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The Economist
日本の財政問題:いよいよ消費税増税へ
(英エコノミスト誌 2012年6月23日号)
日本の財政タカ派は15年越しの念願をかなえようとしているようだ。
「消費税増税が可決される見込みは限りなくゼロに近い」。2011年12月、米国のある(いつもは洞察力がある)エコノミストはこう書いた。
その根拠は、過去15年間にわたって日本の政治の大原則であり続けてきた事実にある。すなわち、日本で最も異論の多い税金を引き上げるというリスクを冒すほど勇敢な政治家も無鉄砲な政治家もほとんどいないということだ。
野田佳彦首相は政治のタブーを破り、消費税増税に踏み切ろうとしている〔AFPBB News〕
ところが意外なことに、野田佳彦首相率いる民主党は6月15日、党内対立があるにもかかわらず、現在5%の消費税を2014年4月に8%、2015年10月に10%まで引き上げることで主要野党と合意した。これで胸をなで下ろした者もいれば、悔しい思いをした者もいるだろう。
合意には1つだけ条件が付けられている。増税は経済がそれに耐えられる状態にある場合にのみ行う、という(不明瞭な)条件だ。
本誌(英エコノミスト)が印刷に回された後、財政改革法案が衆議院を通過し、今夏に参議院でも通過する道を開くと見られていた。もし法案が成立すれば、日本の政治のタブーが破られるだけではない。日本でも他国と同じように、緊縮財政vs経済成長の是非を巡る議論が深まることになるだろう。
政治的には、増税は間違いなく大胆不敵な行動だ。消費税が1989年に3%で導入され、1997年に5%に引き上げられた際は、いずれも時の政権の支持率を下げた。
消費税増税が経済に与える影響
現在でも消費税は論議を呼ぶ問題であるため、野田首相は、法案が成立したらすぐに衆議院を解散しなければならないと思うかもしれない。いずれにせよ、野田首相は、9月の民主党代表戦で党内から戦いを挑まれるかもしれない。
消費税が特に物議を醸すのは、増税が経済にもたらす結果に異論が多いからだ。一般市民に言わせれば、歴史を見れば消費税の引き上げを恐れる理由はいくらでもある。最初に導入された1989年は、株式と不動産のバブルが頂点に達していた。1997年の税率引き上げは、景気のピークを告げたように見えた。
それ以後、日本の名目国内総生産(GDP)は約10%縮小している。これだけの縮小は(デフレの影響もあり)税収に打撃を与えた。1997年以降、税収は22%減少し、公的債務を倍増させることになった。
賃金が伸び悩んでいるこの時期に、何を買っても5%余計に払わなければならない日が来ることを喜んで受け入れる消費者はほとんどいない。とはいえ、現在の5%という日本の消費税率は、経済規模の大きな先進国では最も低い水準だ。その事実が日本国内に、遅かれ早かれ増税は避けられないという意識を広めている。
たとえ10%に増税されても、欧州の水準からすればまだ半分だ。しかも、10%に引き上げられるまでの駆け込み需要で、短期的には経済成長を促すかもしれない。
これからの数年で団塊世代が一斉に定年に達し、年金や医療制度にさらなる負荷をかけることは、あえて言われるまでもないだろう。しかも、生産年齢人口は急速に減少している。
問題は、増税により、国民が経済的な不安を増大させ、さらに消費を冷え込ませるか、それとも未来を支えるための難しい決断が下されたと安心し、信頼感を高めるか、どちらに転ぶかということだ。
割れるエコノミストの意見
エコノミストの意見は割れている。まず、1997年の増税の経済的な影響が議論の的となっている。消費税率引き上げに反対するエコノミストは、1997年の増税を機に日本は景気後退に突入したと主張する。一方、賛成派は、増税の痛みは短期的なものだったとする。実質的な損害をもたらしたのは、1997〜98年のアジア金融危機と銀行の不良債権問題の深刻化だと言うのだ。
将来の展望については、反対派は、野田首相はタカ派の財務省に洗脳され、日本は次なるギリシャ、スペインになりかねないと信じ込まされていると主張している。何と言っても、日本の債務はGDPの200%を超えているのだ。
だが、膨大な債務にもかかわらず、日本には民間と家計の貯蓄があふれており、おかげで政府は借り入れの90%以上を国内で賄うことができている。そうした裏づけがあるからこそ、日本国債への外国資金の流入が記録的な額に達し、金利が史上最低の水準にあるのだ。もっと国債を発行しても大丈夫だという意見さえある。
財政タカ派は、馬鹿げていると一蹴する。公的債務を削減しなければ、企業や家計が保有する巨額の貯蓄は「資本逃避」と言うや否や瞬く間に消えかねないと考えているのだ。
タカ派の見るところ、債券市場は弾けるのを待っているバブル状態にあり、消費税率を2倍にするくらいでは不十分だという。東京大学の伊藤隆敏氏は、増税は「最低限やるべきことだが、恐らくそれ以上のことはやってのけられないだろう」と話す。今後は高齢化が進み、経済成長は弱くなると同氏は指摘する。そのため、財政のてこ入れは早ければ早いほどいい。
野心的な成長戦略が出てくる見込みは・・・
エコノミストたちの意見は、2つの点で一致しているようだ。まず、この新法では、2014年に十分な成長が見込めない場合、政治家たちが増税を先送りする余地が十分ありそうなことだ。第2に、もし消費税が引き上げられたら、日本はなおのこと、主に外国投資や起業の推進などの生産性を高める策を講じて経済成長を促す必要が出てくる。
スイスの銀行UBSのエコノミスト、会田卓司氏は、政府は、消費税は有害であるというイメージを与えないためには、成長促進に一層力を注ぐことを迫られていると考えている。
実際、野田政権は新たな成長戦略を描こうとしている。医療や教育の改革を実行するとともに、再生可能エネルギーを推進するというものだ。残念ながら、十分に野心的な戦略になる見込みは恐らく、限りなくゼロに近い。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35522
日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>改めて考える10年後の日本
消費税率、10年後の10%超えは避けられず?
有力エコノミスト30人が予測、15〜20%という声も
2012年6月26日 火曜日 小林 佳代
有力エコノミスト30人に10年後の日本の姿を聞いた。経済がベストシナリオで回復・成長軌道に乗っていたとしても、消費税は10〜15%という声が12人と最も多く、次いで15〜20%という回答が11人で続いている。
10年後、日本がどのような姿になっているかは、消費税率引き上げ問題の行方によっても大きく異なる。野田佳彦首相は消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革関連法案」成立を目指す。実現すれば、現在5%の消費税は2014年4月から8%、2015年10月から10%に引き上げられる。
世界ではどうか。主な国の消費税(付加価値税)率を見ると、アイスランドの25.5%を筆頭に、スウェーデンが25%、英国やイタリアが20%、フランス19.6%、ドイツ19%など日本に比べ、かなり高い税率が適用されている。
このアンケートでは、10年後にベストシナリオとなった場合の消費税率も予測してもらった。その結果、大半が消費税率の引き上げを予測した。10%以上15%未満との予測と15%以上20%未満との予測がそれぞれ10人超。プライマリーバランスの改善など財政再建に向けて、消費税率引き上げは避けられないという意見が主流だ。
一方、シティ資本市場研究所の藤田勉理事長は異なる見解を示す。「増税による増収効果は短期間しか持たない。消費税増税は最小化し、公務員削減や社会保障制度改革を進めて歳出を削減することで財政を再建すべき」と主張し、ベストシナリオでの消費税率を現状の5%のままと予測する。
●回答協力者一覧
(五十音順 敬称略)
会田卓司 UBS証券/シニアエコノミスト
安達誠司 ドイツ証券/経済調査部 シニアエコノミスト
上野泰也 みずほ証券/チーフマーケットエコノミスト
加藤出 東短リサーチ/取締役 チーフエコノミスト
吉川雅幸 メリルリンチ日本証券/調査部 チーフエコノミスト
熊谷亮丸 大和総研/経済金融調査部 チーフエコノミスト
黒瀬浩一 りそな銀行/アセットマネジメント部 チーフ・エコノミスト
河野龍太 BNPパリバ証券/チーフエコノミスト
後藤聡史 朝日ライフアセットマネジメント/資産運用部 エコノミスト
嶋中雄二 三菱UFJモルガン・スタンレー証券/景気循環研究所長
白川浩道 クレディ・スイス証券/チーフ・エコノミスト
高田創 みずほ総合研究所/常務執行役員 チーフエコノミスト
宅森昭吉 三井住友アセットマネジメント/チーフエコノミスト
武田洋子 三菱総合研究所/政策経済・研究センター シニアエコノミスト
中島精也 伊藤忠商事/チーフエコノミスト
永濱利廣 第一生命経済研究所/経済調査部 主席エコノミスト
中原圭介 アセットベストパートナーズ/代表取締役
西岡純子 アール・ビー・エス証券会社/ チーフエコノミスト
櫨浩一 ニッセイ基礎研究所/チーフエコノミスト
花田普 住友信託銀行/調査部 経済調査チーム 主任調査役
藤田勉 シティ資本市場研究所/理事長
藤山知彦 三菱商事/執行役員 国際戦略研究所長
牧野潤一 SMBC日興證券/金融市場調査部 チーフエコノミスト
松宮基夫 三菱東京UFJ銀行/企画部 経済調査室長
村上尚己 マネックス証券/ チーフ・エコノミスト
村嶋帰一 シティグループ証券/チーフエコノミスト
森田京平 バークレイズ・キャピタル証券/ チーフエコノミスト
山下えつ 三井住友銀行/市場営業統括部 チーフ・エコノミスト
山田大介 みずほコーポレート銀行/執行役員 産業調査部長
山田久 日本総合研究所/チーフエコノミスト
改めて考える10年後の日本
東日本大震災をきっかけに、様々な課題が一気に表面化した日本。少子高齢化、財政再建、エネルギー政策、そして時期を同じくして、新興国の台頭や円高ドル安など、まさに満身創痍といってもいい状態だ。ここから先はどうなっていくのか。10年後の我が国のあり方を考えるうえでの、さまざまな論点を整理していく。
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小林 佳代(こばやし・かよ)
1967年東京都生まれ。1990年慶応義塾大学法学部政治学科卒業。同年日経BP社に入社。「日経ビジネス」記者などを経て2001年に退社、フリーに。現在、「日経ビジネス」、「日経ビジネスアソシエ」、「日経エコロジー」など、主に経営・ビジネス関係の媒体で執筆中。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120625/233756/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>$global_theme_name>時事深層
消費税動かした「財・労・官」
2012年6月26日 火曜日 編集委員 田村 賢司
最終局面に来た社会保障と税の一体改革関連法案の成立。裏にいたのは日本経済団体連合会と日本労働組合総連合会、そして財務省だった。「財・労・官」の新・鉄のトライアングルが決められない政治を“強引”に動かした。
社会保障と税の一体改革関連法案が、衆院採決から会期延長、そして参院採決へと向かう最終局面を迎えた。中でも野田佳彦首相が昨年9月の就任以来、執念を燃やしてきた消費税率引き上げは、民主党内、そして与野党の激しい対立で実現が危ぶまれてきたが、ここにきて急転。実施に大きく動き出した。
「懸案棚上げ、消費税案進行」図る
その裏にあったのは何だったのか――。浮かび上がるのは、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、財務省が密かに結びついて舞台回しを演じた、「財・労・官」の新・鉄のトライアングルの姿だ。中でも積極的に動いたのが経団連だった。
「政治に手を突っ込め」
ゴールデンウイーク明けの5月8日、経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)が幹部らへ密かに命じた。
消費税率引き上げをはじめとした一体改革関連法案は同月半ばから、社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で審議が始まることとなっていたが、「与野党間」、そして「民主党の党内」それぞれに、本当に議論が進められるかどうかで、危機に陥っていた。
与野党間では、野田首相と自民党の谷垣禎一総裁が2月末、東京都内で極秘会談を行ったとされ、いったんは法案審議の展望が開ける雰囲気も醸し出されていた。しかし、4月20日に参院で当時の前田武志・国土交通相と田中直紀防衛相の問責決議が可決されると、それも急速にしぼんでいった。
民主党内も、最大のグループを擁する小沢一郎元代表らが再三、消費税率引き上げに反対を表明し、一体改革関連法案は内でも外でも暗礁に乗り上げようとしていた。
財界関係者らによれば、米倉会長が危機感を募らせたのは、指示の直前に財務省最高幹部に、消費税率引き上げをはじめとした一体改革が極めて厳しい局面に立ち至っていると告げられてから。官と財の長年のパイプがこの時から再び機能し始めたという。
一方で、経団連は民主党、自民党への働きかけを始める。カギになったのは、民主党がマニフェスト(政権公約)の柱に掲げてきた最低保障年金創設や後期高齢者医療制度の廃止など。撤回を求める自民党と、堅持を主張する党内の声に配慮したい民主党の間に深い溝のある部分だ。
ここで経団連幹部らは、自民党側で谷垣総裁、野田毅・党税制調査会長、伊吹文明・社会保障と税の一体改革特別委員会党筆頭理事を、民主党側では仙谷由人・政調会長代行や党税調幹部らを訪れ、「最低保障年金創設と後期高齢者医療制度廃止などを棚上げにし、(消費税などの)議論を進める」よう両者を説得したという。
旧民社、社民系中間派抑えた連合
それだけではない。並行して「消費税率引き上げなど一体改革では意見がぴたりと合っている」(財界関係者)連合とも歩調を合わせ、連合が民主党内の旧民社党、旧社会民主党系の議員約70人が野田首相ら政府と党執行部の反対に回らないよう「“抑え”に動いた」(財界関係者)のである。
連合系の議員はほとんどが中間派。ここが野田首相・党執行部支持で固まれば、残る中間派は鹿野道彦・前農水相のグループ(約30人)と、羽田孜元首相のグループ(十数人)になり、数のうえで首相側が有利。「そうなれば(不利が明らかになった)小沢元代表についていく人数は減る」(同)との読みもあった。
自民党側にとっても、このあたりの動きは効いたと見られる。谷垣総裁は、この時、最低保障年金などマニフェスト重要項目の棚上げ論について「いい考えだ」と述べたという。公明党もこの変化は無視できず、6月第2週には同調に転じ、翌週から事態は進展していった。
決められない政治を本当に動かすのは、財・労・官の新トライアングルなのかもしれない。
強まる“解散風”、急浮上する「年内」説
社会保障と税の一体改革関連法案が成立に向けて大きく前進したことで、政界の焦点は衆院解散・総選挙の時期と選挙後の政権の枠組みに移ってきた。
民主党政権に国民受けが悪い消費増税をやらせた方が得策だが、解散の確約を取れていないのは大問題だ――。自民党内では、社会保障と税の一体改革を巡る修正協議で、野田佳彦首相から解散の言質を取らないまま合意に踏み切った谷垣禎一総裁への不満が渦巻く。
しかし、ある自民党議員の見方は異なる。「谷垣さんや党執行部には高揚感が漂っている。公明党が土壇場で民主、自民との3党合意に舵を切ったことも踏まえると、野田首相と谷垣さん、公明が握ったと考えるのが普通だ」。民主党のある大臣経験者も「党内では解散先送りを求める声が大勢だが、消費増税関連法案が成立するメドが立てば野田さんはタイミングを探り出す」と“解散近し”を予言する。
解散時期を判断するうえでのポイントの1つになるのが、衆院選挙制度改革を巡る与野党協議だ。現行の小選挙区の「1票の格差」が違憲状態のまま総選挙を実施した場合、無効判決が出かねない。このことが事実上、野田首相の解散権を縛る構図が続いている。これを利用して解散の先送りを狙っているのが輿石東・民主党幹事長だ。自民党などが1票の格差是正の優先を求める中、輿石氏は今月18日の与野党協議でも比例定数削減や選挙制度改革とセットで合意する案を提示し、協議は物別れに終わった。
しかし、ここでも野田首相が前面に出て今通常国会中に1票の格差是正などで合意できれば、3〜4カ月とされる新制度の周知期間を考慮しても年内解散への環境は整う。「関連法案さえ通せば、無効判決は出ないはず」との見方に立てば、通常国会会期末や9月の民主党代表選直後の解散もあり得る。これは来年の衆参同日選を避けたい公明も望む展開だ。
もう1つの要素が内閣支持率。修正協議で示した「決める政治」を世論が評価し、支持率が上昇基調となれば、選挙制度改革や予算執行に欠かせない赤字国債発行法案成立の道筋次第で、野田首相が早期に国民に信を問う可能性が出てくる。
一方、野田首相が政権延命へ選挙制度を巡る議論や解散に煮え切らない対応を続ける場合は、自公が内閣不信任決議案や参院での問責決議案提出、赤字国債発行法案の否決といったカードを駆使し、今国会で野田首相を追い込もうとするのは必至。違憲判決の可能性がある中、野田首相が解散に踏み切るかどうかが最大の注目だ。
水面下では、解散後をにらんだ動きもうごめく。衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」の解消を目指し、橋下徹・大阪市長が率いる「大阪維新の会」の躍進を警戒する与野党関係者の間では、公然と選挙後の大連立や政界再編の必要性が語られ出した。解散時期が近づくにつれ、新党結成への動きが活発化するのも確実。「2大政党化」の流れは岐路を迎える。
(編集委員 安藤 毅)
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
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田村 賢司(たむら・けんじ)
日経ビジネス編集委員。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120622/233687/?ST=print
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