http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/359.html
Tweet |
ヨーロッパの混迷が火種となって、世界同時株安が発生。NYダウや日経平均が数ヵ月ぶりの安値に落ちた〔PHOTO〕gettyimages
ヨーロッパ発「世界恐慌」の可能性を読みきる 世界同時「株安」これから起きること
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32645
2012年05月28日(月)週刊現代 :現代ビジネス
欧州の財政問題は根が深い。長時間かけての治療が必要なのに、途中で疲れた政府と国民が逃げ出し始めた。投機筋は見逃さず、世界同時株安を演出する。恐慌で大儲けする奴らが、再び動き始めた。
■巨大銀行が破綻
2008年に世界を襲った大恐慌は、たった一つの金融機関、リーマン・ブラザーズの破綻が引き起こしたことは記憶に新しい。昨年は欧州で金融危機が勃発すると、フランス・ベルギー系大手銀行のデクシア、米証券大手のMFグローバルが立て続けに破綻≠オ、「第2のリーマン・ショックが幕を開ける」と世界中が震え上がった。
一時は沈静ムードになった金融不安だが、いま再びその猛威が牙をむき始めた。マーケットに兆候が出ており、値が大きいほど企業の・倒産危険度・が高いとされるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の値を見ると、金融機関のそれが急上昇しているのだ。BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏が言う。
「ドイツ銀行、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)などの欧州主要金融機関が同じように上昇カーブを描いており、まるで金融危機の様相を呈している。中でも高いのがスペインのサンタンデール銀行やイタリアのウニクレディトといった金融機関。いずれも巨大金融機関だから、このうちひとつでもデフォルト(債務不履行)すれば、リーマン・ショック級のインパクトになることは間違いない」
時を同じくして、米国発で・金融ショック・のニュースが駆け巡った。世界でもっとも信頼できるといわれていたJPモルガン・チェースが、トレードの失敗で約20億ドル(約1600億円)という巨額損失(評価損)を出したことが明らかになったのだ。
「このトレーダーは欧州危機が収まると儲かるほうにベット(賭け)≠していたが、これが裏目に出て大負けをくらったといわれる。事実なら、プロ中のプロでさえ、欧州危機の実態を読めなかったことになる。これほどまでの額はないにしても、ほかにも欧州復活≠フ側に投資していた米系金融機関が出てくる可能性は否定できない」(投資コンサルタント)
いまウォール街では、年間に数十億円という巨額報酬を得ていた著名トレーダーたちが続々と会社を去っているという。金融規制によって大手金融機関ではビッグ・ディール(高額取引)ができないからというのが主な理由だが、一部では「自分の会社が危ないと思って、勝ち逃げ≠オようとしているのでは」といった声も聞こえてくる。
「JPモルガンの巨額損失問題の影響が本格的に出てくるのはこれからだ。米国はこれをきっかけに金融規制をさらに強化する方向に進むから、金融機関にとってはリスクを取って収益を得る機会が減ってしまう。結果、貸し渋りが横行し、景気を一気に冷え込ませる恐れが出てきた」(みずほ総研シニアエコノミストの山本康雄氏)
いま再びの「金融危機→世界恐慌」の悪夢が眼前に迫ってきたのだ。
■取り付け騒ぎ、預金封鎖
背景にあるのは欧州危機の再炎上=Bトリガーを引いたのは、「欧州の厄介者」ギリシャだ。東京福祉大学大学院教授の水谷研治氏が言う。
「ギリシャはこれまで大きな財政赤字をつくることで経済を発展させ、国民は豊かな生活を享受してきた。ただ借金を返さなければいけない段になると、年金カットやリストラで国民は苦しい生活を強いられた。結果、『もうこんな状態は耐えられない』として借金の返済を拒もうとしている。そして5月に行われた総選挙で緊縮財政に反対する野党に国民がこぞって投票してしまった」
マーケットはこれを「ギリシャが再びデフォルトする」と警戒して株を投げ売り、世界同時株安を引き起こした。それでもギリシャ人はどんなに他人に迷惑をかけてもお構いなしだからたちが悪い。最近ギリシャを視察したというマーケット・アナリストの豊島逸夫氏が語る。
「ユーロ圏17ヵ国がギリシャの国債がデフォルトしたらまずいということで資金支援をした際、ギリシャの新聞には『ギリシャの粘り勝ち』という見出しが並んでいた。借金を自力で返さなくても、みんなが助けてくれるというゴネ得精神≠ェ国中に蔓延している。
しかも、ギリシャを助けるためにカネを大量に出してあげているのはドイツだが、ギリシャ人はナチス・ドイツへの歴史感情もあって、ドイツに対してありがたみをひとつも感じていない。ドイツ首相のメルケルがカネを出す代わりに財政を切りつめて借金をちゃんと返せと言っていることに怒って、『メルケルは私たちを殺す気だ』『メルケルのせいで月給5万円の生活になっちまった』などと平気で言う。瀬戸際に追いこまれ、もはや思考停止した国としかいいようがない」
政府も国民と似たり寄ったりで、ギリシャでは緊縮派と反緊縮派の連立政権が模索されたが、これが失敗。6月に再選挙が行われることになり、ギリシャ・ショックへの警戒感が日に日に高まっている。
「この選挙で反緊縮派が政権を取れば、財政カットの内容が大幅に見直される可能性がある。状況によっては財政再建を前提に資金供給してきたECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)などからのカネが止まり、一気に全面的なデフォルトが起きて、ギリシャ国内で預金封鎖などが発生する事態も考えられます」(クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏)
そうなれば次はイタリア、スペインが危ないとマーケットが判断、一気に欧州売り浴びせが始まることは想像に難くない。
さらに恐ろしいのは、ギリシャ人と同じ借金疲れ∞ゴネ得精神≠ェユーロの超大国フランスで起きていること。財政緊縮より成長をと訴えたオランド氏が大統領選挙に勝利、6月に予定されている議会選挙でもオランド氏率いる社会党が勝つといわれているのだ。
「これで欧州は新たな危機を抱えてしまった。オランドが主張する『成長』路線に欧州全体が歩み寄りを見せ始めているからだ。オランドが考える成長とは『公務員を増やし、住宅を建設する』という内容。これでは持続的な成長などできるわけもなく、財政再建と経済成長の両立もできない。
欧州の国債市場は将来的に新たなリスクを抱えてしまった。少し前までマーケットでは欧州が落ち着いて株価が上がるといわれていたが、そんな楽観シナリオはありえなくなった」(アセットベストパートナーズ代表の中原圭介氏)
■次々にデフォルト
実はユーロのもう一つの超大国ドイツでも厳しい財政規律を訴えるメルケルへの反発が国内で浮上、ドイツ最大人口州のノルトライン・ウェストファーレン州議会選で、メルケル首相率いる国政与党が野党に敗れてしまった。
「これに市場が攻撃を仕掛けていくかもしれません。反メルケルが勢力を伸ばしていけば、反緊縮派が跋扈、国債が格下げされる危険性が高まる。市場がそこに注目すればユーロ安が一気に加速、株価が暴落する事態も考えられる。そうなればおのずと、世界大恐慌という言葉が再び意識されることになるでしょう」(富士通総研上席主任研究員の米山秀隆氏)
それだけではない。
たとえばオランダでは財政政策の方針をめぐって連立与党内が分裂し、内閣総辞職に追い込まれた。スペインでは目下、緊縮反対を訴える若者たちが10万人規模でデモを行っている。アイルランドでも財政規律の強化を盛り込んだ新財政協定の国民投票が5月末に行われるが、「否決されるかもしれない」(前出・中原氏)。
オランダもスペインもアイルランドもギリシャにくらべれば大きな国で、一つでもデフォルトすればあっという間に世界恐慌の引き金になる。国民のエゴと、ポピュリズムに走る政治家たちが沈静化した財政危機をたたき起こし、欧州全体が火種になってしまった。
もちろん遠く離れた日本にもその影響は伝播している。1万円台が当たり前になっていた日経平均株価が見る見るうちに8800円台まで急落、80円台半ばで推移していた円相場もあっという間に80円割れ・・・・・・。
証券会社の窓口に個人投資家たちが殺到し、新規に口座を開設したり、日本株型投資信託を買い漁っていたのはつい先日のことだが、当時の円安・株高ムードはどこへやら。再び円高・株安にマーケットが急反転、上がっては下がってのジェットコースター相場≠ノ金融のプロたちがパニック状態に陥っている。
「3月に円安・株高となった時、ある証券会社の幹部が『黒字が出た』と大騒ぎし、『これからは日本株で大儲けするぞ』と息巻いていた。しかし、5月に入ると青ざめた顔で『日本株で大損した』『どこの海外株に投資したらいいのか』と嘆いている。一時の楽観ムードに浮かれ、1万円を超えた高値で仕込んだ人たちが、いま大量に損を出しているんです」(都内で海外投資を中心に投資顧問を行う人物)
長年の超円高からやっと脱却し、業績回復へ舵を切り出した日本メーカーも狼狽している。「現在の円レートは非常に厳しい水準です」(三菱自動車広報)「欧州危機の長期化により、業績への悪影響が懸念される」(シャープ広報)といった悲鳴が産業界で再び上がり始めているのだ。
では世界はこれからどうなってしまうのか。ヨーロッパ発「世界恐慌」は本当にありえるのか。
■日本の国債は大丈夫なのか
第一生命経済研究所主席エコノミストの田中理氏によれば、最悪のシナリオはギリシャのユーロ離脱から始まる。
「ギリシャが自ら離脱を発表するか、その噂が流れた瞬間に銀行の取り付け騒ぎが起きる。ユーロに代わる新たな通貨は大幅に価値が下がるので、その前に資産を保全しようと考えるからだ。この結果、ギリシャの銀行は資金が枯渇し、破綻に追い込まれる。
政府は預金封鎖や資本規制に乗り出す必要があるが、時の新政権にそれだけの能力があるかはわからない。仮に手が打てなければ金融システムが崩壊し、企業の倒産も相次ぎ、街は失業者であふれることになる。政府自体の資金枯渇も避けられないから、公務員の給与や年金の支払いもストップし、行政サービスも最低限のものを除いてすべて停止することになる。最悪の場合は無政府状態に陥る危険性もないとはいえない。
そしてギリシャ同様支援を受けているポルトガルやアイルランドにもユーロ離脱観測が高まれば、欧州各地で取り付け騒ぎが起きることもありえる。こうなれば世界経済の大混乱は避けられない」
専門家たちは、危機をギリシャだけに閉じ込めることができれば、ショックはそれほど広がらないと口を揃える。ただマーケットの疑心暗鬼がイタリアやスペインといった国々に波及、こうした国々がデフォルト危機に陥ればそれは即、ヨーロッパ発世界恐慌の始まりとなる。
信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏がこう指摘する。
「海外のヘッジファンドは、すでにスペイン、イタリア、ポルトガルの国債をすぐにでも大量の売りを仕掛けられるように準備している。同時にユーロも徹底的に売り浴びせる構えだ。
ポイントとなるのは、イタリア国債の動き。いまイタリア国債の利回りは5・9%ほどだが、これが7%を超えて、さらに上昇が続く流れになったら、ヘッジファンドなどの投機筋が一斉に動き出す。そのときはこれを必死に買い支えようとする国家と、売り浴びせる投機筋との熾烈な戦いとなる。国家が負ければ、ヨーロッパ全体にショックが波及、ユーロ圏への輸出比率が高い中国や、中国経済への依存度が高い日本にも景気悪化の波が押し寄せ、リーマン・ショックのときに近い、世界恐慌のような状況になるかもしれない」
となればリーマン・ショック後の最安値(7054円)まで日経平均は急落下するだろう。
たとえ、こうした世界恐慌が起きなくても、実は日本経済は長い円高・株安に苦しめられることになる運命にあるという。
「ショックを回避できても、欧州の財政問題を一気に解決するような政策はなく、当面は何か問題が起きる度に対症療法で事態を落ち着かせることを繰り返さざるをえない。その瞬間は株価も上がり為替も落ち着くが、その効果が切れてくると再び通貨が売られ、株価が下落ということが当分は繰り返されるだろう。だから為替は当分円高基調(対ユーロ)が続くと考えたほうがよく、結果的に株価の上値も抑えられることになる」(ニッセイ基礎研究所主任研究員の伊藤さゆり氏)
製造業が稼いだ利益を円高で失い、個人も虎の子を株安で失い続ける。夏にはエコカー減税や復興需要も切れるだろうから、景気浮上は夢のまた夢で、その間に日本自体の国債危機が暴発しないとも限らない。
欧州の次は日本を売り浴びせる---そう公言して憚らないヘッジファンドまで出てきた。世界大恐慌のトリガーを日本が引くことになれば、この国は二度と立ち直れない「国家の死」を迎えることになるだろう。
「週刊現代」2012年6月2日号より
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。