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賃金決定方法の選択──転職者の採用時賃金はどのように決まるのか
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/345.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 26 日 12:02:59: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://www.jil.go.jp/tokusyu/keiyaku/

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/12/pdf/084-085.pdf
論文 Today 
賃金決定方法の選択──転職者の採用時賃金はどのように決まるのか
Hall, R. and Kruger, A. B. (2010) “Evidence on the Determinants of the Choice between Wage
Posting and Wage Bargaining” NBER Working Paper No.16033.
デロイト トーマツ コンサルティング(株) 柿澤 寿信
日本労働研究雑誌85
論文 Today

84 No. 617/December 2011
転職市場における一つの関心の的は賃金交渉の可能
性である。求職者は,できるならば企業の提案額より
も高い賃金額を自ら提示し,交渉を通じて少しでも採
用後の賃金を引き上げたいと考えるだろう。一方,企
業にとって一番都合がよいのは,当初の提案額で優秀
な人材が獲得できることである。しかし優秀な人材ほ
どより好条件の外部機会を得ているだろうから,当初
の提案額に固執せず,むしろ交渉を通じて柔軟に対応
した方がよい場合もあるかもしれない。そうすれば,
たとえ結果的に少々高い賃金を支払うことになって
も,それ以上の生産性をもたらす人材を獲得できる可
能性が出てくる。
こうした議論は,理論的には賃金決定方法としての
賃金掲示モデルと交渉モデルの選択の問題として考察
されてきた。しかし,それらに対応する実証的な分析
はまだ十分に行われていない。Hall and Kruger(2010)
は,その空隙を埋める数少ない実証研究の一例であ
る。以下,その内容を簡単に紹介しておきたい。
本論文はまず理論面の検討から始まる。この論旨は
大きく3 つに分かれている。一つ目は賃金決定方法に
関する既存の理論の整理,二つ目は賃金決定方法の選
択に係る理論的予想,三つ目は賃金決定方法を論じる
意義の主張である。
それぞれの要点だけ見ておこう。著者たちはまず,
賃金決定において求職者からの対案を企業が考慮する
か否かという観点から既存の理論を分類する。対案を
考慮しない場合が賃金掲示モデルであり,考慮する場
合が交渉モデルである。前者については更に,各求職
者別に掲示賃金を調整できるか否かで,結果としての
余剰分配が異なってくることを論じている。また後者
については,交互提案ゲームとしてモデル化すること
を前提に,決裂の確率が高ければ威嚇点となる外部機
会の影響が高まり,結果として生産性や失業率などの
外的条件により感応的になる可能性を指摘している。
次に,より直截に賃金決定方法の選択に関して議論
している。ここで鍵となる概念は求職者の異質性
(heterogeneity)である。著者たちは,求職者の留保
賃金に分布があることを仮定した簡単なモデルを提示
している。また,求職者のスキル水準に分布があるこ
とを仮定した複数の先行研究も紹介している。いずれ
にせよ,求職者の異質性が大きいほど企業には交渉方
式を用いる誘因が生じる。その結果,賃金掲示方式の
場合と比べて賃金の水準は上昇し, 散らばり
(dispersion)は拡大するとされる。
最後に,賃金決定方法を考察する意義を失業率との
関連から論じている。賃金決定方法が異なれば企業が
雇用関係から獲得しうる超過利潤も異なってくるた
め,求人活動の積極性に違いが生じる。また,外的条
件に対する賃金水準の感応度も異なってくる。こうし
たことから,賃金決定方法は失業率に影響を与える重
要な要因であると主張される。
続いて議論は実証へと移っていく。この実証分析は
大きく二つに分かれている。一つ目はある属性を持つ
労働者が賃金掲示方式あるいは交渉方式に直面する確
率の分析,二つ目は賃金の水準や散らばりに対して交
渉が与える影響の分析である。
利用されているデータは2008 年に実施された電話
調査の結果である。調査会社はランダムに選び出され
た電話番号に連絡し,過去10 年以内に雇用された18
歳以上の1435 名を対象として,『米国人口動態調査』
に準じた諸項目の他,転職時の賃金決定方法に関する
幾つかの質問を行った。
一つ目の分析から見ておこう。著者たちは回答者を
属性別にグルーピングし,それぞれにおける各質問へ
の回答確率をロジットモデルで推定している。ベース
となるグループは「非アフリカ系,非ラテン系,男
性,高校卒,労働組合非加入,民間企業勤務,40 歳,
経験変数20 年,勤続年数4 年,かつ仕事の内容が反
復作業,肉体労働,管理業務のいずれでもなく,また
問題解決力や数学的能力,高度な読解力を必要としな
い」というものである。なお,この方法だと推定に使
用できる情報量が減って精度が低下する可能性がある
が,著者たちはブートストラップ法を用いることで対
応している。
この分析の結果,賃金掲示方式あるいは交渉方式に
直面する確率には,学歴の影響が顕著に見られた。す
なわち高学歴であるほど交渉を行う確率が高く,賃金
掲示方式に直面する確率は低い。また仕事内容の影響
も明らかであり,問題解決力や数学的能力,高度な読
解力等を要する仕事に就くナレッジワーカー層では交
渉を行う確率が86%と高く,反復作業や肉体労働に
就くブルーカラー層では5%と低い(ベースグループ
は31%)。一方の賃金掲示方式には逆の傾向が観察さ
れ,ナレッジワーカー層では4%,ブルーカラー層で
は50%となっている(ベースグループは15%)。これ
らの結果から,定型的な仕事に就く大卒未満の労働者
は賃金掲示方式に直面する確率が高く,大卒以上の労
働者ではその確率が顕著に低下すると著者たちは結論
づけている。
この分析からは,他にも様々な発見が報告されてい
る。そのうち主な点を二つ挙げておこう。まずオン・
ザ・ジョブ・サーチと交渉方式の関係である。著者た
ちはオン・ザ・ジョブ・サーチで転職した回答者のみ
を用いて交渉を行った確率を再分析し,全サンプルの
場合よりも全体的に確率が向上することを見出してい
る。特に高学歴層やナレッジワーカー層においてこの
傾向は顕著である。これは威嚇点となる外部機会の重
要性を示唆するものとされている。次に,半数近い雇
用主が求職者の前職賃金を知ろうとしていたことも指
摘されている。この事実は,市場において賃金掲示方
式が必ずしも支配的ではないことを示唆するものと考
えられている。
二つ目の分析に移ろう。賃金に対する交渉の影響を
知るために,著者たちは交渉を行ったグループと行わ
なかったグループにサンプルを分けて,まずそれぞれ
の時間当たり賃金の十分位を比較している。すると前
者の方が後者よりも中位値は11 ドル高く,十分位範囲
は23 ドル大きい。つまり賃金の水準も散らばりも,交
渉を行ったグループの方が大きいという結果になった。
次に,それぞれのグループで回答者属性を説明変数
とした分位点回帰分析を行い,高校卒の白人男性につ
いて条件付き十分位を算出している。これだと中位値
の差はやや縮まるが,それでもやはり交渉を行ったグ
ループの方が約8 ドル高い。一方,散らばりについて
は2 つの指標を検討している。一つは十分位範囲であ
るが,これは約10 ドルと小さく統計的にも有意では
ない。そこでもう一つの指標として,著者たちは回答
者賃金の中位値からの偏差に着目し,その偏差の十分
位範囲を算出している。この値は交渉を行ったグルー
プの方が約17 ドル大きい。この結果は,回答者属性
が賃金の中位値だけでなく分布にも影響していること
を示唆するものとされる。
以上の結果をもって,著者たちは前述の理論的予想
と矛盾しない一つの実証結果を得たとしている。ただ
し著者たち自身も述べているように,ここで用いられ
ている回答者属性は,理論的予想の根拠となっている
スキル水準の異質性を捉えたものではない。したがっ
て,賃金決定方法に係る企業側の意思決定について,
この分析によって十分明らかにされたとは言い難い。
これは本論文の一つの限界であろう。とはいえ,この
領域の実証分析がそもそも不足している現状を鑑みれ
ば,著者たちの試みは価値あるものである。本論文を
踏まえて,今後更に同種の実証研究が蓄積されていく
ことが望まれる。

 かきざわ・ひさのぶ デロイト トーマツ コンサルティン
グ株式会社。最近の主な論文に「評価・賃金・仕事が労働意
欲に与える影響──人事マイクロデータとアンケート調査に
よる実証分析」(『日本労働研究雑誌』No.598(共著),2010
年)。労働経済学専攻。__
 

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01. 2012年5月30日 08:46:55 : 3CNLte9sGM

【コラム】高額報酬ならウォール街、は既に伝説か−コーハン
  5月28日(ブルームバーグ):たんまり報酬を受けられる業界と言えばウォール街に決まっている。本当にそうだろうか。もう一度考えてみよう。
ウォール街の報酬の気前良さを判断する上で2011年の幹部報酬が参考になるならば、他業界のそれと比べてみよう。そうすれば、ウォール街の繁栄ぶりが確実に色あせたことが分かる。
大手金融機関の最高経営責任者(CEO)で11年の報酬が最高だったのはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏で、その総額は2300万ドル(約18億3000万円)。ウェルズ・ファーゴのジョン・スタンプ氏は1790万ドル、ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクファイン氏は1620万ドルだった。シティグループのビクラム・パンディット氏は1490万ドルだったが、この報酬プランは同行株主の55%に否決された。モルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマン氏の受け取り額は1050万ドルで、前年比25%カット。バンク・オブ・アメリカ (BOA)のブライアン・モイニハン氏は810万ドルだった。
とてつもない金額だ。それに、ウォール街金融機関の従業員向け報酬の年間収入に対する割合は通常40−50%で、比率がこれより大きい上場企業を抱える業種は他にない。それでも明らかな傾向がある。つまり金額で見れば、ウォール街の報酬が他業種に比べ、近年下がってきているということだ。
それにはもちろん理由がある。一般的に言えば、利益が下がり、株主資本利益率(ROE)も低下、収入の伸びも鈍化、株式も値下がりし、規制は強化されている。そして、この難局を打開する方法が見つかる公算は小さい。もちろん、ウォール街の幹部やそこで働く幸運にありついた人々(自己資本を投じずにここまで金がもうかる場所はないだろう)に同情する余地はない。それでもここ最近の傾向は、大手銀に異変をもたらすかもしれない。
ウォール街のお約束
ここ数十年、ウォール街は世界で最上級の優秀な人材を採用することができたが、それは大体において他業種のどこよりも高い報酬を支払うという約束と引き換えだった。最近ウォール街のどこかに就職した人間で、高い給料を約束されていることが志望動機ではないという人物がいれば、かなり珍しい人材だ。しかし、この約束がもはや守られない、あるいは報酬が思ったより低いとなれば、優秀な人々はウォール街を立 ち去る。
で、彼らはどこへ行くだろうか。カネが行く先を決めるという法則が通用するなら、メディアといった業界へ押し寄せるに違いない。メディア業界のCEOらは11年報酬がもたらす幸運を静かに享受していた。その金額は例えば、米3大ネットワークの一角であるCBSのレスリー・ムーンベス氏が6990万ドル。ディスカバリー・コミュニケーションズのデービッド・ザスラブ氏は5240万ドル、バイアコムのフィリペ・ド ーマン氏は4300万ドルだ。ウォルト・ディズニーのロバート・アイガー氏は3100万ドル、タイム・ワーナーのジェフリー・ビュークス氏は2600万ドルだった。コムキャストのブライアン・ロバーツ氏は、前年比13%カットでも2700万ドルを受け取った。
新時代の幕開け
かくして、先週公表されたAP通信の報酬が高い幹部リスト上位15人のうち、6人をメディア企業の幹部が占めた。バンカーの名前は一人もない。ここに登場する幹部が途方もない報酬を受け取るのに値したのは確かだ。企業利益は上がり、株価も上昇している。それにしても、メディア企業のトップの報酬がウォール街の幹部を上回ったのは、一体いつ以来のことなのだろうか。
このようなパラダイムシフトは滅多に起きないし、数十年に一度の新時代の幕開けを意味しているかもしれない。ウォール街で見込める報酬はもはや最高ではないからだ。金融機関で日々働くことが現在いかに惨めであるかを合わせれば、ウォール街の経営者は再考してしかるべきかもしれない。ビジネスモデルのみならず、優秀な人材にとって魅力的な業界であり続けるために何をすべきかということをもう一度考え直すことだ。最高の報酬を提示するということがもはや選択肢にないのだから。(ウィリアム・D・コーハン)
(ウィリアム・D・コーハン氏は元バンカーで、「Moneyand Power: How Goldman Sachs Came to Rule theWorld(マネー・アンド・パワー:ゴールドマンはどうやって世界の支配者になったか)」の作者。ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Wall Street Titans Outearned by Media Czars:William D. Cohan(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先: William D. Cohan atwdcohan@yahoo.com
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Toby Harshaw tharshaw@bloomberg.net
更新日時: 2012/05/29 09:05 JST


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