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Financial Times
ユーロ圏の銀行から資金を引き揚げるファンドスペイン情勢への懸念が高まり、資産売却を急ぐ動きも
2012.05.30(水)
ユーロ圏の金融市場がまた荒れている。スペインの株式市場は9年ぶりの安値に沈み、スペイン国債の利回りは急上昇している。そして同じくスペインの大手銀行の一角は、百億ユーロ超の資金を投じる国有化計画が政府から発表された後、株価を30%近く下げている。
市場のボラティリティー(変動性)が非常に高く、不透明感も強いことを受けて、ファンドマネジャーたちはユーロ時代の「周縁国」への投資を急速に減らしたと話している。また、銀行への投資についても投資先をかなり厳しく選別しているという。
最大の不安材料は「伝染」
彼らが警戒しているのはスペインだけではない。ギリシャは政治が行き詰まり、ユーロを早々に離脱する公算もあることから、ユーロ圏のほかの国に伝染する恐れこそが最大の不安材料だとストラテジストたちは述べている。
「もしギリシャがユーロを離脱したら何が起こるか、誰にも分からない。ただ、本当の問題はギリシャじゃない。その1段階、2段階先が問題だ」。ケルンキャピタルの最高投資責任者(CIO)、アンドリュー・ジャクソン氏はこう指摘する。
嵐の中心はスペインの銀行システムだ。5月25日には大手銀行バンキアに190億ユーロの資本が注入されるとの報道が流れたが、多くのファンドマネジャーから見ればこのニュースは、価値の下がった不動産ポートフォリオに対する銀行の引当金は過少で、政府には過大な負担がのしかかる恐れがあるとの懸念を際立たせたにすぎなかった。
ファンドマネジャーたちがそう考える背景には、国債を発行する政府と銀行との結びつきがある。欧州のとある大手資産運用会社は、スペイン第2位の銀行バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア(BBVA)の株式をここ数週間ですべて売却した。伝染の懸念があることと、スペインをギリシャの混乱からしっかり守ってくれそうな防火壁が存在しないことがその理由だ。
ユーロ圏周縁国の企業の株式への投資をこの1年間ずっと減らしてきた同社のポートフォリオマネジャーは、本社が違う国にあったらBBVAは間違いなく「買い」だと話している。
しかし、スペインには経営難に陥っているカハ(貯蓄銀行)が複数あり、政府がそれらの買収を大手銀行に強制するのではとの懸念があるため、これを大きなリスクだと考えて大手銀行株を売却しているという。
また別のポートフォリオマネジャーは、BBVAやサンタンデールより信用力で劣ると考えられるスペインの銘柄はいずれも魅力がないと述べている。ただ、債券市場の取引が非常に細っており、債券を売りたくても売れない状況にある投資家もいるという。
株式や債券のポートフォリオのリスクを減らしつつあると話すファンドマネジャーもいる。欧州では先日、欧州中央銀行(ECB)が期間3年の低利融資というやり方でユーロ圏の銀行システムに1兆ユーロの資金を注入するのに成功したが、それでも彼らはユーロ圏の銀行への投資を減らしている。
あるファンドは、しばらく前に周縁国の銀行への投資を全額引き揚げ、現在は中核国の銀行への投資が少量あるだけで、それもオランダのラボバンクなど、安定感のある銘柄に的を絞っていると言う。
ドイツの銀行にもかかるプレッシャー
プレッシャーはドイツの銀行にも及んでおり、一部の資産運用会社は、危機がベルリンにも飛び火しかねないと警告を発している。インベステック・アセット・マネジメントの債券部門の責任者、ジョン・ストップフォード氏はこう語る。「危機の拡大を防ぐためにドイツが資金を出し始めなければならないかもしれない。そうなると、偶発負債が計上される恐れがある」
「全般的に言えば、我々はリスク回避的な姿勢を維持している。状況は悪い方向に変化し続けており、ブレーキを踏んで問題解決に取り組む政治的な意思があるのかどうかもはっきりしないからだ。したがって、ユーロ圏の金融機関への投資は避けている」とストップフォード氏は付け加える。
そうした懸念が的外れでないことは、スペインとイタリアの大手銀行の株価からもうかがえる。スペインの最大手サンタンデールと、それに続くBBVAの株価は3月半ばから約30%下落している。イタリアでも最大手ウニクレディトは約40%、第2位のインテサ・サンパオロは35%値を下げている。
フランスの銀行の中では、クレディ・アグリコルがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、デフォルトに備える保険の一種)や社債の利回りで打撃を受けている。同社は傘下のエンポリキ銀行を通じ、ギリシャで事業を展開しているからだ。
英国の大手金融機関に勤めるファンドマネジャーは言う。「個々の銀行がどの程度強いかはこの際問題じゃない。ユーロ圏の危機が深刻化すれば銀行の株価は下がるだろうし、銀行の債券の利回りは上昇するだろう。ユーロ圏の金融機関への投資は非常にリスキーだ。避けた方がいい」
格付け会社フィッチによれば、米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)はこの1年間でユーロ圏の銀行への投資残高を63%減らしている。またレポ取引(銀行が証券を担保に差し入れて短期資金を借りる取引)など、担保付きの債権の保有を大幅に増やしているという。
しかし、楽観的な見方をする向きもある。欧州第2位の規模を誇る資産運用会社アムンディでグローバル債券部門の代表を務めるエリック・ブラール氏は、1種類の資産クラスに偏らない分散型のポートフォリオにすることが大事だと話している。「我々のシナリオでは、ユーロ圏の解体を想定していない。だが用心はしており、事業を国際的に多角化した企業への投資を増やしている」
アムンディは金融機関への投資を続けているが、欧州北部の銀行や周縁国でナンバーワンの座にある銀行に的を絞っているという。
「危機になっても苦しまない、あるいは比較的苦しまない銘柄を選んでいる・・・イタリアからは撤退していないし、スペインへの投資も限定的だが続けている。ただギリシャ、ポルトガル、アイルランドからは手を引いた」とブラール氏は話している。
投資のチャンスも
ケルンキャピタルのジャクソン氏は、投資の機会は存在しており、金融機関や事業会社の劣後債や、米国と欧州の資産の差異をピンポイントで狙っていると述べている。
「投資家のユニバースは様々で、同じ出来事にもいろいろな反応を見せるから、そこで資産価値に差異が生じる。フランスの銀行が発行したドル建て債券などは、その一例かもしれない」
By Mary Watkins and David Oakley
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