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プリウスは「ガラカー」か?
2012年6月28日 木曜日 吉野 次郎
エコカー補助金がHV(ハイブリッド車)の販売を後押しする。国内販売の2割を占め、米国の2%、中国の1%未満を圧倒。携帯電話と同様に、日本の自動車も「ガラパゴス」化するのか。
低燃費車の購入に7万〜10万円を支給するエコカー補助金が、予算の消化で7月にも終了しそうだ。今回の補助金は、2009年4月〜2010年9月に運用した制度を2011年末に復活させたもの。
国内販売1位のHV「プリウス」(トヨタ自動車)。世界でも通用するだろうか
2回の実施を通じて最も恩恵を受けたのが、HV(ハイブリッド車)の販売を伸ばしたトヨタ自動車だ。HVの主力モデルである「プリウス」の本格的な普及は、1回目のエコカー補助金制度をきっかけに始まった。導入直前の1年間(2008年4月〜2009年3月)の販売台数は累計7万618台にすぎなかった。それが、最近の1年間(2011年6月〜2012年5月)では累計34万1812台と、5倍近くに膨らんだ。
新車の5台に1台はHVに
ホンダの「フィットハイブリッド」などを含め、今や国内新車販売の2割をHVが占める。日本に次いでHVの販売が多い米国でも約2%、世界最大の自動車市場である中国も1%に満たず、日本のHV比率は断トツだ。
エコカー補助金の対象には、燃費性能の良い軽自動車も含まれる。ホンダの「N BOX」やダイハツ工業の「ミラ」が売り上げを伸ばし、市場全体に占める軽自動車の販売比率は4割に上る。日本は軽自動車とHVを合わせると国内販売の6割を占めるという、他国とは全く異なる自動車市場を形成しつつある。
懸念されるのが、日本市場の「ガラパゴス」化だ。
携帯電話事業で日本メーカー各社は国内市場を主戦場に位置づけた。その結果、ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信など、日本でしか通用しない機能を満載した携帯電話が多く出回った。生物が独特の進化を遂げたガラパゴス諸島になぞらえて、そうした携帯電話は「ガラケー(ガラパゴスの携帯電話)」と揶揄された。
このままではエコカー補助金により普及に弾みがついたHVが、ガラケーならぬ「ガラカー(ガラパゴスの自動車)」となる恐れがある。
携帯電話メーカーは「内弁慶」
ガラケーでの反省は、パナソニックやシャープ、富士通といった携帯電話メーカーが「内弁慶」に陥ったことだ。シェアが高いのは日本市場だけで、海外では韓国サムスン電子やフィンランドのノキアに大きく水をあけられた。
同様に日本市場で大きな存在感を示すトヨタだが、急拡大する中国市場の開拓では米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン、韓国・現代自動車に大きく後れを取る。
4月下旬、北京モーターショーの記者会見でトヨタの豊田章男社長は、「課題は商品にある。魅力あるクルマ作りでカギを握るのがハイブリッド技術だ」と語り、HVで巻き返しを図ると誓った。これまでも中国でプリウスを販売していたが、割高だったため、販売は振るわなかった。今後、現地生産に取り組み、HVの低コスト化を進める。
ただ、中国でHVがエコカーの本命に育つかどうかは未知数だ。既に欧州では「エコカーの本命はHVではなく、ディーゼル車だ」という認識が広がりつつある。
日本人の嗜好が海外とはやや異なることは、ガラケーの普及が示している。国内での成功に目を奪われすぎると、道を誤りかねない。
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
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吉野 次郎(よしの・じろう)
日経ビジネス記者。1期生として慶応義塾大学環境情報学部を卒業。1996年に日経BPに入社し、通信業界の専門誌「日経コミュニケーション」で2001年までNTTと新電電の競争や業界再編成を取材。2007年まで通信と放送の専門誌「日経ニューメディア」で、通信と放送の融合やデジタル化をテーマに放送業界を取材。現在は「日経ビジネス」で電機やIT(情報技術)業界をカバーする。好きな季節は真夏。暑ければ暑いほどよい。お腹の出っ張りが気になる年齢にさしかかり、ダイエット中。間もなく大型バイク免許を取得する予定。著書に『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』(日経BP)。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120625/233729/?ST=print
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