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2012年05月29日 12:23 pm JST
「世界最大の債権国」の格下げ
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投稿者 森佳子
タグ: 世界経済, 外国為替市場, 経済, 経済政策, 通貨政策, 金融危機, 金融市場, フィッチ, 債券国, 債務国, 格下げ, 格付機関
財務省が22日に発表した2011年末の対外資産負債残高によると、日本の企業、政府、個人が海外に保有する資産から負債を差し引いた「対外純資産残高」は2011年末に253兆円となり、21年連続で世界最大の債権国となった。GDP比では54%だった。
第2位は中国で138兆円、第3位がドイツで94兆円と続く。
同日、大手格付け会社フィッチ・レーティングスは日本国債の格付け(発行体デフォルト格付け:IDR)を「ダブルAマイナス」から1段階引き下げ「シングルAプラス」にしたと発表。
見通しはネガティブ。国債発行に歯止めが掛からず、財政健全化に向けた取り組みが切迫感に欠け、その実行は「政治リスクにさらされている」からだという。確かに、格付け会社に指摘されるまでもなく政府債務の規模は危険水域に達している。
一方で、市場の反応は一時的だった。市場が真面目に反応しなかった理由は、欧米大手格付け会社が1990年代から金融市場で果たしてきた役割や、その立ち位置に対する根強い不信感があるからではないだろうか。
為替市場では格付け会社による格下げ発表の前に、本邦勢には理由が分からないまま、海外ファンドや投資銀行が円売りを仕掛けていたというエピソードが複数回ある。リーマンショックを経て、欧米諸国では格付け会社に対する規制を導入する機運が高まっているが、その実行もまた「政治リスクにさらされている」。
格付けは企業や国が最悪の事業環境に陥った場合の債務返済能力を測る目安として使われる。格下げは債務返済能力の低下を表すが、世界一の債権国の債務返済能力低下というのはどのような事態なのか。何らかの理由で対外資産を売却し債務返済に充当する事が困難な状況を想定しているのか。発表文からは判明しない。
債権国を鏡に映せば、債務国の顔が並んでいる。対外純債務国はダントツで米国がトップで、2010年末で201兆円の純債務を抱える。第2位がイタリアの34兆円、第3位が英国の24兆円。ちなみに、アメリカは「ダブルAプラス」(S&P)で、英国は「トリプルA」である。
債権国と債務国はストックの概念なので、フロー面では黒字国と赤字国になる。黒字国と赤字国の不均衡が拡大すると、金融市場が不安定になりやすいので、G20などの国際会議の場でその是正(不均衡の縮小)が喫緊の課題であるとの認識が少なくとも最近までは共有されてきた。
しかし、世界金融危機が起こり、欧米諸国が自国の問題で手一杯となり、不均衡是正の機運は大きく後退した。
そもそも変動相場制は不均衡是正の自動調整機能を持っていた。黒字国の通貨が上昇することで輸出抑制作用が働き、赤字国の通貨が下落することで輸入抑制作用が働くという均衡回復機能だ。
しかし、日本や中国を筆頭にアジアの黒字国やスイスは介入で自国通貨高を積極的に阻止し、黒字を維持する政策をとっている。一方、赤字国の米国は、減税措置等で消費(輸入)と赤字を維持・拡大する政策にまい進している。
為替相場の不均衡調整機能を否定した世界では、今後も膨張と破裂が繰り返され、不安定が続くだろう。そのなかで金融界も次第に体力が低下していくのではないか。
(写真/ロイター)
9件のコメント
2012年05月29日
5:51 pm JST
変動相場制に不均衡調整機能があると考えている時点で誤り。貿易黒字が拡大すれば通貨高になる、というのが成り立つためにはどのような仮定が必要であるか、その仮定は現実と整合性があるかを考えてから口を開くべき。
- 投稿者 MT
2012年05月29日
5:02 pm JST
債権の内容には直接関係ありませんが,最近FRBのバーナンキ議長のコメント等が無いような気がしますが,淋しい限りであります.心配しております.何か健康上の問題でもあったのでしょうか?米国株(NYD)も下がっています.バーナンキ議長のコメント等がないと世界経済が停滞状態に陥るような気分になります..是非是非またまた世界経済等の多量のコメントを発進していただき世界経済上昇ムードに推進促進されん事を強く希望致しております.
- 投稿者 Hope
2012年05月29日
4:45 pm JST
皮肉なことに、経済の面では、既に世界統合がなされている、と言うことなのだろうか。
少なくとも1国の都合により、債権の売却を債務にあてる、と言った単純な計算は成り立たなくなっているのが現状だ。
各国政府の指導者の方々には、この複雑な連立多元方程式の適切な解を導き出して欲しい。
- 投稿者 jonasanswift
2012年05月29日
2:31 pm JST
格付け下がったとはいえ、長期金利のほうが注目されてしまうなら、何も変わらない。むしろ日本は消費税率に一段の余裕があるため、円高にすぐ持ってかれてしまう。こんな状況下で消費税upをしたなら、海外から見ればもってこいの円高材料である。そう考えると、野田政権はほんと、どうかしている。むしろ、日銀法改正とか、外債購入に踏み切れる体制を整え、円高圧力をかわす体制を整えたうえでの、消費税導入議論にしてもらいたい。
- 投稿者 塚田 護
2012年05月29日
2:17 pm JST
日本国債は、ほとんどが国内で保有され、対外債権も多いから、しばらくは問題ないという奴が多い。しかしそれは甘い。富裕層や企業への課税を増やせば、企業や富裕層が海外に移転するだけでなく、オフショア市場にマネーは消えていく。庶民だけで現在の日本の負債を返済するのは不可能である。
アンバランスは、マトモな金融機関を苦しめるが、オフショア市場にはより多くのマネーが集まるり、栄える。
国際通貨ドルの恩恵もあり、アメリカの赤字の深刻度は低い。ドルを刷ればいいんだから。問題は欧州であり、ユーロ崩壊の可能性は高い。EUが金融取引税を課せば、シティのユーロ市場が打撃を受け、イギリスは困るが、オフショア市場が縮小し、ある程度は安定に寄与する。
結局、タックスヘイブン的なすべての金融を規制する事が、世界の安定の一歩のはずだけど、それは非常に難しい。
- 投稿者 ちょっと一言
2012年05月29日
1:50 pm JST
偏見私見。国内資産と国外資産から1000兆債務でも、日本は債務国ではないという考え方について。
日本がデフォルトする直前、企業・政府・国民はリトバリをする。さて、海外資産を短期間にどれだけ還流さすことが出来るか、実務から見れば、海外口座の閉鎖又は制限はありえる話だ。また、リトバリが短期に集中すれば、インフレを加速させてしますことになる。ここで財源目減りが起きる。結論として、国際返済能力は半分にも届かないと見るのが、自然では二だろうか?また、国内総資産はGDPの担保となるが、1000兆の債務の担保とはならない。これは、償還財源としての換金性がないことから言える。逆に国内総資産の維持費が債務元金に組み入れられるという事実に注意するべきだ。
資産は債務の償還財源になるというのは、いささか考え直した方が良いのはないだろうか?物々交換であれば話は違うが・・・
- 投稿者 田邊
2012年05月29日
1:35 pm JST
対外純資産253兆円のうち、約100兆円が外貨準備金であると指摘されていますね。
外貨準備金は政府(日銀)が債券を発行して資金を吸い上げたものをドル転して主として米国債に投資しているはずです。
外貨準備金特別会計の為替差損が何10兆円に及んでいるという指摘もあります。
つまり、純資産の253兆円のうち、100兆円は本来負債であり、それには更に多分40兆円の為替差損があるはずで、本当の純資産は100兆円ちょっとではないでしょうか?
そのレベルで、本当に世界一の債権国なのかを議論すべきだと思います。
形式的な数値ではなく、実質論で議論してこそ、このコラムの価値も上がるというものでしょう。
- 投稿者 gonchan
2012年05月29日
1:29 pm JST
偏見私見。いや、本当にいいテーマだ。脱帽!
対外資産と国債格付けには、原則的に関係ないと思う。
国債格付けには、あくまでGDPとプライマリーバランスが第一義である。外国の資産があってもなくても関係ない。
この論旨は、海外資産は国債の健全性つまり、返済原資となり得ることから、日本国債の償還度は十分完補されているにも拘らず、格下げされたことはおかしいのではないかというものだが。
日本国債格下げの問題は、国債金利の耐久性にある。つまり、上昇の不安要素とボリュームと考えたらよい。日本財政が1000兆の長期債務から、どれぐらいの金利上昇に耐えうるかという視点だ。また、その支払金利と海外資産の受取金利とのバランスかな。
日本の1000兆債務は40年国債を最長とすれば、金利は40年で一度更新されることになる。したがって、今の低金利状態は最長あと40年しかもたないということになる。支払金利増加という新たな財政負担は、どの国より膨大だ。そこに、GDPの頭打ち状態、折り返しが確実視されることから、既債の借換枠も維持し切れないと見られてもおかしくはない。デフレ脱却は構わないが、日銀のゼロ金利政策は、焦点を合わしたものといえる。しかしその政策維持もデフレ脱却で難しくなってきた。
これからの日本は国債金利上昇期に突入することになるが、私たちはどれほどの金利抑制策を持ち合わせているのだろうか?
寝ている金利を起こしたのは、誰でもない私たち国民だ。
だから、格付けは警鐘を鳴らしたと思う。
- 投稿者 田邊
2012年05月29日
1:05 pm JST
面白い論調ですよね。
そもそもソブリン各付けは、勝手格付けです。格付け会社は、格付けする事で金貰っての生業です。でもソブリン格付けには金出ません。日本だけでなく、他の国も金出しません。
当たろうと外れようと、関係ないのです。でもこれでCDSは影響されて、それをリスクヘッジと考えると国債の利回りは上がる筈なのです。しかし現実には、CDSと国債利回りに乖離があり、影響を受けません。
為替まで、日本の格付けで、円安が長続きした試しがないとみんな思ってます。結局、日本のソブリン格付けは、何にも影響を与えません。
元々、ソブリン格付けはおかしい格付けです。金借りている国が高くて、金貸している国が低いのですが、それでもみんな不思議に思わないのが、これ又不思議です。
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