★阿修羅♪ > 経世済民76 > 668.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
“再エネ狂想曲”、読めぬ勝者
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/668.html
投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 27 日 11:10:15: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120622/233696/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>環境・エネルギー>時事深層
“再エネ狂想曲”、読めぬ勝者

2012年6月27日 水曜日 田中 深一郎、阿部 貴浩、宇賀神 宰司、飯山 辰之介

再生可能エネルギーの普及を目的とした全量買い取り制度が7月1日に始まる。早期参入が利益確保のカギになるため発電事業を中心に異業種からも進出が相次ぐ。関連企業のすべてが勝者になれるわけではなく、狂想曲の行方は不透明だ。


日立製作所は風力発電工場の新設を検討している。下は茨城県のウインド・パワーかみす洋上風力発電所
 「発電事業者の間では、とにかく早く参入したいという意識が強い。足元で20件近い引き合いが来ている」

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)の設備設計や施工を手がける明電舎の鈴木岳夫エネルギーシステム部長はこう明かす。同社は今年1月に山梨県で運転を始めた出力1万キロワット(kW)のメガソーラーを建設したが、同規模の案件に問い合わせが相次ぐ。

 日立製作所は茨城県で風力発電設備の組み立て工場を新たに立ち上げる方針だ。現在は発電能力2000kWの機種が主力だが、洋上発電向けに5000kWなどの大型機種も開発する計画。

 2020年の関連市場が10兆円規模に拡大――。市場を一変させると期待される再生可能エネルギーの全量買い取り制度は、太陽光や風力、中小水力などで生み出した電力を電力会社が一定の価格で買い取り普及を促す。ただし、18日に経済産業省が最終決定した制度設計で、事業者に有利な当初の買い取り価格(下表)を保証するのは、来年3月までに認定を受け、電力会社に申請を終えた事業者だけだ。


 その後は毎年価格を見直すため、「うまみが大きいのは初年度参入分だけになるかもしれない。部品や機器の発注が殺到すれば受注を取りこぼす可能性だってある」(機器メーカー大手)。

 中でも関心が高いのが太陽光発電。太陽電池メーカーのほかソフトバンクやNTT、近畿日本鉄道など異業種からの参入が続く。小売業界でもローソンの玉塚元一副社長が「現状の買い取り価格であれば事業として十分に採算が成り立つ」と発言するなど、売電に意欲を示す企業が増えている。風力や地熱などに比べ立地の確保や環境への影響評価などの手間が少なく、短期間で参入できるというのが理由だ。

 250万kWと予想される2012年度の再生可能エネルギーの導入量のうち、8割に当たる200万kW程度が住宅用を含む太陽光発電になる見込み。太陽光発電協会の片山幹雄・代表理事(シャープ会長)は、太陽電池出荷量が「前年比2〜3倍の250万kW以上になる可能性がある」との皮算用を弾く。

意外に低い事業収益性

 ただ市場の盛り上がりとは対照的に、発電や売電といった事業が魅力的な投資案件かどうかについては、意外なほど冷静な見方が多い。

 約250億円を投じ、鹿児島県で国内最大級となる7万kWのメガソーラーを建設する京セラですら、「事業性は検討中。15〜20年で投資回収する予定で、それほど高収益は見込んでいない」(同社)とする。


京セラなどは鹿児島県で国内最大級のメガソーラーを建設する(写真はイメージ図)。
 買い取り制度では、投資の収益性を表す指標であるIRR(内部収益率)を太陽光発電(10kW以上)で6%、風力(20kW以上)では8%に設定した。10%超を目安にすることも多い企業の事業投資と比べ、特段高収益とは言えない。

 京セラと組んでメガソーラーに参画するIHIは、「投資効率は社内基準を下回る。造船工場向けに取得していた遊休土地の有効活用という意味合いが大きい」(同社)。3年で20カ所以上のメガソーラーを稼働するNTTは、「発電所の施工や保守運用のノウハウ獲得が主な目的」(子会社のNTTファシリティーズ)という。各社には、企業イメージ向上の思惑や、他に有望な投資先がないという事情もあるようだ。

 期待が大きいのは、発電所に材料や機器を提供する企業。例えば太陽光発電なら、太陽電池パネルを据えつける「架台」や直流電流を交流に変換するパワーコンディショナー(電力変換装置)などがそうだ。

 新日本製鉄は耐食性を高めた架台用の高性能鋼材の生産能力を2.5倍に引き上げた。明電舎も、パワコンの売上高を2014年度に2011年度比4倍にする計画だという。

 周辺のサービスビジネスの動きも活発だ。人材派遣のインテリジェンスは4月、新エネ関連に就業を希望する人材を育成し、企業に派遣する事業を始めた。特に「太陽光関連企業の多くが営業員の不足を感じている」(関根隆行・事業開発部新規事業開発グループマネジャー)といい、太陽光パネルを設置する電気設備会社などへの営業員派遣に力を入れる。

 電気製品の性能検査大手の独テュフラインランドは4月、国内3カ所目となる大型試験施設を大阪市に開設した。マンフレッド・バイアライン社長兼CEO(最高経営責任者)は、「2012年中に約10カ所の発電施設から、発電量や耐久性などの計測サービスを受注したい。風力や地熱関連の性能試験にも今後進出する」と意気込む。

性能低下、倒産対応保険が登場

 一方、主役ともいうべき太陽電池パネルメーカーでは不安が渦巻く。これまで国内市場は技術水準やブランドの面で日本製品への人気が高く、国内パネルメーカーも一定の収益を確保してきたが、全量買い取り制度で需要が拡大すれば中国製の安価なパネルなどとの競争が激化するのは必至。足元の業績も世界的なパネルの価格下落で悪化している。

 メガソーラーを展開する予定の企業の多くは「国内メーカーを中心に考えているが、海外製も選択肢に入れる」と明言する。同制度で先行したドイツでは、価格競争に巻き込まれ、今年4月に同国最大手のQセルズが経営破綻した。

 太陽光発電協会の片山代表理事は、「粗悪なパネルや施工によって消費者にデメリットを与えることがあってはならない。正常な産業発展を期待している」と危機感をあらわにする。

 国内太陽電池最大手のシャープは住宅向けに年間1万人体制で販売店や施工者向けの研修を実施、発電品質の向上を狙う。京セラや昭和シェル石油子会社のソーラーフロンティアも保守やコンサルティングを強化。中国メーカーと価格勝負を避け、品質とサービスの良さを前面に打ち出し収益を確保する考えだが、成算はまだ見えない。

 周囲の目はシビアだ。欧州での買い取り制度の現実を知る独ミュンヘン再保険は、太陽電池の性能低下やメーカーの倒産リスクに備えた保険を日本でも販売し始めた。「不安を抱く発電事業者や金融機関から問い合わせが増えている」(同社)。

 全量買い取り制度の目的は、将来的に再生可能エネルギーを補助金などに頼らない自立型産業として独り立ちさせること。買い取り金の原資は、企業や消費者といった需要家の電力料金に上乗せされるものだ。だが、倒産保険の販売会社が“再エネ狂想曲”の勝者になるかもしれないのが現実である。


時事深層

“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

⇒ 記事一覧


宇賀神 宰司(うがじん・さいじ)

日経ビジネス記者。1993年に日経BP社に入社し、パソコン専門誌「日経MAC」「日経クリック」「日経WinPC」の編集を担当する。2002年〜2004年、米ニューヨークに留学。帰国後、中小企業のためのIT化情報サイト「SMB+IT」「日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)」の編集を経て、2007年から「日経ビジネス」編集部。流通、中小ベンチャー、マネジメント、IT(情報技術)を担当する。2011年、約4カ月にわたりケニアの首都ナイロビに滞在。趣味はサーフィン、スノーボードとサンバ楽器演奏。

飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者。

阿部 貴浩(あべ・たかひろ)

日経ビジネス記者。日本経済新聞で中堅・ベンチャー企業部や証券部、名古屋編集部などを転々とし、2011年春から日経ビジネス編集部の片隅に席を見つける。製造業とのかかわりが長く、自動車や機械、造船など「物づくり企業」を幅広く担当。メーカーのおじ様方と飲みに繰り出しては経済実態とかけ離れた円高に憤り、震災復旧の苦労話に涙ぐむ。いつの間にやら会社近くの「六本木・麻布」より「神田・新橋」を好むようになった。

田中 深一郎(たなか・しんいちろう)

日経ビジネス記者  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民76掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民76掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧