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それはある朝、突然やってくる 銀行「取り付け騒ぎ→預金封鎖」に備えよ これは悪夢でなく、現実だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32686
2012年06月04日(月)週刊現代 :現代ビジネス
ギリシャ→スペイン→イタリア、そして日本へ世界金融恐慌が始まった
昭和2年、日本では蔵相の失言を契機に取り付け騒ぎが発生、銀行が多数破綻する金融恐慌になった。些細なことでも、不安が人々を銀行に走らせる。たとえばそれが遠く異国の、小さなパニックでも。
■ギリシャのデフォルト
「これから世界経済、日本経済がどうなっていくか。それはひとえに、ギリシャのデフォルト(債務不履行)がどのような形で起こるかにかかっている。もしギリシャでコントロールされないデフォルトが起これば、世界経済はリセッション(不況)に入り、日本経済にも巨大なインパクトとなるだろう。(リーマン・ショックのあった)2008年後と同じくらい経済が悪くなるかもしれない。そんな最悪のシナリオがありえる状況になってきた」(ニューヨーク州立大客員教授などを歴任した知日派ジャーナリストのリチャード・カッツ氏)
「いま我々はグレイト・デプレッション(大恐慌)に入ってしまった。世界が繁栄していると思っていたのは実はバブルに過ぎず、過剰になった負債がクラッシュしたことで恐慌へ突入してしまった。最悪のシナリオは1930年代の大恐慌の完全な繰り返しである。ファシズムが台頭し、政治対立が生まれる状態だ。不況が10年も20年も続くことになるだろう」(ウェスタンシドニー大学教授のスティーブ・キーン氏)
ヨーロッパの小国の危機が、遠く日本にまで恐慌をもたらす事態が目の前に迫ってきた。
一時は沈静化していた欧州の国債不安が再炎上したことで世界同時株安が発生、日経平均株価が8400円台まで急落し、円相場もあっという間に80円割れしたのは周知のこと。やっと体勢を立て直した製造業は円高ショックに再びの悲鳴をあげ、家計も消費意欲を減退させる不況ムードが列島全土を襲っている。
ただ、いまはまだ序章。経済危機が本格化するのは「これから」というのが経済のプロたちの共通見解だ。
実はこの5月に日本をパニックが襲うことを経済専門家たちはわかっていた上、6月にさらなる危機が来るとまで言及していた。しかもそのシナリオが、日本の中枢≠ナひそかに語られていたのだから恐ろしい。
■現金引き出しに制限が
東京・霞が関の財務省。その日、省内の第3特別会議室では「国債投資家懇談会」が開催されていた。同会議は金融のプロ中のプロたちが集合、財務省職員らと膝を突き合わせて今後の国債をめぐる国内外の経済情勢を話し合うインナーサークル≠ナある。
さかのぼること約2ヵ月前、3月16日の会合では次のような発言が飛び出していたのだ。「欧州の問題は一旦終息しつつあるが、根本的な問題は解決していない。4月以降もその点は注視していく必要がある」
当時は日本経済に大打撃を与えていた超円高・株安が一服し、マーケットには「欧州問題は一段落した」「もう円高は終わりだ」と楽観ムードが蔓延していた時期。しかし、一部のプロは「4月以降=5月」に危機が再来すると予言≠オていたということになる。
実はこの会議の前日、3月15日に同じ会議室で開催された「国債市場特別参加者会合」で出席者からこんな発言が出ていたのにも注目したい。
「欧州問題についてはより大きなハードルが5月、6月に存在している」
「5月、6月にかけてはまだ昨年起こったような混乱も予想され、完全に欧州問題が終息したと言うには時期尚早だ」
5月の危機が実際に起きたことは、現実を見れば明らか。それだけではなく、6月も危ないと語られているところにポイントがある。
日本を襲う「6月危機」---それが現実味を持って語られるのには、次のような理由もある。
「いま、あるブログが市場関係者の注目を集めている。執筆したのはノーベル経済学賞受賞歴のあるプリンストン大学教授ポール・クルーグマン。氏が5月中旬に書いたニューヨーク・タイムズのブログに、6月からヨーロッパで起こるであろうシナリオが書かれているんです」(欧系投資銀行のエコノミスト)
実際に見てみると、その内容は衝撃的だ。「何人かで話し合っていて、次のような結論に落ち着いた」として、クルーグマン氏はこう綴っている。
「ギリシャはユーロから離脱、おそらく来月(編集部註・6月のこと)」
「スペインの銀行とイタリアの銀行からは巨額の資金が引き出される。銀行はドイツに資金を移動させようとするだろう」
「銀行は国外への資金の移動を禁じられ、現金引き出しが制限される可能性もある。あるいは同時にかもしれないが、銀行を破綻から救うためにECB(欧州中央銀行)が巨額融資をする」
「ドイツがイタリアとスペインに対する巨大な債権を受け入れるのに加え、戦略を大幅に変更するか」
「あるいはユーロの終わり(がやってくる)」
最後に付け加えるように、クルーグマン氏は「年単位ではなく、月単位でこれらは起こりうる」と記している。
要約すれば、ギリシャが6月にユーロを離脱することに端を発して「取り付け騒ぎ」や「預金封鎖」が発生、数ヵ月以内にユーロが崩壊する事態が起ころうとしているということ。もちろんそうなれば世界中が大パニックに陥り、「同時株安→日本経済が恐慌へ真っ逆さま」となるシナリオは誰にでも想像できるはずだ。
これは悪夢や絵空事の類ではない。海外の経済の専門家たちは口を揃えてギリシャのユーロ離脱を警戒、それが日本経済に甚大な影響を及ぼすと語っている。
■「取り付け騒ぎ」が始まった
たとえば『ザ・エコノミスト』誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏は、
「ギリシャがユーロを離脱することになれば、第二のリーマン・ショック≠フような事態が起きてもおかしくない。しかもリーマンのときは成長著しい中国が世界経済の救世主となったが、いまの中国は韓国サムスン幹部が『中国での売り上げが予想以上のスピードで下落している』と言うほど景気が失速しているから、同じような役割は期待できない。世界の中央銀行もすでに大量のお札を刷り過ぎているから、前のように大きくは動けないだろう」
と今回の危機の深さを指摘すれば、ニューヨーク大学ビジネススクール教授のジョゼフ・ファウディー氏が欧州発「世界恐慌」が日本にもたらすインパクトの大きさをこう語る。
「アメリカでは、もしギリシャがユーロから離脱したらリーマン・ライク・イベント(リーマン・ショックのような出来事)≠ェ起きると懸念されている。スペイン、ポルトガルが次の標的になり、さらにイタリアがユーロを離脱することになれば、世界経済に巨大な衝撃を与えることになる。
もちろん日本経済は影響を避けられない。まずトヨタやSONYの収益が減少し、日本の製造業が海外から収益を得られなくなる。そして景気が悪化して税収が減少、債務返済能力が落ちるから財政問題が顕在化するだろう」
大手格付け会社フィッチ・レーティングスがこのほど日本国債を格下げしたのも、こうした警戒感があってのことに違いない。
そして財政危機=国債危機が沸点≠ノ達した国では金融恐慌、つまりは自国国債を大量に保有する銀行の破綻懸念から「取り付け騒ぎ」が起こることは欧州の現実を見れば明らかだ。
たとえば、スペインでは大手行バンキアから1週間で10億ユーロ(約1000億円)を超える預金が引き出されたと地元紙が報道し、政府が火消しに躍起になったばかり。ギリシャでは5月初旬にたった1週間で7億ユーロ(約700億円)も預金が流出し、ユーロ離脱となれば「預金封鎖」まで行われることは間違いないといわれている。
ましてや日本では、国債の大半を抱え込んでいるのは国内のメガバンクだから、国債が暴落すればその経営は一瞬で吹き飛ぶ。国民が銀行の窓口に殺到して預金を引き出し、これを止めるために政府が預金封鎖をする事態があっという間に起きてしまう恐れがある。
それだけではない。
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上の図は日本が「取り付け騒ぎ→預金封鎖」に陥るリスク要因を列挙し、その相関関係を結んだものである。
見ると、トリガーを引くのはギリシャのユーロ離脱だけではなく、スペイン、イタリア、フランスなども世界恐慌を引き起こす火種≠ニなっていることがわかるだろう。
しかも、そうした各国ではいま「反緊縮」に国民が熱狂、財政再建がまったく機能していない。つまりは国債暴落の危機が高まっているのだから恐ろしい。
フランス国営放送記者のヴァンサン・ルルージュ氏が言う。
「スペインでは特に南部の州が困窮している。公務員の給料が半年間払われていないような町があり、すでに経済破綻≠オた町も散在している。公共バスや公立養護老人ホームの介護士までもがデモをやっているが、給料はもらえない惨状だ。さらにいえば、スペインの首相の給料がフランス、オランダ、イギリスなどのそれの半分ほどというところに、この国の財政の厳しさがよく表れている」
もちろん国民は反発、デモをやれば10万人規模が集まり熱狂するうえ、「スペインのある国立研究所の統計によれば、『約45万人がスーツケースに荷物をつめている』というように、国外脱出する人も急増している」(フランス『ル・ポワン』誌の記者フランソワ・ムスー氏)という。
「イタリアでは税務署の査察が厳しくなったことに反発し、税務署に火炎瓶が投げ込まれる事件などが起きている。さらに企業の社長が襲われたり、職業高校で爆破事件が起きたりと、厳しい生活に追いやられた人たちの存在を背景に治安の悪化が激しくなっている。そして先日行われた地方選挙ではついに、『反財政緊縮策、反ユーロ』を掲げる小政党が首長ポストを獲得してしまった」(前出・ルルージュ氏)
スペイン、イタリアはユーロ圏で4位、3位の経済規模を誇る巨大大国。国債が暴落すればそのインパクトはギリシャの比ではないことは言うまでもない。
■アメリカもアウト!
さらにドイツと並ぶユーロの大黒柱フランスでも「緊縮より成長」を訴えるオランドが大統領選に勝利、6月の下院選でオランド勢の勝利が見込まれていることで「フランス危機」の可能性も指摘され始めた。
現在パリに滞在、欧州のソブリン危機を調査している慶応大学教授のマッケンジー・コリン氏が言う。
「オランドの政策を見ると、お金持ちに高い税率をかけるということ以外、税収を増やせる政策が見当たらない一方で、公務員や公営住宅を増やすといった財政支出を増やすものは目白押し。しかも高い税率をかけられるお金持ちの多くが、いまスイスに移住しようとしているから、彼らから税金は取れない。このマニフェストが実行されれば、フランスが財政危機に進む危険性が高まるだろう」
こうした事態を受けて、アメリカは欧州に介入≠オ、きっちり財政再建するように忠告してきた。しかし、現地では「カネを出さないやつの言うことなど聞かない」と一蹴される始末で、アメリカが最後の砦となることも期待できない。
そもそも米国自体が欧州と同じく財政危機に瀕しており、他国を助けられる余裕がないという現実もある。金融コンサルタントのニガム・アローラ氏が言う。
「アメリカではいまフィスカル・クリフ(財政の崖)≠ニいう事態が懸念されている。今年の年末にブッシュ政権時代に始めた減税政策が期限切れとなるうえ、来年からは連邦予算の大幅削減が始まる可能性がある。同じタイミングで増税と支出カットが起きれば、消費が落ち込み、公務員が職を失うなど雇用問題も悪化する。あたかも崖っぷちに立っているかのように、アメリカ経済が危険状態になるということです」
もはや世界中が導火線で結ばれ、いずれもが暴発≠オかねない世界的危機にあるということだ。もちろん一つでも発火すれば、瞬く間に世界全土にそれが飛び火、見てきたように日本では金融危機が勃発する。戦前に日本でも「取り付け騒ぎ」が起きているが、当時とは比べものにならないくらいの阿鼻叫喚の光景が全国で広がるだろう。
そんな事態を回避すべく日本政府が活躍してくれることも期待はできない。
「野田総理が退任に追い込まれたり、選挙が行われたりすればますます政治は混乱する。さらに世界からは日本政府は結局何もできないのだと失望され、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズといった大手格付け会社が日本国債を格下げするかもしれない」(前出・トリックス氏)
自分の身を守れるのは、自分だけだ。いまから、来るべき「取り付け騒ぎ→預金封鎖」に備えておいたほうがいい。
「週刊現代」2012年6月9日号より
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