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http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/2012/1201.html2
昨日の金市場では、IMF統計でフィリピンが今年3月に32.1トンもの金を購入していたことが確認され、金価格反発要因の一つとなった。既に、昨年から新興国が公的金購入を増やし、外貨準備に組み入れる傾向が顕著だ。以下、表に主たる新興国金購入推移をまとめてみた。(公的金保有量は各国中央銀行が原則IMFへ報告することになっている。自己申告であり、中国など未申告が噂される国もある。)
2011年1月から2012年3月までの国別公的金購入量(単位:トン)
メキシコ 115.4 (うち今年1−3月で16.6)
ロシア 114.5 (同 20.4)
トルコ 93.6 (同 14.3)
タイ 52.9 ( − )
韓国 40.0 ( − )
フィリピン 36.9 (同 32.1)
カザフスタン 28.9 (同 14.1)
重量表示(トン)なのでピンとこない読者もいるだろうが、年間金生産量が2800トン程度の市場なので100トンのオーダーは決して少なくない。昨年は公的金購入総量が455トンに達している。
ここに挙げた国々は、外貨準備の通貨の入れ替えの一環として、ドル、ユーロの比率を減らし、金という「無国籍通貨」の比率を高めていると思われる。
そもそも、公的金購入のデリケートな側面は、金を買うという行為が「米ドルへの不信任投票」と見做されることだ。(最近はユーロへの不信任投票ともなりつつあるが。)通貨の「原点回帰現象」と筆者は表現している。
しかも、メキシコ、タイ、韓国、フィリピンなどはいずれも親米国の範疇に入る国々だ。米国政府としては、ロシア・中国が金準備増強に走っても「想定内」であろうが、「友好国」から「不信任投票」を突き付けられるとなると、心中穏やかならぬものがあろう。
実は、米国内でも州レベルで連邦政府への「通貨不信任投票」が突き付けられている。昨年は、ユタ州が金貨銀貨を法定通貨として認める法律を可決し、他11週も追随している。テキサスの大学基金は金地金現物を20トンも現引きして購入保管した。
身内からも「不信任投票」をちらつかされているわけだ。
足元では投資マネーが米国債へ流入中だ。米国10年債の利回りは1.78%まで低下して、米国債の「日本化」とも言われる。しかし、累積財政赤字が連邦債務上限法の上限まで達している国の発行する借金証文をいつまで持ち続けることが出来るか、はなはだ覚束ない。そもそも、アンクル・サム(米国をオジサンに例えた俗称)に10年間、金利1.78%でおカネを貸すような投資行動には誰しもが不安感を感じるはずだ。それでも米国債に逃避するのは「安全性への逃避」というより「流動性への逃避」に他ならない。
冒頭に挙げた新興国も、外貨準備で米国債を抱え込み、更に、ドルからユーロに乗り換えた途端に欧州債務危機に遭遇。そこで、日本国債や「無国籍通貨」金に駆け込むことになる。しかし、ドル・ユーロの流動性に比し、著しく限定的な市場だ。それでも、公的金購入はIMFに報告するので、ドルへの不信感を表明するデモンストレーション効果はある。外貨準備の内訳としてドルやユーロの保有高をIMFへ報告することはないので、公的金保有統計の透明性が目立つのだ。
なお、日本は、公的金保有量を一切増やしていない。米国からみれば「優等生」だ。当局としても「トモダチ作戦」のパートナーに不信任投票突き付けることは憚られるのだろう。
さて、このような中銀購入という材料は、過去完了形の話でもあり、すぐに強く作用する材料ではない。昨晩の場合は、下げを食い止めた程度で受け止めておくべき。しかし、地味だが、ジワリ効くこともたしか。いざ本格反転となると殊の外囃される材料となろう。(以下略)
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