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[十字路]ロンドン金属取引所
銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなど非鉄金属取引のメッカであるロンドン金属取引所(LME)が香港取引所に買収されるようだ。今から30年前、まだ駆け出しの商社マンだった私は、コックニー英語(ロンドンの労働者階級で話される英語)が飛び交うその取引所で、非鉄金属取引の基礎をたたき込まれた。
LMEは135年の歴史と伝統を誇り、シティの金融街レデンホール通りにある。電子化の波にのまれず、昔ながらの立会売買手法を守り、非鉄金属の鉱石や地金の国際的な値決めを独占してきた。
主要取引所が会員組織から脱却し株式を公開する中、LMEだけは会員組織を維持し続けてきた。だが、ここにきて拡大戦略のために株式を開放し、大手取引所の傘下に入る決断をする。
今回、香港取引所が提示した買収価格はLMEの年間収益の100倍をはるかに上回り、直近の会員権取引価格の20倍以上。経済性を度外視した破格の値段だ。
今回の買収には多様な思惑が見え隠れする。香港取引所の大株主は中国政府。買収が成立すれば、中国は世界の非鉄金属取引の8割の値決めを担う取引所を傘下に収める。海外の資源権益を買いあさる戦略に加え、今度は資源価格形成の場を手中に収める。
中国は世界の非鉄資源の4割を消費する世界最大の需要国だが、購入する鉱石や地金の価格はロンドンで決まる。資本を押さえて価格形成過程に影響力を持つことは、国家戦略上、重要な意味を持つ。上海にはすでに巨大な商品取引所が存在するが、海外からの参入は厳しく規制している。ここに全く規制のない香港が加わることになる。
アジアにはすでにシンガポールという原油や石油製品の一大市場がある。香港、上海、それにシンガポールと中華系の市場がアジアの鉱物資源やエネルギーの価格形成をリードする時代がきている。ますます東京市場の存在感が薄れていくのが気掛かりだ。
(住友商事理事 高井裕之)
[日経新聞6月27日夕刊P.5]
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