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The Economist
不確実性の雲:暗中模索する世界経済
2012.06.21(木)
政治的な不確実性が世界経済に及ぼす影響を定量化する。
欧州は経済的な奈落の底の瀬戸際にあり、その運命は、大陸欧州の債務危機と銀行危機という双子の危機をいかに解決するかを巡って対立する政治的指導者の手に委ねられている。
米国は、政治的な機能不全によって年末に「財政の崖」から突き落とされるかもしれない。中国でさえ、大きく落ち込む可能性は小さいものの、成長を促す中国政府の意思と能力の人質になっている。世界経済の運命は近年の歴史のどの時点よりも、政策立案者たちの気まぐれに縛られている。このような不確実性のコストはどのくらい大きいのだろうか?
先が見えず、身動きの取れない企業
断片的な証拠は、多大なコストがかかることを示している。世界最大のインターネット周辺機器メーカー、シスコシステムズのCEO(最高経営責任者)、ジョン・チェンバース氏によると、同社の顧客企業は、決定を下すのに以前より長い時間がかかっているという。顧客の注文は小口になり、社内でより多くの承認を必要とする傾向にある。
顧客企業は年内には購入を増やす計画だと話しているが、「そう言うや否や、それは世界的、マクロ的なレベルで何か起きるかによると続ける」と、チェンバース氏は最近説明していた。
欧州では、企業は景気後退だけでなく、自分たちの投資が別の通貨建てに切り替えられたり、資本規制によって封じ込められたりするリスクも考慮しなければならない。スウェーデンの銀行SEBのロベルト・ベリクビスト氏は、スウェーデンの法人顧客数社は、ユーロ危機がどう展開するか分からないため、投資計画を保留していると話す。
米国が「財政の崖」から転落すれば、米国は国内総生産(GDP)比5%相当の財政引き締めに見舞われる。これは米国経済を簡単に景気後退に陥らせる規模だ。
昨年夏、米国政府が危険なほど、借り入れを行う法定権限を使い果たす状況に近づいた時、バラク・オバマ大統領と共和党議員は、双方の財政面の違いを解消することができなかった。代わりに彼らは問題を先送りして、別の一時的な給与税減税とともに、ジョージ・ブッシュ前大統領の減税がすべて失効した後の2013年1月2日に始まる自動的な巨額歳出削減に同意した。
11月6日の大統領選までに、このダブルパンチを避ける合意がまとまる可能性は小さい。そのため、連邦政府にモノやサービスを売る企業は、どっちつかずの状態に置かれている。
ITサービス大手のコンピューター・サイエンス・コーポレーションのCEO、マイク・ローリー氏は最近、投資家に向かって「何が起きるのか私には全く分からない・・・我々の誰も(分からない)」と語った。
債務上限を巡る対立は、昨年夏の弱い経済をさらに弱くした、と複合企業ロウズ・コーポレーションのCEO、ジェームズ・ティッシュ氏は先月話していた。「今回の財政の崖は2011年夏の再来だが、ステロイド剤を使って強化されている」
経済学者はずっと、不確実性が成長を損なうのではないかと疑ってきた。ジョン・メイナード・ケインズは、投資は「急に激しく変化しやすい」期待に基づいていると話していた。
現在、米連邦準備理事会(FRB)議長を務めるベン・バーナンキ氏は1980年の論文で、この効果を形式化し、大半の投資は不可逆的であるため、不確実性は「新たな情報を待つことの価値を高め、(それゆえ)現在の投資ペースを遅らせる」と論じた。
1990年代には、アビナッシュ・ディキシット、ロバート・ピンディック両氏がさらに踏み込み、投資機会とストックオプションの類似性を示した。ストックオプションの価値は、株価のボラティリティー(変動率)とともに上昇するが、オプションが行使された段階で消滅する。
投資が不可逆的であれば、不確実性は、現金を貯め込み、何が起きるのか静観する価値を高める。
霧を測定する
不確実性を定量化するのは、比較的最近の試みだ。不確実性を測定するために、スタンフォード大学のニック・ブルーム氏とスコット・ベイカー氏、シカゴ大学のスティーブ・デイビス氏は指数を作った。
この指数は、政策に関連する不確実性が新聞で言及される頻度と税法における暫定条項の数を数え、インフレの予測と連邦政府支出の予測が互いに異なっている度合いを計算に入れている。
この指数は、昨年夏の債務上限を巡る論争の間に25年間で最も高い値を付け、今も高水準にとどまっている(一方、不確実性を測る従来型の指数で、株式市場のボラティリティーを示すVIX指数は2009年のピークを下回ったままだ。図参照)。
不確実性に関するニュース報道を追跡する、より単純な欧州の指数も同じように急上昇していた。
ブルーム氏らは自分たちの指数を、金利や株価に調整を加えることで純粋に経済的な要因を取り除く成長モデルに組み込んだ。
そして、2006年から2011年にかけての不確実性の上昇が実質GDPを3.2%減少させ、230万人の雇用を喪失させたと結論付けている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35496
リーダー不在の世界−米影響力低下で混乱強まる兆し
つい最近まで、米国はひとりよがりの超大国で、メキシコでのG20会議の参加国の意向などおかまいなしに世界を主導しようとしている、と多くの国から文句を言われていた。それに対してはおめでとうと申し上げる。なぜなら、米国が主導しない世界が、フランスの期待さえ裏切って早く訪れようとしているからだ。では、そういう世界、お気に召すだろうか。
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AFP Photo/HO/Shaam News Network/Getty Images
タイヤが燃やされ、道路が封鎖された(17日、ダマスカス)
たとえばシリアでは、独裁者に対する大衆主義者の反乱が内戦に発展する可能性がある。ロシアとイランは大事なお客であるダマスカスの政権を支持し、西側は国連の限界を認めざるを得ない。この紛争が周辺国に波及する恐れもある。
イランは、3年以上にわたる西側の要請と最近までの弱い制裁にもかかわらず、核兵器への歩みを続けている。イスラエルは、軍事リスクがあっても自己防衛のためにイランへの先制攻撃が必要との結論に達するかもしれない。それはアメリカの「やる気」に自信が持てないからだ。イランが核兵器の開発に成功した場合は、中東での急速な核拡散という事態を招きかねない。
ロシアのプーチン大統領も、キャンプデービッドで開かれたG8サミットへのオバマ大統領からの招待を断り、何かにつけて米外交を難しくしている。プーチン大統領は、シリアに兵器と対空ミサイルを送り、国連制裁を妨害、東欧と中央アジアへの影響力を再び強めている。オバマ大統領の米ロ関係の「リセット」効果はほとんどみられない。
エジプトでは、「アラブの春」以降、軍とムスリム同胞団が権力を求めて争っているが、米国はほとんど傍観者だ。民主化を進める勢力にとって、ムバラク時代に自分達をほとんど支援しなかったアメリカは信用できない。軍部も、最終的にムバラク氏を見捨てた米政権を信じていない。こうしたことでエジプトは、イスラエルとの国境の警備とガザへの武器流入の監視にますます消極的になっている。
ユーロ圏は、つまずきながらも次から次へと救済に追われ、依然として弱い世界経済を危険にさらしている。世界で最も見事な現職の指導者、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、2009年に景気刺激策で国家のバランスシートを膨張させよとのオバマ大統領からのアドバイスを拒否したが、それでよかったと思っている。彼女の経済は、バランスシートを膨張させなかったことでより強靭になっている。
オバマ政権はそれ以来、主にケインズ派の主張を吹き込む役割を果たし、ドイツにより重い負担と金融緩和を求めることで、非公式に欧州債務国に味方してきた。ガイトナー財務長官は昨年9月のユーロ圏財務相会合で自分のやり方を押し付け、欧州の政策を批判した。最近、オバマ大統領とガイトナー財務長官は、米国の経済問題は欧州の責任だと主張している。メルケル氏が、米国がどう考えようと関係ないと思うのは当然のことだ。
南アジアの国々は、米国がアフガニスタン撤退へと向かうなか、国益を再考している。パキスタンは、米軍に物資を運ぶトラック1台あたり5000ドルと恐喝まがいの要求をし、引き続きタリバン指導者をかくまっている。停戦交渉に向けた米国の懇願に対してタリバンが抵抗を示す間、イランは西アフガニスタンでの影響力を拡大している。
世界のプーチン派と多くの米リベラル派にとって、こうした米国の影響力の衰退の兆しは歓迎すべきことだ。彼らはついにガリバー米国を縛り上げた。国連による「集団安全保障」の時代が到来した。将来、困難は予想されるものの、少なくともイラクのような国は出ない。
しかし我々は、国連主導の新たな平和の時代が米国主導に取って代わるのではないことを肝に銘じるべきだ。その間隙は、世界でも一、二を争う悪役によって埋められることがしばしばだ。ロシアとイランがアサド独裁政権を強化するために好き放題やっているシリアほど、それが明らかな場所はない。大虐殺の代償は高い。しかし、米大統領の「退場」宣言がほとんど役に立たないことを他の独裁者に示す方がさらに高くつく。彼らにとって問題なのは、モスクワ、北京、テヘランに後ろ盾を持つかどうかなのだ。
経済力が低下した米国の凋落は避けられない、という見方は、とりわけ欧州と中国で根強い。景気後退と景気回復力の弱さが米国の資源を減らし、自信を弱めたことには疑いがない。しかし、経済の衰退は避けようがない。チャールズ・クラウトハマーが2009年に言ったように、衰退は「ひとつの選択(a choice)」なのだ。
アメリカには、低成長で、国家遺産を国内のバラマキに使う給付社会へとつながる現在のやり方を続けるという選択肢がある。一方で、再びダイナミックでリスクを取る社会、3%以上の成長が可能な社会へと決意を固めることもできる。
米国にとって無理なこととは、年率2%成長のオバマ時代にオバマケアと現在の米軍の予算を両立させることだ。欧州の防衛費と同様、このままいけば米国の軍事予算の縮小も避けられない。
米国のパワーには常に限りがある。米国のリーダーシップといっても手当たり次第に介入したり、軍事介入したりすることではない。求められるのは、米国の優位は望ましく、善の源であり、時に反対に遭っても正面から力強くリードするという米大統領の信念だ。
そのようなアメリカのリーダーシップがなければ――世界の混乱が強まる兆しは、もっと悪い事態がやってくる前兆だろう。
http://jp.wsj.com/Opinions/Columns/node_464405?mod=WSJFeatures
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