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エコノミスト・カンファレンス
緩和から強化へ、金融規制のシフトがもたらすもの金融規制と中央銀行のあるべき姿〜ベルウェザーシリーズ2012(2)
2012.06.12(火)
昨日に引き続き、エコノミスト・カンファレンス「ベルウェザー・シリーズ 2012―アジア・グローバル金融の現状と未来」のリポートをお送りする。
第2回の今日は、『欧米、アジア、グローバル? 金融規制と中央銀行のあるべき姿』と題されたセッション。
パネリストは、バンク・オブ・NYメロン アジアパシフィックCEOのアラン・ハーデン氏、フィナンシャル・タイムズ 国際金融主席特派員ヘニー・センダー氏、IMF(国際通貨基金)ヨーロッパ部門アシスタント・ディレクターのスビル・ラル氏、慶應義塾大学経済学部教授、金融庁金融研究研修センター長の吉野直行氏の4名。
世界的にルールベースの金融規制が増えていく見通し
バンク・オブ・NYメロン アジアパシフィック CEO、アラン・ハーデン氏(写真提供:エコノミスト・カンファレンス、以下同)
ハーデン 金融規制に関して、これまで大きく2つの流れがありました。私の見方で言うと、1つは距離を置いた規制、そしてもう1つはリレーションをベースにした規制です。
いままでの多くの規制は、相当距離を置いた規制になっていました。アジアの銀行についてもそう言えると思います。アングロサクソン・システムとよく言われますが、英国と米国に特徴的なものです。
しかし、米国の金融危機によって状況が変わってきています。まだ最終的に落ち着いているわけではありませんので、2つのうちのどちらに流れが向かうのかは見えていません。各地域においてもまだ最終的な結論は出ていない状況です。
そういう中で、アジアにおいて金融規制はどんどん増えてきています。それがプリンシプルベースの規制になるか、ルールベースの規制になるかが大きな課題になってくると思います。
アジアといってもさまざまな国があります。ヨーロッパにもさまざまな国があり、例えば南欧と西欧は大きく違うわけです。しかし、ボルカー・ルールやドッド・フランク法などを考えると、ルールベースの規制が増えるであろう、各国の規制当局がルールベースのような規制を展開していくのではないかと思います。
ラル 私は、グローバル化というのは基本的によいことだと考えています。それによって貧困が減りました。これは歴史的に見ても確かです。ですから、アジアにおいてもグローバル化が進むことは、多くの人にとってよいことです。
そして金融のグローバル化も、貿易のグローバル化と同じものだと思ってるので、とてもよいことだと考えています。つまり、金融においても時計の針を逆に戻そうというような動きはよくない、金融規制もグローバル化から離れるような動きになるのはよくないと思います。
国境を越えた規制の標準化は必要だと思いますが、誰がそれを決めるのかがとても重要なことです。その国の経済の中にいる人たちが金融システム、金融規制を変えたいという気持ちにならなければいけません。
例えば、農業国から次第に工業国になるなど市場が発展することによって、それに適した新しい金融規制、またはグローバル化した金融規制の枠組みに入りたいという気持ちが出てくるべきだと思います。つまり金融規制というのは、経済の進化の度合いによるべきものだと考えます。
ただ、問題が出てくる時は、金融危機が起こるということです。本来ならば経済の進化に合わせて金融規制を一緒に進化させなければいけないわけですが、それが手遅れになった時に金融危機が起こるかもしれない。
ラル ですからグローバル化において国内機関が、その国の経済が次の段階に発展しなければいけないのに、その動きに抵抗するということになれば、外国の声というのが役割を果たすこともあり得るでしょう。
もちろん国内の声は重要ですが、国際コミュニティーからの声も、とても重要ではないかと思います。
金融規制当局は必ずしも中立ではない
慶應義塾大学経済学部教授・金融庁金融研究研修センター長、吉野直行氏
吉野 私が金融規制について心配するのは、規制当局は中立である、システムの上に立っている中立的な人であるという考え方があることです。
そんなことはありません。規制当局にもいろいろな利害関係があります。システムを安全なものにしたいと考えているにしても、同時に自国の債務をどのように削減しようかといったことも考えている。
例えば日本の規制当局にしても、自分たちの都合のいいようにルールを設定するということです。規制当局がある主張をする時には、それがどういう利害関係の中でのものかを私たちは考えなければなりません。
ハーデン 規制当局のアジェンダとはどういうものなのか、当局はきちんと考えなければならないと思います。
規制当局にはいま、ポピュリズム的な部分があると私は思います。彼らはできるだけ早く規制をたくさん設けたいと考えている。そのため、われわれ業界の者はけっこう声を上げています。
なぜなら、いったん規制が設けられると、何十年間もその下で働かなければならないからです。
政治家は次の選挙まで、そのあとはどうでもいいということになるかもしれないが、われわれにとっては規制によって大きなダメージが出てくるかもしれないということを考える必要があります。
吉野 私が外国で講演する時、その国がバブルの真っただ中にあったとしても、当局者たちは絶対に自分たちはバブルの中にいないと信じています。基本的にマーケットファンダメンタルズがきちんと機能していると主張する。
例えば以前、中国の中央銀行の要請で講演を行いました。私は当時、中国はバブルの状態にあると思っており、それを指摘しましたが、まったく信じてもらえませんでした。
どの国も他国から学ぶというよりは、自分の国の歴史は独特なものだと信じ込んでいるということです。
それは日本も同様です。日本はバブルを経験しました。住宅価格も不動産価格も株価もどんどん上がっていった。当時、当局は十分な担保があるのかどうかということを心配し始めました。
しかしながら、今後も経済は拡大するだろうという前提でそれほど心配しなくてもいいという結論になったのだろうと思います。つまり規制といっても、市場推移、トレンドをどうしても見てしまう。純粋な客観的な見方というのは難しいわけです。
ハーデン 新たな金融規制によって失われるものについて、簡単な事例を申し上げたいと思います。
例えば債券ファンドについて、多くのミューチュアルファンドがかかわっており、シードキャピタルについても規制があります。これは自己勘定取引と見なされるわけです。
アセットマネジャーとしては、ある程度のキャピタルをファンドに使えないということも出てきます。こういった問題、イノベーティブな資金調達の方法、シードキャピタルが使えない、そしてそれによってファンディングができないということになりますと、このファンドは存在できないということです。
そうすると、より生産性の高い目的のためにおカネを拠出するということが難しくなってきます。
アジアでは消費者保護の面から、お客様に対してこうした投資についていろいろな動きが見られます。西欧も同様で、金融商品を売るのが難しくなってきています。
それはマネーマーケットのファンドにおいても言えます。個人がそれを買うことについていろいろな難しさが出てきている。そういう新たな金融規制によって、もともと意図していなかったような結果が出てくることが予想されます。
最終的にこれが重要な点になってくると思いますが、何がヘッジングで、何が自己勘定取引なのかということです。
アナリストにおいて、片方は自己勘定取引で、もう1つはヘッジングであるということになると議論は十分にできない。そしてリーガルな形でそれを提示しようとすると、法案を用意するにおいても難しさがある。
これはどこかの時点で結論が必要になりますが、もう少し時間がかかるだろうと思います。ここには政治的な意向もあります。
どの時代においても経済バブルの終焉においては、やはり規制バブルが開始されるということで、いまはそういう状況ではないかと思います。
債券市場が未成熟な日本、バイパスチャネルが必要
吉野 債券市場に関して話をしますと、日本においてはいまミューチュアルファンドをそれぞれの地元の企業に対して適用しようとしています。
日本は債券市場がまだ十分に開発されておらず、ベンチャーキャピタルもまだまだという現状です。そういう中で、それ以外のバイパスチャネルが必要になっています。それによって初めて中小企業、そしてリスクのある事業に対して投資ができるわけです。
そういったリージョナルファンド等の開発が必要だと思います。あるいは、銀行の支店からそれを販売することもできると思います。そしてまた、地元の投資家がそういったファンドに対して投資をすることもできると思います。
吉野 実際に例えば、漁師の造船のためのファンドというものがありました。漁師の方々がなかなか銀行からおカネを借りられないということで、新しいファンドが構築され、日本のさまざまな投資家がおカネをそこに拠出して、船を造ることができた。
また、太陽光パネルのファンドもあります。ある都市の200世帯で太陽光パネルを屋根に設置したいということで、大きなファンドをつくった。こうしたファンドには地域ベースのものと全国ベースのものがあります。場合によっては海外の投資家も対象になると思います。
または、マイクロファイナンスというものもあります。これもアジアで進んでいます。しかしながら、規制の対象になっていない非常に市場に対してオープンな状態ですので、個人が非常に高い金利を払っているという問題があります。
金融機関にはそれぞれ強みがある。アジアではバランスが必要
国際通貨基金 ヨーロッパ部門アシスタント・ディレクター、スビル・ラル氏
ラル 金融機関にはそれぞれ強みと弱みがあり、一概にどれがいい、悪いは言えません。ある程度距離を置くものと、関係を重視するものについて見てみたいと思います。
関係ベースのものにつきましては、従来のメーカーベースの経済では非常にうまくいっていたと思います。人間関係、クライアント、ビジネスを知っている銀行は安定性が期待できます。
しかし、現在のように迅速に技術が変わる中では難しいと思います。そこではどうしてもリスクキャピタルが必要です。なぜなら、ベンチャーの将来は分からないので、銀行が対応するのは難しい面があるからです。
ですから、アジアにおいては両方のバランスが必要になってくると思います。メーカー、それ以外の業態、ベンチャー、ナレッジベースの産業など、それぞれ目的が違うわけです。
中国はステートキャピタリズムを拡大させていく
フィナンシャル・タイムズ 国際金融主席特派員、ヘニー・センダー氏
センダー 前のセッションでステートキャピタリズムが話題になっていましたが、中国は今後、金利や資本のコントロールを使ってどんどん自分たちのステートキャピタリズムを拡大させていくのではないかと思います。
ますます安価な資本という強みを生かすのではないか。というのも中国はそこにアドバンテージを持っているからです。
ステートキャピタリズムの一番の差別化要因は、安価な資本を有しているか否かだと思います。資本のコストというのが大きな差別化要因になってくると思います。
中国の場合、さらに「中国元」という通貨も融資の中に入ってきます。中国政府はいろいろな資本の規制を行っていますが、中国元建てのローンが今後ますます出てくると思います。
ハーデン 私も資本規制については大きな課題だと思います。金融危機前であれば、資本のコストは価値が非常に安かったわけですが、いまは資本の価値が非常に高くつきます。
つまり、中国がどんどん資本を輸出できるようになっている。あるいはアセットマネジャーなどがこのようなキャピタルを持っているので、どんどん資本市場にそれを投入できる。
今後はコアバンキングだけではなく、ほかの資本の動きというのが重要になってくると思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35400
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