http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/691.html
Tweet |
[真相深層]中国の金輸入、急増の怪 真の買い手は人民銀? ドル基軸揺らげば影響力 [日経新聞]
昨年9月に1トロイオンス1900ドルを超す史上最高値を記録して以降、金の国際相場は調整局面が続く。ところが、もたつく相場をよそに金の市場はある話題で持ちきりだ。中国の輸入量が急増している――。
香港を経由
中国政府は金の輸出入統計を公表していない。そこで市場が注目するのは、香港当局が毎月発表する貿易統計だ。「中国に向かう金の大部分は拠点市場の香港を通り、深センや上海で宝飾品などに加工される」(スタンダードバンクの池水雄一東京支店長)からだ。
異変が起きたのは昨夏。香港から中国への金輸出量が8月に40トン台に増え、11月には初めて100トンを超えた。その後、いったん落ちた輸出量は今月発表の4月統計で再び100トンを突破した。
国際市場との裁定取引が活発になり、中国から香港への輸出も増えた。ただ、それを差し引いても、4月は67トン強が香港から中国へ輸出された。この水準が続けば、年間800トンの金が中国国内に積み上がる。
金の価値を支えるのは希少性だ。英調査機関の推定で、昨年の世界の鉱山生産量は2818トンにすぎない。過去の生産分も様々な形でおよそ17万トンあるとされるが、市場ですぐに売買できる在庫は多くない。
目先の相場はニューヨーク先物に左右されても、中長期の基調は現物の金の動きが決める。だからこそ市場関係者は、毎月数十トンの金塊が中国に向かう現実に身構える。
市場には推論が飛び交う。多いのは金市場の自由化に合わせ、投資が膨らんだという説だ。大手金融機関による金の取り扱い解禁に加え、上海の商品取引所でも金投資が可能になった。その需要が輸入増に表れているとの見方だ。
国民や機関投資家が金保有を増やせば、その分、余ったマネーが不動産投機などで暴れる事態を抑止できる。金も商品投資とはいえ、食材や石油のようにインフレには直結しない。自由化の狙いはそこにある。
ただ、その解説でも謎は残る。「店頭での個人の買いは昨年の春節(旧正月)商戦の方が盛り上がっていた。しかも、今年は春節後の4月に輸入が急増している」(金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏)
最大の産出国
中国は今や世界最大の金産出国。昨年の推定産出量は371トンに増えた。これに急増した輸入が加わる総供給量は「いくら個人投資が盛り上がっても多すぎる」との声が多い。
亀井氏の推測は、中国人民銀行(中央銀行)による金準備の増強だ。金市場では現在、準備資産の多様化を進める中央銀行が大きな買い手だ。ロシアやメキシコ、タイなどが着々と金準備を増やす。米ドル離れと連動した動きだ。
人民銀の公表金資産(1054トン)は、3兆3千億ドル(260兆円)ある外貨準備の2%弱にすぎない。だが人民銀は2009年、「国内産出金やスクラップを集め、03〜08年に計454トンを積み増した」と突然発表した。今回も水面下で間接的に金を買い集めている可能性はある。
09年には中国政府高官が「国として金の保有量を8〜10年内に1万トンまで増やすべきだ」と述べた。「中国政府は国内に金をため込むことを考えている。金の輸入は自由化しても、輸出は実質自由化していないのが証拠だ」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)
米ドルの基軸通貨としての地位が揺らいだり、世界的にインフレが進んだりすれば金の価値は高まる。金保有の多い国は国際金融秩序にも強い影響力を持つ。急増する金輸入の裏に政府・人民銀の野心が見える。
中国は自国の金生産を10年間ため込むだけで3千トン増やせる。中国がいずれ米国(8134トン)を上回る世界最大の金保有国となる可能性は否定できない。市場の謎は再び、突然の発表で人民銀が解くことになるかもしれない。
(編集委員 志田富雄)
[日経新聞6月28日朝刊P.2]
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。