★阿修羅♪ > 経世済民76 > 440.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「数%しか有効性のない医療はもうやめます」アメリカの医療費削減キャンペーンの衝撃
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/440.html
投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 05 日 00:07:21: cT5Wxjlo3Xe3.
 

明日の医療
「数%しか有効性のない医療はもうやめます」アメリカの医療費削減キャンペーンの衝撃
2012.06.05(火)
多田 智裕


4月4日、米国の9つの医学会が「医師と患者が問い直すべき5つの項目」というリストを発表しました。これにより、基本的に不要な医療費の削減が可能になり、その削減額はなんと数兆ドル(!)に上るといいます。

 米国家庭医学会(AAFP)が提示した例を見てみましょう。

 「中等度の副鼻腔炎(いわゆる『蓄膿症』:鼻づまりや頭痛を起こす)に対して、1週間以上症状が続いている場合、または症状が軽快しかけたあとに悪化した場合を除いて、抗生物質を処方してはならない」

 「進行性の神経学的な所見や骨髄炎を疑わせる所見がない場合、背部痛が起こってから6週間以内に写真を撮影してはならない」

 これは、「中等度の蓄膿症は、1週間以上症状が続いているのでなければ、抗生物質は出しません」、そして「背中が痛くても、それが6週間以上続くのでなければレントゲン写真は撮りません」ということと、ほぼ同義です。

 米国内科専門医認定機構財団が行う、「Choosing Wisely」(賢く選ぼう)と題されたこのキャンペーンを、「日本には当てはまらない」と笑い飛ばすことは簡単です。

 でも、本当に日本には当てはまらないのでしょうか。日本においても「何が無駄な医療なのか」を明らかにしないと、結局は問題を先送りするだけになってしまうと考えるのは私だけでしょうか。

アメリカの医師たちは経済的に大打撃

 「Choosing Wisely」キャンペーンの目的は、医療行為によって患者が危険にさらされたり、医療スタッフに不要な負担がかかったりするのを減らすことにあります。

 「専門分野の医師たちと、消費者が互いに協力して作り上げた」という今回のリストには、上記の他に以下のようなものが含まれています。


・軽い頭痛や失神でCTまたはMRI撮影をしてはならない。

・65歳以下の女性、または70歳以下の男性に骨粗鬆症検査(骨塩量測定)を行ってはならない。

・透析患者に対して定期的ながん検診を行ってはならない。

・症状のない患者に負荷心臓超音波検査や心筋シンチグラムを行ってはならない。

・外来手術患者に対しては、手術前の胸部レントゲン検査を行ってはならない。

・大腸ポリープを切除したあとのフォローアップの大腸内視鏡検査は5年以内に行ってはならない。

 これらの項目が実践されれば、アメリカの医師たちが計り知れないほどの経済的打撃を受けるのは間違いありません。それでも米国内科専門医認定機構財団は、“無駄な医療費の削減”のためにこれらの提言をまとめました。アメリカ医学界の「英断」と呼ぶにふさわしい提言と言えるでしょう。

 患者からは、「今まで受けていた検査や治療が無駄なことが分かったので、受けるのをやめることができた」という声も多数寄せられているようです。

数%の有効性を切り捨てれば「万全の医療」ではなくなる

 一方で問題もあります。これらは医師が行う医療行為に制限を設ける「制限医療」に直結していきます。個々の患者に応じた柔軟な医療を行うことができなくなり、結果的に病気の発見が遅れて命を落とす人も出てくることでしょう。

 私の専門である大腸内視鏡検査について言うと、今回のリストには「大腸ポリープ切除後5年以内に大腸内視鏡を行ってはならない」という項目があります。また、「大腸内視鏡検査は10年に1回だけしか行ってはならない」という項目もあります。

 でも実際問題として、大腸ポリープ切除後1年程度で5個以上の大腸ポリープが発症した方がいらっしゃいますし、大腸内視鏡で「異常なし」だったのにもかかわらず、2年程度で進行がんを発症した方も存在します。

 ただし、こうしたケースの頻度は全体の数%にしかなりません。ですから、キャンペーンの提言の本質的な考え方は、「その検査を行っても数%しか有効性が期待できないのであれば、無駄だから検査をすべきではない」ということだと思います。


 「0.1%でも可能性があるのであればそれに備えるのが当然。人の命がかかっているのだから」というのが、多くの人の心情だと思います。

 数%の可能性を切り捨てることによって医療費は大幅に削減されますが、同時に「万全の医療」ではなくなってしまうのも、また厳然たる事実なのです。

基準作りがタブー視されているのが全ての問題の本質

 財務省はもちろん、日本のほぼ全てのメディアは「医療費削減のため無駄な医療を抑制せよ」という意見で一致しています。一方で、同時に医療現場には「万全の医療」も要求されています。

 しかしこれまで見てきたように、「無駄な医療」を切り捨てると「万全の医療」からは遠ざかります。「無駄な医療」と「万全の医療」の基準がないため日本の医療現場は混乱し、進むことも戻ることもできない過酷な状況に陥っているのです。

 ある芸能人の母親が生活保護を受給していたことが問題となっています。これも、本質的な問題は、「親族に課せられた扶養義務に明確な基準がないこと」であるのは間違いないでしょう。

 ですから、問題を取り上げた国会議員は、生け贄のように個人を批判するよりも、同様の事態の再発を避けるために、例えば「年収1500万円を超える親族がいる場合には生活保護を申請してはならない」というような具体的な法整備を提示するのが本来の仕事ではないかと私は思います。

 基準を設けると「個別の事情を個々に判断して決定する」という曖昧さは許されにくくなります。また、「本当にみんなが指示を守るのか」という問題も発生します。しかし社会保障においては、明確な基準作りがタブー視されていることが全ての問題の本質なのではないでしょうか。

 具体的基準を設ける議論を避けるのは、解決を先送りするだけにすぎません。そういう意味では、指針を設定して議論しているアメリカの方が、日本よりも医療問題に対する認識が1周先に進んでいると言えるのではないでしょうか。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35340  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年6月05日 06:32:04 : CrPArAOtgg
救急医療はいいとしても、
慢性疾患に対する施療は、問題大有りなのは、すでに
多くの医者や識者に、指摘されているところです。
必要以上の施療や、また機械論的機能施療も、そろそろ
やめるじきでしょう。

02. 2012年6月05日 08:48:15 : bUlPfV6qvE
アメリカには公的医療保険がないので、アメリカ医療は巨大な資本力を誇る民間医療保険と
製薬・医療機器会社の力関係に翻弄され続けている。

そもそも医療は場所と時間を選べないサービスだから言い値でボッタクリが横行しやすい。
貨幣価値が10倍違う日本と中国で、医療費は中国の方が割高だと言われている。
日米間の比較は言わずもがな。虫垂炎(いわゆる盲腸)で手術したら300万円、
ガンの手術など受けたら確実に自己破産、というのがアメリカ医療。

国民の健康を維持しながら医療費削減したければ、日欧みたいに健保制度を確立して
全ての医療行為を「公定価格」にしてしまうのが実は有効なのですよ。


03. 2012年6月05日 09:09:33 : IOzibbQO0w

>>02

米国の医療費は、高い訴訟コストや、高い人件費と濃厚診療を考えれば市場的には適正価格だ

その価格を払えないくらい、経済が衰退し、格差が拡大したから、

今回みたいな措置が必要になってきたということだ

日本は、まだ、そこまで悪化していないが、医療崩壊が続けば、じきに追い詰められていく


04. 2012年6月05日 17:15:09 : OTOSIyOeKE
>具体的基準を設ける議論を避けるのは、解決を先送りするだけにすぎません。
 同意です。

>そういう意味では、指針を設定して議論しているアメリカの方が、日本よりも医療問題に対する認識が1周先に進んでいると言えるのではないでしょうか。

 現時点で、医療財政にどれだけ余裕が有るか無いかの差の反映だと思います。
 


05. 2012年6月05日 23:24:32 : AX9RzbOfUg
>02さん

そのような指摘は重要ですね。

本来、人の命や健康は、経済活動とは切り離して議論すべきことだと思います。米国では医療行為とは、全く経済活動の領域になってしまったらしい。

医療費が増大しているから、不採算部門を削ってしまえという発想は、市場原理そのものです。

現在の米国の行き過ぎた資本主義(資本主義そのものを否定しているわけではない)のもたらす問題点の本質を正面から見据えずに、周辺部分の議論で解決しようとすると、米国医学会(狭い専門領域に限定した話)の結論になる。

これは、一見、現実的な解決策に見えるようで、実は、根本的な問題の解決には全くつながらない。そればかりか、その発想そのものが、市場原理的である。

予算が足りなくなる、すると不採算部門を削る、何らかの要因でまた予算が足りなくなる、また削る。そのときには、もっと踏み込まざるを得ない。その内、さらに有用性の高いものでも削る必要が出てくる。

生活保護の問題も然り。基準を定めるのはいいが、その際には、扶養義務の範囲の改定も含めた、大規模な法改正が必要となる。現在の扶養義務の範囲は広すぎて、現在の実情に合わないとの指摘もなされる。

しかし、扶養義務を負わせるとして、それでも、生活保護を生み出す社会・経済的背景を考えなければ無意味なだけでなく、有害にさえなりうる。

現在の文脈では、単に、福祉の削減をしたい政治家・官僚の安易な手段として使われている。増税し、福祉削減し、その上で、逆に法人税は削減し、又、行政の無駄は省かれない。経済成長はどうすべきか?従って、包括的な議論が求められる。

もし変えるなら、経済・社会の変革を含めた包括的なプランを示す必要がある。少なくとも、国民が将来に対する不安を取り除けるようなビジョンを示すべきだ。

それもせずに、米国の学会のように、不採算(比喩である)だから、つまり有用性が低いから削減するというのは少し安易だ。

>そういう意味では、指針を設定して議論しているアメリカの方が、日本よりも医療問題に対する認識が1周先に進んでいると言えるのではないでしょうか。

この部分は少し違うと思う。医療を市場と見るかどうかの国民性の違いも関係しているように感じる。

この点、私は日本の医療は問題だらけであるとは思う。改革が必要な部分も当然あると思う。しかし、両国間の、その歴史的背景、経済・社会における文脈の違いを全く無視して、米国の事案と日本の現状を安易に結びつけるのはやめたほうがいい。

その問題点の所在も、その解決法も、それぞれに違うはずである。他国の事案を参照して、生かすことと、鵜呑みにすることは違う。

>具体的基準を設ける議論を避けるのは、解決を先送りするだけにすぎません。

ここに、それが現れていると思う。米国で基準を設けたのは、市場の理屈に基づいたからであり、日本で具体的な基準を設けないのは、官僚の事なかれ主義である。

米国の事案を基にして、我々が考えるべきは、日本での改革は、市場の論理に限定せず、包括的に議論すべきだということ。

投稿文においても、基準を定めることは両面の作用があることを示唆しているのは全く正しい。が、その後の文脈では、「基準を定めた米国は日本より一歩進んでいる」と結論付けており、やや不正確だと思う。

正確に言えば、「基準を定めることで、問題点が明確になり、その基準が本当に正しいのかどうかの包括的な議論の素地になりうる。又、そうやって、議論の末に決定された基準は、曖昧さを回避することによって恣意性を排除することができる。その分、なおのこと、包括的な議論が重要である。従って、米国は、この点においては日本より進んでいると解釈できる」とすべきだ。

私は、現在の米国の議論がどれほど日本より先んじているのかは、分からない。多少の疑問もある。実際、包括的な議論以前に、日本と同様にそもそも倫理が歪んでいるように思う。米国は基本に立ち返って、正義とは何かを問い直すべきだ。サンデルがあなたたちを待っている。


06. 2012年6月06日 12:30:53 : sgolhP60mA
慢性の腰痛で病院に言ったときにレントゲン撮られ、原因不明
原因が分かる可能性は低いのにMRIを撮られ、

数年経って別の病院で、(治すのでなく)モルヒネの処方をと言ったら
またレントゲンとMRIを取られました。MRIが特別に高い。
「無駄だからMRIはやめてくれ」と言っても、医者は「それなら先に進めない」。
結局モルヒネも効かず、元の黙阿弥だったのですが、2回ともMRIは無駄だったと、今でも思っています。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民76掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民76掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧