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ギリシャのユーロ離脱が現実のものとなりつつあります。しかし、ユーロに関する法体系の中に「出口」は用意されていないのです。これは、法体系の不備というよりも別の意図があるという人がいます。元外務省外務副報道官の谷口智彦氏です。谷口氏はユーロの本質について次のように述べています。
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ユーロの本質は「MAD」(相互確証破壊)である
MAD=(Mutual Assured Destruction)
──谷口智彦著/『通貨燃ゆ/円・元・ドル・ユーロの同時代史』
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MADというのは、冷戦下の核抑止理論を意味します。米ソの冷戦時代、仮に米国がソ連によって核ミサイルの第一撃で、首都機能を破壊されたとします。しかし、北極海深く潜航する原子力潜水艦からの第二撃でモスクワを同様に破壊することができるのです。このように相互の破壊が確証的であることから、核は使えない兵器になったのです。これがMADです。
ユーロに関する法体系においては、ユーロを採用した国──とくに中心の大国がどうすれば脱退できるのかについて何も定めていないのです。さらに追放条項もないので、不良会員を追い出すこともままならないのです。
現在、ユーロの中心国はドイツとフランスです。もし、このどちらかの国がユーロから離脱するとしたら、一体どのようなことが起きるでしょうか。
もし、そんな噂が少しでも出たら、ユーロは国際通貨市場で投げ売りされ、価値が暴落し、収拾がつかなくなります。そうすると、ドルと円は超暴騰し、国際通貨システムのメルトダウンをきたしかねないのです。したがって、ドイツとフランス相互の完全な破壊が間違いなく起きるので、実際には実現できないのです。
谷口智彦氏は、だから「ユーロは冷戦下のMAD」のようなものであるというのです。
谷口氏は、平和条約にも「出口」はないといいます、そして、「ユーロとはドイツとフランスを永遠に縛り付ける制度である」とも述べています。足抜けできない制度なのです。
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平和条約にも、「出口」はない。当たり前だが、かくかくしか じかの場合において両当事国は再び交戦状態に入るということ を規定した条項は、平和条約において準備されない。平和条約 が破られる場合とは、平時が終わる時であり、システムが道連 れにされるときである。実はこの隠喩に、ーロの登場した事 情が語り尽くされている。結論を言うならばユーロとは、ドイ ツとフランスを永遠に縛り付ける制度である。独仏恒久和平条 約体制──。それこそがユーロが体制としてもつ最も顕著な特 徴だということは、何度強調してもしすぎることはない。
──谷口智彦著/『通貨燃ゆ/円・元・ドル・ユーロの同時代史』
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このことは、ユーロに規模と範囲のメリットを持たせるため欠かせない存在とされた英国が現在においてもユーロに加盟しないことにも関係があるのです。
国際エコノミストの長谷川慶太郎氏は、ヨーロッパというのは、英国の立場で見る場合とドイツの立場で見るのでは大きく違ってくるというのです。長谷川慶太郎氏と経済評論家の三橋貴明氏の対話を読んでいただきたいと思います。
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長谷川:イギリス人にとって最も尊敬すべき人物は、第二次世
界大戦でイギリスがナチス・ドイツを相手にして闘っ
た時の首相、ウィンストン・チャーチルです。現在の
イギリスのキャメロン首相もあるインタビューでこう
言っていました。「70年前を思い起こしていただき
たい。そのときチャーチルは『ヒットラーには絶対に
英仏海峡を渡らせない。私が許さない』と言った。私
も同じことをメルケル首相に言いたい」。
三 橋:ユーロには、絶対に英仏海峡を渡らせないということ
ですか。
長谷川:そうです。キャメロンはユーロがドイツのヘゲモニー
の下に置かれていることも、またドイツを抜きにして
ユーロを論じられないこともよく知っています。だか
から、ドイツがイギリスに影響力を及ぼすことを許さ
ない。これはイギリスにいると、きわめて常識的な普
通の話なのです。 ──長谷川慶太郎/三橋貴明著
『大恐慌終息へ!?日本と世界はこう激変する』/李白社刊
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しかし、ドイツを中心にユーロを見ると、それはドイツのサクセスストーリーそのものなのです。ヒットラーもドイツ帝国の宰相ビスマルクもできなかったことをドイツはメルケル首相の下で実現しているからです。したがって、ドイツの覇権下に入りたい国はたくさんあるのです。
ユーロに加盟することによって、主権が多少侵害されても、入りたいと思っている国はたくさんあるのです。
ところが、英国から見ると、ユーロがドイツのヘゲモニーの下に置かれていることに対して、拒否反応しか感じないのです。
日本人は「あなたはアジア人か」といわれると、正しいのであるが少し違和感を感じます。同様に「イギリスはヨーロッパか」と問われると、英国人には違和感があるそうです。英国人から見ると、ヨーロッパとは、あくまで大欧州を指すもので、自分たちを含むものではないと感じているようです。英国がユーロに入ろうとしないのはそういうところに原因があると考えられます。
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