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http://markethack.net/archives/51823596.html
一昨日、スペインのモントロ財務相がラジオで「もう金利が高くなり過ぎて、スペイン政府は市場からお金を借りられない。マーケットから締め出されちゃった」という事実上の降参宣言をしました。
欧米の市場参加者はこのニュースを見て「ヒョエーッ!」と肝を潰したわけですが、投資家の心配とはうらはらに、マーケットは堅調でした。
一体、なぜマーケットは下がらなかったのでしょうか?
それはモントロ財務相が、「スペイン政府単独ではスペインの銀行を支える事はムリ。だから、アンタやってよ!」と下駄を欧州連合(EU)に預けたからです。
つまりスペインは自らスーパーヒーロー失格を認め、アッサリとEUにスポットライトを譲ったのです。
これを読んでいる皆さんは(どっちが救ったって、同じじゃないか?)と思うかも知れません。でもスペイン政府がスペインの銀行救済に飛び込むのと、EUがスペインの銀行救済に馳せ参じるのでは、その勝算(Odds)や費用(Cost)が全然違うのです。
ひとことでいうと、EUがやった方が成功の確率は遥かに高い。
それはどうしてか?
その理由はEUの資金調達コストの方がスペインのそれより遥かに低いからです。
またEUの方が大きな資金で救済に乗り出すことが出来ます。
★またEUが直接スペインの銀行救済に乗り出せば、それは実質的に財政統合への第一歩を踏み出すことを意味し、市場に対して強いメッセージを送ることになるからです。
言い換えればEUが財政的に「事実婚状態」になるということです。
当然、「それはずるい!」という声が、EUのメンバーの中から上がって来ると思います。「EU憲法違反だ!」という指摘も出るでしょう。
でも住専状態になっているスペインの中小金融機関の面倒を見る任務からスペイン政府が放免されると、スペインの財政負担は急に減り、スペイン国債は急騰すると考えられます。なぜならスペインはもともと国家負債がGDPに占める割合が66%と、先進国の中でもかなり低い方だからです。
さらにスペインは国際通貨基金(IMF)からの救済を受けなくて済む可能性が高まります。それは財政切り詰め政策がこれ以上、きついものにならないことを意味します。
スペインは単に「スーパーヒーローになれる人(=EU)が、スーパーヒーローをやってよ」と開き直っているに過ぎないのです。
逆に言えば、スペイン政府がスペインの銀行の救済を諦めれば、EUがステップインせざるを得ないという、冷徹な読みがあるわけです。なぜならばスペインの銀行から取り付け騒ぎで預金がどんどんおろされはじめたら、ドイツやフランスの銀行にも不安が走るからです。
今回のユーロ危機は一般には単に南欧諸国の政府の放埓な財政政策が原因だと考える投資家が多いですが、その考えは単純過ぎます。
実際は共通通貨ユーロが導入された直後から、域内の大手銀行を中心にクロスボーダーでの貸付がどんどん増え、EUメンバー国の予算プロセスや税制、成長戦略などが整備される前に一足飛びにバンキング・サービスだけが国際化したことに問題の一端があります。
その意味で今回のユーロ危機はたんなる財政危機ではなく、バンキング・クライシスなのです。
ここへきて欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が急にバンキング・ユニオン(銀行同盟)を口にし始め、ドイツのメルケル首相もドイツなりのバンキング・ユニオン案(=ECBのそれより控え目です)を練り始めた背景には、上に書いたような「スペイン政府がケツをまくるリスク」があるからです
●スペイン:予算相が欧州の資金による銀行への支援求める
・・もう「銀行・財政同盟」の道しかありませんとの三味線
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M54V7D6KLVRA01.html
6月5日(ブルームバーグ):スペインは5日、同国の銀行危機と闘うための資金を初めて外部に求めた。モントロ予算相は欧州の制度が同国の銀行を支えるよう呼び掛けた。
予算相は放送局オンダ・セロとのインタビューで、スペインの銀行は資本増強のため法外な金額を必要としているわけではないとし、問題はどこからその金額が出るかだと述べた。
モントロ予算相は「欧州の制度が扉を開き、われわれがその額を満たすのを助け、それを容易にすることが重要なのはそのためだ。われわれは天文学的な数字について話しているわけではないのだから」と語った。
スペインのラホイ首相は、ユーロ圏の恒久的な救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)が政府を介さず銀行に直接資本注入するのを認めるよう繰り返し呼び掛けている。
スペイン最大の銀行サンタンデール銀行のエミリオ・ボティン会長は4日、バンキアなど接収された4銀行に合わせて約400億ユーロ(約3兆8900億円)を欧州の基金から注入すれば業界の問題解決に十分との試算を示した。ドイツは救済基金から銀行への直接資本注入には反対している。
モントロ予算相はまた、欧州の首脳らは月末に開く会議で「銀行同盟」を承認するべきだとの考えも示した。また、スペインが国として救済を必要とはしないとの政府見解を堅持し、スペインを救済することは「技術的」に可能ではないと述べた。
●スペインとギリシャの銀行救済で基金活用を−CEPS
・・計り知れない影響を伴う、銀行の取り付け騒ぎを回避するために
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M54S9C6JTSEA01.html
6月4日(ブルームバーグ):ギリシャとスペインの銀行を救済し、「計り知れない影響」を伴う銀行の取り付け騒ぎを回避するため、欧州の救済基金を活用すべきだと欧州政策研究所(CEPS)のダニエル・グロス、ディルク・シェーンメーカー両氏が訴えている。
ブリュッセルを拠点とするCEPSから入手した近く発表予定の政策文書によれば、スペインの銀行は資本を必要としているが、それは欧州の機関、つまり5000億ユーロ(約49兆円)規模の欧州安定化メカニズム(ESM)から得るしかなく、ギリシャも自国の銀行を支えることはできないと両氏は分析している。
また、そのような銀行に資本を注入し、経営を引き継ぐため、ESMは欧州中央銀行(ECB)と欧州銀行監督機構(EBA)、各国の中央銀行の専門家を募り、特別目的事業体を設立する必要があると指摘。長期的には両氏が提案する「欧州預金保険・整理基金」にこれを統合すべきだと主張している。
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