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The Economist
コモディティー価格の下落と世界経済
2012.06.28(木)
コモディティー価格の下落の意味を理解する。
これは良いニュースなのか、それとも悪いニュースなのか? コモディティー価格はここ数週間で急激に下落している。「S&P GSCI指数」は5月だけで13%落ち込み、1カ月間の下げ幅としてはこの2年間で最大となった。
コモディティー価格の下落は、西側諸国の消費者にとっては減税と同じ意味を持つが、世界経済の成長減速を示す憂慮すべきサインである可能性もある。
価格受容者になった先進国
近年の世界経済の顕著な特徴は、コモディティー価格がこれほどしっかり持ち堪えてきたことだ。最近の下落の後でも、価格は2007年1月の水準と比べればはるかに高い(図参照)。
通常は、先進国経済が低迷期に入れば、原材料は下げ相場に入ると考えるだろう。だが、豊かな経済国はコモディティーの価格設定者ではなく、価格受容者になりつつある。
例えば、中国は世界の銅供給量の40%を購入している。ロングビュー・エコノミクスのハリー・コルビン氏は、BRICs諸国4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)では、2012年の1日当たりの石油消費量が2008年実績を370万バレル上回ると試算する。一方、米国および欧州の経済大国の需要は同時期に日量150万バレル減少した。
コモディティー価格の持続的な力強さは、経済の不振にもかかわらず、多くの国でインフレ率が高止まりしている理由を説明する役に立つ。賃金が伸び悩む中で、しわ寄せは実質所得に出ている。
だが、最近のコモディティー価格の軟化はインフレ率に表れてきている。これまでインフレ率がずっとイングランド銀行の目標値を上回ってきた英国では、5月に物価上昇率が低下。昨年まで5%を超えていた年率のインフレ率は2.8%に低下した。
米国では、夏のドライブシーズンが到来し、4月初旬に1ガロン3.88ドルに迫っていたガソリンの平均小売価格が3.47ドルに下落した。
原材料価格がほぼ一様に下落している状況は、好意的に解釈することもできる。コモディティーは今や投資対象となっており、価格の落ち込みは単に投機筋の気まぐれを反映しているだけかもしれないのだ。
バークレイズのケビン・ノリッシュ氏は、銅の売り持ち高(銅相場が下落することに賭けるポジション)が2年ぶりの高水準に達しており、ヘッジファンドが世界的な景気下降を予想している可能性があると言う。
ドイツ銀行のストラテジスト、マイケル・ルイス氏が指摘するように、エネルギー価格と株価の相関関係は、2007年以降、急激に強まった。実際、今年5月にコモディティーと株式が同時に下げた局面は、2010年と2011年の似たようなタイミングの相場下落と重なる。
景気の先行指標としてはお粗末な実績
より悲観的な可能性は、ヘッジファンドの見方が正しくて、コモディティーが世界的な景気後退の先行指標の役割を果たしている、というものだ。しかし、この点では、コモディティー価格は決して信頼できない。何しろ、経済が大きく落ち込もうとしていた2008年夏に、コモディティー相場はまだ相当強かった。
経済見通しは徐々に悪化してきている。経済協力開発機構(OECD)は5月に、今年の世界経済の成長見通しを2011年の3.6%を下回る3.4%と予測した。欧州諸国の景気停滞には、もう誰も驚かない。今年、好調な滑り出しを見せた米国も勢いを失ってしまったようだ。
コモディティーの強気筋にとって極めて大きな懸念は、今春、大量の原材料の発注をキャンセルした中国だ。
今回のキャンセルは、需要の落ち込みではなく、むしろ抜け目のない交渉術で説明できるかもしれない。相場が下落している中で、中国の石油輸入高は5月に過去最高を記録し、銅の輸入高は前月比12%増加した。
一部の評論家は、中国の投資ブームも、投資価値のあるプロジェクトが不足しているからにせよ、中国が消費主導型のモデルに転換するからにせよ、いずれは間違いなく勢いを失うと思っている。だが、転換が突然起きるとは思えず、上記の輸入統計はまだそれが起きていないことを示している。
コモディティーブームは通常、価格高騰が大量の新規供給を生み出した時に終焉を迎える。現在見られるその主な兆候は、米国におけるシェールガス市場の発展で、おかげで同国では天然ガス価格が崩壊している。
最近、サウジアラビアは価格を引き下げるために増産しており、石油輸出国機構(OPEC)の産油量は公式目標を日量160万バレル上回っている。だが、OPEC非加盟国の供給量は依然乏しく、今年下半期に原油価格が反騰する可能性もまだあるとノリッシュ氏は考えている。
農産物価格の下落に一縷の望み
もし、そうした予想を歓迎できないとしたら、5月に農作物価格が9.3%下落したという事実に慰めを見いだすといい。穏やかな天候のおかげで北半球では豊作が見込まれており、エタノールの生産に回される米国のトウモロコシも以前より少なそうだ。
食糧価格の高騰は、貧困層の所得に重くのしかかるだけでなく、世界中にさらなる政情不安をもたらす。市場が悪いニュースしか生み出さないように見える時には、これはめったにない喜びの源泉だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35544
ロシア人金持ちの隠れ蓑、キプロスギリシャ危機はキプロスを介してロシアに波及か
2012.06.28(木)
大坪 祐介
金融危機の最中、ヨーロッパはEURO2012、サッカー欧州選手権で大盛り上がりである。
前回ベスト4進出のロシアも例外ではなかった。攻撃型サッカーを前面に押し出したロシアは今回大会でも前評判は上々であった。
そして開幕戦で強豪チェコを4-1で圧倒、さらに長年のライバル(サッカー以外でも)であるポーランドには敵地に乗りこんで1-0で勝利を収めた。快進撃に国民の期待は高まる一方である。
ギリシャにあっけなく負けたロシアチーム
ギリシャ対ロシア戦。白のユニフォームがギリシャ〔AFPBB News〕
ところがグループリーグ最終戦、ギリシャ戦であっけない最期を迎えるとは・・・。
ギリシャは前回優勝国とはいえチームは弱体化、国自体もユーロ離脱目前かという経済危機の最中にある。おまけに翌日(17日)は世界が注目する再選挙を控えた国のチームである。
ロシアは引き分けでも決勝リーグ進出だったのだが・・・。ここで大きな番狂わせが起こった。何とギリシャがロシアを破り、ロシアは予選リーグ敗退となったのである。
サッカーの話題はさておき、この敗北はロシア関係ビジネスマンにある心配事を生じさせた。 「キプロスは大丈夫か?!」
キプロスとは日本には馴染みの薄い国であるが、東地中海、トルコの南方に位置する島国である。第2次世界大戦前は英国の統治下にあったが戦後に独立、島の北半分はトルコに占領されているが、南半分はEU加盟国である。
観光と金融が主な産業であり、プライスウォーターハウス・クーパース(PwC)の試算によると金融サービスはキプロスの国内総生産(GDP)の15%を占めるという。
文化的にはギリシャ文化圏だが、国民のほとんどが英語を話し法律も英国法に準拠している。筆者もほぼ毎年キプロスを訪問しているが、「英語が通じるギリシャ」との印象が強い。
一方、ロシアとは1990年代のロシアの混乱期にタックスループホール(税の逃げ道)として、ロシア企業やロシア富裕層に大いに活用された。
キプロスをタックスヘイブンとして活用するロシアの富裕層
街角のイースターエッグ。宗教はギリシャ正教が多い
こうした歴史的な経緯と、何よりもロシア人には魅力的な地中海の太陽あふれる温暖な気候も相俟って、現在でもキプロスはタックスヘイブンと観光地として人気が高い。
多くのロシア企業、特に外国投資を受ける企業はキプロスに持株会社を設置し、ロシアの事業会社を子会社とするケースが多い。これは税制上のメリット以上に法制上の問題がある。
すなわち、ロシアの会社法では投資家の権利が十分に保障できないのである。例えばロシアの会社法では株主間契約の存在を認めていない。従って、英国法に準拠した契約締結が可能なキプロスが選ばれることになる。
この結果、人口100万人に満たない島国に60万人とも言われるロシア人が住みついている。そして、昨年のコンファレンスでのキプロス当局者の発言によれば、500億ドルのロシアマネーがキプロスには流入しているとのことであった。
近年はロシアの大手行VTBはじめロシアの大手銀行もキプロスに進出、一度は流出したロシアマネーを再び取り込まんとするビジネスに躍起である。
ちなみにディミトリス・クリストフィアス(Dimitris Christofias)キプロス大統領は旧ソ連で教育を受けた経歴を持ち、EU首脳のなかではただ1人ロシア語を流暢に操るとのことである。
もっともロシア大統領がキプロスを訪問したのは2010年10月ドミトリー・メドベージェフ前大統領が最初であった。キプロスは統計上ではロシアに対する常に上位の対外投資国であることに鑑みると意外な感もある。
他方、キプロスは経済的にはギリシャとのつながりが深い。従ってギリシャ経済の混迷はキプロス経済にも大きな影響を与えている。
ロシアに支援を要求するキプロス
ニコシア市内のロシア人向けスーパー
特にキプロスの銀行はギリシャ向け債権の保有比率が高かったこともあり、特にギリシャ国債の減免措置により多額の損失を被り、経営不安が深刻化している。
キプロス政府は昨年末にロシアから25億ユーロの金融支援を受けたのだが、これもどうやら焼け石に水であった。
先のギリシャ選に先立つ6月13日にはムーディーズがキプロスのソブリン格付けを既に投資不適格のBa1からさらに2段階引き下げBa3(S&PのBB-に相当)とした。
そして6月25日にはキプロス政府はEUに対し緊急融資の要請を発表、支援額は100億ユーロに上ると見られている。
実に同国のGDPの半分を上回る額である。キプロスは7月からEU議長国を務めるだけに、ここでユーロから離脱させるようなことはできないとの配慮だろうか。
さらにキプロス政府はロシア・中国に対しても2国間支援を求めている。ここでロシア政府がギリシャに負けた腹いせに、ギリシャの同盟国とも言えるキプロスへの金融支援を見送ったりすれば、ロシア経済にも少なからぬ混乱が生じる。
もちろん、ロシア政府としては多くのロシア要人・富裕層の財産が匿われたキプロスを見捨てるわけにはいかないはずである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35547
Financial Times
首脳会議を重ねてもユーロは救われない
2012.06.28(木)
欧州連合(EU)はまたユーロ圏の危機に対処するために首脳会議を開くが、確かな成果は期待できない〔AFPBB News〕
欧州連合(EU)がユーロ圏の危機に対処するための首脳会議をまた開こうとしている。これもまた、説得力のある解決策を打ち出すにはほど遠いものに終わりそうだ。
疲れ果て、幻滅した指導者たちには大変な重圧がのしかかっている。成功する望みは果たしてあるのだろうか?
筆者が以前にも論じたように、今求められているのは、政治的に実現可能で経済的にも機能し得る解決策である。
「政治的に実現可能」とは、自国の有権者に対して責任を負っている政府の間で合意できるというだけでなく、有権者にその合意を少なくとも容認してもらえることを意味する。これは、ユーロ圏で最も重要な政治家であるアンゲラ・メルケル氏が特に心配していることだ。
また「経済的に機能し得る」とは、ユーロ圏残留の覚悟を決めた指導者に投票しようと思えるだけの将来への希望を有権者に提供できることを意味している。
以下ではこれらの基準に照らして、欧州「連邦」、現状維持、限定的な改革という3つの選択肢を検討してみたい。
欧州連邦に向かう道筋
銀行同盟や、ユーロ共同債の発行や財政規律の強化を通じた財政同盟を推進するという提案の主眼は、今の脆弱なユーロ圏の困難を解決することにある。欧州の理想を支持する人々や、過去の過ちのツケを誰かに払ってもらいたいと思っている人々がこのような施策に魅力を覚えるのは明らかだ。
また、将来のことを考えずに浪費した連中を援助しなければならないのかと考える人々が、このような提案を目にして怒ったり不安になったりするのも、それと同じくらい明らかだ。
このような提案を売り込みたいと思ったら、全体は部分の総和より強くなると主張しなければならないだろう。これは浪費家の仲間の救済をドイツやオランダに強いる話ではない、全員を1つに束ねて全員を強くする話なのだという論法を使わねばならない。
曲がりなりにも、ユーロ圏全体の財政状況は米国のそれより良いと言える。1つになれば、すべてのユーロ導入国が、米国が享受しているような低金利(低い国債利回り)の恩恵にあずかれるかもしれない。
同様に、既に主権の一部を手放している弱い政府ではなくユーロ圏全体で運営する預金保険制度が導入されれば、弱い国々の銀行が元気になり、ユーロ圏全体の銀行システムが強くなるだろう。さらに、足元の財政危機は最悪期を脱し、問題を抱えたユーロ導入国もそれぞれの当面の危機に対処できるゆとりが生まれるという見方もできるはずだ。
上記のロジックを受け入れる人がいたとしても、筆者自身は、これでうまくいくとはもう思わない。理由は主に3つある。
第1に、政治というのは国内的なものであり、危機が始まってからは特にその傾向が強まっている。そうでないふりをして突き進めば、さらに悪い事態になりかねない。第2に、各国が負担する費用にバラツキが生じることはないとはとても言えない。そもそも、全員で負担を分かち合う際に大いに必要になる連帯感がまだない。
第3に、上記の理由から、これまでに発表されている政府の取り組みでは、統合への道を後戻りするのは不可能だと人々を説得することはできないかもしれない。従って、「モア・ヨーロッパ(さらに統合された欧州)」に向かってジャンプしようというアイデアで合意に至る公算は小さい。仮に合意しても、このアイデアは最終的に失敗に終わるだろう。
現状維持なら危機の連続
次に現状維持、つまりこれ以上の改革はしないという選択肢を考えてみよう。この場合は恐らく、危機が続くことになるだろう。スペインが早々に救済され、ギリシャで新たな問題が浮上する。ひょっとしたら、イタリア国債の借り換えができなくなるかもしれない。
また、体力の弱い銀行からの資金逃避は、いつ加速してもおかしくない状態になるだろう。ユーロ圏の調整の必要性を考えれば、こうした危機は何年も続く可能性がある。
これは悲惨な状況ではあるが、少なくとも持続可能ではないのか? この点については、あえて楽観的になろうとする向きもあるかもしれない。ユーロ離脱は非常に難しい。もし実行すれば、不確かな経済的・政治的利益を求めて大混乱が生じる。であれば、悲惨な状況もかなり容認されるはずである、という考え方だ。
しかし、この種の独りよがりには2つの(そして間違いなく互いに関係のある)脅威が立ちはだかる。第1の脅威は、既にギリシャで見られるような政治システムの崩壊と極右・極左勢力の台頭。第2の脅威は、公的セクターのデフォルト(債務不履行)とそれに伴う銀行システム崩壊の可能性だ。
そのような危機の最中にも欧州の主要国が通貨ユーロに固執するとは考えにくく、欧州は大変な不況に陥るだろう。
この解決策には、銀行の資本増強に各国が積極的に取り組み、そうすることで欧州中央銀行(ECB)が最後の貸し手の役割を引き続き担えるようにすることが欠かせない。これは現在の路線を維持する際の必要最低限の施策だと筆者には思われる。
しかし、強調しておくが、何の改革もしないという選択は惨めな旅になる。既にダメージを受けている国だけでなく、苦労することになるほかの国々でもそうなるだろう。
限定的な改革という第3の道
筆者の基準から見れば、欧州連邦を目指す選択肢は行き過ぎで、現状維持の選択肢では物足りない。従って問題は、両者の中間を想定することはできないか、というものになる。ユーロの崩壊に比べれば、両者の中間は全員の利益にかなうように思われる。そこでは恐らく、以下のような要素が重要になると思われる。
(1)銀行問題解決の明快な計画。ただし、財政状態の厳しい国家による資本注入には頼らず、主に債権者が損失を負担する形で解決する。債権者と債務者で痛みを分かち合う部分がおのずと増えるアプローチだ。
(2)今のように債務国にばかり調整を求めるのではなく、債権国を含むユーロ圏全体で経済調整を進めるという力強いコミットメント。
(3)需要を維持する義務があることをECBが認識すること。
(4)経済を苦境に陥れることなく運営していくのに十分な規模の金融支援を、改革を約束した政府に条件付きで行うこと。
この選択肢は「現状維持プラスα」と呼べるかもしれない。望ましい道にはほど遠いだろうが、政治的に実現可能で経済的に機能し得るという基準を満たすには十分かもしれない。
こうした3つの選択肢と比べた場合、現在の主要国の立ち位置はどこにあると言えるだろうか?
ドイツは、口では欧州連邦の選択肢を取ると言っているが、実際は聖アウグスティヌスのように「それは今すぐではない」と思っている。このアプローチは、ほかのユーロ導入国に入信の儀式を強制しているように見えるかもしれない。
「連邦」からの救済は得られない
これが機能するかしないかにかかわらず、今はさらなる支援が必要だ。まずは、外国に下手な融資をした銀行の損失を進んで受け入れることが必要だろう。モラルハザードは足元で始まるものだ。
その意味では、政策立案者が認めているように、ドイツにとっても理にかなっている国内政策への取り組み強化も必要だろう。賃金水準の引き上げ、需要の押し上げ、インフレ率のさらなる引き上げなどがその主なところだ。
しかし債務国は、「連邦」からの救済は得られないことを受け入れるべきだ。救いの希望を探すのであれば、一連の首脳会議ではなく自分自身に目を向けなければならない。
By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35546
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