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Financial Times
心配すべきは「Grexit」より「Chindown」だ中国経済の減速で損する国と得する国
2012.06.22(金)
中国経済の減速は世界にどんな影響を与える可能性があるのか?〔AFPBB News〕
ギリシャによるユーロ圏離脱が世界経済に与えかねない影響については、大いに議論されてきた。それほど議論されてこなかったのは、中国の需要、特に原材料に対する需要の軟化が世界経済の一部にどんな影響を与えるか、だ。
中国の減速はギリシャの離脱ほど劇的ではなさそうだ。恐らくそれが、「Grexit(グリグジット)」に匹敵する馬鹿げた用語をまだ誰も考案していない理由だろう(筆者は「Chindown(チンダウン)」を提案する)。
中国経済の重みと一部のコモディティー(商品)輸出国にとっての中国の重要性を考えると、この話題についてもっと考慮すべきなのかもしれない。何しろ、誰も望んでいないグリグジットと違い、中国政府は実際にチンダウンをうまく誘導する意向を表明しているのだから。
2015年まで続く中国の5カ年計画は明確に、コモディティーを大量に消費する投資主導型の成長から経済を切り離すことや年間成長率を近年の2ケタから8%に低下させることについて語っている。
失うものが大きい貿易相手国
いくつかの国にとっては、失うものが大きい。過去20年間で、多くの国の対中貿易が急増した。ブラジルの貿易全体に占める中国の割合は、1992年にはわずか0.9%だった。それが2010年には14%まで跳ね上がった。
ほかのコモディティー生産国でも同様の急増が見られた。対中貿易の割合は、パキスタンでは2.9%から13.5%に、インドでは0.4%から10.5%に拡大した。
欧州と米国が行き詰まるにつれ、中国は欧米に代わる成長エンジンになった。一種のフィードバックループが生まれ、中国が他国からコモディティーを買い、その国が中国から得たお金で中国製品を買うようになった。
その結果、中国は、オーストラリア、韓国、日本、フィリピン、ブラジル、チリ、ペルー、アンゴラ、南アフリカなどにとって最大の貿易相手国になった。こうした国の中には、中国が減速すると打撃を受けるところもある。中国の需要そのものが減少するだけでなく、中国が必要とするコモディティー――石油、銅、鉄鉱石など――の価格も軟化するからだ。
中国減速で「魔法の瞬間」が終わる
ブラジルは鉄鉱石をはじめとした資源を大量に中国に輸出している〔AFPBB News〕
損をする立場にある1つの国はブラジルだ。
モルガン・スタンレーの新興市場部門責任者、ルチル・シャルマ氏が書いたフォーリン・アフェアーズ誌の寄稿*1は、ブラジルの最近の成功が「コモディティー価格という極めて不安定な前提に基づいている」と主張している。
つまり、心配になるほど中国に依存しているということだ。
チンダウンは、ブラジルの「魔法の瞬間」の終焉を意味する可能性がある、とシャルマン氏は指摘する。同じことは他国にも当てはまり、「中国の成長鈍化は、新興市場が並外れて急速な拡大を経験した時代の終わりを示唆している」という。
同じパターンに当てはまるもう1つの新興国がモンゴルだ。中国はモンゴルの輸出の92%を占めており、巨大な銅鉱山が今年操業を開始すると、その比率がさらに上昇するかもしれない。モンゴルは多角化に向けて努力している。モンゴルの鉱山は中国との国境沿いに並んでいるが、モンゴルは数千マイル離れたロシア太平洋岸まで送りたいと思っている。
賭けをヘッジするためのモンゴル政府の途方もない計画は、一部の国にとって中国という習慣を断ち切ることがいかに難しいかを示している。
中国に依存する国のリストは、発展途上国に限られるわけではない。オーストラリアも中国に依存している。より正確に言うと、中国の需要から生まれるコモディティー価格の高騰に依存している。
オーストラリアで鉱山開発プロジェクトの棚上げも
実際、際限なくコモディティーを渇望する中国を前提として鉱山会社が計画した大規模投資の中には、既に棚上げされたものもある。BHPビリトンのCEO(最高経営責任者)、マリウス・クロッパーズ氏は最近、いくつかの鉱山プロジェクトの経済性に変化が生じ、そうしたプロジェクトを延期せざるを得なくなっていると述べた。
ソシエテ・ジェネラルのディラン・グライス氏は次のように表現している。「中国の資源需要が持続すれば、恐らくすべてが順調にいくだろう。だが、持続しなければ、すべてが順調にいかなくなる」
*1=‘Bearish on Brazil: The Commodity Slowdown and the End of the Magic Moment’, Foreign Affairs (May/June)
中国の減速は、すべての国にとって悪いわけではない。HSBCのアジア担当エコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は、ハードコモディティーとソフトコモディティーを区別している。
農産物の輸出国や石油輸入国には恩恵も
中国のリバランス(再調整)は、家計支出が増えるのであれば、実際には小麦や大豆のようなソフトコモディティーにとってプラスになる可能性がある。言い換えると、ブラジルの損がアルゼンチンの得になる可能性があるわけだ。
加工食品に使われるパーム油のような他のコモディティーも、状況が上向くかもしれない。そうなれば、近年パーム油の生産を増やしてきたマレーシアや、インドネシア――もっともインドネシアは石炭のようなハードコモディティーも生産しているが――などに恩恵をもたらす可能性がある。
得する側では、一部の石油輸入大国が、中国の減速によってもたらされるかもしれない価格低下から恩恵を受ける可能性がある。
ギリシャがユーロ圏を去れば、ほぼすべての国が苦しむだろう。だが、中国が減速しても、その影響はまちまちになる可能性が高い。中国の減速が自国の魔法の瞬間の終わりを告げることになるのは、一部の国だけだろう。
By David Pilling
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