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中国経済はどれほど強いのか?
2012.05.28(月)
The Economist:プロフィール
世界第2位の経済大国は、このところ成長が減速しているが、その抵抗力は懐疑派が考えている以上に強い。
中国経済の細かな変化や政府の一挙手一投足が世界の注目を浴びるようになった〔AFPBB News〕
世界経済における中国の重要性は大きい。当然、世界の注目も集まる。この4月がそうだったように、中国の鉱工業生産や住宅建設、発電量の前年比の伸びが急激に減速すると、そのニュースは世界の株式市場やコモディティー(商品)価格に重くのしかかる。
5月に実施されたように、中国の中央銀行が金融緩和に踏み切ると、それは米連邦準備理事会(FRB)の決断と同じくらい大きな話題になる。
また、5月20日にそうしたように、中国の温家宝首相が成長を維持する必要性を強調すると、その言葉は、欧州首脳の口から出た同様の成長賛歌よりも市場での影響力を持つ。これほど広く注目を集める産業革命は過去に例がない。
だが、今週の本誌(英エコノミスト)の特集記事でも触れているように、急速な発展も詳しく見ると混乱をはらんでおり、中国経済には問題点が多い。驚くほど非効率的で、公平さは本来あるべきレベルに達していない。
だが、外部の人間が抱く最大の懸念、つまり、例えばユーロの崩壊のような深刻な打撃を被れば中国の成長は頓挫するという懸念には、正当な根拠がない。今のところ、中国経済の抵抗力は、口さがない向きが恐れているよりも強靱と思われる。中国経済が抱える問題は決して小さいものではないが、それが表面化するのはもっと後のことになるだろう。
不公平だが、不安定ではない
外国人は中国のことを、輸出主導の効率において模範的な国と見なしがちだ。だが、それがすべてではない。2011年の中国の成長の半分以上を占めているのは、機械、建物、インフラへの投資だ。純輸出は、この年の成長に全く寄与しなかった。
これらの投資は、あまりにも多くを国営企業が担っている。国営企業は、隠れた補助金や保護された市場、政治の後押しを受けた融資による恩恵を受けている。無駄遣いの例は、北部の大草原地帯のゴーストタウンから南岸の退廃的なリゾートまで、山ほどある。
中国の経済モデルは、国民にとっても不公平なものだ。銀行は、金利規制のおかげで、預金に対して十分な利息を払わず、預金者を食い物にすることが可能になっている。国営企業は、競争を妨げる障壁のおかげで、消費者に法外な値段で商品を売りつけることができる。
戸籍管理制度のせいで、都市部で働いているが農村部に戸籍をもつ出稼ぎ労働者は、元々の都市住民と同等の公共サービスを受けることができない。恣意的な土地法は、地方政府が開発のために農地を安く買い叩き、農民を搾取することを可能にしている。そして、その利益の大部分は役人の懐に消えてしまう。
中国を批判する向きは、こうした縁故主義と浪費を理由に、急成長の後に大々的に破綻したほかの国々と同じだと指摘する。直近の例として挙げられるのが、1997〜98年に金融危機という報いを受ける前のアジアの虎だ。
アジアの虎と呼ばれた国々では、高い投資率がしばらくの間は成長を牽引していたが、同時に金融面での脆さも助長した。そして、輸出が減速し、投資がぐらつき、外国資本が逃避した時に、その脆さが残酷なほどあらわになった。
批判者たちは、中国では投資ペースがアジアの虎を上回っているだけでなく、国内銀行などの貸し手が驚くほど融資の大盤振る舞いをしたと指摘する。政府が大規模な「刺激融資」を実行したことで、2008年にはGDP(国内総生産)の122%だった国内融資額は、2010年には171%に跳ね上がった。
不公平な制度こそが中国に与える力
だが、この制度的な不公平さこそが、中国に並外れた抵抗力を与えている。アジアの虎たちとは違い、中国は外国からの借り入れにほとんど依存していない。成長の資金源になっているのは、かつての東南アジアで見られたような(そして今またユーロ圏の一部で見られているような)いつでも逃げ出せる移り気な外国の投資家ではなく、自国の国民だ。
中国の貯蓄率はGDPの51%で、投資率よりも高い。そして、その貯蓄を預かっている抑圧的な政府主導の金融システムは、支払い遅延やデフォルト(債務不履行)に対処するうえで、有利な立場にある。
最も目につくのは、中国の銀行の流動性の高さだ。預金の受け入れは融資実行を補って余りあるほどで、預金総額の5分の1を中央銀行に準備金として預けている。そのため銀行には、期日を遅らせれば回収できるかもしれない問題融資を繰り延べたり、都合のよいタイミングで減損処理をしたりする余地がある。
また、中央政府が最後の守りとして控えている。中央政府の公的債務はGDPの25%程度にすぎない。地方政府の債務を加えれば、この債務比率は2倍になるかもしれないが、中国には明らかに、支払い不能に陥る恐れのある銀行の自己資本を増強するだけの財政的余裕がある。
さらに、この財政的余裕のおかげで、欧州への輸出が激減したとしても、中国政府は再び成長促進策を取ることができる。信用収縮が欧米の顧客を襲った際には、中国政府は多額の資金をインフラに投じた。インフラ以外にも、資金を投入する先はいくらでもある。
例えば、農村部の医療への取り組みを強化してもいいだろう。中国ではいまだに、ホームドクターの数が国民2万2000人当たり1人にとどまっている。老後の医療を国に頼れるとなれば、一般国民は、貯蓄を減らして消費を増やすはずだ。中国の家計消費が経済全体に占める割合は3分の1程度にすぎない。
時が味方をする
これこそが、中国が直面する長期的な問題を浮き彫りにしている。今後数年の衝撃に耐える力となるまさにその歪みと不公平さが、長期的には中国の足を引っ張るだろう。高齢化が進み、労働者の賃金が上がるにつれて、中国の驚異的な貯蓄率は下がり始めるはずだ。
資本を国内に囲い込んでおく力も、既に弱まりつつある。利率の低さにうんざりしている預金者たちは、別の選択肢を求めている。一部の人は、資金を国外へ移す方法を見つけ、それが珍しく人民元にかかっている下落圧力の一因になっている。4月の中国の銀行預金の増加率は、前年比で過去最低だった。
したがって、中国は資本をもっと賢明に活用する方法を学ばなければならない。そのためには、無駄の多い国営企業がいまだに支配する実入りの良い市場で、民間投資を妨げている障壁を撤廃する必要がある。また、甘やかされた銀行システムを厳格化し、社会保障ネットを強化する必要もあるだろう。今後10年で迫られる政治改革と社会改革の必要性は、言うまでもない。
中国の改革には、まだやるべき大仕事が残されているが、その一方である程度の時間もある。悲観論者は、中国を日本になぞらえる。日本も中国と同様、1991年のバブル崩壊時点では債権国だった。
だが、日本のバブルが崩壊したのは、1人当たり国民所得が米国の120%(市場為替相場ベース)になってからのことだ。中国の1人当たり所得がそのレベルに達するとすれば、中国経済は米国の5倍の規模になっている。それはまだずっと先の話だ。
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