたびたび出されて大きな反響をよんだ。健康格差に政府として責任を持って取り組もうとする国は増える一方だが、実際に健康格差が有意に縮小したという実証報告は聞かない。健康格差はなぜ年々拡大してきているのだろうか?そして、健康格差は将来どうなっていくのであろうか。

 米ハーバード大学のデビッド・カトラー教授(医療経済学)は、「健康格差を左右するのは所得ではなく、医学における技術と知識のあり方である」という推論をしている。しばしば社会の不平等の拡大が健康格差拡大の背景にあると思われがちだが、大局的に見ればむしろ、医学の技術進歩のスピードの鈍化や医療情報のリテラシー(活用能力)の重要性の高まりといった構造変化が背景にあるというのが教授の見立てである。

 18世紀の英国では、貴族階級と一般庶民の間の健康格差はなかったという。また、細菌に関する研究と理解が進展する19世紀以前は、医師の家庭と一般家庭の間で乳児死亡率に差はなかった。

 その時代には富裕層や知識階級がどんなに長寿を願っても、できることは限られていたのである。19世紀後半から20世紀終盤にかけては医学の圧倒的な勝利の時代であり世界の平均寿命が劇的に伸びた。都市部の衛生状況が改善され、抗生物質とワクチンの普及により感染症が克服され、心血管疾患の治療成績が大幅に改善した。健康格差も出現し始めたが、同時に先進国では医療保険が整備され、ほぼ全ての国民が医学の進歩の多大な恩恵に浴した。

 しかし、医学の進歩のスピードが落ち着いてきた今日、寿命を一年延ばすのに必要な費用と労力は再び極めて大きなものになりつつあり、これが健康格差の拡大要因になっている。資金力があれば、最先端の医療を受けるべく、海外に行くこともできる。それに本気で長生きしたければ、正しい医療情報を収集し平素から努力を続けることで、無視できないほどの差が生まれるだろう。

積極的に運動するのは高学歴・高所得層

 例をあげよう。1960〜80年代の米国では喫煙率が劇的に低下し、平均寿命の増進に大きく寄与したのだが、たばこの害が科学的に明るみになるのと同時に最初に積極的に禁煙に動いたのは、その意味をいち早く理解した高学歴層であり、後の肺がんに関する健康格差の一因になった。

 また、前述のデータでも見たように、運動習慣の重要性が認識された今日、積極的に運動をしているのは高学歴・高所得層であり、ここでも新たな健康格差が生まれつつある。富裕層は健康投資のインセンティブが大きいことは既に述べた。冒頭で触れた始皇帝の時代には満足な技術がなかったため、いかにインセンティブに格差があろうと健康格差は生じなかった。だが今日の健康格差の背景には、富裕層が活用できる高額な医療技術や有益な医学情報の継続的な出現という医学上の環境変化があるのである。

 このような健康格差は、国民皆保険のような国の医療関連政策だけで解消することは難しい。最新鋭の高価な医療技術を即座に全国民に提供することは現実問題として不可能であるし、医療情報リテラシーの学歴間格差を一足飛びになくすことも困難である。人類が100年前に経験したようなレベルの医学上の大革新が起こらない限り、仮に所得格差が今以上に広がらないとしても、健康格差はゆっくり拡大して行くと予想される。

 古代より長い間、死と病は人を選ばず、健康と長寿は人類共通の強い願いであった。その普遍的な価値の故に、現代では基本的人権の1つとして日本国憲法にも世界人権宣言にも「生きる権利」が明記されている。しかし今日の健康格差の背景に、「貧困層は努力が空しいので運動よりも喫煙を選び、その結果、早死にする」といった構図があるのであれば、そのような健康格差に社会として、どう取り組んでいくべきなのであろうか。世論における議論の深まりを期待したい。


「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。

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丸山 士行(まるやま・しこう)

オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学経済学部講師。1997年慶應義塾大学経済学部卒業。2007年米ノースウェスタン大学経済学博士(Ph.D.)。専門は医療経済学・応用ミクロ経済学。「International Economic Review」、「Health Economics」、「Health Policy」などに論文掲載。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120622/233681/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年7月02日 19:45:16 : npansWPdOA
再生医療が進み、何十後、車の部品換えみたいに、臓器換えが出来るだろう。そして、又何十年後、細胞若返る薬が発明されるだろう.臓器と脳が若返れば、理論上,秦の始皇帝の夢がかなう。残念ながら、かんじんの、貧乏人と金持ちの差を克服するのは、もっと後だろう。兵器もレーザー兵器が主流になり、飛行機も軍艦もミサイルも、レ―ザーでようかんみたいに切断される。今の原発は原始的な装置として、笑物の、ゴミ捨て場だろう。いずれにしろ、その時まで無事、日本があればの話だが。

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