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企業・経営>時事深層
年金積み立て不足計上の衝撃
2012年5月25日 金曜日 編集委員 田村 賢司
企業年金の積み立て不足を全額計上することが決まった。簿外に債務を置けた従来の会計基準を見直す影響は大きい。超低金利で債務は増大。複雑なルールでその透明度は低い。
会計基準を設定する企業会計基準委員会(ASBJ)が、企業年金の積み立て不足を貸借対照表に全額計上する会計基準を2014年3月期の連結決算から適用することを決めた。現在の会計基準で、簿外に置いておける積み立て不足を一気に貸借対照表に計上すれば、負債が急増する。
一方で、国債(10年物)の市場金利が1%前後という超低金利が長期化したことで、それらから算出する企業年金の債務(退職給付債務)は今後、一段と膨らみかねない。積み立て不足のもとになる退職給付債務が拡大しかねない中で、負債に全額計上しなければならないわけで、特に積立不足額の大きな企業にとっては経営への影響は大きくなる。
もともと、2012年3月期から適用の予定だったが、影響を懸念した企業の反発が強く、上場企業に対する国際会計基準(IFRS)の強制適用を先送りするとともに見送られてきた。
企業年金会計では、企業は社員などの将来の年金・退職金給付について、現時点までの必要額を算出する。これが退職給付債務だが、その時点までに費用処理した額(退職給付引当金)と年金資産の合計額がその債務額に届いていないと積み立て不足になる。
現在の会計基準ではこれを十数年程度で毎年費用処理することができ、処理後の残額は決算書に簿外債務として注記すればいいことになっている。
新しい基準は、この簿外債務処理をなくすことで、同様の会計基準を既に導入済みの米国会計基準や、2013年1月から適用予定としているIFRS並みに透明度を高めることを狙った。
だが、影響はこれだけではない。懸念の1つは、金利の低下で退職給付債務を算出する際に使う割引率という数値が低下し、債務が膨らむ恐れのあることだ。左上表で日経300採用銘柄のうち12月期決算企業を見ると、割引率が2.5%とやや高めだった企業の大半が割引率を引き下げている。
3月期決算企業にもその恐れがあり、右上表のように既に積み立て不足が大きくなっている企業をはじめ、その影響には注意が必要になる。
問題はもう1つある。割引率自体は、国債や政府機関債、格付けがダブルA格以上の社債の利回りなどを組み合わせて計算する。ところが、企業によってその方法が異なるため、「金利が低下しても割引率を下げるところとそうでないところが出ている」(深澤寛晴・大和総研コンサルティングソリューション部次長)のである。
企業ごと異なる積み立て不足計算
当然、企業によって退職給付債務と積み立て不足拡大の仕方が変わってくるわけで、投資家にとっては極めて分かりにくい事態となる。実際、前述のように12月期決算で割引率の高い企業は大半が前期決算で引き下げているが、2012年3月期決算では同じく2.5%の富士通やNECは下げていない。
新しい会計基準は、こうした“問題”を抱えたままでのスタートとなるが、「企業財務への影響が大きいため、簡単には統一できない」(監査法人アヴァンティア法人代表の小笠原直氏)と言われる。企業財務の透明度向上のための課題は、基準改定後もなお残されている。
時事深層
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田村 賢司(たむら・けんじ)
日経ビジネス編集委員。
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