02. 2012年6月01日 08:05:37
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土壌水分の乾燥でコーンの生育はどうなる?05月31日更新 米国中西部では土壌水分の乾燥が進んでいます。大部分の地域で乾燥〜不足気味という状況が50%を越えており、最も乾燥が進んでいるミズーリ州では実に77%に相当する地域で土壌水分が乾燥していることが報告されているほか、中西部の中でもコーン生育の中心地となるインディアナ州では71%に相当する地域の土壌水分が乾燥した状況となっています。 このように土壌水分の乾燥が進行すれば、通常は同地域でのコーンの生育低下に対する懸念が強まります。というのも、米国は世界最大のコーン生産地で、世界生産の約40%に当たる量を生産しているほか、輸出量は世界輸出の約50〜60%を占めているだけに、同国の生産動向が世界のコーン需給に大きく影響を与えるからです。 米国中西部の土壌水分は前週から今週にかけて進行していますが、米国農務省の発表ではこの間にコーンの作柄が低下していることが明らかになっています。例えば、良〜優の状態は前週は77%だったものの、今週は良、優、それぞれの状態が低下した結果、良〜優の状態は72%へと低下しました。土壌水分の乾燥がコーン作柄に大きく影響を与えているのです。 とはいえ、現時点では今年に関してはこの土壌水分の低下がコーンの生育に与える影響は比較的軽微なものにとどまるものと考えられます。というのも、例年よりも早いペースで生育が進行しているからです。 早いペースで作付けが進行することが、コーン生産においてどのようなメリットをもたらすかと言うと、まず、夏場の天候リスクが低下することが挙げられます。 コーンの生育において最も重要な時期はタッセリング(開花)〜受粉の時期です。通常、7月上旬前後〜7月後半にかけてに迎えるこのタッセリング〜受粉にかけての時期の状況によってその年の生産量が左右されることになります。 早いペースで作付が進行していれば、熱波が広がりストレスを受けるリスクが高まる7月上旬前後〜7月後半に先駆けて開花することができ、その結果として豊作に結びつく可能性が強まる、と考えられるのです。 また、早いペースで作付けが行われていれば、作付け初期段階で天候不良に見舞われた場合であっても、再作付けが可能というメリットもあります。 すでに5月末を迎えていますが、遺伝子組み換え技術の向上もあって、近年はイールドの低下は避けられないとはいえ、6月半ばにコーンの作付けが行われるケースも見られているほか、作付けが6月半ばまでずれ込んでも事前予測程度の生産量を維持するケースも出てきています。 米国農務省が現地29日に発表したところによると、5月第3週時点での発芽率は92%に達しています。これは生産量が120億ブッシェルを大きく上抜き、当時としては過去最大となった生産量を記録した2007〜08年度と同じペースです。 このように早いペースで生育が進行し、その結果として天候リスクが低下している状況にあるコーンですが、乾燥が続くようであればコーン生産量がこれまでに予測されている過去最大となる147億9,000万ブッシェルを達成する可能性が弱まることも見込まれます。 例えば、同様に4月から5月にかけて天候に恵まれて順調に生育が進行し、7月の早い段階で受粉期を迎えた2010〜11年度の場合、収穫も平年より早く進行したにもかかわらず、最終的な生産量は9月以降に大幅に修正されています。 その原因としては作付け前の施肥が十分でなかったこと、遺伝子組み換え種の新種が予定通りのイールドを達成できなかったこと、8月以降の熱波によるストレス、などが挙げられています。 とはいえ、仮にイールドが大きく低下したとしても過去最大の作付面積を記録していた前年度を6%と大きく上回る作付面積の拡大を見せている今年度の場合、2003年以来の低水準である前年度並の水準までイールドが低下しても生産量は、過去最大規模である2007〜08年、2009〜10年度の130億ブッシェル前後を実現することが見込まれます。 まだ生育初期にあり、乾燥した天候がどの程度続くのか注意する必要があるとはいえ、現段階では、米国のコーン生産量は依然として豊作となる可能性が高いと思われます。 【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社日本先物情報ネットワークに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社日本先物情報ネットワークの許可無しに転用、複製、複写することはできません。 中央大学法学部卒、英国留学後 (株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。 商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。 1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。 |