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オピニオン:
ユーロ崩壊と円高の終焉は近い=藤巻健史氏
2012年 06月 1日 11:37 JST
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藤巻健史 フジマキ・ジャパン代表取締役
私は、自他ともに認めるマーケットパーソン(市場人間)である。したがって、今から語る内容は、理論家としてではなく、実務家として培った知識や経験に基づく見解であると理解していただきたい。
<世界はまだ真の変動相場制に移行していない>
まず私の率直な問題意識を伝えれば、現在の世界の為替市場は根本的な問題を抱えており、極めて危うい状態にある。
なぜ危ういかと言えば、変動相場制が採用されていないか、もしくは機能していない国や地域が多く、為替レベルと実体経済との乖離(かいり)が発生しがちだからだ。乖離すればするほど、そのギャップというか、「おでき」は膨らみ、それが破裂したとき、マーケットや世界経済に走る衝撃のスケールも増大する。
目下の最大の懸念は「地域固定相場制」のユーロだろう。固定相場制の最大の弱点は、各国の中央銀行に独立した金利政策の放棄を強いる点にある。
経済格差のある多くの国々の間で金利政策を放棄すれば、経済運営がうまくいくはずがないのは自明の理なのに、欧州諸国は「壮大な実験」という名のもとに、失敗のリスクが高い大冒険に乗り出してしまった。詳しくは後述するが、ギリシャ問題を導火線として、ユーロは崩壊への道をたどる可能性が高いと考えている。
次に、安い通貨を武器に輸出主導で急成長を遂げた中国も、その為替制度は変動相場制に程遠い。円の高騰に伴い国力を低下させていった日本を反面教師として、実態に合わない通貨高の不利益を学習したのか、米国や国際社会がいくら切り上げを要求しても、お茶を濁す程度しか切り上げない。
人民元の水準は、今や実体経済に対してあまりに安すぎる。固定相場制維持のための資本移動規制にも限界がある。仮に中国のおできが破裂して、大きな調整が一気に進むようなことになれば、世界経済混乱の火種となるのは必定だ。
また、変動相場制を採用しているようで、実はそれが機能していない国もある。日本はその典型例だ。
為替とはそもそも国力の通信簿であり、国の力が強くなれば通貨も強くなり、弱くなれば通貨も弱くなるはずなのに、円は1985年の「プラザ合意」以降、多少のブレはあるものの、経済ファンダメンタルズに関係なく一貫して強くなっている。1981年と比べると、人民元がほぼ4分の1になったのに対して、円は2.7倍になった。まるで「円高という固定相場制」だ。企業が海外に工場を移し、日本人が職を失うのも当然だ。
このように多くの国や地域で、為替レベルが経済実態に合っておらず、おできが膨れ上がっている。ユーロ危機を見ると、それがついに破裂する瞬間が近づいている気がする。
<ユーロはあと10年持たないだろう>
では、ここでまず現在最大の火種となっているユーロについて、持論を述べておきたい。
実は私はかねてよりユーロ懐疑論者だった。1999年にユーロが導入されるまでは独マルクや仏フランなど欧州各国の通貨や国債をそれなりに取引していたが、発足後はいっさい止めた。理由は、純粋に上述したようなユーロという地域固定通貨制度が持つ構造問題に対する懸念からである。
もちろん、私は評論家ではなく、ディーラーだったので、欧州統合への過信というある種のユーフォリズムを背景に通貨ユーロがかなり強くなる前に買っておいて、いいところで売るべきだった。その点では、ディーラー失格だ。しかし、ギリシャ危機を経て、私の懸念が正しかったことは証明されたと思う。
話は脱線するが、北海道夕張市の財政問題が世間で大きくクローズアップされた頃(同市は2007年3月に財政再建団体に指定され、事実上財政破綻)、当時大学生だった息子からこう聞かれたことがある。
「東京都と夕張市には経済格差があり、同じ円という通貨を使っている。しかし、ユーロ圏とは違い、夕張市の財政問題が円の崩壊懸念につながることはない。円とユーロでは何が違うのか」と。私は、こう答えた。「夕張市が破綻しても、東京人の税金で助けることができる。財政が一つだからだ。しかし、国が違う(=財政が一緒ではない)ユーロ圏ではそれは無理だ」。
今まさにこの問題がユーロを直撃している。ドイツとギリシャが一つの国ならば、ギリシャの財政問題がユーロの崩壊懸念にまではつながらない。しかし、そうではないから問題なのだ。
私の予測に反して、ユーロ圏が財政まで一つに統合すれば、ユーロ崩壊はないだろうが、本当にそんなことが可能だとは思えない。となれば、率直に言って、現在の体制のままであと10年ユーロが持続することは難しいだろう。むろん、その過程では、ユーロ中核国からなる「ティア1」と、出たり入ったりするトレーディングパートナー的な位置づけの「ティア2」からなる二層構造への移行が図られるなど弥縫(びほう)策も模索されるかもしれないが、最終的には持ちこたえられないだろう。
当然、ユーロ崩壊は、とてつもない衝撃とストレスをマーケットや世界経済に与えることになると予想される。1971年のニクソン・ショック(金ドル交換停止など)をも凌ぐ混乱をもたらすのでないか。
ただ、長い目で見れば、ユーロ圏各国とも自国通貨の復活によって、景気が弱くなれば通貨が安くなり景気を押し上げる、逆に景気が過熱すれば通貨が高くなり景気を押し下げるといった自国経済の自動安定化装置を取り戻すことができるわけで、得策であるはずだ。
むろん、観光業以外にたいした産業のないギリシャの場合、ユーロから自国通貨ドラクマに切り替えたときの打撃は甚大だろう。ドラクマの価値が急落し、ハイパーインフレに陥り、欧州の最貧国へと転げ落ちるのは必定だ。しかし、歳月を経て、やがては通貨安を武器に頼みの綱の観光業などが牽引し経済が復活していくはずだ。その結果、ドラクマの価値も上がっていく。市場原理とは、そういうものである。
<円高という固定相場制の終焉>
さて、おできの問題は、日本も無縁ではない。一見、変動相場制を採用しているように見えて、実は機能していない国の典型が日本であると先ほど述べた。実際、多くの外国人が指摘するように、日本こそ世界最大の社会主義国家であり、実質的には固定相場制の国なのである。そうでなければ、経済ファンダメンタルズと乖離した長期円高トレンドの持続は説明がつかない。
普通、経済が下降して魅力的な投資案件が国内から失われれば、資金はより魅力ある海外に流れるはずだ。変動相場制が機能していれば、そこで円安に切り替わったはずである。ところが、それが起きなかった。
為替が国力を反映して動かないのは、この国が真の資本主義国家ではないからだ。資本主義が徹底されていたら、超低金利の日本国債にこれほど投資が集まり続けるわけがない。預かったお金の8割を国債で運用している実質国営のゆうちょ銀行の存在に象徴されるように、市場原理が無視され国内に資金が滞留したことが、実体経済から乖離した円高の原因なのである。
しかし、このおできも、もはやこれ以上の膨張は許されまい。どこかのタイミングで、事の深刻さが強く認識され、国債が暴落し、急激な円安に転じる可能性が高いと思う。
しかし、繰り返すが、長い目で見れば、それは悪い話ではない。円安が進めば工場も戻ってくるし、観光などサービス業の国際競争力も回復する。魅力的な投資物件も生まれ、ハードランディング後に逃げ出した資金も再び日本に戻ってくるだろう。そしてその結果、今度は円高にシフトする。市場原理が偉大であるゆえんだ。
なお、最後に補足すれば、私は20年後もドルは世界の基軸通貨であり続けると考えている。輪転機を回すだけで世界の富を買えるという特別の立場を米国が手放すはずがない。
ドル凋落の根拠として、貿易赤字(経常赤字)と財政赤字の「双子の赤字」問題に言及する人が多いが、それは実は多くの先進諸国に当てはまる論理だ。日本もすぐにではないにせよ、やがては慢性的な経常赤字に転落する可能性がある。ドルだけが弱くなる特別の理由はないのだ。ドル基軸通貨体制の崩壊論を説くよりも、むしろ多くの通貨が弱くなる、つまり世界的なインフレの足音が近づいていると捉えるべきなのではないだろうか。
いずれにせよ、20年後の為替市場は、各地でおできの破裂を経て、真の意味での変動相場制に移行していると思う。そうなると、世界経済が不安定化するとの見方も出てくるかもしれないが、私の見解はその逆だ。先物、オプションなど、為替のデリバティブが大いに発達し、個人や企業がヘッジ手段としてデリバティブを多用するようになり、より効率的な変動相場制が確立するとみている。そうした仕組みは、必ずや世界経済の安定化に資するはずだ。
(6月1日 ロイター)
*藤巻健史氏は、フジマキ・ジャパン代表取締役。米モルガン銀行在籍時、世界トップクラスのディーラーとして名をはせ、1995年に当時外銀では日本人唯一となる東京支店長に抜擢された。2000年に退社。ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めた経験もある。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4XBS66JTSEA01.html
JPモルガンの「くじら」、10年から怪物並みリスク−関係者
6月1日(ブルームバーグ):大規模な賭けっぷりで「ロンドンの鯨(くじら)」の異名を取ったJPモルガン・チェースのトレーダー、ブルーノ・イクシル氏は、少なくとも2010年から既に怪物並みの巨大なリスクを取っていたことが事情に詳しい関係者の話で明らかになった。
この関係者が匿名を条件に述べたところによると、今年に入ってリスクを膨らませる前も、同氏のバリュー・アット・リスク(VAR、1日当たりに生じ得る損失の最大額)は通常3000万−4000万ドル(約23億5000万−31億4000万円)だった。時には6000万ドル(約47億1000万円)に達する日もあったという。この額は従業員2万6000人の同行投資銀行部門全体のVARとほぼ同水準。
イクシル氏がチーフ・インベストメント・オフィスで行っていたこの巨大リスクテークについて、幹部がどのくらい前から知っていたかを当局は調査している。焦点の1つはイクシル氏のVARを算出する数式がなぜ今年初めになって変更されたかだという。この変更により、報告されるリスク額は半分になった。JPモルガンに近い関係者の1人は、2011年終わりごろに行われた内部分析の後に、リスク管理担当の最上級幹部によって変更が承認されたと述べた。ほぼ同じ時期に、そのような決定に通常携わっていた管理職6人が別の業務に移ったという。
JPモルガンのリスク管理手法を統括していたスティーブ・アレン氏は「あれほど大きな影響のある変更なら、リスク管理部門の最上級幹部レベルでの合意が必要だったはずだ」と話した。同氏は04年にJPモルガンを退社している。「あれほど重大な変更を1人のリスク管理者の判断で行うことはあり得ない」と同氏は付け加えた。
原題:JPMorgan’s Iksil Said to Take Whale-Size Risks YearsBefore Loss(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Bradley Keoun bkeoun@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:David Scheer dscheer@bloomberg.net;Rick Green rgreen18@bloomberg.net
更新日時: 2012/06/01 15:11 JST
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