http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/733.html
Tweet |
イマドキ職場のギャップ解消法
【第69回】 2012年7月2日
高城幸司 [株式会社セレブレイン 代表取締役社長]
ビールも注がない、敬語がダメ、忙しくても定時帰宅
なぜイマドキ部下は上司をうまく立てられないか
1
あなたは上司を立てていますか?ゴマすりとは違いますよ。細やかな気遣いをする、礼儀をわきまえて接する、忠誠心を示すなど、上司に対して尊敬を示す態度のことです。ときには理不尽な指示が上司から飛んできても、文句を言わずに「承知しました」と受け止めて仕事をこなす度量とも言えます(もちろん理不尽の程度にもよりますが)。
しかし最近、このように上司をうまく立てることができない若手社員が増えているようです。では、イマドキの若手社員は上司に対してどのような態度を取ってしまっているのでしょうか。今回は、上司を立てられずに職場で気まずくなったある若手社員を例に、「(相手を)立てる」ことの重要性をお話していきましょう。
無理な命令も、間違った発言も
すべて部下が受け入れていた時代
「部長、その仕事はぜひ私にやらせてください」
もしも無茶な仕事の依頼であったとしても、こうして上司を立て、文句を言わずに引き受けてくれる。あるいは多少は間違ったことを発言しても「おっしゃる通り!」と同意してくれる。
こんな風に、上司の命令や発言には逆らわないのが当たり前。まさに「部下は上司を立てるもの」だった時代は、いつ頃まで続いていたでしょうか?おそらくこの時代の上司にとって、職場は居心地がいい場所だったことでしょう。
ちなみに私の新入社員時代も、上司を立てるのが当たり前でした。仮に「それは違うのではないか?」と感じても、反論はしてはいけませんし、上司から指示されたら文句を言わずに、黙って仕事をするのが当たり前だと教わったものです(ときには教えを破って反抗もしてしまいましたが)。
ただ、それは私だけのことではありません。社会全体として大抵の職場で上司を立てるのが常識と認識されている時代だった気がします。よって、当時の部下にしてみれば、「自分もいつか上司になって、部下から立てられる存在になりたい」と考えたものでした。
「自分でやればいいじゃないですか」
上司と部下の上下関係が崩壊中!?
ところが、時代は変わりました。職場での上下関係が昔ほどなくなり、それだけならいいのですが、上司に対する部下の態度が著しく横柄な職場も出てきているようです。
取材をしてみると、上司が仕事を頼んでも、
「やりたければ自分でやればいいじゃないですか?」
と相手にしない態度を示す部下。
次のページ>> 「なぜ職場の上司の顔を立てないといけないのですか?」
あるいは、
「もう少し頭を使ってください。まったく頼りないな」
と、合理的にやりたくない理由を羅列して、馬鹿にした態度を上司に示す部下がいる職場にも遭遇しました。
これでは上司を立てるどころか、舐めきっている状態です。ここまでくると上司も形無し。むしろ部下に気を遣う、まずい職場と言えるかもしれません。
また、こんな発言をする若手社員もいます。
「なぜ職場の上司の顔を立てないといけないのですか? もちろん、仕事上で尊敬できる人なら立てますよ。ただ、『上司』ってだけで、顔を立てたり、持ち上げなくてはいけない意味はありますか?それって『持ち上げられる側の上司が作った自分に都合のいいルール』なんですよね?それってくだらなすぎます。私は納得できません」
このように、上司を立てることに対して、絶対的に抵抗する勢力が存在する職場もあるようです。
ここまで反発されると、上司も「立てる」ことの重要性を彼らに説明するのに窮してしまうかもしれません。ただ、そこまで酷いケースは僅か。多いのは上司を舐めきるまでいかないものの、学生時代までの人間関係を引きずって「上司を立てない無礼な奴」と烙印を押されてしまった部下がたくさんいる職場です。
つまり、現在の上司と部下の状況を整理すると、
上司:うちの部下は上司を立てない
部下:上司の立て方がよくわからない
このような感じでしょうか?
多忙な周囲を横目に定時帰宅
すると上司から鋭い睨みが…
典型的な“上司を立てられない部下”の一例として挙げられるのが、広告代理店に勤務する若手社員のDさん(23歳)。アメリカ東海岸で幼少期から大学卒業までを過ごした経験から、上司を立てることが苦手です。
次のページ>> 「上司を立てろ」と強要してはダメと分かっていてもイラつく上司
ある週末、仕事が早く終わったので、上司や先輩にはまだたくさん仕事が残っているのを知っていたものの、Dさんは定時に会社を出ました。もちろん、毎日定時で帰っているわけではありません。たまたま、その日は早めに帰っただけでした。仕事で忙殺される上司を横目に帰ってしまったのは事実ですが、自分なりの「たまにはいいじゃないか?」という考えがあり、罪悪感は皆無でした。
ところが、会社を出ようとしたとき、誰かの視線を感じました。振り返ると、上司が睨んでいたのです。「もしかして…上司より先に帰っては行けなかったのかな」という不安が頭をよぎりました。
「なんだか帰りづらい状況かも」と感じつつも、仕事は完全に終わっていたので、残っても暇を持て余す状況。上司が帰るまで待つなんておかしい、と確信して、「失礼します」と軽く挨拶をして、オフィスを出ました。
しかし、これが上司には気に入らなかった様子。見えなくなるまでしつこいくらいに睨み続けました。おそらくDさんは視線を感じて「何か怖い」とビクビクしながらオフィスを出て行ったことでしょう。
「上司を立てろ」と強要してはダメ
そう分かっていてもイラつく上司たち
ちなみに上司であるGさん(38歳)がDさんを睨んでしまったのは、若い日の仕事に対する掟を忘れられないから。その掟とは、上司を徹底的に立てるのが当たり前、それができないビジネスパーソンはやめるしかない…というものです。前時代的な考えともいえますが、ちょうどGさんが若い時代に仕えた上司が、絶対君主のような存在で、その影響が大きいようです。
「上司より先に帰ってはいけない。上司に対して常に尊敬の態度を取らなくてはならない。上司の指示に対して異議を言ってはならない」
こんな掟を叩き込まれたので、上司を立てる態度が染みついてしまったのでしょう。もし掟を破って上司に反抗的な態度をとったとしたら、
「そんな無礼な奴はいらん。即刻、会社をやめろ」
こう暴君から言い返されるだけ。このきつい環境のせいで、Gさんには無意識のうちに上司を立てる体質が備わりました。
ただ、時代が変わり、上司は部下に対してフランクに接することが必要な時代であることをGさんはわかっています。
次のページ>> 「もっと申し訳なさそうな態度をとれよ!」
「社内の研修等で、部下に上司を立てろと強要してはいけない、それはパワハラになると教えられています。なので、自分が強いられたようなことを部下には求めてはいけないと自覚しています…」
意外にも、こんな神妙な答えが返ってきました。ビジネス書のコーナーに行けば、「部下の操縦法」をテーマにした書籍が並び、部下に対しては頭ごなしに指示せず、『やる気を高めるコミュニケーションをするべし』などと謳われたタイトルがいくつも目に留まります。
ですから、もちろん自分が体験してきたような、部下が上司を絶対的に立てる時代でないことを理解はできています。ただ、頭でわかっていても気持ちのどこかで納得できていないため、思わずイライラした態度が表に出てしまうのです。そのため、Dさんの態度に我慢ができず、ついに怒りが爆発してしまいました。
「もっと申し訳なさそうな態度をとれよ!」
上司からネチネチしたお説教が…
一方で上司より先に帰ったDさんも、帰り際の態度に反省していました。
「丁寧なお辞儀や、『失礼します』以外の言葉が必要だったかな?気に食わない、生意気な奴だと思われてたらどうしよう。明日から急にきびしい態度に変わったりして…」
と、こんな不安がよぎっていました。
ちなみにDさんは外資系企業に就職することも考えたようですが、将来に対する不安もあり、国内系の企業に就職しました。
「できれば長く働ける職場がいいので、歴史ある会社を探して就職活動をしました。歴史が長い分だけ封建的な雰囲気はあるのかもと思っていましたが、想像以上で驚いています」
実はDさん、これまでにも上司を立てることができず、何度も注意を受けていました。社内の宴会でビールを注ぐのが遅いとか、敬語の使い方がなっていないと、職場で立たされたまま30分以上説教を受けるなど、つらい思いを何回も経験してきました。
そして今回も、翌週月曜日の出社早々、上司のGさんから声がかかりました。
「いいかな、別に上司より先に帰るな…とは言わないよ。ただ、申し訳なさそうな態度を取るとか、丁寧な挨拶や気配りが欲しいんだよ。わかるかな。社会人としての常識を覚えてくれないと困るな」
と、ネチネチお説教を受ける羽目になりました。
では、Dさんはこれから、どう上司と接していったらよいのでしょうか?
次のページ>> 最近の若手社員が上司をうまく立てられない理由
上司を立てることは、職場や自分の置かれた仕事環境をいい雰囲気にすることにつながります。その結果、自分の仕事でも良い成果が出て、職場全体の成果も上がるという好循環が生まれるもの。よって、極力上司を立てる努力は怠らないほうが得策と言えます。
ところが、最近の若手社員は上司を立てることを嫌がります。なぜなら、
「仕事上の身内に対して、そこまで気配りする必要を感じない」
と、心理的な抵抗感を抱いてしまうからです。性格的に人を立てることが苦手という人も増えているのかもしれません。
つまり、部下を活かせない上司が増えていると言われる一方で、上司を立てられない部下も増えているのです。では、上司を立てられないのは、なぜか。その理由は3つ。
@上司をライバルだと勘違い(本当は支援者なのに)
A尊敬できる点を見いだせない
B自己評価で頭が一杯
やや自分に余裕がない、自己中心的な視点があるからだと言えます。
もし組織全体で仕事の成果を上げたいと思えば、「上司だけを立てるのではなく、後輩も同僚も職場の全員に対して立てる意識が大事」と感じることができるはずです。
組織で働いている以上、個人の評価はチームの成績とある程度、連動します。チームの成績が上がらなければ、当然、そこで働く個人の評価も上がりません。上司を立てるということは、決して「媚びる」とか「おべっかを使う」といったゴマすり的なスキルではありません。組織をうまく回し、チームの成果を上げるためのひとつの知恵だと覚えておきたいものです。
◎編集部からのお知らせ
本連載の高城幸司氏が共同執筆をした『新しい管理職のルール』が好評発売中!
時代が変ればマネジメントの手法も変わります。会社組織や会社に関するルールが変わり、若者 の組織に対する意識も変わっていますから、マネジメントも変わらなくてはならない。では、どのように?「戦略」「業務管理」「部下育成」「コンプライアン ス」をどうマネジメントに取り入れるのか。新しいマネジメントのルールを教える1冊です。
質問1 あなたの部下は上司を立ててくれていると思いますか?
立ててくれる
人による40
立ててくれない
部下はいない
その他
>>投票結果を見る
http://diamond.jp/articles/-/20882
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。