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スペインは国家の救済が必要か―銀行救済は序曲の可能性
2012年 6月 11日 9:00 JST
記事
スペインが国内銀行支援のため、他のユーロ圏諸国に最大1000億ユーロ(約10兆円)の救済を仰ぐことを決定したことは、もっと大きな疑問への序曲である。その疑問とは、「スペインは国として救済してもらう必要が出てくるのかどうか」だ。
金融市場の関係者の多くは、結局はそうなるだろうとみている。スペイン政府は、同国が存続可能であると債権者を説得するという難題に取り組むことになる。
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Getty Images
欧州にとっては、スペインが救済を仰ぐようになるかどうかは死活問題である。ユーロ圏第4位の経済大国を全面救済するなどということは、欧州にすれば大惨事だ。経済規模がギリシャやポルトガル、アイルランドを合わせたより大きいスペイン向けの救済資金の確保は、大変な負担になるだろう。
ユーロ圏当局者は、今回の対スペイン救済は、緊縮財政など経済改革を必要としない限定的なものと位置付けている。一方で多くの関係者の関心は、17日に行われるギリシャの総選挙に集まっている。他のユーロ圏などから受けた金融支援の継続を主張する新民主主義党(ND)と、支援条件の再交渉を求める急進左派連合(SYRIZA)が接戦を演じている。SYRIZAが圧勝すれば、通貨同盟ユーロ圏に亀裂が入る可能性が強まり、スペインの金融部門の混乱はさらに広がる恐れが出てくる。
スペイン経済は悪化の一途をたどっており、外国人投資家は同国国債から逃避している。同国は、現在対国内総生産(GDP)比で3.5%に達し、さらに拡大するとみられている大規模な財政赤字をどうやってファイナンスするのか。
同国の銀行は今年初めにはその隙間を埋めていたが、今や手を引いてしまった。スペイン政府は、財政赤字補てんや満期国債の償還のため、今年860億ユーロの国債を発行する必要があるとしている。このうち480億ユーロは調達したが、残りの380億をユーロ資本市場から調達しなければならない。同国は他のユーロ諸国に国内銀行支援のための救済を仰ぐことで、資金調達が難しいことを暗に認めた形だ。
UBS(ロンドン)のジャスティン・ナイト氏は、「スペインはどこかの時点で債券市場から完全に閉め出される可能性がある。スペインは救済を求めることで、債券市場へのアクセスが限られていることをさらけ出した」と語る。
債券市場アナリストは、目先スペイン国債は値上がりする可能性があるとみている。同国政府は、国内銀行支援向けの資金手当てのため新規国債を発行しなくても済むためだ。先週末8日の欧州債券市場ではスペイン国債10年物利回りは他のユーロ圏への救済要請を見込んで6,25%となり、ピークだった5月30日の6.7%兆から下落した。
クレディ・スイス(ロンドン)の欧州金利ストラティジー部門の責任者ヘレン・ハワース氏は、今週スペイン国債は安心感からラリーのような展開になるかもしれないと予想する。しかし同氏は、基本的には「スペイン国債の買い手は、同国の銀行を中心とする国内投資家以外にいない状態が続くと思う」と指摘する。
ユーロ圏による救済策は、支援の見返りにスペインの銀行に何を要求するのかなど詳細が明らかになっていない。早急に救済策を取りまとめる必要があったためで、ユーロ圏の高官は「スペインが市場から資金を調達できなくなる瀬戸際に追い込まれていたため、素早く対応した」と、詳細が固まっていないことをほのめかした。
今回の救済には、いくつかの弱点がある。まず、銀行の救済コストは結局スペイン政府にのしかかってくる。同国は他のユーロ諸国に融資を返済しなければならない。
第2に、救済によりスペインは追加資金の調達がますます難しくなる。救済資金は新設の欧州安定メカニズム(ESM)が大半を融資するとみられているが、ESMの融資は優先債権とされそうだ。UBSのナイト氏は「一般的なスペイン国債の保有者は、劣後債権となるのを恐れる」ため、投資家はますます同国国債を避けるようになるだろうと指摘する。
そして、スペイン政府は同国銀行部門の問題を解決できると、債権者を納得させる必要がある。これは簡単なことではない。加えて、同国政府はデフォルト(債務不履行)に陥らず存続可能であることも、債権者に納得させなければならない。
スペインの銀行部門の問題は根深いが、同国政府が直面している問題はそれだけではない。同国経済は急激に縮小しており、失業率は驚くほど高水準にある。中央政府は、地方政府の財政をコントロールするのが難しい。今年第1四半期はリセッション(景気後退)に見舞われ、4人に1人が失業している。このため、スペインの財政赤字はさらに膨らみ、資本市場からの資金調達額必要額は一段と増加しそうだ。
JPモルガンのストラテジストのパバン・ワドワ氏は、スペインは銀行の経営不安、政府の過剰債務、景気悪化という三重苦に陥っているとし、「このうち銀行の問題は解決され、国債相場は11日に急騰する可能性があるが、長続きはしないだろう」と予想する。
記者: Charles Forelle、Gabriele Steinhauser
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エコノミスト・カンファレンス
信用力の高い日本の銀行にチャンス到来?欧米型市場原理主義からアジア的国家資本主義へ〜ベルウェザーシリーズ2012(1)
2012.06.11(月
去る5月16日、エコノミスト・カンファレンスは東京で第3回目となる「ベルウェザー・シリーズ 日本―アジア・グローバル金融の現状と未来」を開催した。
欧州のユーロ危機、円高の長期化、日本の逼迫した財政状況など、日本と世界の金融をめぐる環境に関し、IMF(国際通貨基金)やフィナンシャル・タイムズ紙、日本政府、金融セクター関係者、学界などの有識者による議論が交わされた。その中から4つのセッションをピックアップし、今日から4日連続でリポートをお送りする。
第1回は、『ブリーフィング:グローバル金融の動向』と題されたセッション。登壇者は榊原英資 青山学院大学教授とメリルリンチ日本証券の大槻奈那氏。
欧州の財政危機は南欧だけではなく、仏独も深刻な状況
榊原英資 青山学院大学教授(写真提供:エコノミスト・カンファレンス、以下同)
榊原 現在のユーロ危機について、私はかなり構造的なものだと思っております。
オスヴァルト・シュペングラーが1918年に『西洋の没落』という本を書いていますが、彼が生きていれば再び『西洋の没落』を書くのではないでしょうか。
ヨーロッパは戦後、労苦を重ねて統合しながら復興、再建してきたわけですが、それがここに来て逆転し始めたというのが私の認識です。
統合において東ヨーロッパやバルト三国、あるいは南ヨーロッパといった比較的経済の弱い、財政基盤の弱い国々を入れてきた結果、アメリカの金融危機を発端にそれらの国々が脱落し始めたという状況だと思います。
さらには、年金のようなポテンシャルな赤字まで入れると、実はフランスもドイツも非常に悪い。
ですからヨーロッパのほとんどの国が非常に深刻な財政状況にあります。ヨーロッパの危機は、いずれ銀行の問題に波及する。つまり財政、金融の複合危機になるだろうと思います。
一方、アメリカの危機は、金融システムの崩壊です。それによって経済がおかしくなった。ある意味では金融バブルが破裂したということだろうと思います。それが2007年、2008年に起きたことです。
だからアメリカの危機とヨーロッパの危機は若干違うものだと認識しています。アメリカの景気回復については、順調に推移することはおそらくないと思います。
場合によっては二番底をつける可能性もあり、ヨーロッパ危機も続くでしょう。通貨に関して言えば、現在ユーロ安、ドル安ですが、円高がしばらく続き1ドル75〜83円のレンジで推移するだろうと見ています。
大槻 米国と欧州の危機の性格は確かに違いますが、これだけ近い時期に2つの大きなクライシスが起こったということは、あとから起こった欧州の危機は大なり小なり米国の影響が反映しているのだと私は思います。
そして、その2つの危機の結果、金融界は現在、“バーゼル3”元年ということで、レギュレーション(規制)の強化の真っただ中にあります。
過去を振り返って見ますと、資本規制というのは危機があると、その直後にだいたい強化されており、その意味では今回も普通の流れを歩んでいるのではないかと思います。
メリルリンチ日本証券 マネージングディレクター 調査部 銀行セクター担当アナリスト(株式・クレジット)大槻奈那氏
大槻 今後について見ますと、どのような危機でもだいたい3ステップで解決していきます。最初はリクイディティー(市場流動性)を供給してなんとか生命維持装置をつける。これは今回の欧州でもうまくいきました。
ステップ2としては財務を強化する。金融機関で言えば資本を規制するということで、いまそれを行っている段階です。財政危機については概念的に資本というものが直接的にないわけですので、資金注入の代わりにバランスシートをどうやってクリーンアップするかということになります。
これはギリシャのように債権をカットするしか短期的には方法がなく、それも一応は終わりました。問題はステップ3です。これは経済が成長し、GDP(国内総生産)が財政に見合うだけ増えることが必要ですが、これは日本も経験した通り長い時間がかかるでしょう。
世界の中心は欧米からアジア、市場原理主義から国家資本主義へ
榊原 マーケットファンダメンダリズム(市場原理主義)は、アメリカの金融システムの全面的崩壊、さらにヨーロッパの財政危機の結果、いわゆる「マーケットに対する過剰な期待」みたいなものが崩れました。そこで、何らかの形で国が介入していかなければならず、金融で言えばリ・レギュレーション(再規制)の世界にアメリカもヨーロッパも入ってきています。
そう考えると現在は、マーケットファンダメンダリズムから、ある意味ではステートキャピタリズム(国家資本主義)のようなところに移ってきているのかなと思います。
ステートキャピタリズムというと中国ですが、インドも国の力が比較的強い。そういう意味で、完全にそうなると言うつもりはありませんが、欧米型のファンダメンダリズムが、次第にアジア型のステートキャピタリズムに近づいてきているのだろうと思います。
さらに、世界経済の大きな流れを見ると、いま「リ・オリエント現象」が起きています。つまり世界の中心が欧米からアジアにシフトしつつある。
アジアの中心となるのは中国とインドです。人口で言えば13億人の中国と12億人のインドで、世界の約4割を占める。中国のGDPは2010年に日本を抜き、30年前後にはアメリカを抜いてナンバーワンになると予測されています。
インドも2050年までには日本を抜き世界ナンバー3になるとみられている。2050年の世界経済の構成を見ると、トップが中国、2位アメリカ、3位インドという状況になると思います。つまり、大きな流れが西から東に移ってきているのです。
保守性が功を奏して高い信用力となった日本の銀行
大槻 最近のデータを見ますと、日本の金融機関の信用力は現在ほぼ世界一になっています。
ということは、世界経済がこれから欧州の金融機関が貸し出しをしないことでスローダウンするかもしれないと言われる中で、日本の金融システムがそこを代替して成長を支えることができるかもしれません。私はそう見ています。
榊原 私は今後、インベストバンクモデルというか、マーチャントバンクモデルはおそらく消滅するだろうと思っています。そしてトラディショナルなバンキングに次第に戻っていく可能性が非常に高くなる。
そうなると大槻さんがおっしゃられるように、日本の銀行は非常に強いですね。ずっとコンサバティブなバンキングをしてきたことによって、破滅的な失敗を免れた(笑)。
榊原 実際、いまアジアでは日本の銀行に対する期待が非常に大きくなってきていますし、相当シェアを伸ばしていると思います。日本の銀行にとっては非常にチャレンジングな、ビジネス機会のある時代に入ってきたのだと思います。
グローバリゼーションは減速し、リージョナルインテグレーションが加速
榊原 グローバリゼーションがこれで終わりになるということはないでしょうが、いままでのようなタイプのグローバリゼーションはおそらく起こらないだろうと思います。
ただ、グローバリゼーションというのは、特にアジアでは“ファイナンシャリゼーション”だけではありません。日本と中国を中心とした東アジアは、マニファクチャリングで非常にグローバルになっています。
日本と中国の経済はもはや統合されていると言ってもいいくらいです。そういう意味でのグローバリゼーション、特にアジアやヨーロッパではリージョナルインテグレーション(地域統合)が相当な勢いで進むと思います。
大槻 金融システムにおいても、グローバリゼーションというよりは、アセットのシフトという形でこれから起こるのかなと思います。
いままでの欧米中心から、アセットのシフトがかなりな規模で、ただし1980年代のようにアセットが日本の金融システムを大きく拡大するということではないにしても、中長期的にアセットのシフトが起こってくるのではないかと思います。
先進国は成長を追い求めず成熟社会を楽しめばいい
榊原 私は現在の日本について悲観的ではありません。また世界経済に関してもそれほど悲観的な見方はしていません。
ヨーロッパやアメリカ、日本などの先進国の生活水準は緩やかに下がっていく可能性があると思いますが、一方で中国やインドの生活水準は急速に上がっていきますから、これはある意味でグローバリゼーションです。
先進国の物価は日本のように下がっていくか、あるいはインフレーションが非常に低いという状況が続くでしょうし、中国とインドの物価はかなり上がっていく。賃金も同じで、先進国の賃金は緩やかに下がっていき、中国とインドは急速に上がっていく。
そういうグローバリゼーションがいま起こっていると考えれば、われわれがいま経験していることはごく自然なことです。先進国にとっては残念ながらあまりいい状況ではありませんが、できるだけ成熟のメリットというものをエンジョイして、あまり成長などは考えないということでいいと思います。
大槻 私も確かに生活水準自体に不満はありません。ただし日本の問題について言いますと、公的金融機関が中小企業をサポートしていることです。
大槻 最近のデータでけっこう驚いたのが、公的金融機関がどれくらい中小企業に対して貸し出しをしているか、中小企業の借り入れに対して公的金融機関からの借り入れ等の比率がどれくらいになっているかというと、46%です。
過去のデータがある限りでは最高です。つまり日本では、いま中小企業の借り入れのほとんどは、民間がリスクを取って貸しているわけではないのです。
これはもちろん規制のせいだけではなく、デフレが大きく影響しているわけですが、結局こういう形で規制が貸し出しの縮小を呼び、デフレに向かっていく。そうすると銀行がますます貸し出しをしづらくなるという形でのシュリンクが続きます。
さらに、人およびその他のリソースの有効活用は妨げられます。ソフトランディングで痛みは伴わないですが、中長期的に見ると、可能性のある分野の成長が期待できない。どこかで考え方を変えなければならず、私はいまがそのいい機会だと思っています。
海外では財政の問題が活発に議論されています。あらゆる分野、それは金融機関も含めて、救うのではなく、選択的に成長を図れるような形で、大きな痛みが伴うかもしれませんが、中長期的にはそうした形で新しいダイナミズムに入っていければいいのではないかと思っています。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35385
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