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日銀は貨幣供給量を動かせない   公共投資増に蠢き出した 消費税増税の政治経済学
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/687.html
投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 28 日 11:33:30: cT5Wxjlo3Xe3.
 

野口悠紀雄の「経済大転換論」

【第24回】 2012年6月28日
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

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日銀は貨幣供給量を動かせない
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 金融政策を論じる際に参照する指標には、いくつかのものがある。それらは、量的な指標と、価格に分けられる。量的な指標の基本は、マネタリーベースとマネーストックだ。これらについて説明しよう。

マネタリーベース、マネーストックとは

 日本銀行のホームページにある解説で、マネタリーベース、マネーストックは、つぎのように説明されている。

「マネタリーベース」とは、「日本銀行が供給する通貨」のことである。具体的には、市中に出回っている流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値である。すなわち、

 マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

 これは、中央銀行と政府が経済のそれ以外の部門に対して持つ負債だ。

「マネーストック」とは、通貨保有主体が保有する通貨量の残高(金融機関や中央政府が保有する預金などを除く)である。通貨保有主体には、居住者のうち、一般法人、個人、地方公共団体・地方公営企業が含まれる。「一般法人」とは、預金取扱機関、保険会社、政府関係金融機関、証券会社、短資等を除く法人だ。

 これは、金融機関が経済のそれ以外の部門に対して持つ負債だ。

 マネーストック統計では、「金融機関」の範囲の差と、預金の種類の差によって、M1、M2、M3、広義流動性といういくつかの指標が定義されている。M1とM3では、対象金融機関は、ゆうちょ銀行を含む広義の預金取り扱い機関とされている。また、M3では、定期預金も含まれている。

 詳しい説明は、日銀ホームページにある「マネーストックの解説」を参照。

 以上の定義は、時代によって変化する。「クレジットカードやトラベラーズチェックはマネーストックに含まれるか?」という問題は古くから議論されてきた。現代では、電子マネーの取り扱いが問題となる。

 なお、マネタリーベースは、かつて「ハイパワードマネー」と呼ばれていた。「強制通用力を持つ貨幣」という意味だ。そして、「マネーストック」は、「マネーサプライ」と呼ばれていた。古い教科書などには、この名称が用いられている。現在の名称は、2008年6月以降のものだ。「貨幣供給量」というのは、マネーサプライの訳語だ。この言葉もしばしば用いられる。

次のページ>> 「通貨」と「貨幣」について

 これらについての統計は何を見ればよいか?

 マネタリーベースは、http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/

 マネーストックは、http://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/index.htm/#p01

 また、長期時系列データは、日本銀行、時系列データサイト(http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html)にある。マネタリーベースは、「日本銀行関連」に分類されており、マネーストックは「通貨関連」に分類されている。

 アメリカのデータは、FRB(連邦準備制度理事会)のホームページにある。

 マネタリーベースは、http://www.federalreserve.gov/releases/h3/current/h3.htm

 マネーストックは、http://www.federalreserve.gov/releases/h6/current/h6.htm

「通貨」と「貨幣」について

「通貨」(currency)も「貨幣」(money)も、頻繁に使われる用語であるが、その厳密な意味や区別は、必ずしも明らかでない。

 まず、法律用語としては、つぎのとおりだ。

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」において、「通貨とは、貨幣及び日本銀行が発行する銀行券(紙幣)をいう」、「貨幣の種類は、500円、100円、50円、10円、5円及び1円の6種類とする」と定められている。この定義によると、「貨幣」は硬貨であり、これに日銀券を加えたものが「通貨」である。

 しかし、この定義は、一般の用法よりは、かなり限定的である。一般には、「通貨」も「貨幣」も、より広義の概念として使われている。とりわけ、経済学において「貨幣」は、この定義よりは遥かに広義の概念として使われている。

 ただし、厳密な定義があるわけでなく、人により、場合により異なる意味で使われることも多い。つぎのようにまとめるのは、多くの人の賛同を得るだろう。

「通貨」は、一国(あるいは一通貨圏)内で、支払い手段としての機能を果たすものである。これは、現金通貨と預金通貨からなる。

 また、「EUの単一通貨はユーロ。日本の通貨は円」というように使われることもある。

次のページ>> なぜマネタリーベースやマネーストックを見るのか?

「貨幣」は、「価値の尺度」「交換の媒介」「価値の保蔵」の機能を持ったものである。このような抽象的な定義では、貨幣の範囲はかなり広い。通常、経済学では、「貨幣」をこのような意味で用いている(不動産価格の値上がりが顕著であった高度成長期、「日銀券や預金が価値を保蔵する手段」という教科書の記述に対して、私は疑問に思っていた。この問題については、後の回で述べる)。

 一般的な用語で「オカネ」というのが、この意味での通貨、貨幣のどちらにあたるのか、必ずしも明確ではない。「通貨」の意味だというのが通常の解釈だろうが、「貨幣」の意味で使われる場合もある。

 また、「現金通貨」が上述の「マネタリーベース」、「貨幣」が上述の「マネーストック」に対応すると考えてもよいだろう。

なぜマネタリーベースや
マネーストックを見るのか?

 なぜこれらの指標を見るか?なぜ日銀券でないのだろうか?

 通俗的な説明では、「オカネ」は日銀券のことだとされる。そして、「金融緩和のために、日銀券を増刷する」などという。

 しかし、これは、不正確な言い方だ。日銀券は、マネタリーベースに含まれるが、その比重は7割未満だ(2012年5月において、マネタリーベース1兆1712億円に対して、日銀券8074億円)

「オカネ=日銀券」という説明は、以下で述べる「日銀はオカネの量を自由に動かせるか?」という問題に関して、ミスリーディングである。日銀券なら日銀が増刷すればよい(「それを経済が受け入れるかどうか」という問題はあるが)。しかし、預金は直接には日銀がコントロールできないので、オカネの中に預金も含まれているとすれば、「日銀はオカネの量を自由に動かせるとは限らない」ということになるからだ。

 では、なぜ預金を「オカネ」に含めるのか?

 それは、現代の経済では、決済の大部分は、口座振込、または小切手による指示によって、預金を口座間で移動させることで行なわれるからだ。最終消費者を相手にする場合でも、自動車や住宅になれば預金で決済する。

 スーパーマーケットの支払いなど、日本では現金で決済している取引でも、アメリカでは古くから小切手で決済していた。なお、銀行のオンライン化によって、日本ではATMによる振込が広く使われるようになったが、アメリカでは小切手が依然として広く用いられている。

 日銀券の使用は、小売り段階に限定されていると言ってよいだろう。高額の取引に「ゲンナマ」が使われるのは、非合法的取引や脱税資金など、証拠を残したくない取引である場合が多い。したがって、地下経済が増えれば「ゲンナマ」の比率が増えることになる。

 以上のように、預金量と取引量が密接に関連しているため、上述のように、「マネーストック」を定義し、その動きを金融政策の指標としているのである。

次のページ>> トランスミッション・メカニズム:信用創造の過程

 ここで、次の点に注意しよう。上で定義した「マネー」は、土地などの資産の取引にも使われる。他方、われわれが「経済活動水準」を表すと考えている「取引」は、消費活動や投資活動に関連したものであり、全体の取引の一部にすぎない。したがって、「経済活動水準」と「マネーの動き」の間には乖離が生じうる。

 例えば、バブル期に土地取引が活発化したとしよう。それによって、マネーストックの量は多分増加するだろう。しかし、このときに、GDP(国内総生産)で代表される経済活動水準が比例的に増大するとは限らない。この場合には、GDPに対するマネーストックの比率は上昇するわけだ。

トランスミッション・メカニズム:信用創造の過程

「信用創造」とは、銀行の貸出行動によって、マネーストックが増加する過程のことである。

 いま、銀行が預金者からAだけの預金を受け入れたとする。払い戻し要求に応えられるように、銀行は現金を用意する(日銀当座預金を持つ)ことを義務づけられている。具体的には、翌月の15日までに日銀当座預金に入金することが義務付けられている。この準備金のことを法定準備預金という。なお、銀行は、これを超えて日銀当座預金を持つこともある。

 さて、預金者全員がすぐに預金の全額を払い戻すことは通常はないので、銀行は預金の全額を現金で用意しておく必要はなく、一部だけを保有していればよい。

 支払準備率(預金額のうち、支払準備金として保有すべき金額の比率)をαとすれば、銀行はAだけ受け入れた預金のうち(1−α)Aを貸付に回すことができるわけだ。

 借入者は、何らかの支払いの必要があって借入を行なったのであろう。したがって、借り入れた額を支払いにあてる。支払いを受けた取引先は、受取額の全額を必ずしも支出するわけでなく、一部を預金として銀行に預ける。

 預金歩留まり率(貸し出された金額のうち、預金として戻ってくる金額の比率)をβとしよう。すると、β(1−α)A=γAだけの預金が新たに増えることになる。ここで、γ=β(1−α)。

 これについて、再び前と同じプロセスが働くので、γ2Aだけの預金がさらに増える。このプロセスが続いていけば、結局、預金額は

 A+γA+γ2A+γ3A+……=A/(1−γ)=A/(1−β+αβ)

 となる。

 以上のプロセスを「信用創造メカニズム」と呼ぶ(「トランスミッション・メカニズム」と呼ぶこともある)。

 1/(1−β+αβ)を「信用創造乗数」、または「貨幣乗数」と呼ぶ。

 法定準備率のデータは、http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/reservereq/junbi.htm/を参照。定期性預金の場合は、0.05〜1.2%である。

次のページ>> マネーストックは政策変数か?

マネーストックは政策変数か?

 上のメカニズムで重要なのは、「銀行が貸付を増加させたいとしたとき、企業がこれに応じて借りる」ということである。

 しかし、銀行がいくら貸そうとしても、企業に借入意欲がなければ、貸出は増えない。したがって、信用創造メカニズムは、上のとおりには働かないことになる。

 これは、「貨幣定数は必ずしも一定でない」と表現してもよい。γの値が低下してしまえば、預金総額は期待したほどは増えないことになる。

 ここで、中央銀行が何らかの方法で当座預金を増やしたとする。すると、銀行にとっては、貸出余力が増えたことになるから、銀行は貸付を増やそうとするだろう。企業の借入意欲が強ければ、貸出が増える。

 すると、上の説明と同じような乗数過程が生じ、当初の当座預金増加額の何倍かのマネーストックの増加が生じるだろう。

 しかし、ここでも、上で述べたのと同じ問題が生じる。企業の借入意欲がなければ、日銀当座預金が増えても、貸出は増えないかもしれない。その結果、銀行は過剰な準備預金を持つこととなるわけだ。

 マクロ経済学では、通常マネーストックは「政策変数」とされる。すなわち、政策当局(中央銀行)が自由に動かせるとしている。しかし、この仮定には、大きな議論があるのである。

 2001年からの量的緩和でわかったのが、まさにそのことである。つまり、当座預金は増えたがマネーストックは増えなかったのだ。

 このことが、【図表1】に示されている。


 量的緩和政策によって、マネタリーベースは、2001年1月の68兆円から04年1月の108兆円まで、59%増加した。しかし、マネーストック(M2)は、この間に640兆円から683兆円へと、6.7%しか増えなかったのである。

 マネタリーベースは、2006年2月から秋にかけては急減し、2011年1月頃からは急増している。これらの変化に対しても、マネーストックは反応していない。


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http://diamond.jp/articles/-/20753


 


 
高橋洋一の俗論を撃つ!

【第42回】 2012年6月28日
高橋洋一 [嘉悦大学教授] 

公共投資増に蠢き出した
消費税増税の政治経済学


 26日、衆議院本会議で消費税増税法案は可決された。賛成363、反対96(うち民主57)。これから参議院で審議するというが、衆議院で3分の2の賛成だったので、たとえ参議院審議で否決されても衆議院で再議決が可能で、その場合は消費税増税が決まる。また9月8日までと国会会期が長いので、もし60日参議院で審議しないとしてもみなし否決となって、これも衆議院の再議決可能である。言ってみれば、これですでに国会審議は「詰んでいる」。

 残念ながら、4月5日付けの本コラム『すでに「増税翼賛会」は形成されている』で予想したような国民にとって最悪な結果になってしまった。

http://diamond.jp/articles/-/16960

「ちゃぶ台返し」の可能性に
かけるしかない

 26日、渡辺喜美みんなの党代表は、反対討論で「議場を見渡すと、約8割以上が増税翼賛議員になろうという、おぞましい光景です。1930年代の準戦時体制下で政党内閣制は崩壊しました。選挙の洗礼を受けない官僚内閣制が完成し、後に大政翼賛体制が確立、官僚ファシズムが横行しました。まさに、今、国会が増税官僚のシナリオに乗って、日本政治史の一大汚点を作ろうとしています」と述べた。そのとおりだ。

 増税賛成派議員からは、実際に消費税引き上げを判断するのは、次期総選挙で国民に選ばれた新しい政府だから、その時に判断すればいいという言い訳も聞こえる。たしかに、増税を「ちゃぶ台返し」するには、解散・総選挙で消費税増税廃止・凍結法案を掲げる党が出てきて、政権交代するしかない。


 ただし、この道ははるかに厳しい。というのは、賛成363を打ち破ることが必要で、それはほぼ反対派の新人が衆院の過半数を占めるということに等しい。さらに、もしそのような奇跡がおこったとしても、参院は制すことができない。そのため「ねじれ」になってしまって、消費税増税廃止・凍結法案は成立しない。

次のページ>> 菅総理就任が民主党変節のターニングポイント

 ちゃぶ台返しがあるとすれば、郵政選挙のように、奇跡的なフィーバーが起こり、参院もその民意を反映せざるを得ないという状況だけしか考えられない。しかも、増税廃止・凍結法そのものが経済混乱を起こすからだ。総選挙は遅くとも2013年8月までに行われるので、ギリギリ間にあうだろうが、混乱を避けることを考えると、実施の1年前の2013年3月までに、総選挙で増税の白黒をはっきりつけておく必要がある。

菅総理就任が民主党変節の
ターニングポイント

 今、なぜ民主党はマニフェスト破りまでして、消費税増税に走ってしまったかを振り返っておくことも重要だろう。それは、民主党の歴代総理の言動からわかる。政権交代後、総理は鳩山総理、菅総理、野田総理と交代してきた。消費税増税の現職野田総理は別として、鳩山元総理は本会議で消費税増税法案に反対した。その理由は政権交代の選挙のときに、4年間消費税増税をしないと話したからだと言った。これはまっとうで説得的な話だ。

 菅前総理は賛成した。この菅前総理が民主党変節のターニングポイントである。菅前総理は総理就任前に財務相だった。財務相の就任は2010年1月だ。前任の財務相である藤井裕久氏が、小沢一郎氏との仲違いで辞任した後である(公式には藤井氏の退任理由は健康問題であるが、その後の元気さからみて、これは政治的な方便であろう)。

 菅前総理は財務相に就任直後は、財務官僚に取り込まれてはいけないという意識があった。ところが、同年1月末の国会で、「乗数」問題質疑で答弁できないという醜態をさらした。経済政策の乗数効果に関する国会質問は、過去に一つの国会あたり10回程度もある頻出質問だ。これは経済財政担当大臣が答弁するが、頻出質問なので事前に十分に説明するのが普通だ。一説によれば、この事前説明で経済財政担当大臣を兼務していた菅氏が、それを十分に理解していないという情報が外部に漏れ、それで国会質問が行われたという噂もある。

次のページ>> 総理が代わるたび演説に消費税という言葉が増えた

 その後G7など国際会議で財務官僚のサポートを受けざるを得なかったことなどから、次第に財務官僚の言いなりになっていった。その中で、2010年6月総理に就任した。その直後、財務官僚にマインドコントロールされている典型的な話として、2010年7月の参院選挙前、日本はギリシャになるなという菅前総理の発言がある。そして、消費税増税を、菅前総理は参院選挙で主張した。

 民主党の政策変更を決定づけたのは、2011年1月に菅前総理が行った与謝野馨氏の入閣だ。与謝野馨氏は自民党時代から増税論者であり、一貫して財務省の代弁者であった。閣内で、社会保障と税の一体改革という名目で、民主党の社会保障政策を解体しつつ、消費税増税への道筋をつけた。このころ、民主党内では与謝野氏のことを「よその」さんという人が多かった。2011年9月、野田政権発足とともに閣外に去ったが、与謝野氏によって民主党マニフェストは事実上崩壊したといえる。

総理が代わるたび総理演説に
消費税という言葉が増えた

 消費税増税を多くの政治家が言うようになったのは財務官僚の陰謀ではないという、これこそマインドコントロールの典型のような意見もあるが、それに反する有力な傍証をあげよう。

 鳩山政権では、脱官僚や脱官僚依存と言うことが多く、実際の政策も今と比べれると、政権交代直後の熱気もあり官僚依存度は低い。菅政権になると、脱官僚が消えて、消費税増税がでてくる。

 2009年10月26日の鳩山総理の所信表明演説では、「官僚」という言葉は4回もでてくる。しかし、2011年1月24日の菅総理の施政方針演説で「官僚」という言葉はない。もちろん、今年1月24日の野田総理の施政方針演説にもない。

「消費税」という言葉はどうか。鳩山総理の所信表明演説にはもちろんない。菅総理の施政方針演説は「消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示します」という形で、1回でてくる。野田総理の施政方針演説では5回(うち1回は麻生政権時の施政方針演説の引用)もでてくる。

次のページ>> 国民からカネを巻き上げ公共投資を増やすのか

 これで、鳩山政権→菅政権→野田政権となるについて、官僚依存が高まり、消費税増税に進んでいったことがわかるだろう。

 いずれにしても、民主党がマニフェストを事実上放棄したのは、政権交代の期待を裏切るもので、その代償は大きいだろう。もっとも、自民党も、消費税増税を何らかの理由で反対し続けていれば、消費税増税法案はねじれ国会では成立しないのだから、政治生命を懸けるという野田政権を打倒するのは簡単だった。そのチャンスをみすみす逃したわけであるので、野党失格だ。

国民からカネを巻き上げ
公共投資を増やすのか

 経済関係に目を転じても、消費税増税の景気に対する効果は、どんな方便をとろうとマイナスだ。過去2回の消費税増税の時には、レベニュー・ニュートラルといって所得税等の減税措置が入っていた。これに対して今回は増税だけであるが、それでは不味いということで公共投資増の話が出てきた。やはり国民にカネを持たせるより、国が取り上げて使うという誤った発想だ。

 この機会に乗じて、公共投資復権を考えている人が出始めてきた。自民党は国土強靭化基本法案を今国会に提出している。10年間で総額200兆円をインフラ整備などに集中投資するという。また、公共投資による需要創出でデフレ脱却を図るのだともいっている。

 民主党も大型公共事業復活などで、「人からコンクリート」へと当初の主張と逆の動きになっていることと奇妙に符合する。消費税増税で事実上の連立になっている民・自・公が、おしなべて従来の公共投資を主張しているのは気がかりだ。

 公共投資の効用を主張する人は、公共投資をすれば名目GDPが伸びるという。たしかに公共投資は名目GDPの構成要素であるので、もっともらしいが、名目GDP伸び率と名目公共投資伸び率の推移データと見ると両者に関係はない。理論的には公共投資の需要創出効果はあまりないとされている。十分な金融緩和がないと円高を誘発し、輸出減となるからだ。この意味で、公共投資の景気浮揚効果は限定的だ。

次のページ>> 増税談合の分け前は利権たっぷりの公共投資

 そもそも総額200兆円などという数字が、先に出てくるのがおかしい。本来、公共投資は個々のプロジェクトでみて、便益(Benefit)と費用(Cost)の比率(B/C)が1を上回っていれば、いくらでもやっていいはずだ。筆者は大蔵省時代に公共投資の評価を頼まれ、B/Cの計算チェックだけを行ったことがある。

 そうしたらB/Cが1を下回る例が続出し、採択不能となったものが多くなってしまった。そうこうしていると、そのうち事業評価をしなくてもよいと言われてしまった。そのままでは予算をつけられなくなるからであろう。公共事業を個別プロジェクトでみるとB/Cが1.00なんていうのが結構多い。そうしたプロジェクトははじめから1.00になるように計算しているので、すこし間違いを探すと、1.00未満になって不採択になってしまう。

 ただし、経験上B/Cが3以上だと、多少の計算誤りを指摘してだけでは不採択(B/Cが1未満)にはならない。海外の公共投資担当の人とも話したが、やはり同じようなことを言っており、ドイツやニュージーランドではB/Cの採択基準を3や4に設定していると言っていた。

 そこで、経済財政諮問会議で同様な提案をしたことがあるが、国交省などから強硬な反対があって、実現しなかった。公共投資は、ごく一部の人だけが潤うので、一層、合理的な意思決定が必要であるのに、先に総額を決めるなどの「計画」はB/Cの視点から見れば、かなりあやしいものだ。

 個別の公共投資まで否定しないが、B/Cの第3者チェックもなしで行うと、従来の「土建国家」の復権になってしまう。消費税増税で事実上の連立になっている民・自・公で、秋の補正予算で大型公共投資という話もでているのは、増税への談合の分け前が、利権たっぷりの公共投資になるわけで、いかにもきな臭い。


質問1 消費税増税によって財政再建は進む,進まない?
かなり進む
進む
あまり進まない 77
全く進まない
わからない

>>投票結果を見る

http://diamond.jp/articles/-/20751  

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コメント
 
01. 2012年6月28日 12:00:33 : jv1Rkyf2Ro
資産1億!何に使う?
http://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/22526/all/

No.40
by norio 2009-07-12 09:49:00

会社やってます。

会社は9時ぐらいにぶらぶら出勤。
書類に目を通して、ハンコをポンポン。
11時半からお食事へ。
いつも一番乗りだから空いています。
すこしお昼寝。
2時ぐらいにまた会社へ。
4時ぐらいからブラブラ退社出かける。
問題なければ基本はかなり暇です。
社員が優秀なんで助かりますが、監視の目は光らせます(キラキラ)

サラリーマンの年収1000万ぐらいが一番よく働くんじゃないかな???
夜11時ぐらいまで働いているよね。

年収2000万ぐらい超えてくると結構暇な人が多いような気がします。
不思議ですね


No.41
by 匿名さん 2009-07-13 07:38:00>>40
そんな良い暮らしができるのも自民党政権のおかげなんやぞ!
政治献金とかして報いようという気持ちはないのか!
今、うち(自民党)は大変なんやぞ!
この恩知らず!


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